ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

218 / 263
短編騒動編ラストです!


運動会のハルマゲドーン⁉

「よー、イッセー!新!体動かしたくないか、体!良いイベントがあるんだけどよー」

 

ある日、アザゼルが下校途中の新と一誠を捕まえて開口一番に言ってきた

 

しかし、怪しい笑みを浮かべている事から、2人は“どうせロクでもない事を考えているだろう”と察知した

 

「嫌ですよ。どうせ、ロクでもない事なんでしょ?」

 

「トラブル製造マシーンの勧誘なんざ、お断りだ。じゃ、そゆ事で―――」

 

「まあ、待て!運動会だ!運動会に出ないか?」

 

アザゼルは新と一誠の腕を引っ張ってそう言う

 

半眼で見つめる2人に対し、アザゼルは(ふところ)から選手登録用の用紙を取り出しながら説明を始める

 

「ああ、ちょいとうちの組織のイベントでやる事になってな。お前らをゲストとして呼びたいんだよ」

 

「い、いきなり、そんな事を言われましても……」

 

「ほら、堕天使の綺麗どころに会いたいって言ってただろう?……旦那、乳がデカくてエッチなおなごがたくさんいますぜ……?」

 

アザゼルは写真を数枚見せつけてくる

 

その写真には黒い翼を生やした綺麗な女性達が大胆なポーズと衣装をしている姿が写っていた

 

「マ、マジっスか⁉ど、どうしようかなぁ……」

 

写真をマジマジと見つめる一誠

 

新も写真を受け取り、確認する

 

それでも新はアザゼルの思惑に胡散臭さを感じるが、一誠は完全に鼻の下を伸ばしていた

 

一誠が欲望に負けて登録用紙を受け取ろうとした、その時―――

 

「むっ!アザゼル!言った筈だ!イッセーくんはこちら側の選手!新くんは第4チームだと!」

 

物陰から紅髪の男性―――サーゼクスが飛び出してきた

 

新と一誠が疑問を浮かべる中、サーゼクスを見かけたアザゼルは舌打ちをした

 

「チッ!魔王さまが現れやがったか!フハハハハハハ!さらばだ!」

 

何処ぞの悪役みたいな捨て台詞を吐いてアザゼルがこの場から消えていく

 

サーゼクスは新と一誠の肩に手を置き、息を吐いていた

 

「……油断も隙も無い男だ。危うくイッセーくんとうちの義弟(おとうと)が堕天使の選手にされそうになった」

 

「あ、あの、サーゼクスさま。な、何事なのでしょうか?」

 

「うむ、リアス眷属が皆集まったら改めて説明しよう」

 

と言うわけで、合流したリアス達と共に一誠のゲストルームに行く事となった

 

 

―――――――――――――――――

 

 

『三大勢力の運動会ーーーッ⁉』

 

兵藤家のゲストルームにて、眷属全員が素っ頓狂な声を上げた

 

「うむ。実は三大勢力での親睦会と言う事で、スポーツに興じようと言う話になったのだよ。それで、スポーツ大会ならぬ運動会を開催する事になったのだ」

 

「あ、私もさっき運動会の事を天界から聞きました」

 

イリナも手を上げて言い、サーゼクスが微笑みながら続ける

 

「勿論、キミ達には悪魔側の選手として参加してもらいたい。これは大事な異文化交流だ。是非ともリアス・グレモリー眷属の皆には協力を願いたい。おっぱいドラゴンであるイッセーくん、ダークカイザー兼オッパイザーの新くんを始め、皆、冥界では人気者だからね」

 

「ちょっと待て、今なんか聞き捨てならない呼び名が上げられたぞ⁉」

 

新はオッパイザーの呼び名に異論を唱えるが、虚しくもそれは聞き入れられなかった……

 

とはいえ、三大勢力でこのようなイベント交流をするのは悪くない

 

同盟同士でのイベント開催は関係の強化に繋がる

 

「あ、あの、さっき先生が俺達を勧誘したのは?」

 

一誠が挙手して訊くと、サーゼクスは苦笑しながら言う

 

「……恐らく、堕天使側の選手としてキミ達を引き入れようとしたのだろう。キミ達の能力は競技に影響を与えそうだからね。……まったく、変なところで行動の早い元総督だ。グレイフィアがもしかしたらと言うので、オフを使って見に来たのだよ。―――案の定だった」

 

「やっぱり、そう言う事か。まあ、一誠は鼻の下を伸ばしてホイホイ登録しようとしてたが、俺には通用しなかったな」

 

「……新先輩、ポケットの写真は何ですか?」

 

新の膝上に座る小猫がポケットから写真を抜き取り、追及する

 

ちゃっかり写真だけ頂戴してた新は言い訳できない為か「……ノーコメント」と返し、小猫に頬をつねられる

 

リアスが立ち上がってサーゼクスに言う

 

「了解しましたわ、お兄さま。私達でよろしければ喜んで参加させていただきます!」

 

こうして、グレモリー眷属は天使、堕天使、悪魔の三大勢力が開催する運動会に参加する事となった

 

―――と、ここで新が1つ疑問を飛ばす

 

「そういえば、サーゼクスさま。さっき腑に落ちない言葉を聞きましたよ?俺が第4チームだとか何とか」

 

「よくぞ気付いてくれたね。そう、参加するのは三大勢力だけじゃない。キミだけ第4のチームに属してもらう事になったのだ」

 

「そのチームって何だ?」

 

「―――リュオーガ族だ。魔獣騒動時の功績が目に留まってね、良い機会だから共に交流を深めようと決定したのさ」

 

