ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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ようやく書き上げました!

そろそろ12巻編もエンドロールに突入しそうです!


魔獣騒動決着!闇皇&赤龍帝VS神風

「メインイベンターの登場だ。俺達は先に引き上げさせてもらおう。行くぞ、相棒」

 

新と一誠の登場を確認した幽神正義は弟の悪堵を連れて、その場から去ろうとする

 

「待ってくれ、幽神!」

 

正義を呼び止めたのは一誠だった

 

「何だ?」と簡素に返事する正義

 

「……お前がアーシアを、皆を守ってくれたんだよな?」

 

「…………単なる気紛れだ」

 

正義は素っ気なく答えて悪堵と共に去っていった

 

素直じゃない答え方だが、幽神兄弟がグレモリー眷属を守ったのは事実

 

一誠は気を引き締め直して神風の方に集中する

 

『とは言ったものの、正直キツいよな……。こっちは2人ともダメージと疲労が溜まってる』

 

その通り……新と一誠は神風が仕向けた闇人(やみびと)の軍勢に足止めされ、ここまで強行突破してきたのだ

 

曹操との戦いが終わった直後に闇人軍の追い打ち、疲労は必至である

 

対して神風はノーダメージ、そこから導き出される答えは単純明快だった

 

『……一誠、長期戦で行けば詰まれる。短期戦で一気に勝負を仕掛けるしかない』

 

(むし)ろ、そっちの方が分かりやすい。頭を使った戦略はもうゴメンだ。残った全力で神風をぶっ倒す―――ただそれだけだ!』

 

『……ああ、その通りだ』

 

アイコンタクトで意思を伝えた2人に対し、神風は憎悪のオーラを解き放っていた

 

「決着をつけるとかさぁぁぁぁ……っ。それ本気で言ってるワケェ?んなの無理無理っ、分かんないのかなぁ?キミ達はさっきまで『禍の団(カオス・ブリゲード)』のクソ英雄くんと戦ってぇ、更にボクがけしかけた兵隊どもと戦ってボロボロだっつーの!全身傷だらけの血だらけ、魔力もカラッポ寸前、そんな体でノーダメージ状態のボクに勝てるとでも思ってんの⁉無理に決まってんだろ!ホンット感情論精神論だけで突っ走る単細胞な能無しは大っ嫌いなんだよっ!万に1つどころか、億に1つもお前らに勝ち目なんかねぇんだよッ!だからさぁ、いい加減にぃぃぃ―――」

 

神風の左腕にバチバチと雷が(ほとばし)り、1本の極大な矢を生み出す

 

矢の先端を新と一誠に向け、憎悪に(まみ)れた一言と共に解き放った

 

「―――死んじまえェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッ!」

 

神風が撃ち出した(いかずち)の矢は―――即座に無数に分裂し、四方八方から降り注ぐ

 

真『女王(クイーン)』状態と言えど、疲弊しきっている新と一誠

 

それでも目の前にいる魔獣騒動の黒幕を放置しておくわけにはいかない

 

新と一誠は痛む体に鞭を打ち、雷の矢を回避していく

 

……と言っても、疲弊した状態では完全に(かわ)し切れるわけがなく、度々(たびたび)手や足に被弾してしまう

 

更に神風も背中や両足から火を噴かせ、目にも止まらぬ速度で何度も斬りつけてくる

 

雷の矢の豪雨に神風の高速剣戟

 

それでも新と一誠は怯まず立ち向かっていった

 

新が背中に漆黒の巨腕を6本出現させ、降り注いでくる雷の矢を撃ち落とす

 

幾重にも放った漆黒の波動が次々と爆発を生み、神風の移動先を徐々に(せば)めていく

 

Star(スター) Sonic(ソニック) Booster(ブースター)‼‼』

 

そこへ一誠がトリアイナ版『騎士(ナイト)』の能力で素早く距離を詰め、瞬時にトリアイナ版『戦車(ルーク)』の腕を形成

 

Solid(ソリッド) Impact(インパクト)

Booster(ブースター)‼‼』

 

肥大化した拳で神風に殴りかかり、肘の撃鉄を打ち鳴らして威力を底上げする

 

一誠の一撃をくらった神風は後方に飛ばされながらも体勢を立て直し、自身の周りに雷の球体を幾重にも出現させる

 

その球体は形を歪ませ、次第に怪物の姿へと変貌していく

 

ゴツいトゲに覆われた獣、口からドリル状の舌を生やした獣、鋭い牙が生え揃った獣と様々なタイプの怪物が新と一誠を睨み付ける

 

