ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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お待たせしました!造魔(ゾーマ)編序章の開幕です!


第16章 生存競争のクロニクルとオートマタ
迫るデスゲームの魔手


「新人ハンターの教育?俺が?」

 

ある日の事、新は行きつけの酒場のマスター・イスルギからそんな話を聞かされていた

 

どうやら新人のバウンティハンターが協会に登録してきたらしいのだが、新は初耳だった

 

しかも、新を教育係に当てると言うオマケ付き

 

マスター・イスルギが新のグラスに酒を注ぎながら言う

 

「お前もSS(ダブルエス)級まで(のぼ)り詰めたんだ。そろそろ新人の教育指導も必要だって、協会のお偉方からのお達しさ。近い内に顔を合わせる事になるだろう」

 

「おいおい、勘弁してくれよ……。俺は教育者ってガラじゃねぇし、既に手の掛かる後輩を3人も(かか)えてんだぞ?これ以上増えたら破産しちまう」

 

嘆息してグラスの酒を飲み干す新

 

ここ最近はバウンティハンターの依頼が少なく、収入を得てもレイナーレ達の酒代で消えてしまう……

 

そんな中で新人の教育など出来る筈も無い

 

「悪いけど、教育指導なら他の奴に回してくれ。俺、こう見えても結構忙しいんだ」

 

「そういうわけにもいかないんだよな、これが。協会からの通知である以上、お前さんに断るって選択肢は無い。それに―――お前は必ず引き受けるよ」

 

「何故そう思う?」

 

「その新人ハンターが“女”だからだ」

 

「詳しく聞かせろ」

 

新は即座に先程までの不満を(ひるがえ)し、マスター・イスルギの話に耳を傾ける

 

マスター・イスルギが酒を注ぎながら続ける

 

「ランクはCクラス、ちょっと性格に難有りだが……見た目は悪くないと思うぞ?」

 

「スリーサイズは分かるのか?」

 

「ハハッ、早くも乗り気だな。上からB(バスト):84、W(ウエスト):56、H(ヒップ):88、もう返事は確定したんじゃないか?」

 

「ああ、その教育係―――受けてやるよ」

 

「その意気だ。ほれ、景気付けにサービスだ。コレ食っとけ」

 

そう言ってマスターが出してきたのは、小皿に盛られたフランスの家庭料理―――ラタトゥイユ

 

薄くスライスしたトマトやナス、ズッキーニ等の野菜を使った煮込み料理である

 

「マスターってこんな()った料理もするのか?」

 

「最近、小さなネズミがシェフを目指す映画を見てね。それが美味そうだったもんだから、見よう見真似(みまね)で作ってみたのさ」

 

「酒場には似合わないメニューだな」

 

「ハハハッ、そう言うと思った。けど、味は保証するぜ?」

 

「そりゃ良い。新人教育の前祝いとしていただくか」

 

こうして新はバウンティハンターとして、初めての後輩を授かる事になった

 

 

―――――――――――――――

 

 

「首尾は上手くいったようですね?Monsieur(ムッシュ) スターク」

 

『ああ、まずは種蒔き作業を終えたところだ。そっちはどうだ?』

 

Oui(ウィ)、順調ですよ。あとは彼が発破を掛けるだけです」

 

『いよいよ本格的に始動するってか。お前らが考案したデスゲーム、『クロニクル』だっけ?なかなかエグいイベントを思い付いたもんだな』

 

造魔(ゾーマ)のバックアップがあったからこそ―――実現可能になりました。勿論、あなたの斡旋(あっせん)も今件の要因です」

 

『んで、ここから俺は高みの見物ってわけか。楽しみだねぇ、悪魔のガキどもが振り回されて、壊れていくのを眺めるのは』

 

Oui(ウィ) Oui(ウィ) Oui(ウィ)、彼らには少しばかり痛い目に遭っていただく必要があります。欲望と絶望が渦巻き、狂気と死が逆巻くFiesta(フェスタ)……Trés bien(トレビアン)なゲームを前にして、どういった表情(かお)(わめ)いてくれるのか」

 

『本当にお前は悪趣味だよな』

 