魔王サーゼクスの言葉に三大勢力主催の運動会は早くも波乱の渦を巻き起こそうとしていた……

 

 

―――――――――――――

 

 

後日、運動会の花火が鳴り響く中、新達は会場に来ていた

 

使用されているのはレーティングゲーム用のフィールドで、かなり広めな空間となっている

 

イリナと同じように、頭に輪、背中に白い翼を生やした天使達や黒い翼の堕天使が大勢いる

 

悪魔も大勢いるが、ここまで多くの天使や堕天使に会う機会などそうそう無い

 

全員がジャージ姿

 

色分けは天使が白、堕天使が黒、悪魔が赤、そしてリュオーガ族は青となっている

 

アザゼルは堕天使の代表として、イリナは天使側の選手、そして新はリュオーガ族側の選手なのでリアスや一誠達のもとにはいない

 

今回だけは敵同士である

 

「なんか新鮮な感じだな、新が俺達側にいないのって」

 

「まあな。こういう(もよお)しでもないと、なかなか体験できないだろう」

 

新と一誠が話しているとイリナを発見し、イリナもこちらに気付いたのか、金色の翼を生やす男性と共に近付いてくる

 

「あ、リアスさん、新くん、皆!来たのね!」

 

「お久しぶりですね、皆さん。天使長のミカエルです。三大勢力の和議以来でしょうか」

 

そう、イリナと共にいたのは天界の現トップである天使長ミカエル

 

聖書にも名を挙げられている伝説の天使だ

 

新、一誠、リアス、眷属の皆で合わせて挨拶をする

 

特に初対面のロスヴァイセは天使長との出会いに感動していた

 

「今日は正々堂々と楽しみましょう」

 

「ミカエルさまーっ。開会式が始まりそうですわよー」

 

突然の声に視線を向けると―――ウェーブのかかったブロンドでおっとり風の女性天使―――四大セラフのガブリエルが近付いてきた

 

その(かたわ)らに彼女のA(エース)、ミラナ・シャタロヴァも同行していた

 

スタイルが良く、おっぱいも大きい事に一誠は内心で狂喜乱舞する

 

「おや、そうですか。要人とのご挨拶だけで時間は過ぎてしまうものですね。おっと、紹介が遅れましたね。こちら、私と同じ四大セラフの1人で―――」

 

「ごきげんよう、わたくし、四大セラフのガブリエルと申します」

 

「あ、あの……はじめまして……っ。ガブリエルさまのA(エース)の……ミラナ・シャタロヴァです……っ。よ、よろしくお願いします……っ」

 

ガブリエルが微笑み、ミラナはモジモジしながらも皆に挨拶をする

 

「天界一の美女にして、天界最強の女性天使であらせられるガブリエルさまなのです!ちなみに冥界でも人気はすんごい高かったりします!」

 

イリナが興奮気味かつ自慢げに説明をし、アーシアとゼノヴィアは目を爛々と輝かせ、手を合わせて恍惚とした表情となる

 

元教会関係者の2人からすると、セラフのミカエルやガブリエルは天上の存在なのだろう

 

「……セラフォルー・レヴィアタンさまが(ひそ)かにライバル視されているのがガブリエルさまなのよ」

 

リアスの耳打ちに新は「へ~っ」と相槌する

 

―――と、ここでガブリエルが新に気付いてペコリと頭を下げ、ミラナも新に向かって頭を下げる

 

「ごきげんよう、先日はどうもありがとうございました~っ」

 

「あ、ありがとうございました……っ」

 

「いえ、こちらこそ」

 

彼女達とはユナイト・キリヒコの1件で知り合い、新も色々とオイシイ思いが出来た

 

「イッセーと新じゃねぇか。って、おー、ミカエルもいるじゃねぇか」

 

黒いジャージ姿のアザゼルがガタイの良い男性を引き連れて現れる

 

その男性は朱乃の父―――バラキエル

 

ミカエルとアザゼルが握手を交わす

 

「これはアザゼル。お久しぶりです。相変わらずお元気そうで」

 

「ハハハ、まあな。今日は負けんからな、天使長さま」

 

「それはこちらの台詞とだけ言っておきましょう」

 

2人は笑顔で握手をしているものの、異様なプレッシャーを放っており、両者の間の空間が歪み出す始末……

 

既に組織同士の意地の張り合いが展開しているようだ

 

一方で、バラキエルは娘たる朱乃に声をかけようとするが―――朱乃が無言で顔を(そむ)け、それを見たバラキエルは「ガーンッ!」と心底からショックを受けていた

 

しかし、朱乃は新達にだけ見えるよう舌をペロッと出してイタズラな笑顔を見せる

 

どうやら少しからかっただけのようだ

 

「悪魔、天使、堕天使と小憎たらしい顔が揃い踏みだな」

 

そこへまた突然の声

 

視線を向けると―――そこにはリュオーガ族の面々がいた

 

その代表が金髪の青年ラース・フレイム・ドラグニル―――新の兄に当たる人物だ

 

新も元々はリュオーガ族の出身で、本名はゼノン・ブラック・ドラグニル

 

リアス達と死闘を繰り広げ、その後は三大勢力から隔離されていたのだが……魔獣騒動時の功績のお陰で緩和され、今では少しずつ交流を深めているらしい

 

「よー、悪党ドラゴンの代表のお出ましか。あの時の借りを返す絶好の機会だ。楽しみにしとけよ?」

 

「たまには腐れ堕天使の嗜好に乗るのも悪くない。せいぜい無様な姿で這いつくばらんようにな」

 