「ウザってぇんだよぉっ!カスどもがァァァァァァァアアアアアアアッ!」

 

怒号を放つ神風は両翼から雷を幾重にも放出

 

その雷は意思を持ったかの如くうねり、鋭利な形となった

 

神風が右手を突きだしたのを合図に、雷獣(らいじゅう)の群れと幾重もの雷が2人に襲い掛かる

 

一誠はトリアイナ版『戦車(ルーク)』の両腕で防御を固めるが……雷獣の群れの突進に押され、装甲が砕かれてしまう

 

更に雷の凶刃(きょうじん)が伸びてきて、新と一誠を切り刻んでいく

 

新は魔力を流した剣で雷の刃を切り払い、一誠も散弾式のドラゴンショットで雷獣の群れを消し去るが―――神風は既に次の攻撃を整えていた

 

禍々(まがまが)しい牙が生え揃った胴体状の口が開き、そこからまた雷の魔獣が解き放たれた

 

ただし、今度のは3つの首を持った異常なまでに巨大な魔獣だった……

 

凄まじい咆哮を上げて襲い掛かってくる3つ首の雷獣

 

新は右手に黒い炎を集めて火竜を形成し、一誠は両翼から砲口を展開した

 

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大口を開け、牙をむき出しにして襲い掛かる雷の魔獣

 

新と一誠は同時に砲撃を放った

 

「「いっけぇぇぇぇえええええええええっ!」」

 

Fang(ファング) Blast(ブラスト) Booster(ブースター)‼‼』

 

黒い火竜と赤い砲撃が一直線に飛び出し、神風の雷獣と衝突

 

極大の閃光と火花を(ほとばし)らせ、周囲の地を破壊していく

 

新と一誠の二重砲撃は神風が放った雷獣の頭を(つらぬ)いた

 

…………だが……貫いたのは“3つの首”の内の“2つ”……っ!

 

雷の魔獣は残された1つの首を(かて)に進行を続け、2人の眼前まで迫った……!

 

そして、極大の稲光(いなびかり)と共に苛烈な爆発、膨大な爆風と衝撃波が巻き起こる

 

受け入れるようにその爆風を浴びる神風

 

「はいっ、赤龍帝(せきりゅうてい)闇皇(やみおう)―――終了(シューリョー)~♪」

 

愉悦に浸りきった声音を発し、哄笑する

 

結界の中に閉じ込められたリアス達には目の前の光景を見る事しか出来なかった

 

大きな絶望がのし掛かる中、次第に爆煙(ばくえん)が晴れてくる

 

神風は勝利確定とばかりにリアス達の方を向こうとした―――その時……

 

“ゾクッ……”

 

神風の背中に嫌な感覚が走った

 

背中に突き刺さる視線、気配

 

“まさか……”

 

“そんな筈は無いよね……?”

 

とても信じられないような考えを振り払おうとするが、頭にかじり付いた考えが離れてくれない

 

恐々としながら後ろを振り向く……

 

その視線の先に―――赤龍帝(イッセー)闇皇(アラタ)がいた

 

鎧は大きく破損、体中から血を流しているにもかかわらず……瞳に宿る戦意の炎は一切薄れていなかった

 

あり得ない事態が起きた事に神風から余裕の気配が消え、遂には震えまで生じてきた

 

「……ねえ、ナニコレ?あり得ないんだけど……?おかしいよね……っ?始まる前から傷だらけなんだよ、あいつら……?なのにさぁ、なんで立ってられるわけ……?いやいやいや、どう考えてもおかしいって……。回復も再生もしてないのに、あの攻撃をまともにくらって、立てるわけないじゃん……っ。ねえ、何の冗談……?」

 

自分の目の前にいるのは明らかに死に体寸前とも言える状態の2人

 

そんな2人に自分がビビっている……怯んでいる……戦慄している……っ

 

無意識に後ずさる足、冷や汗が噴き出る背中

 

今まで見た事が無い人種に神風は恐怖と疑問の念を抑えきれなかった

 

「なんで……ねえ、なんで……⁉なんでお前らはボクを真っ直ぐ見据えてくるの……⁉なんで血をドボドボ流しているのに倒れないの……⁉なんでお前らの目は死んでないの……⁉ねえ、ねえ……っ、なんでだよ……っ⁉―――なんでなんだよォォォォォォォオオオオオオオオオオッ⁉」

 

絶叫と共に神風は左腕から再び雷の矢を幾重にも撃ち放った

 

迫り来る雷の矢に対し、まず新が剣に右手から生み出した火竜を纏わせ―――雷の矢を切り払う

 

