それは、とある日の放課後だった
オカルト研究部の部室に顔を出してきたリアスとレイヴェルが、ソファでチェスをしながら楽しげに会話をしていた
途中までチェスに興じていたが、いつの間にか小話がメインに
時に笑ったり、時に真剣に語り合ったりしている
「―――で、そこにもしゼノヴィアさまか、ロスヴァイセ先生がいらっしゃったら、プール方面からも―――」
「それも面白いけれど、私だったら、まずギャスパーをあの時に―――」
お互いに意見を出し合いながら盤上のチェスの駒を動かしていた
会話内容が気になった新は探りを入れてみる事に
「何を話してんだ?」
「ええ、ちょっとレイヴェルとゲームの話をしていたのよ。しかも懐かしい一戦よ」
「はい、リアスさまとライザーお兄さまの一戦を振り返っていましたの。ただし、ただの思い出話ではありませんわ」
「もし、今のグレモリー眷属であの時ゲームをしていたら、どうなっていたのか―――なんて事をレイヴェルと話していたのよ。私としても苦々しい経験だったものだから、『今ならこうしているのに!』って、ついつい悔しがりながらも話に熱くなってしまったわ」
熱を帯びながら口にするリアス
確かにあの時にいなかったゼノヴィア達がもし参加していれば、また違った局面を迎えていたかもしれない
当時、婚約話の真っ只中だったリアスにとってみたら、生き方を懸けた戦いでもあり、敗北を喫した一戦だから話に熱がこもるのも当然だろう
話の内容を聞いた新もライザーとの一戦を懐かしむ
「あの時のレーティングゲームか、懐かしいな。まあ、結局は俺のワンマンプレイで勝利寸前までいきかけたんだけどな」
「ふふっ、そうね。特に女性に対して無類の強さを発揮するもの」
昔の新の戦いっぷりを思い出し、リアスはクスクスと笑う
その時、新は“ある提案”をレイヴェルに持ちかけた
「なあ、レイヴェル。1つ提案と言うか、俺個人の頼みを聞いてほしいんだが」
「はい、何でしょうか?」
「今、俺は真『
魔獣騒動にて、新はリュオーガ族に伝わる竜の呼吸法で神風の
しかし、あまりにも消費が激しく、反動も大きい為―――あの一戦では解除した途端に
「『
新の提案にリアスは驚きを隠せなかった
「新……そ、それ、本気で言っているの?」
「ああ、本気さ。少しでもこの力を長く持続させたいんだ。その為には―――やっぱ実戦で鍛えた方が良いかなって」
「面白そうじゃないか」
そこへ突然の声―――アザゼルがにんまりとイタズラな笑みを浮かべていた
「その力は重要な戦力となる。実戦で試して鍛えるってのも、今後の成長を測る1つのファクターになるんじゃないか?」
「分かってるじゃねぇか、元総督」
「新、あなた独りでやるつもりなの?」
「最初のレーティングゲームでも俺単独で進めてたからな。その点は同じだ。ただし、あの時以上に厳しい条件を俺自身に設ける」
その条件とは2つあった
1つめ……新がゲーム開始時から真『
これは体力やオーラを減らしていくような状態を敢えて最初から展開し、その状態に長く耐えられるようにする為だ
つまり、最初から毒持ちのハンデを背負うと言う事である
2つめ……相手の『
これも新自身に多大な負担を掛けさせる為である
更に新にはフェニックスの涙を付与しない
これらの条件を制定した上でライザー眷属との実戦練習を
「最低でも1日―――24時間は真『
新の提案にレイヴェルは少し考えた後―――
「分かりましたわ!新さまのご要望、慎んでお受け致しますわ!」
レイヴェルは生き生きとした表情で新の提案を了承してくれた
リアスにも確認を取る
「レイヴェルからはOKを貰えた。良いよな、リアス?」
「断る理由は無いわ。あなたが考えて出した結論だもの。ただし、今後は私達にもそう言った話を持ちかける事。良いわね?」
「了~解っ」
話を聞いてアザゼルも立ち上がる