アザゼルとラースは笑顔だが、その言葉には突き刺さるような毒気が混ざっており、今にも小規模な戦争が始まりそうな雰囲気を出していた……

 

今回限り、新はこのラース(ひき)いるリュオーガ族側の選手

 

相変わらずの修羅場に新は頭を(かか)えそうになる

 

『各勢力の選手の皆さま、中央グラウンドにて開会式を開始致しますので、集合してください。繰り返します。各勢力の―――』

 

会場アナウンスに(うなが)され、全員が中央グラウンドに集まっていった

 

 

―――――――――――――

 

 

『えー、スポーツマンシップにのっとり、正々堂々と競い合う事を誓います』

 

選手宣誓が終わり、各自が自分達のチームに分かれる

 

今回の運動会は日本式を(なら)っているそうで、各種競技もそれに合わせてプログラムされているらしい

 

手元のしおりにも「借り物競走」や「パン食い競争」等が記載されている

 

ちなみに新が個人で参加するのは「障害物競走」と「借り物競走」、後はラストの「チーム対抗バトンリレー」

 

そしてチームで参加するのは「玉入れ」と「騎馬戦」

 

応援席までの移動中、堕天使チームが集合しているところを通りかかると―――アザゼルが黒いジャージの堕天使軍団に力強い演説を開始していた

 

「良いか、お前達。―――これは交流会と言う名の戦争だ。今日だけは暴れても文句は言わん。協力態勢を敷いたとはいえ、常日頃から天使や悪魔に言いたい事もたくさんあるだろう。やれ天界アイテムの価格が高すぎるとか、やれ悪魔の持つ等価交換の意識がウゼーとか。最近だとリュオーガ族の見下し感はマジでブッ飛ばしてやりてーとか、溜まるものも溜まっているだろう。今日は存分に暴れ回れ。―――俺が許す!」

 

『おおおおおおおおおおおっ!』

 

気合いと共に怒号が響き渡る……

 

その横に集まる白いジャージの天使軍団を統括するミカエルが微笑んでいた

 

「はははっ、堕天使の方々は元気ですねぇ」

 

しかし、堕天使の決起集会を見ていた天使達からも不満の声が上がる

 

「奴らのペースに全部合わせると我々は堕天するかもしれないと言うのに……!」

 

「1度堕ちたら天使として終わりなんだから、その辺、堕天使も悪魔も分かって欲しいものだ……!」

 

ミカエルは「良いですか、皆さん」と笑顔を浮かべながら、危険な金色のオーラを全身から(ほとばし)らせる

 

「普段の教えの通りです。―――異端者には天の罰を与えなさい。我々は亡き神の代行を果たす役目があります。―――彼らに『光』を」

 

『はっ!終末を彼らに!』

 

すれ違い様、新は「……何処もかしこも物騒だな」と(つぶや)くしかなかった

 

空気は完全に運動会と言うよりは戦争になってきている……

 

同じようにリアス達か いる悪魔側からもサーゼクスの言葉が聞こえてくる

 

「天界もグリゴリも元気いっぱいのようだ。我々も負けぬよう精一杯競い合おう。交流会の競技だからといって、手を抜いても失礼だ。―――本気でやるように」

 

『ハルマゲドーーーーンッ!』

 

サーゼクスも爽やかな笑顔で本気宣言、悪魔勢が一斉に叫ぶ

 

危険極まりない集会を次々と目にした新は、ようやく自分のチームであるリュオーガ族と合流を果たした

 

メンツはラースを筆頭に、手品師風の少年アノン・アムナエル

 

爆進帝王(ばくしんていおう)と自分で呼び名を付けた暴走漢ニトロ・グリーゼ

 

ゴツい体躯の竜人、長光重蔵(ナガミツ・ジュウゾウ)

 

そしてリュオーガ族の紅一点レモネード・フォールン

 

人数は1番少ないものの、恐らく危険度はこの運動会に参加するチームの中でトップクラスだろう……

 

元々彼らは四大魔王を苦戦させた一族、その実力は今もなお畏怖される程だ

 

ラースが天使、堕天使、悪魔勢の決起集会を眺めながら冷笑を浮かべる

 

「フフッ、面白い。ヤツらは本気で我々に勝つつもりでいるぞ。能天気なものだ」

 

「ラース、どうするニャ?」

 

アノンの問いにラースは危険なオーラを滲ませる

 

「決まっているだろう、いつもの通りだ。―――遊びは本気でやってこそ、面白味が増す。合法的にヤツらへの不平不満をぶつけてやるぞ」

 

「ヨッシャァ!鬱・憤・爆・発っ!思いっきりイクゼェェェェエエエエエッ!」

 

「何処もかしこも捻り潰したるわ」

 

ラースの号令にニトロもジュウゾウもやる気―――否、殺る気満々だった

 

どうやら危険性を最も剥き出しにしているのはこのチームかもしれない……

 

苦笑する新に歩み寄るレモネード

 

「……食べる?美味しいよ?」

 

彼女からリンゴ飴を差し出された新は、とりあえず受け取ってペロリと舐める

 

しかし、内心では嫌な予感しか感じられなかった

 

 

意外にも運動会は平和かつスムーズに進む

 

”何かの切っ掛けで戦争が起こるのでは……?”と危惧していたが、そんな様子は無かった

 

そろそろ競技に参加する順番が近付いてきたので、新は準備運動をして体をほぐす

 

ちなみにアーシアは救護班として、専用のテントスペースで待機しているらしい

 

『ふれー、ふれー、あ・く・ま☆』

 

前に出て応援パフォーマンスをしているのは魔王セラフォルー・レヴィアタン

 