取りこぼした雷の矢は一誠がドラゴンショットで打ち消す

 

一瞬で雷撃を打ち消した新と一誠は神風に向かって言う

 

「……お前には分からねぇだろうな、神風。今まで計画と計算でしか生きた事がねぇから。不条理な活力にビビっちまう」

 

「それに俺も新も、今まで仲間と共に戦って、生きてきた。てめえは……誰かを利用するしか能が無いから、いざって時に弱さが出てくる。世の中にはなぁ、てめえの計算じゃ計れねぇパワーがあるんだよ……」

 

新と一誠の言葉に神風は声を荒らげた

 

「仲間と共に生きてきた……?誰かを利用するしか能が無いぃ……?仲間なんてモノが何処にあるんだよ⁉所詮それは他人でしかないじゃんか!見ず知らずの他人を仲間と呼べるわけないだろッ!他人なんて、利用するだけの存在じゃねぇか!他人なんか信じたって、結局裏切られるのがオチなんだよっ!……だって、そうだろっ⁉キミ達だってグレモリーのお姉さんに、眷属に、冥界に利用されてるだけかもしれないんだよ⁉なんで手放しに他人を信用できるんだよ⁉そんなのバカ丸出しじゃないかっ!……なあ、そんなモノ捨てろよ……っ。信頼とか、仲間とか、根拠の無いモノを信じるなよ……っ。そんなモノあったって、何の得にもなりゃしない……っ。だからぁ……切れよ……っ。切り捨てろよ……っ。―――そんなもんはクソの役にも立たねぇんだよ……ッッ!」

 

必死とも取れる神風の言葉

 

それを聞いた新と一誠は揃えて一蹴した

 

「「……可哀想な奴だな、お前って」」

 

その言葉を聞いた瞬間、神風は怒りと疑問の声音を上げる

 

「……はぁ……っ?可哀相……っ?ボクが……っ?」

 

「……ああ。何が遭ったのか知らねぇけど、お前には心の底から信じきれる仲間(ヤツ)がいないから、自分以外の奴を信じる事が出来ないから―――利用するって手段しか思い付かなくなっちまったんだろうな……」

 

新が真っ直ぐな目で神風を見据える

 

「独りでいれば、さぞかし楽だろう。気を遣わずに済むだろう。けどな……その分、哀しみも苦しみも全部自分にのし掛かってくるんだよ……。その重圧は独りじゃ決して耐えられない―――いずれは押し潰されていく……。今のお前みたいにな……」

 

「今のボクみたいに……?負け惜しみ言わないでくれるかな⁉今のボクの何処にそんな不安要素があるって言うのさ⁉ボクは今や最強の闇人(やみびと)だ!『初代キング』が消えたって、他の駒がいなくたって、ボクは勝てる!キミ達みたいなゾンビの成り損ないに負けるわけがない!ボクの方が圧倒的に有利!そこにいる誰もがボクに勝つ事なんて出来ないッ!そう、ボクは強いんだ!最強なんだッ!」

 

神風は必死に反論するが、一誠も真っ直ぐな目で見据えてくる

 

「……確かにお前は強いよ。独りになったってのに、これだけの力を持ってんだ……。羨ましいよ……。―――でもなぁ、今が強くても、お前は今より強くなれねぇと思うんだ」

 

「…………はぁ……っ?」

 

「一緒にいてくれる仲間がいるから頑張れる。一緒に戦ってくれる仲間がいるから、そいつらの為に戦える。そういう気持ちとか、想いとか、色んなものが混ざり合って―――強くなれた時の実感が得られるってもんじゃねぇのか?けどよ……今のお前には何がある?散々他人を利用してきただけのお前には何が残ってる?―――何も残ってねえじゃねぇか」

 

一誠の言葉に神風は何も返せなかった……

 

常に誰かを利用し、捨て駒にし、自分以外の誰も信じなかった神風

 

そんな人物の周りには……何も無い……

 

信頼も、絆も、仲間も、何も無いカラッポな周り……

 

神風はワナワナと震えを抑えられず激昂した

 

「黙れ……黙れぇ……っ。黙れダマレだまれ黙れ黙れダマレだまれ黙れ黙れダマレだまれ黙れダマレだまれ黙れッッ!黙れェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエッッ!」

 

激昂した神風は巨大な雷獣を放った

 

解き放たれた雷の魔獣は大きく口を開き、新と一誠を噛み砕こうと迫り来る

 