「あなた程ではありませんが、お褒めの言葉としておきましょう」

 

 

―――――――――――――――

 

 

ある日の駒王学園(くおうがくえん)

 

「シドくんっ、お菓子食べる?」

 

「今日、実習でクッキー焼いたの。シドくんにあげる」

 

「わぁ、良いの?ありがと、お姉さんっ♪」

 

1年生として駒王学園に潜入している筈の造魔(ゾーマ)構成員―――シド・ヴァルディは2年の女子達からお菓子やら何やらを貰い、 学生ライフを満喫していた

 

年下に加えて無邪気な性格から母性本能をくすぐられ、すぐに年上女子の支持を得たらしい

 

勿論、新達は彼の正体を知っているが……この(おおやけ)の場で異形の話など出来るわけもない

 

いつでも新や一誠達をやれるポジションにいながら、シドはお気楽な毎日を送っていた

 

―――と言っても、本分は忘れてはいない

 

「さてと、“コレ”を配れって言われてるけど……誰にしよっかな?簡単に話にノってくれそうなヒトが良いよねー」

 

女子達から貰ったお菓子をポリポリ食べながら、校庭を散歩していると―――2つの人影を見つける

 

「んー?あ、松田(ク○ボー)先輩と元浜(ノ○ノコ)先輩だ。あんな所で何やってるんだろ」

 

見つけたのは一誠のクラスメイト、ハゲこと松田とメガネこと元浜

 

壁に顔を近付け、何かを覗き込んでいる様子……

 

シドは面白そう事を察知したのか、2人に気付かれないようにスーッと忍び寄り―――声を掛けた

 

「せーんぱいっ、何してるのぉ?」

 

「うわっ!な、何だ、お前か。あっち行けリア充め」

 

「今の俺達は1年のガキに構ってる暇など無いんだ。さっさと帰ってクソでもして寝てこい」

 

松田と元浜は嫌悪感をあらわにしてシドを追い払おうとするが、シドは首を(かし)げてしつこく訊いてくる

 

「ねぇねぇ、なーにしてるのー?教えてよー」

 

「うるさい黙れ。リア充には関係無い事だ」

 

「その通り、チヤホヤされているお前のようなリア充など爆発して死んでこい」

 

「えー、つまんなーい。もっと大声で訊いた方が良いのかなぁ?」

 

シドは大きく息を吸い込み、大音量の声音を発しようとするが―――危険を気取(けど)った松田と元浜に口を塞がれる

 

『やめろ、バカが!気付かれたらどうする⁉』

 

『これだからリア充って野郎は!』

 

『じゃあ、何してたの?教えてよ』

 

『ったく、マセガキめ。そこの穴を覗けば分かるだろ』

 

松田は仕方無く小さな穴を指差し、シドはその穴を覗き込む

 

―――中には着替え中の女子達の姿が

 

ここは剣道部の女子達が使う更衣室

 

つまり、松田と元浜は女子達の着替えを覗いていたのだ

 

覗き穴から目を離すと、シドは2人にこう(たず)ねる

 

「これが面白い事?何も無いじゃん」

 

「「なん、だと……⁉」」

 

松田と元浜はシドの言い草にワナワナと震えた

 

「お前……この光景を見て、何とも思わないのか⁉」

 

「お姉さん達が着替えてるだけでしょ?そんなの見て何が面白いの?」

 

「かーっ、これだからガキは!女体の神秘と言うモノをまるで分かっちゃいねえ!見ただろ、村山のデカい乳を!片瀬のエロい尻を!キャッキャウフフと(たわむ)れる女子どもの乳!尻!太もも!それだけで俺達は明日への希望を見出だせるのだ!」

 

「俺達は日々この光景を目と脳裏に焼き付け、リア充撲滅とハッピーライフを目指している。女体の神秘をオカズに飯を食らい、探求心を満たす為に女体の何たるかを追究していく。それこそが俺達の幸せへの原動力となるのだ!」

 

イキイキと語る松田と元浜に対し、シドは“ふーん”と生返事をしてお菓子を食べる

 

「要するに―――先輩達はモテたいんだ?」

 