魔法少女の格好でお付きの女性達とダンスをしながら、悪魔陣営を応援していた

 

『障害物競走に参加の選手は指定の場所に集合してください』

 

「そろそろ出番か」

 

アナウンスも聞こえ、新は指定のポイントへ足を運ぶ

 

○障害物競走

 

選手が集合する場所に移動した新は列に並び、そこで一誠と出会(でくわ)

 

「何だ、一誠も1番目か」

 

「新も1番目か。……そっちは最初から容赦ねぇな」

 

この障害物競走は各勢力の選手が1レースに2名ずつ出る事になっている

 

一誠の言う通り、新の他にもう1人の出走者―――ラースも参加していた

 

不敵な笑みを浮かべるラース

 

リュオーガ族の最高戦力2人がいきなりの登場した

 

『位置について、よーい……ドン!』

 

アナウンスの掛け声と共に走り出す各陣営の選手

 

障害物は基本に忠実なもので、平均台を渡り、ネットを(くぐ)り、それぞれ異なる球技のボールをついたり蹴ったりする

 

順調に進んでいき、最後の障害物に―――

 

「ギャオオオオオンッ!」

 

「キュエエエエエエエンッ!」

 

「ゴワンゴワンッ!」

 

危険な鳴き声を発して現れたのは首が9つもある大蛇、首が3つ連なる巨大な犬、両翼を大きく広げる怪鳥だった……

 

モンスターの見本市場に目が飛び出す程驚く一誠、他の選手達も同じように仰天していた

 

「犬、蛇、鳥か。惜しいなー、蛇じゃなくて猿なら桃太郎の子分トリオが完成するのに」

 

「そういう問題か⁉」

 

新のボケに突っ込みを入れる一誠

 

『最後の障害物に各モンスターを配置しちゃいました☆。天使や悪魔も余裕で殺せる猛毒の大蛇ヒュドラ!地獄の番犬ケルベロス!それに謎の怪鳥ジズも参戦です!モンスターを見事退(しりぞ)けてみてください!』

 

「配置しちゃいました☆じゃねぇぇぇだろぉぉっ!」

 

「おー、兵藤一誠じゃないか」

 

一誠に話し掛けるモンスターの1匹

 

よく見てみると巨大なドラゴン、元龍王のタンニーンがいた

 

「お、おっさん!どうしてここに?」

 

一誠の問いにタンニーンは頭をポリポリかきながら言う

 

「いやな、三大勢力の運動会に協力してくれと言うので出てみたが……どうやら、こういう役目だったらしい」

 

元龍王で最上級悪魔のタンニーンが最後の障害物

 

完全に無理ゲーである……

 

しかし、それだけではなかった

 

「やあ、新」

 

「お、親父ィィィッ⁉」

 

新も仰天する程の人物、彼の父親―――竜崎総司もモンスター枠として参加していた……

 

「いやー、ゼクスくんやアザゼルに協力してくれと頼まれちゃってね。面白そうだから参加してみた☆」

 

「モンスター軍に元龍王に親父って、完全に殺しに来てる障害物じゃねぇか……」

 

「いやぁぁぁんっ!そんなとこに絡み付かないでぇぇぇっ!」

 

「あーれーっ!」

 

「ぎゃあああっ!」

 

各陣営選手の悲鳴が上がる

 

横を見ればヒュドラに絡み付かれてエロいポーズをさせられている女性堕天使、怪鳥に連れ去られる女性天使、ケルベロスに頭からガッツリ食われてる悪魔の選手の姿が目に映った

 

『おーっと!選手の皆さん、早速モンスター達と楽しく(たわむ)れています!平和な光景ですね!』

 

「うるせえよっ!楽しくねぇよ!どう見ても危篤に(おちい)ってますけど⁉」

 

「よし、お前も俺にかかってこい!」

 

タンニーンが口から巨大な火炎を吐く

 

隕石の衝撃に匹敵する火炎攻撃を食らい、爆発に巻き込まれた一誠は宙を飛んでいった

 

そして、こちらでも―――

 

「フフッ、竜崎総司。僕は初めから遠慮なんてしないよ?」

 

「勿論、あの時の恨みも込めてお返しするよ」

 

両者共に不敵な笑みを浮かべながら、総司は闇人(やみびと)に変異し、ラースも赤い竜人と化す

 

莫大なオーラが両者の周りに渦巻き、新は危険を察知して逃げようとしたが……

 

「「死ねェェェエエエエエエエエッ!」」

 

チュドォォォォオオオオオオオオンッ!

 

大人げない両者の攻撃に巻き込まれた……

 

 

○借り物競走

 

 

アーシアの治療を受けて応援席に戻ってきた新は既に満身創痍だった

 

結果は新と一誠の同着1位

 

ただし、2人とも障害物(タンニーンと総司)から逃げてゴールしてきたのだ……

 

障害物競走を境に、どのチームも殺伐としてきた

 

障害物のモンスターと戦ったせいで闘争心に火が点いてしまったのだろう

 

『借り物競走に参加の選手は指定の場所に―――』

 

借り物競走のアナウンスが聞こえ、新は再び集合場所と言う名の戦場に足を運ぶ

 

ここでも一誠と出くわし、列に並んで自分達の番を待つ

 

「今度こそ平和に終わって欲しいな……」と呟く一誠に対し、「望み薄じゃね?」と新は(なか)ば諦めた感じで言う

 

『位置について、よーい……ドン!』

 

新と一誠は勢い良く駆け出し、途中の封筒を拾う

 

「ヤキ○リ先生って誰だよ⁉」

 