「何も無いからって何だ⁉そんなんでボクが負けるとでも思ってんのかよ⁉違うね!負けるのはお前らだッ!ボロボロの紙クズみたいなお前らが負けるんだよッ!意味不明な感情論精神論で突っ走って生きてるだけのお前らに何が出来るッ⁉」

 

雷の魔獣の咆哮が近付いてくる……

 

それでも新と一誠は全く怯む様子を見せない

 

新は1歩前に出た

 

「仲間がいたから、仲間といれたから、俺も一誠もこれまで以上に強くなれた。俺達の人生が―――俺達の強さの象徴と証明だッ!それをテメェに叩き込んでやるッ!」

 

新は再度背中から漆黒の巨腕を展開し、迫ってきた雷の魔獣を正面から受け止める

 

魔獣から(ほとばし)る雷をその身に浴びるが、それでも戦意を消さない

 

「……俺はこの力が怖かった……。呪われた竜の力を持つ俺自身を恐れた……。いつか喰われるんじゃないかってビビってた……。けど、今はもう恐れない!一誠が、リアスが、朱乃が、皆が俺を迎え入れてくれた!暗闇の底から引き上げてくれる仲間がいる!だから、俺は―――遠慮なく、この力を振るえるッ!」

 

ギュオォォォォォォォォオオオオオオオ……ッ!

 

不気味な音が新の口から発せられた刹那、驚きの光景が目に入る

 

―――“先程の雷獣が揺らぎ、喰われていく”―――

 

そう、新は『初代キング』の時と同じように神風の雷を喰らおうとしていた

 

信じられない光景に度肝を抜かれる神風

 

雷の魔獣は徐々に体積を無くしていき、遂にはその全てが新の口へと吸い込まれていった

 

ゴキュッと喉を鳴らすと、新の体に異変が生じる

 

まずは全身から黒い火竜のオーラが滲み出し、そこから更にバチバチと雷が走る

 

噴き出す炎、(ほとばし)る雷

 

異なる2つの属性が混ざり合ったオーラを発する新は再び神風を見据えた

 

「ここからは俺の……いや―――俺達のターンだッッ!」

 

「何処ぞの星を護る天使にでもなったつもりか!このクソがァァァァァアアアアアアッ!」

 

怒り狂う神風は再び雷の魔獣達を解き放つ

 

縦横無尽に飛び交い、新を喰い殺そうとする

 

しかし、新は目にも止まらぬ速さで雷の魔獣達を翻弄

 

(ほとばし)る雷と共に消えては現れ、消えては現れを繰り返す

 

そして、空を切るような音を皮切りに―――雷の魔獣達は両断され、霧散していった

 

神風が左腕から雷の矢を放とうと構えた刹那、新は瞬時に距離を詰めた

 

「な……っ⁉」

 

仰天する神風を前に、新は両の拳に火竜を纏わせ―――神風のアゴを打ち抜いた

 

次に新は足にも火竜のオーラを流し、神風の脳天目掛けて蹴りをくらわせる

 

大きく鈍い音を響かせる強烈な打撃

 

しかし、それだけでは終わらなかった……!

 

新の打撃でよろめいた神風に強大な雷が襲い掛かっていった

 

「アギャァァァアアアアアガガガガガガガガガガガガガガガガッッ!」

 

火竜を纏わせた強烈な打撃、その直後に雷の追撃

 

新はリュオーガ族に伝わる“竜の呼吸法”を会得し、神風の雷を取り込んでしまったのだ

 

新の猛攻は止まらない……神風の腹に火竜を纏わせた拳打を繰り出し、蹴りを繰り出し、乱撃乱舞を次々とくらわせていく

 

その都度、火竜から発せられる雷撃が神風を痛めつける

 

リアス達は新の猛攻ぶりにただ一言、“凄い……”としか言えなかった

 

「俺だって……俺だって負けてられるかァァァァァアアアアアアッ!」

 

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新の攻勢に当てられた一誠も気合いを入れて吼え、籠手から何度も音声を響かせる

 

吹き飛ばされてきた神風に拳を構え、左手を肥大化させる

 

「ギィィィィィィッ!調子に乗るんじゃねぇェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエッッ!」

 

神風は右手から伸びる刃に雷を纏わせ、更に巨大な雷の刀身を生み出す

 

神風が雷の刀身を突き出し、一誠は肥大化させた拳で迎え撃った

 

ガキンッ!と衝突し合った刃と拳から火花が散り、撃鉄を打ち鳴らした衝撃の余波が吹き荒れる

 

「……まだだッ!これだけじゃ終わらねぇッ!もっとだ!もっともっと力を高めろォォォォォォォオオオオオオオオオオッ!」

 