「よし!レイヴェル、お前もライザーや親御さんに訊いてみてくれないか?段取りやらは俺が決めてやる。案外、あっちも乗り気になるかもしれないぞ」
「分かりましたわ。お父さまとお母さま、それに上の2人のお兄さまにもお訊きしてみます。私もライザーお兄さまの練習相手に新さまがお付き合いしてくださるなら万々歳ですわ」
こうして、雑談から一気に新VSライザーチームとの再戦の話が発展していく事になる
――――――――――――――――
次の休日、新は
正確にはゲームフィールドに設けられた疑似空間内の旧校舎
あの日に行われた雑談は、その後のアザゼルのプレゼンとレイヴェルの説得も相まって、グレモリーとフェニックスの両家を焚き付けるには充分だった
直ぐに以前使われたフィールドの構築術式が流用され、あの時と同じ空間が再現される
駒王学園をまるまる再現した試合用の疑似空間
この領域には新と現フェニックス眷属が存在しており、リアス達や両家の関係者は違う場所でモニタリングしている
待機場所も前回と同じで新が旧校舎のオカルト研究部部室、向こうが新校舎内の生徒会室だ
試合は30分後に行われる
新はゲーム開始に向けて柔軟体操を始め、手や足、肩、首をコキコキと鳴らす
『新、あなたは自分で制限を設けたけれど、戦局はどう見ているの?』
耳の通信用魔法陣からリアスの声が入り、新はそれに対して答えを出す
「正直な話、俺を含めてリアス達も桁違いにレベルアップしている。新しく眷属となったゼノヴィアにロスヴァイセ、真の力を解放した朱乃、小猫、ギャスパー、それに
『けれど、あちらもここに来て、眷属がトレーニングをしていると聞くわ。ライザー自身も居城にトレーニング用の施設を用意する程に己の鍛練に向き合い出したらしいわ』
実はライザーも新達やシトリーチーム、バアルチームを見倣って眷属共々パワーアップを
新もその事は何となく理解している
何故なら―――時折連絡用の魔法陣で話し掛け、ライザーはその度に腕の力こぶを自慢してくるからである……
更にその話は一誠にも飛び火しており、度々連絡してくるライザーには両者共に困っていた
苦笑いしながら思い返していた新にリアスは話を続けてくる
『それにあちらのアドバイザーはレイヴェル。あなたの事をつぶさにまで知っているあの子が
そう、今回のゲームでレイヴェルはライザー側のアドバイザー
ゲーム前にライザー達に助言する立ち位置にいる
公式戦ではなく、あくまで両家の交流試合なのでその辺りは格好緩かったりする
寧ろ、新は何でも来いと言う構えだった
あと、向こうにはレイヴェルがいないので『
それではさすがにゲームとしてはどうだろうかと言う事で、レイヴェルが今回だけ代わりとなる助っ人を急遽呼び出した
その助っ人の正体は女性と言う点以外は知らされていない
『皆さま、この度グレモリー家、フェニックス家の「レーティングゲーム」の
ルールは新が提示した条件以外そのまま
新の破壊力を危惧してフィールド破壊の制限をかけるかもしれないと懸念していたが、それは杞憂に終わった
『当時を再現と言うのが目的の1つらしいから。これを見ているお父さまやフェニックスのおじさまもノリノリで合意したに違いないわ』
付け加えてリアスが言うには、このフィールド自体も当時より強化されているので、暴れてもちょっとやそっとでは壊れない造りに変わっているらしい
つまり、力を存分に発揮できる……
ますますやる気が出てきた新は早速全身からオーラを滲ませ、
そして、火竜のオーラを解き放って真『
グレイフィアからのアナウンスも届く
『開始の時間となりました。なお、制限時間は24時間です。それでは、ゲームスタートです』
鳴り響く学校のチャイム、懐かしい雰囲気の中―――ゲームがスタートする
――――――――――――――
旧校舎から飛び出した新は体育館まで駆けていく
当時の戦術そのまま、同じ手で攻め込む