「黄○色の(うた)使いってどなたですか⁉」

 

他の選手が拾った内容は無理難題のようだ

 

一誠は封筒を開けて借り物が書かれている紙を確認する

 

「………………」

 

一誠は紙の内容を見て思考停止、新が横から盗み見る

 

その紙には『シスコン』とだけ書かれており、新は思わず吹き出しそうになった

 

『プッ(笑)ヒデェな、これ(笑)』

 

『(笑)を2個も付けるなァァァァっ!何だよ、何なんだよ⁉このお題を考えたヤツは誰なんだよ⁉』

 

『ハハハッ!きっと日頃の(おこな)いがここに来て反映されたんだろ。ま、俺はどんなのが来ても―――』

 

そう言って封筒を開けた新も、一誠と同じように紙の内容を見た途端、思考停止に(おちい)った

 

その紙に書かれていた借り物は―――『おっぱい』だった……

 

『お前の方が俺より酷いじゃねぇか!……でも、羨ましいな』

 

『……じゃあ、取り替えるか?』

 

『やだ(笑)』

 

『死ねっ、クソが!』

 

新は理不尽な怒りを吐き出し、紙に書かれた借り物をどうクリアしようか頭を働かせる

 

『ここはオーソドックスにリアスか?……いや、朱乃ならスンナリ受け入れてくれそうだよな。ゼノヴィアも(しか)り、イリナやロスヴァイセも捨てがたい。そうだ、大穴狙いで小猫!……後で殺されるな……。んー、セラフォルーさまにガブリエルさま、ミラナも良いよなぁ。そもそも、この「おっぱい」ってフレーズだけじゃ分かりにくい。俺は巨乳も小振りも好みだから、選べと言われても選べねぇよなぁ……』

 

悩みに悩む新を他所に、一誠はサーゼクス(シスコン)を連れてゴールまで走りきっていた

 

再び1位をゲットした一誠だが、内容がシスコンだった為にサーゼクスに言えるわけもなく、その紙を墓場まで持っていく事を誓った

 

 

○玉入れ競技

 

 

次は各陣営の選手全員で参加する玉入れ競技

 

背の高い棒の先端に(かご)が設置されており、そこに陣営カラーの玉を入れていく―――日本の玉入れと同じルールだ

 

各選手達がポジションにつき、スタートを待つ

 

『それでは全員参加の玉入れ競技のスタートです!』

 

アナウンスの掛け声と共に地面の玉を拾い―――

 

「悪魔どもに光を投げろォォッ!」

 

チュドォォォンッ!

 

「あの時の恨みっ!」

 

ドォォォォンッ!

 

「ハルマゲドンじゃ、こんちくしょうがぁぁぁっ!」

 

「終末の角笛を鳴らしてやろうかぁぁっ!」

 

ドドドドォォォォォオオオオンッ!

 

各所で炸裂音が鳴り響き、玉入れそっちのけのバトルが始まった……

 

玉入れの玉じゃなく、光の玉を悪魔に投げ込む天使と堕天使、それに負けじと悪魔も魔力で応戦

 

堕天使はどさくさに紛れて天使にも攻撃していく

 

『天使、堕天使の皆さんは悪魔に光を投げないでくださーいッ!消滅しちゃいますよ!ほら、そこ!光の槍で槍投げするんじゃないよ!競技違うし!悪魔も攻撃を止めなさい!バカか、てめえら!バカなのか!』

 

アナウンスも破れかぶれでキャラ崩壊(笑)

 

そんな中、新の視界にアザゼルとミカエルの姿が映り込む

 

「よー、ミカエル。ここで会ったが万年めってやつだな」

 

「ふふふ、今日はいつぞやの戦役時のような目付きですね。邪悪極まりない」

 

「ああ、あの時を思い出すぜ。てめえ、よくもあの時俺が天界にいた頃に書いたレポートを発表しやがったな」

 

アザゼルがそう言いながらミカエルに玉を投げつけ、避けたミカエルがあごに手をやりながら意味深な笑みを浮かべる

 

「ああ、あれの事ですか。設定資料集の事ですね?『ぼくが考えた最強の神器(セイクリッド・ギア)資料集』ってタイトルで長々と設定が書かれていた上に自筆のイラストまで添えてありました。素晴らしい才能じゃないですか。ついつい昔の戦役時、ビラでそれを撒いてしまいましたね。是非とも皆さんに見ていただきたかったのです。―――『閃光(ブレイザー・シャイニング・)(オア)暗黒の(・ダークネス)龍絶剣(・ブレード)』でしたっけ?あれ、秀逸でしたよ」

 

それを聞いたアザゼルが赤面しながら、更に玉を投げつけた

 

「うるせぇっ!あれのせいでな、俺は一時期、幹部連中に『閃光(ブレイザー・シャイニング・)(オア)暗黒の(・ダークネス)龍絶剣(・ブレード)総督』って呼ばれてたんだぞ⁉『おい、アザゼル、秘密兵器に閃光(ブレイザー・シャイニング・)(オア)暗黒の(・ダークネス)龍絶剣(・ブレード)を出してくれ』だとか、『このあと閃光(ブレイザー・シャイニング・)(オア)暗黒の(・ダークネス)龍絶剣(・ブレード)で敵を仕留めるんだよな?』とか『アザゼルさんや夕食の閃光(ブレイザー・シャイニング・)(オア)暗黒の(・ダークネス)龍絶剣(・ブレード)はまだかい?』とか言われまくったんだぞォォォォォッ!」

 

「ハハハ、それは失敬!」

 

アザゼルからの玉を避け、ミカエルもアザゼルに玉を投げつけていく

 