「ああ、そうだよ!俺達はモテたいんだよ!女子どもからチヤホヤされたいんだよ!彼女が欲しいんだよ!彼女を作ってエロエロな毎日を送りたいんだよ!けど、どんなに足掻(あが)いても結局リア充には勝てないんだよっ!」

 

「少し前まで俺達と同じ仲間だと思ってたイッセーも、今ではアーシアさんと言う伴侶を持って毎日イチャイチャ……!それを見せつけられて俺達のハートはボロボロなんだよ!あいつは先にリア充への道を進みやがった!」

 

「俺達の周りにはリア充が多すぎるんだよ!竜崎もリア充!イッセーもリア充!イケメンの木場もリア充!どいつもこいつもリア充っ!何なんだよ、何なんだよこれ!神は俺達に死ねって言ってるのか⁉イケメンやリア充以外の奴は死ねとでも言いたいのか⁉」

 

嫉妬に荒れ狂う松田と元浜は嘆いたり怒ったりと、顔芸を繰り返す

 

「金があるわけでもない、頭が良いわけでもない、俺達には何も無いんだよ……!エロの欲求を満たす他に無いんだよ……っ!」

 

「こんなリア充だらけの世界など、いっそ滅んでしまえば良いんだ……っ!」

 

落胆してこの世の全てを呪うような台詞を吐き捨てる松田と元浜

 

シドはそんな2人を眺めて―――『きーめたっ♪』と何かを(ひらめ)き、2人の肩に手を置いた

 

「せーんぱいっ、それなら良い話があるんだけど」

 

「良い話だと?1年のガキが何を知ってるって言うんだ?」

 

「その“りあじゅう”ってモノになる為の近道♪」

 

「「――――っ⁉」」

 

シドの言葉に松田と元浜は揃って驚愕し、シドは得意気に語り始める

 

「先輩達みたいなダメダメな人達にオススメの方法があるんだけどなー」

 

「何だと⁉そ、それはどんな方法だ……?」

 

「話によっては金を払うぞ、多少の犠牲は(いと)わん」

 

直ぐに食い付いてきた松田と元浜に、シドはニヤリとほくそ笑む

 

そして、ポケットから“あるモノ”を取り出した

 

それは―――『The() Chronicle(クロニクル)』と(つづ)られた小型の端末だった

 

松田が「何だよ、これ?」と訊くと、シドは笑顔で話す

 

「コレは最新技術を利用した新世代のバーチャルアクションゲームだよ。実は僕、コレを作ってる所でアルバイト(嘘だけど)しててさぁ。プレイヤーを集めてるの」

 

「それがどうリア充に繋がるんだ?」

 

「分からないかなー?コレはまだごく一部の市場にしか出回ってない新感覚のゲームなんだよ。どんなゲームも目じゃない、プレイ次第で思い通りの自分になれる―――夢を叶えてくれるゲームさ」

 

“思い通りの自分になれる”、“夢を叶えてくれる”……シドの甘言に松田と元浜は目を光らせた

 

畳み掛けるようにシドは話を続ける

 

「近い内に一般販売されるんだけど、先にプレイしてくれるなら先輩達は優位に立てるよ?“まだ誰も持っていない最新のゲーム”をいち早く持ってるのは、ステータスの一因になると思うんだ。モテモテになりたいなら、やっぱり最新の流行を取り入れないとね」

 

「「最新の流行……リア充への近道……っ」」

 

揺らぐ松田と元浜にシドは更なる追い討ちを掛ける

 

「イッセー先輩もビックリすると思うなー。先輩達が一気に“りあじゅう”に変身したら」

 

「「く、くれ!それを俺達にくれっ!」」

 

松田と元浜は揃ってシドの誘惑に負け、土下座して頼み込んだ

 

シドは笑みを絶やさず、2人の懇願を受け入れる

 

「しょうがないなぁ、良いよー。1個で1万円だけど」

 

「構うもんか!喜んで買うぞ!」

 

「リア充になれるなら、安いもんだ!」

 

松田と元浜は躊躇(ためら)う事無く金を払い、それぞれ端末を受け取った

 