体育館まで来た新は前回同様裏口から入っていく
すると、体育館のコートに女性が4人いるのを確認する
チャイナドレスの『
それにチェーンソーを持った双子の『
配置メンバーがあの時と全く同じ、ライザーも案外ノリノリなのが
ちなみにライザー側の『
チャイナドレスの『
「やっぱり、来たわね。……何だか凄く怪物じみた姿になってない?」
「元からバケモノだったんでな。今日はこの姿でぶっ通しの戦闘だ。悪く思わないでくれよ」
「ええ、まあ、良いじゃない?こういう余興って」
肩を
「前回と違って、今回はあなた独り。いくら強くても、今の私達全員を相手にするのが容易じゃない事を教えてあげるわ!」
雪蘭が拳と足に炎を
その隣ではチェーンソーから危険な音を鳴らしながら、イルとネルが楽しげにしていた
「解体しちゃいまーす♪」
「バーラバラバラバーラバラ♪」
懐かしいフレーズと共に彼女達はチェーンソーを新に向けてくる
「エッチ蝙蝠のお兄さん、私達も強くなったんだからね!」
「あの時みたいに服をバラバラになんてされないから!」
「それは俺じゃなくて一誠のせいだろ……まあ、良いや」
新が次に視線を送るのは棍を持った少女―――『
「お久しぶりですね」
「よっ、そっちも少しは強くなったか?」
「はい、お陰さまで」
そう言って棍を構えるミラ
全員が構えたのを見て、新も構えを取る
炎を纏わせた拳と蹴りは当時よりも磨きが掛かっていたが、新はその全てを受け流す
両側からイルとネルがチェーンソーで斬りかかってくる
しかし、それも新は頑丈と化した腕で受け止め、いなしていく
死角から突いてくるミラの棍も足で受け止め、突き放す
そこから矢継ぎ早に攻めていく雪蘭、ミラ、イルとネルだが……新に
攻撃を繰り返していく内に疲労が溜まる面々
新も少し息が上がっていた
最初から消費促進状態で激しい動きをしていれば当然である
しかし、これは新が
「……とは言え、こっちも反撃するか。スタートからガス欠なんて起こしたら笑い者だからな」
指をコキコキと鳴らし、両手に黒い火竜を纏わせる
濃密な火竜のオーラに危険を察する雪蘭達だが……そこに新の姿は既に無く、ミラの眼前で拳を構えていた
そして、寸止めで突き出される火竜の拳
拳圧の余波は防ごうと構えた棍を破壊し、ついでに彼女の衣服まで吹き飛ばしてしまう
新の脱がし技が炸裂し、ミラは一糸纏わぬ姿となる
「―――ッ!きゃあっ!ま、また……っ!」
ミラは恥ずかしがってその場にへたり込み、あっという間に
新が次に狙いを定めたのはイルとネル
危険な視線を感じた2人はチェーンソーで横薙ぎに斬ろうとする
新はチェーンソーの刃をそれぞれ手で受け止め、火竜の熱でチェーンソーを溶解する
熱が伝導したのか、イルとネルは熱がってチェーンソーを手放し―――その隙に火竜で形成した爪を振り抜く
その刹那、イルとネルの体操着も散り散りとなった
「「ひゃぅんっ!」」
イルとネルは揃って悲鳴を上げ、大事な部分を手で隠す
ミラと同じく小振りなおっぱいが丸見え
そして、その場に残ったのは雪蘭ただ1人だけ
「そう何度も脱がされたりしない―――」
「と思っていたのか?(ブ○リー風に)」
もはや予想通りとも言える展開……新が裏拳を振り抜いた直後、凄まじい風圧が雪蘭を襲い―――彼女のチャイナドレスも吹き飛ばす
風の衝撃で雪蘭の放漫なおっぱいが揺れ、途端に彼女の顔が赤く染まる
「もうっ、あなたはいつまでこんな恥ずかしい思いをさせるのよ……っ」
「この姿はパワーが半端じゃないんだ。本気でやったりしたら消し飛んじまう。お前らの綺麗な体を傷付けるのは嫌だからな、勘弁してくれよ」
新の細かな配慮に雪蘭達は頬を紅潮させる
「もう……あなたはズル過ぎるわ……。あの時と同じで、そんな台詞を言うなんて……」
「「お兄さんのエッチっ」」
相変わらずの威力を発揮した新の天然落とし文句