アザゼルは若い頃、重度の中二病をこじらせていたようだ……

 

どうでも良い情報漏洩を尻目に、朱乃とバラキエルも対峙している

 

バラキエルはどう声をかけて良いかの分からず立ち尽くし、その父に向かって朱乃は目を潤ませながら懇願した

 

「……父さま!私達を助けて!」

 

「……うぅ、うおおおおっ!」

 

娘の懇願にバラキエルは叫びながら赤いボールを大量に抱えて、悪魔陣営のかごに放り込んでいった

 

それを見たアザゼルが驚く

 

「バラキエル⁉お、おい!お前、なんてことを!黒いボールを投げろって!」

 

「すまん、アザゼル!娘が!朱乃が!これも一人娘の為なのだァァァァッ!」

 

バラキエルはアザゼルの言葉を振り切り、娘の為に励んでいく

 

当の朱乃は嬉しそうに父親と一緒に玉を投げていた

 

楽しそうな朱乃を見て安堵した新は、気を取り直して自分の陣営のかごにボールを入れていく

 

 

○騎馬戦

 

 

次の競技も団体戦の騎馬戦

 

各勢力の選手は馬を組み、上に騎手を乗せる

 

先程の玉入れでテンションがおかしくなったのか、殺気と敵意が充満する戦場と化していた……

 

リアスを騎手にした騎馬(先頭・朱乃、後方・ロスヴァイセと小猫)と、一誠を騎手にした騎馬(先頭・祐斗、後方・ゼノヴィアとギャスパー)でチームを組んでいた

 

一方、数が最も少ないリュオーガ族陣営は新を騎手にした騎馬(前方・ラース、後方・ニトロ)と、レモネードを騎手にした騎馬(前方・アノン、後方・ジュウゾウ)でそれぞれ分かれて他の騎馬を討つ事に

 

『それでは騎馬戦スタートです!』

 

アナウンスの掛け声と同時に各勢力の騎馬が戦意満々で飛び出していく

 

「おりゃあああっ!カタストロフィだっ!死ね、天使どもぉぉっ!」

 

「天使を舐めるなぁぁぁ!最後の審判だっ!」

 

「天使も堕天使も共に滅べぇぇぇぇっ!」

 

騎手の帽子を取れば勝ちなのに、どの勢力も(タマ)()りにイっていた(笑)

 

「転生天使は陣形を組め!我らは札が揃えば力を発揮するのだから!フォーメーション、フルハウスッ!」

 

「そうはさせるかぁぁぁっ!転生悪魔と転生天使の全面戦争じゃい!」

 

「転生、転生って、そんな方法で頭数増やしやがって!ちったぁ天使どもは俺達のところに堕ちてこいやぁぁぁっ!」

 

光の玉、光の槍、そして魔力の炎や雷が無数に飛び交う

 

「ど、ど、何処から攻めましょうか⁉やられる前にやらなきゃ!」

 

「落ち着いてください、A(エース)イリナ!」

 

イリナが騎手を務める騎馬は、混戦と化したグラウンドでどう攻めていいか苦慮している様子だった

 

『皆さーん、ここであの戦争の続きを始めないでくださーい!再現されてますよ!あの戦争が見事なぐらい再現されてますからね!やめろって言ってんだろぉぉぉっ!ひゃっはーーーっ!』

 

「ひゃっはーじゃねぇだろ。何処ぞの世紀末のモヒカンか」

 

「それっ!帽子を取ったわ!」

 

女性天使の騎手から華麗に帽子を取るリアス

 

リアス達の周囲だけ、平和な騎馬戦となっていた……

 

新も何処から攻めようかと考えた矢先、視線の先にアザゼルに耳打ちを聞く一誠の姿が映る

 

アザゼルから何か助言を貰った一誠は「突っ込め木場!俺を信じろ!」と叫んで指示を送る

 

ただ、一誠は鼻血を垂らしていた……

 

それを見た新は『……そういう事か』と直ぐにアザゼルの思惑を察知

 

一誠は魔力を高め、両手を前に出して女性天使、女性堕天使の騎馬に突貫していく

 

「剥ぎ取りゴメーーーンッ!」

 

一誠は形だけの謝罪をしながら、女性騎手の体を次々とタッチし―――魔力を解放させながら叫んだ

 

「―――洋服崩壊(ドレス・ブレイク)!」

 

ババババババッ!

 

一誠がタッチしていった多くの女性騎手のジャージが弾け飛び、全裸となる

 

「きゃあああああっ!」

 

「いやぁぁぁぁぁっ!」

 

可憐で清純そうな女性天使達や、色気溢れる女性堕天使達の裸が大公開

 

それを見て悪魔と堕天使の男性陣は歓喜し、鼻血を噴き出す

 

「うおおおっ!じょ、女性の裸……!いかん!いかがわしい事を考えてしまったら……堕ちる!」

 

「乳……尻……太もも……うぅ!堕天してしまうぅぅっ!でも、白い肌がとっても眩しいぃっ!」

 

天使の男性陣はエロい場面に悩み苦しみ、白い翼を白黒と点滅させていた

 

それを見ていたアザゼルが高笑いする

 

「天使どもは堕とせ堕とせ!ふははははっ!女の裸を見ただけで堕天しかけるなんて普段から溜まってる証拠だぜ!」

 

「やっぱりな、アザゼルの考えそうな事だ。……まあ、良いけどさ」

 

新はアザゼルの思惑に溜め息を吐くものの、その場のノリで一切咎めない

 