「で、こいつでどうすれば良いんだ?」

 

「知りたい?それなら、夜に人目の付かない所で教えてあげるよ。……覚悟は良い?」

 

「勿論だ!リア充になれるなら!」

 

「OK~♪また後で連絡するから、バイバ~イっ」

 

シドはスキップでその場を立ち去っていく

 

上手く(そそのか)した事と、これから面白くなるのを確信してニヤケるシド

 

その背後では剣道部の女子達に見つかった松田と元浜がシバかれていた……

 

 

―――――――――――――

 

 

「待ってたよ、先輩達。……どしたの、その顔の傷?」

 

「ふっ、リア充になる前の男の勲章だ」

 

「その通り、リア充になる前の男の宿命だ」

 

その夜、シドに呼び出された松田と元浜は人気(ひとけ)の少ない路地裏にて合流

 

2人の顔は絆創膏にまみれていた

 

言うまでもないが、シドが立ち去った時に覗きはバレており、剣道部の女子達からの折檻による傷だろう……

 

それを“男の勲章”等と言い切る態度は見苦しいを通り越して呆れる程である

 

シドは2人の残念性を棚に上げ、本題に入る

 

「先輩達、ちゃんとアレは持ってきてるよね?」

 

「当たり前だろ!なんたって俺達をリア充にしてくれる秘密道具だからな!」

 

「遂に……遂にこの時が来たんだ……!」

 

松田と元浜は嬉しそうにシドから手渡された小型端末を取り出した

 

The() Chronicle(クロニクル)』―――昼間、駒王学園で渡されたシド(いわ)く“最新技術にして、夢を叶えてくれるゲーム”……

 

シドは個人データを登録する為にスマホを取り出すよう言い、松田と元浜はそれに従って自分達のスマホと端末を繋げる

 

自分の名前やおおよその年齢、生年月日等の必要事項を入力し、登録の手続きを終える

 

「登録の手続きを終えたね?じゃあ、今からが本番だよ。端末のスタートボタンを押せばゲームが始まるよ」

 

シドの言葉に期待と一抹の不安を抱えるも、リア充になりたい欲求が(まさ)り、松田と元浜は遂にスタートボタンを押す

 

The() Chronicle(クロニクル) Game(ゲーム) Start(スタート)……‼』

 

不気味な音声が鳴った瞬間、端末からオーロラのような光が放たれ、彼らの周囲を包み込む

 

周りの光景は然程(さほど)変わらないが、気が付くと2人の姿が変わっていた

 

茶色を基調としたプロテクターに黒のボディスーツ、頭部を覆うのは坊主頭の如く丸いフォルムのフェイスメット

 

それらを装備した松田と元浜はそれぞれの姿を見て驚く

 

「な、何だこれ⁉スゲェ!」

 

「ビックリした……今の時代のゲームはここまで進化していたのか……っ」

 

変身した自分の姿に興奮する松田と元浜

 

当然、彼らはコレをゲームだと疑っていない

 

シドがパチパチと拍手をする

 

「さあ、今日から先輩達の輝かしいゲームライフが始まるよ。まずはチュートリアルからだね。もうすぐモンスターが出てくる筈だよ」

 

そう言った直後、2人の近くに円形の光が地面から発され、その中から複数のモンスターが出現してくる

 

ザコ敵に相応しい様相のモンスター6体、松田がシドに訊く

 

「で、どうやってプレイするんだ?」

 

「それは簡単、ただ戦えば良いんだよ。大丈夫、それはチュートリアル用のザコ敵だから、今の先輩達のレベルでも倒せるよ。好きなように戦ってごらん」

 

「よ、よし!リア充になる為だ!やるぞ、元浜!」

 

「お、おう!」

 

松田と元浜はビビりながらもモンスター達に向かっていく

 

素人感丸出しのパンチやキック、叩きなどを駆使してモンスターにダメージを与える

 

モンスターの方も負けじと攻撃を加え、2人は衝撃で大きくよろめく

 

そこでシドから再びアドバイスが贈られる

 

「腰にデフォルト装備の武器があるから、それも使いなよ」

 

そう言われて腰元に視線を移すと、短剣が目に入る

 