4人を
「あ、あの……」
「ん?どうした、ミラ?」
「あ、後で……サインください……実はファンです!」
ミラは『蝙蝠皇帝ダークカイザー』のファンになっていた……
――――――――――――
体育館を抜け出し、野球部のグラウンドを目指す新は上空に警戒心を放っていた
前回と同じ流れだとすれば、ここで相手の『
あの時も油断した隙を突かれ、祐斗を撃破されたと言う苦い経験がある
しかし、『
代わりに待ち受けていたのは『
「来たわね」
「ここでしばらく時間を稼がせてもらいます」
「悪いけど、おとなしくしてね?」
「あの時と全く同じ、か……。いや、少し違うか。あの時よりもオーラが増してる。いつもならゆっくりしてやりたいところだが、今回は時間制限を気にしなくちゃいけないんでな。悪いが、速攻で通らせてもらうぜ」
新は全身から高密度のオーラを
火竜の眼が妖しく輝き、その睨みにたじろぐ『
彼女達目掛けて新は火竜を解き放った
大口を開けて迫り来る火竜に対し、シュリヤー、マリオン、ビュレントの3人は散開して
1度は回避したものの、火竜は上空でUターンして彼女達をしつこく追い回す
「くっ……熱い……っ!」
火竜の直撃を避けられても、その熱までは回避する事は出来ない
しかも、その熱は周りの地面や木を溶かす程で―――彼女達の衣服も各所から溶かされていた
その事にようやく気付いたマリオンとビュレントは顔を赤く染め、丸見えになったおっぱいを手で隠す
一方、シュリヤーは元々が
それでも顔を赤らめるだけで動きを鈍らせず、果敢に新の方へ向かっていった
新に渾身とも言える炎の魔力を放つが、新は火竜を纏わせた右拳で粉砕
空いた左手で若干弱めの
掌底をくらったシュリヤーは「ぁんっ」と悲鳴を上げ、後方に飛ばされ尻餅をつく
今の新はパワーが有り余っている為、少しの力でも動きを止めるのに充分だった
「はぁ……やっぱり強すぎるわ」
シュリヤーは両手を上げて降参の意を示す
マリオンとビュレントは距離を取って作戦を練ろうとするが―――そんな暇も無く背後から火竜に呑み込まれてしまう……
火竜が霧散した後、マリオンとビュレントも例外無く裸にされていた
「何度もくらってるけど、やっぱり恥ずかしいわ……」
「もうっ、まだ心の準備が出来てなかったのに……」
マリオンはホンノリと頬を染め、ビュレントは少し膨れた顔で新を見る
「さてと、これで7人抜きか。次は誰だ?こうなりゃ誰でもかかって―――」
「次は私達だ」
そう言って現れたのは鎧を纏った女性『
その隣には大剣を背負った『
「会いたかったぞ、竜崎新。
「見た目は怪物、頭脳は大人だ」
何処ぞの名探偵のキャッチフレーズで飄々と返す新
ここで新は詳細不明の『
「そういや、今回のゲームで出てくるもう1人の『
完全な棒読み……分かりやす過ぎる探り方にカーラマインは不敵に笑う
「ふふふ、すぐに分かるぞ。実はな、こちらに今回心強い助っ人の先生も来ている!レイヴェルさまの欠いた穴を充分に埋めてくれる筈だ!先生!どうぞ!」
そう促されて空中より登場してきたのは、戦闘服を着た栗毛のツインテール少女……つまり―――
「じゃっじゃーん!助っ人は私よ!」
「イ、イリナァッ⁉」
イリナの登場劇に素っ頓狂な声を上げる新
カーラマインがイリナを迎え入れて言う
「こちらは緊急の『
「そうなのか?」
疑問を浮かべる新にピースサインをするイリナ
「うふふ、そうなのよ。2年ぐらい前に某国で出会った悪魔の女性剣士がフェニックス眷属だったなんてね。凄い
「凄いっつーか、もう言葉も出ねぇぐらい呆れてます……」
頭を抱える新にイリナはウインクをする
「ふふふ、悪魔のレーティングゲームに参加してみたかったのよね!今回だけの『
ヤル気満々で量産型の
新も気を取り直し、自前の剣を出して握る