「俺ら堕天使は堕ちる事が無ければ光が怖いわけでもない!頭数は三大勢力の中で1番少ないが、こういう場面じゃ天使や悪魔に比べたら優れてんのさ!ふははははっ!さて、イッセー!次はあれだ!」

 

アザゼルがとある美女に指を差す

 

その先にいたのは―――セラフのガブリエル

 

「天界一の美女の裸、見たくないか?」

 

アザゼルが再び一誠を煽る

 

無論、一誠は「見たいですぅぅぅっ!」と欲望に忠実な獣と化して騎馬をガブリエルに向かわせる

 

祐斗、ゼノヴィア、ギャスパーも半ば破れかぶれな感じで一誠の先導についていく

 

それを見た新は―――

 

「させるか、このクソ野郎!俺だって見たいんじゃ!ラース!ニトロ!ガブリエル一点狙いだ!ハイヨーッ!」

 

「まったく、腐れ堕天使の腐れ思考に毒されたか。まあ良い、勝てば文句は言わないさ!」

 

「うおおおおっ!天・界・美・女ッ!全・裸・解・放ォォォォォッ!」

 

彼もまた欲望に正直に答える形で突貫していく……

 

以前、キリヒコの1件でガブリエルの裸は見た事あるが―――それでもやはり見たいものは見たい(笑)

 

ガブリエルは(けが)れの無さそうな純真な瞳で首を(かし)げる

 

一誠は『洋服崩壊(ドレス・ブレイク)』の準備に、新は“一誠を仕留めてからガブリエルを脱がす”算段を(くわだ)てようと―――

 

ゴンッ!

 

突如、一誠の顔面に不意打ちのパンチが飛び込み、その衝撃で一誠達の騎馬が崩れ、一誠も地面に落下する

 

「……これ以上の破廉恥行為は禁止です」

 

小猫が両手をパキポキと鳴らしながら、倒れる一誠の頭部を踏みつけた

 

「一誠、お前の犠牲は無駄にしない。俺が代わりに―――」

 

「……逃がしませんよ、新先輩?」

 

小猫はすかさず新を追撃しに向かうが、命の危機を悟った新は騎馬から跳んで脱出

 

しかし、咄嗟だった為か、跳んだ先にはガブリエルが―――

 

モニュゥッ

 

「ァンッ……」

 

新はガブリエルの騎馬に飛び乗ってしまい、尚且つガブリエルのおっぱいに顔を(うず)めてしまう……

 

それは男なら誰もが憧れるシチュエーション

 

「……ッ」

 

「あ、あの~……エッチな事しちゃ、ダメですよぉ……」

 

新はガブリエルのおっぱいの感触に言葉を失い、ガブリエルも突然のおっぱいダイブに顔を赤くする

 

ガブリエルのおっぱいは、まさにこの世の天国だった……

 

「……覚悟は良いですか、先輩?」

 

しかし、天国から地獄……っ

 

小猫は新の首根っこを掴み、空中へ放り投げる

 

直ぐに小猫も空中へ飛び上がり、両足で新の首と左足、両腕を固定してエビ反りになるようクラッチ

 

「グガァッ!こ、小猫……⁉いつの間に筋肉族三大奥義の1つを……⁉」

 

「……新先輩のお仕置きの為に覚えました」

 

クラッチでメキメキと新の骨が軋み、続けざまに小猫は背中合わせの姿勢で新の手足を固定し、そのまま新の頭と背中を地面に叩きつけた

 

その衝撃で地面に亀裂が入り、新もピクピクと痙攣する

 

こうして、騎馬戦は小猫の折檻で幕を閉じた

 

 

○決戦!バトンリレー!

 

 

三大勢力の合同運動会も遂にラストのバトンリレーを迎えた

 

『各チーム、選び抜かれたリレー選手が各ポジションに待機しております!さあ、長らく競い合ってきた運動会も遂に最後となりました!』

 

アナウンスも最後の声出しで会場を盛り上げる

 

各勢力の得点は意外にも接戦しており、このラストのバトンリレーで勝敗が決まる状態となっていた

 

新と一誠はアンカー、既に鎧状態で待機している

 

「ふふふ、俺の相手はお前らか、新、イッセー」

 

「お、お手柔らかに……」

 

「負けねぇぞ」

 

堕天使側はアザゼルがアンカー、ハッキリ言って嫌な予感しかしない

 

「がんばりましょうねー」

 

天使側のアンカーはガブリエルだった

 

一誠は『洋服崩壊(ドレス・ブレイク)』できなかった事を悔やみ、新は小猫の折檻で痛めた首を(さす)

 

『さあ、最終決戦スタートです!』

 

リレーのピストルが撃ち鳴らされ、軽快なBGMと共に各勢力の選手が飛び出していった

 

悪魔側の最初は祐斗、リュオーガ族の第1走者はニトロ

 

すると、堕天使側の選手が祐斗に光を放つ

 

祐斗は軽やかに避けていた

 

「あれ、アリなんですか⁉」

 

一誠はアザゼルに抗議するが―――アザゼルは「見えんなー」とはぐらかした

 

とんだ外道である……

 

それでもリレーは続き、選手達はグラウンドを駆け回っていく

 

そして、一誠の手前の選手―――サーゼクスにバトンが手渡された

 

「負けないぞ!」

 

「それはこちらの台詞だ、サーゼクスッ!」

 

リュオーガ族の第2走者はラース

 

凄まじい速度でサーゼクスとラースが駆けていく

 

「うおおおっ!負けん!娘の朱乃の前では負けられんッ!」

 

「四大セラフ『神の炎』たるこのウリエルが魔王に負けるなど許されないのだッ!」

 