すかさず短剣を引き抜き、襲い掛かってくるモンスターに斬りかかった

 

モンスターは断末魔の悲鳴を上げながら消滅、2人はモンスターを倒した充実感と興奮に駆られる

 

「スゲェ……スゲェよ、このゲーム!まるで本物みたいじゃねえか!」

 

「これが……これがリア充への近道か!」

 

士気が上がった2人は立て続けにチュートリアル用のザコ敵を倒していく

 

その様子を見ながらシドがほくそ笑む

 

『“本物みたい”だって?……プププッ、当然でしょ?―――本物なんだから』

 

そう……モンスターは全て本物であり、松田と元浜は今まさに本物の化け物と戦っている……

 

しかし、本人達はコレを完全に“ゲーム”と思い込んでいる為、その間違いに気付く事など出来ない

 

程無くして、チュートリアル用のザコ敵を全て倒し終わった2人は肩で大きく息をする

 

「はぁ……はぁ……けっこう疲れるな、このゲーム……」

 

「愚痴るな、元浜。これも俺達がリア充になる為の試練だと思えば朝飯前だろ?いずれ俺達は彼女持ちのハッピーライフを送れるんだ!」

 

テレレレッテッテ~♪

 

何処かで聞き覚えのある効果音が鳴り、2人の前にスクロール画面が現れる

 

見てみると―――経験値が溜まり、2人のレベルが1から2へ上がっていた

 

更に下の項目には110P(ポイント)(つづ)られている

 

「ん?このポイントって何だ?」

 

松田がそう訊くとシドが答える

 

「それはモンスターを倒した時に手に入るお金みたいなものさ。ポイントを貯めればショップ画面で武器や防具、アイテムと交換できるよ」

 

「つまり、モンスターを倒せば倒す程ポイントが貰えるって事か」

 

「そゆこと♪。ちなみに初回特典はプレイ開始時に100ポイント支給されてるの」

 

2人は早速ショップ画面を開いてアイテムを買おうとするが―――

 

長剣……2000P

 

折れそうな剣(笑)……1000P

 

木の盾……4000P

 

鉄の盾……8000P

 

棍棒……3000P

 

軽鎧(ライト・アーマー)……9000P

 

全身鎧(プレート・アーマー)……12000P

 

弓矢セット……7000P

 

回復薬(小)……5000P

 

回復薬(大)……6000P

 

etc……

 

「「値段(たか)っ⁉」」

 

手持ちが110Pしか無い松田と元浜はアイテムの値段を見て驚いた

 

初回特典で100ポイント、つまり先程のチュートリアル用のザコ敵は10ポイントの価値しか無かった……

 

「チクショウ!何処のカ○ジだよ⁉完全にぼったくりじゃねえか!」

 

「ゲームとはいえ、そんなに甘くないよ。大丈夫っ、いっぱいモンスターを倒していけば経験値も溜まるし。ポイントも貯まれば、良いアイテムも買えるようになるから」

 

「リア充への道は険しいなぁ……」

 

ゲンナリと(こうべ)を垂れる2人だが、これもリア充になる為と気持ちを切り替える

 

チュートリアルを終えた松田と元浜はシドの指示に従ってスタートをもう一度押す

 

変身が解除されて元の姿に戻り、『The()

Chronicle(クロニクル)』の端末をポケットにしまう

 

ちなみにモンスターの出現場所に近付くと、連動してるスマホがメッセージで知らせてくれるらしい

 

「じゃあ、後は先輩達次第だよ。りあじゅうを目指して頑張ってね~♪」

 

「おう!1年坊、お前本当は良いヤツだったんだな!」

 

「今度、イッセーにも見せていない秘蔵のエロDVDを貸してやろう。お前も少しはエロを身に付けるべきだ」

 

「アハハッ、考えとくね」

 

苦笑いするシドを尻目に松田と元浜は意気揚々と走り去っていった

 

これからレベル上げに向かうのだろう

 

そんな2人の後ろ姿を眺めつつ、シドは不敵に笑う

 