「まあ、良いか。こういうのも交流試合だからこそかもしれねぇし。ただ、覚悟しとけよ?今日の俺は少し自制が効かない状態だからな」
新の全身から黒い火竜が揺らめき、3人の女性剣士に睨みを利かせる
その迫力と危険性に思わず震えてしまう……
新はお得意の
火竜と化した剣戟波は咆哮を上げて突き進み、イリナ達がいた地点を爆破する
イリナは天使の翼を広げて空中に避難、カーラマインとシーリスは左右に跳んで回避していた
いの一番にカーラマインが駆け出し、以前とは違う魔剣を両手に持って剣戟を繰り出す
新も剣でそれを防ぎ、高速の斬り合いを始める
「さすがの剣捌きだ、やはり勝負は剣に限る!」
カーラマインは生き生きとした表情をしていた
横からもシーリスが大剣を振り上げ、新目掛けて振り下ろしてくる
新は咄嗟に左手に火竜を纏わせ、形成した炎の爪で大剣を防ぐ
シーリスの剣戟は以前よりも重みが増しており、炎の爪を懸命に押し込もうとしていた
「お見事です、師匠」
「そっちこそ、腕を上げたな。―――おっと、頭上から天使接近中か」
その言葉通り、新の頭上に回り込んだイリナが聖魔剣を構え―――急降下してくる
「新くんっ、アーメンッ!」と振り下ろされるイリナの聖魔剣に対し、新は漆黒の巨腕を具現化させた
背中から噴き出てくる6本の巨腕、その内の2本がイリナの聖魔剣を白刃取りで止める
残りの4本の腕もカーラマインとシーリスの得物を掴み、彼女達を1ヶ所に投げ飛ばす
新はすかさず剣を逆手に持ち替え―――振り抜いて横一閃の斬撃を放った
カーラマインとシーリスは共に炎の旋風で立ち向かうが……呆気なく突破され―――
「あれ、何か嫌な予感―――」
イリナが言い切る前に斬撃が彼女達の手前で爆発、周辺一帯に砂塵が舞い上がった
自分の裸体に気付いたイリナは「きゃあぁぁぁぁっ!」と悲鳴を上げてその場に
カーラマインとシーリスも力が抜けたようにへたり込んだ
「うぅ……っ、やっぱりこうなるのね……っ」
「イリナ殿をも圧倒してしまうか……私達では到底
「師匠の剣筋、私も見倣いたいものだ」
満足そうに顔を赤らめるカーラマインとシーリス
新は先へ進もうとその場を立ち去ろうとするが、イリナに呼び止められる
「ちょっと待ちなさいよ!新くん!女の子を裸にしておいて、そのままにするつもり⁉」
「今の俺は給油無しのノンストップで走り続ける車みたいな状態だ。これでも結構キツいんだよ。モタモタしてるとガス欠になっちまう」
「うぅ~っ……じゃ、じゃあ、せめて上着だけでも貸して!」
涙目で懇願してくるイリナ
それを見て新は“仕方ない”と言った表情で一旦元の姿に戻り、自身の上着を脱いでイリナに渡す
イリナは直ぐに新の上着を羽織り、ムスッとした顔で睨む
「新くん、いつか天罰が
「おー、そりゃ怖い怖い。そうなる前にさっさと行きますか」
進もうとした矢先、またしても次の刺客が登場する
やって来たのは顔の片側に仮面を着けた女性『
更に猫耳を生やした『
ニィとリィは猫又だが、小猫とは種族が違うらしい
「あの時はやられたけど」
「今度はやられないわ!」
2人の意気込みを聞いて新も闘志を復活させ、再び真『
全身から火竜のオーラを放つ新に猫耳コンビはたじろぎ、イザベラは驚嘆の息を漏らしていた
「……凄まじいオーラだ。あの頃とは天と地ほど変わったな」
「ああ、今の俺の拳、受けてくれるか?」
剣を仕舞い、そう問う新にイザベラは勇ましく笑んだ
「願ってもない事だっ!旧魔王派、ロキ、曹操、
イザベラも全身から濃密なオーラを放つ
軽やかなステップで距離を詰め、拳をユラユラと揺らしながら鋭くフリッカージャブを繰り出す
新はそれらを全て体捌きで避け、掌底をイザベラの腹部に突き出した
イザベラは腕をクロスして防御するが、想定を超えた威力にガードが崩される
「相変わらず良い攻撃だ。誇りにさえ思うよ」
「そいつはどうも。さて、ここらでアレを使うか」