雷光を体に纏わせるバラキエルと、極大の聖なる炎を全身から(ほとばし)らせるセラフのウリエル

 

2人の爆走もサーゼクスとラースの速度に負けていなかった

 

そして、バトンは遂にアンカーの手に(ゆだ)ねられる

 

新と一誠はそれぞれのバトンを受け取り、魔力を噴かして飛び出した

 

猛スピードでゴールに向かうが―――

 

「とりゃぁぁああっ!こんな時の為に完成させた秘密兵器じゃい!」

 

背後からアザゼルが猛追してくる

 

しかも、その手には光と闇が入り交じった剣が握られていた

 

「こいつはてめえらが散々煽った『閃光(ブレイザー・シャイニング・)(オア)暗黒の(・ダークネス)龍絶剣(・ブレード)』だッ!」

 

グラウンドの風景を吹っ飛ばしながらアザゼルが剣を回し始め、それを見て各陣営のトップクラスが仰天していた

 

「なに⁉『閃光(ブレイザー・シャイニング・)(オア)暗黒の(・ダークネス)龍絶剣(・ブレード)』は完成していたのか⁉」

 

「むぅ!あれが『閃光(ブレイザー・シャイニング・)(オア)暗黒の(・ダークネス)龍絶剣(・ブレード)』!」

 

アザゼルは中二病剣で新と一誠に襲い掛かる

 

2人はそれを(かわ)し、空振(からぶ)った一撃がグラウンドの地面を大きく(えぐ)

 

「コラ!俺を殺す気ですか⁉それでも先生かよ!これ、運動会でしょう⁉」

 

「戦争じゃぁあああっ!魔王と天使長とリュオーガ族のクソッタレには負けん!俺がナンバーワンだ!」

 

テンションが上がりきったせいで、アザゼルの思考はおかしな方向にブッ飛んでいた……

 

新と一誠、アザゼルはゴール前で対峙し、拳と剣を繰り出しながら戦闘を始めてしまった

 

「良い機会だ!お前らの力を試してしんぜよう!我が生徒よ!」

 

「何言ってんスか!ぶん殴りますよ、ラスボス先生!」

 

「テメェら纏めてブッ飛ばしてやるッ!」

 

新と一誠は無遠慮にアザゼルを殴る

 

「よくも俺をぶったな!この!ちったぁ年長者を敬え!」

 

「いってぇっ!あんたが言える事かよ!」

 

「元はお前らが原因だ!死にさらせ!諸悪の根源ども!」

 

などと殴り合いをしている隙に―――

 

「お先に~」

 

ガブリエルが3人の横を通り過ぎていき、ゴールテープを切った

 

『ゴーーールッ!バトンリレーを制したのは天使チームでしたーっ!』

 

「「「ああーーーっ!」」」

 

それを見てお互いに驚く新と一誠とアザゼル

 

アホな事に付き合ったせいで、このザマである……

 

「あんたのせいだぞ、先生!」

 

「マジで死にさらせ!この腐れ堕天使が!」

 

「いや、お前らがさっさとやられないのが悪いぞ!」

 

『おいっ』

 

3人を取り囲む謎のプレッシャー

 

チラリと視線を移せば―――堕天使達がアザゼルを取り囲んでいた

 

全員が殺気めいたものを全身から放ち、眼光鋭くアザゼルを睨んでいた

 

新と一誠は場違いを理由に逃げようとするが、そこに現れたリアスに頭を小突(こづ)かれる

 

「新、イッセー、なんて事をしているの……」

 

「「すみません……」」

 

新と一誠が頭を下げる中、ソロリソロリと忍び足でこの場を逃げようとするアザゼルだったが―――

 

「……アザゼル、ちょっと話しましょうか」

 

グリゴリ現総督のシェムハザに掴まれ、堕天使チームの方に引きずられていく

 

「わ、悪かった、シェムハザ!ちょ、ちょっと調子に乗っちまった!ハハハ、許してくれ。……な?」

 

「ダメです」

 

「ぎゃああああっ!」

 

堕天使チームの中央でアザゼルが悲鳴を上げた

 

かくして、大運動会は天使チームの優勝と言う結果で幕を閉じた

 

各陣営は日頃の鬱憤が吐き出されたのか、終了際には疲れた表情ながらも満足げな様子だった

 

それを受けて、既に「来年も開催しようか」と言う話になっているそうで……

 

「「こういう殺気めいた運動会は2度とゴメンだッ!」」

 

 

――――――――――――――――

 

 

「ねえねえ、キリヒコ。首尾はどう?」

 

Oui(ウィ)、やっと完成しましたよ。あなたと私の力を更に高める為の―――画期的なシステムが」

 

「そっか~♪出来たんだね。じゃあ、後はこれを町中の人達に流せば良いんだね?」

 

Oui(ウィ) Oui(ウィ) Oui(ウィ)、あなたは学園で適当な人間にコレを渡してください」

 

「OK~♪いや~、楽しみだな~♪コレを使えば、イッセー先輩が本気を出して僕と遊んでくれそうだし」

 

「我々『造魔(ゾーマ)』の実験には欠かせないファクターですからね。タップリと楽しませてもらいましょう。手始めに―――この『クロニクル』でグレモリー眷属の連中を逆撫でしてやりますか」

 

The() Chronicle(クロニクル) Game(ゲーム) Start(スタート)……!!!!』




最近は本当に更新が遅れたりして、申し訳ないです……。やっと短編が終わり、次回からはいよいよ造魔編の序章です!

次章のタイトルは“生存競争のクロニクルとオートマタ”です!お楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。