「……頑張ってね、先輩達。普段から退屈ばっかりしてる人間への(ささ)やかなプレゼントさ。たっぷり楽しんでもらうよ―――命懸けのデスゲームをね」

 

 

――――――――――――――――

 

 

シドが松田と元浜に『The() Chronicle(クロニクル)』のプレイ内容を教えていた同時刻、新はオカルト研究部の部室にてリアス達に新人ハンターの事を話した

 

「あなたに後輩のバウンティハンターね……。急な話で驚いたけれど、上級悪魔になる為のノウハウを身に付ける良い機会じゃないかしら?しっかり勉強してきなさい」

 

「良いのか?そうすると必然的に悪魔(こっち)側の活動に支障が出るかもしれねぇぞ」

 

「心配しないで。あなたの成長に繋がるなら、私は許すわ」

 

リアスも新の本業(副業に下がってしまった)事情を察し、彼の意を汲んであげる事にした

 

話によれば、新が教育係を務める新人ハンターはもうすぐやって来るらしい

 

最低限のもてなしぐらいは準備しておこうかと思った矢先―――部室の扉が開かれる

 

入室してきたのは“異様”と言う表現が似合うかもしれない、奇抜な出で立ちをした少女だった……

 

カチューシャを留めたシルバーブロンドのボブカットヘア

 

全てを黒のみで統一したゴシックドレスにサイハイブーツ

 

顔の上半分を目隠しのような装飾品(ゴーグル)で覆い、口元で微かに主張してくるホクロ

 

無言の空気が部室内に流れる中、その少女はズカズカと新のもとに歩み寄る

 

眼前にまで来た彼女はようやく口を開いた

 

「はじめまして、本日よりあなたの指導を受けに参りました―――ミカサ・ヨルハニアです。ハンターランクはCです。よろしくお願いします」

 

機械的な口調で自己紹介を終えた新人ハンターのミカサ・ヨルハニア

 

新は「あ、あぁ、よろしく」と戸惑いつつも返事だけしておく

 

その直後、新はリアスに呼ばれる

 

『あれが新の教える後輩……?何と言うか、その……随分と個性的ね』

 

『正直、俺も言葉が出てこなかった。ここまで奇抜過ぎる女に会ったのは初めてだ……』

 

『どんなに奇抜でも、女の子ってだけで羨ましいよ……!しかも、お前が教育係なんだぞ?エロエロな指導も出来るって事じゃないかッ!』

 

一誠は相変わらず悔しげに嫉妬をぶつける……

 

時折チラリと視線を彼女に移すが、ミカサ・ヨルハニアはただ黙って新達を見つめるのみ

 

否、目隠しのせいで見ているのかどうかすら分からない……

 

とにかく不思議の塊とも取れる新人ハンターに、新はとりあえず手を差し伸べる

 

ミカサは差し伸べられた手に視線を移し、(しばら)くしてから再び新の顔に視線を戻す

 

そのまま沈黙

 

「………………」

 

「いや、あの、握手なんすけど……」

 

「……そうでしたか」

 

言われてから握手に応じるミカサ

 

彼女に手を握られた瞬間、新は一瞬だけ妙な違和感を覚える

 

簡素に握手を終えたミカサは軽く会釈してから「外で待ってます」と告げ、退室していった

 

掴み所の無い新人ハンターに新だけでなく、リアス達も当惑

 

早くも前途多難の空気が押し寄せてきそうな雰囲気だが、新は先程の違和感に対して目を細めていた

 

『……何だ、今の……?妙に冷たい手をしていたな……。まるで、無機質な人形みたいだ……。つーか、アレの教育係をしなきゃいかんのか、俺は……』

 

“後悔先に立たず”―――まさにその言葉が相応(ふさわ)しい顔合わせとなった




オリジナル章、ゾーマ編序章の1話め!早くも不穏な空気を立ち込めてやりました。

この章で主に動く敵はシドとキリヒコです。結構エグい展開にする予定ですので、ご了承くださいm(_ _)m

今回登場した新人ハンターのミカサ・ヨルハニア

由来は「進撃の巨人」のミカサと「ニーアオートマタ」のヨルハ2号B型

それにちなんでイメージCVも石川由衣です


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