新は全身から更に力強いオーラを滲ませ、次第に
神風の雷を取り込み、会得した形態―――
黒い火竜に雷が走り、先程よりも重圧が増していく
新は瞬時にその場を駆け出し、イザベラの眼前に現れる
反応も出来なかったイザベラは驚き、新が雷炎を纏わせた寸止めの拳を繰り出す
その一撃の余波は後方の地を大きく破壊し、彼女の衣服も木っ端微塵に弾け飛ぶ程だった
イザベラの豊満なおっぱいが拳の余波によってプルンプルンと揺れる
「―――っ!な、なんて威力だ……っ。全く反応できなかったぞ……。しかし、キミはここまで再現するのか?」
「やるからには徹底的にやらねぇとな」
「……フゥっ、相変わらずだな、キミは」
小さく笑って降参の意を示すイザベラ
新は次なる標的―――ニィとリィに狙いを定めた
「リ、リィ……、やばそうだにゃ……っ」
「ニ、ニィ!逃げるにゃぁっ!」
ニィとリィは新の強さに完全に萎縮してしまい、逃亡を図るが……先回りされてしまう
腕を組んで仁王立ちする新
バチバチと雷炎を
「敵前逃亡はダメだろ」
「「そ、そこを許して欲しいにゃぁ……」」
「却下」
命乞い虚しく……ニィとリィも寸止めの拳打によって衣服を吹き飛ばされ、悲鳴を上げて座り込んだ
これで13人を
荒れた息を整える新は近くに残りの敵がいないか見渡す(その間、ニィとリィに石を投げつけられている)
辺りを見回していると―――
ライザーの『
「ついてきてください。―――ライザーさまがお呼びです」
―――――――――――――――
彼女の案内で辿り着いたのは新校舎の玄関前
そこには先導してきた美南風の他、今まで姿が見えなかったライザーの『
「久しぶりだな、ボム・クイーン」
「ええ、ごきげんよう」
「今回は不意打ちを仕掛けてこなかったな。俺を正面から打ち倒すつもりだったのか?フェニックスの涙を使っても構わないぜ」
新の挑戦的な物言いに譜ユーベルーナは不敵な笑みを浮かべる
「ふふっ、私もあれから魔力と魔法に磨きをかけたわ。―――ただでは負けなくてよ?」
「ユーベルーナさま、私もお手伝い致します」
ユーベルーナの隣に並び、全身からオーラを滲ませる美南風
新も雷炎を
負けじとユーベルーナは杖を振るい、四方八方に展開された魔法陣から―――けたたましい爆破の魔力が放たれる
爆破の連続で火竜は形を崩され、遂には
どうやら桁違いにレベルアップしているようだ……
思わぬ成長ぶりに感嘆していると―――突如、結界らしきバリアーが新を包囲する
両手を前に
逃げ場を絶たれた新の周囲に幾重もの魔法陣が展開される
そこから放たれるユーベルーナの爆破の魔力
凄まじい爆破の弾幕に新は呑み込まれてしまう……
爆煙から上へ飛び出す新は全身から
お返しとばかりに先程よりも巨大な火竜をユーベルーナと美南風に撃ち放った
火竜はバチバチと雷を纏い、凄まじい勢いで2人に向かっていく
ユーベルーナは再度、爆破の魔力で火竜を打ち消そうと
一点集中に切り替え、美南風と共に特大の波状攻撃で応戦
しかし、それも火竜の勢いに勝てず―――ユーベルーナと美南風は火竜に包み込まれる
巨大な火柱が雷を
新は地面に降り立つと、首や肩をゴキゴキと鳴らす
一方、ユーベルーナと美南風は無事でいたものの―――やはり衣服を消し飛ばされていた
恥じらう美南風と「負けましたわ」と
ユーベルーナは自分と美南風にフェニックスの涙を振り掛けて傷を癒す
「完敗ですわ。見事としか言いようがありませんわね。さあ、どうぞお進みください」
ユーベルーナが一礼して道を空ける
新は両翼を広げ、一気に新校舎の屋上へ飛んでいった
――――――――――――――
屋上に辿り着いた新
そこで待っていたのは無論、ライザー・フェニックス
「
「それ、ついさっきも聞いた」
「ユーベルーナは修行で1番能力を伸ばしたんだが……そうか、やはりお前には及ばなかったか。……
冷静にそう漏らすライザー
以前のライザーなら眷属の敗北に
今回の戦いはある程度の結果を受け入れている節が見て取れる
上着を脱ぎ捨て、背中から炎の両翼を出現させる
その炎の出量を見て、新は気付いた
“―――以前よりも遥かに濃厚で巨大な炎を展開している―――”
ライザーは迫力あるオーラを解き放ちながら言う
「
ライザーの真意と覚悟を知り、新は警告を
「なるほど、大した覚悟だ。なら、俺も本気でやる事になるが―――良いよな?」
「たとえ負けても、それを
指を突きつけてくるライザーは勇ましく叫んだ
「火の鳥と鳳凰!そして不死鳥フェニックスと称えられた我が一族の業火!その身で受けて燃え尽きろッッ!」
ライザーは炎を巻き上げて巨大な火の鳥と化し、上空へと飛び出していった
新も雷炎を纏って空中に飛び出していき―――お互いの拳がお互いの顔面に打ち放たれる
ぶつかり合った衝撃が波動となって新校舎を大きく震動させる
新校舎の屋上で新とライザーの打ち合いが始まった
一撃を食らう度に高熱が新を痛めつけるが、新の攻撃は炎と雷―――2つの属性を孕んでいるので威力はこっちの方が
しかし……ライザーの頭、腕、足が吹き飛んでも不死身の特性からか、瞬時に再生を果たす
一進一退の攻防を続けていく内に新は理解した
「ライザー、まさか体術を使うとはな!誰から教わった⁉」
「最近はこちらも鍛えているからな!何せ組み手の相手にサイラオーグ・バアルを招いている程だ!ぶつかり合いなら保証付きだろうッ!」
「サイラオーグか!どうりでッ!」
激しく続く打撃合戦
新の拳がライザーの顔面に打ち込まれ、ライザーの蹴りが新の腹部に打ち込まれる
疲弊が溜まっている新だが、この殴り合いが戦闘意欲を掻き立ててくる
ライザーの決死の意に応えるべく、新は全身から噴き荒れる雷炎を一層強めた
大きく裂けた口に絶大な雷炎のオーラを集め、ライザーに向かって一気に放射した
「―――『
ライザーは背中の炎を前面に持ってきて防御しようとするが―――その炎ごとライザーを吹っ飛ばす
「ぐはああああああっ!」
ライザーは絶叫を上げて屋上に落下していく
屋上に叩きつけられたライザーは、大きなダメージを受けながらもヨロヨロと立ち上がった
体を炎で再生させ、目をギラギラと輝かせる
「やはり……さすがだな、
再び背中の炎を莫大に
だいぶ精神を疲弊させたにもかかわらず、まだ向かってくる
その勇姿を見て思わず新も叫んだ
「その意気だ!何度でもかかってこい!俺も強くならなきゃいけねぇんだッ!何十回、何百回でも相手してやるぜぇぇぇええええええッッ!」
両者の拳がゲームフィールド内でぶつかり合った
――――――――――――――
「あ~……っ、しんど……っ」
ゲームフィールドから戻ってきた新は疲弊しきっていた
結果は新の全勝と言う形で交流試合が終わった
スタートから体に負担をかけ過ぎたせいか、新の全身は酷い筋肉痛に
歩く度にズキズキと体が
そんな状態の新に報復の手が……っ
指で小突かれ「ぐあぁぁぁっ!」と絶叫を上げる新
報復の犯人は―――新の上着を着たままのイリナだった
「イ、イリナ……っ⁉」
「ふっふっふ~ん♪新くん?いつか天罰が下るって言ったけど、今ここで私が天罰をあげちゃうっ!」
「ま、待て……!今はマジでやめろ……!話せば分かる……!」
「問答無用!えいえーい!」
「あぎゃぁぁあああああっ!リアスッ、止めてくれ……!」
イリナの報復になす
新はリアスに助けを求めるが、彼女から返ってきた答えは―――
「1回だけ、私もつつかせてもらえるかしら?こんなに弱った新、そう簡単に見れないし」
悪魔の
「あらあら、リアスだけズルいですわ」
更に増加……っ
「お、お前ら……!薄情も―――ギャイィィィィイイイイイイイイッ!」
その後、新は数日に
次回は地獄の兄弟をメインとした話になります!
前後編になるかも⁉