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「まだまだァァァァァアアアアアアッ!」

 

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Solid(ソリッド) Impact(インパクト)

Booster(ブースター) Rush(ラッシュ)‼‼』

 

一誠の叫びに呼応したのか、今まで聞いた事の無い音声が籠手から発せられた

 

その直後、赤いオーラがもう片方―――右手にも撃鉄が出現した

 

「―――ッッ⁉もう片方の腕にも撃鉄……⁉バカな!だって、その技は単発式の筈―――」

 

「言っただろう?俺達はこれまで以上に強くなれたって!赤龍帝()闇皇(アラタ)を―――舐めんじゃねぇぇぇぇええええええええええええええええっ!」

 

吼える一誠は撃鉄を何度も打ち鳴らし、神風の刃を拳打で押し戻していく

 

極大の打撃が何度も何度も繰り出され、遂には神風が出した雷の刀身を砕いた

 

砕け散ったのを機に、一誠は神風に肥大化した拳の乱打を撃ち込む

 

1発だけでも強力なソリッドインパクト

 

それが連続で繰り出され、神風の体に深々と突き刺さる……!

 

あまりの威力に神風の体はどんどん歪んでいき、装甲も端々から剥がれ落ちていく

 

ドゴンッッ!と1番大きな音を叩き出し、神風は後方に吹き飛ばされ、激突したビルを倒壊させる

 

クリティカルヒットを決めた一誠の拳が元のサイズに戻り、ゼェゼェと息を切らす

 

「この土壇場でまさかの新技(しんわざ)かよ……」

 

「お前だってヒトの事を言えないだろ……」

 

「しっかし、ありゃどう見てもオーバーキルだな」

 

「へへっ、差し詰めソリッドインパクトの強化版―――クリムゾンインパクトってところだ」

 

新しく発現した技のネームを決めた一誠

 

クリムゾンブラスターと並ぶ決め技のようだ

 

だが、まだ勝負は終わっていない……

 

倒壊したビルを払い除けた神風は怒号と共に雷のオーラを爆発させる

 

「ふ、ざ、け、る、なァァァァァアアアアアアッ!……ボクは……ボクは負けないッッ!負ける筈が無いんだッ!やっと、やっとクソみたいな人生から脱却できたのに、またゴミ溜めみたいな生活に戻されるなんて嫌だッッ!許さないッ!許さないッッ!ボクの邪魔をする奴はッ!ボクのハッピーライフを壊そうとする奴らはッッ!―――絶対ブチ殺すッッ!殺してコロシテころして殺してコロシテころして殺してコロシテころして殺してコロシテころして殺してェッ!殺してやるァァァァァアアアアアアッ!」

 

もはや激情に取り憑かれた神風

 

周囲に巨大な雷の魔獣達を具現化し、背中の両翼と胴体上の口に全ての力を注ぎ込む

 

大気と地が震える程の質量を集め、最後の砲撃準備を整えてきた

 

この一撃で何もかも消し飛ばすつもりだろう……

 

新と一誠も迎撃の準備に取り掛かった

 

一誠は再びクリムゾンブラスターの砲身を出現させ、赤いオーラを集める

 

新は大きく裂けた口元に炎と雷のオーラを集めていく

 

螺旋状に描かれる炎と雷、そして赤いオーラ

 

新と一誠も最後の砲撃を整えた

 

「決めるぞ、一誠!」

 

「ああ!これで終わりにしよう!神風(あいつ)の野望ごと消し飛ばそうッ!」

 

「死に腐れェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエッッ!」

 

神風の絶叫が引き金となり、巨大な雷の魔獣達と超極大の雷撃が解き放たれた……!

 

新と一誠も決死の覚悟で撃ち放つ……!

 

「―――『雷炎竜の咆哮(ライトニング・ブラスト)』ォォォォォォォオオオオオオオオオオッ!」

 

「クリムゾンブラスタァァァァァアアアアアアッ!」

 

赤龍帝の紅きオーラ、闇皇の雷炎(らいえん)のオーラが一挙に放たれた

 

莫大な質量を持つ2つのオーラは神風の放った魔獣の群れと超雷撃を一気に呑み込み、そのまま神風をも巻き込んでいく

 

信じ難い事態が連続して起きる……そんな事象を目の当たりにした神風は溜まらず絶叫を張り上げた

 

「……ウソだ……!ウソだウソだウソだウソだウソだウソだ!ウソだァァァァァアアアアアアッ!なんで、なんでボクが……負けなきゃならないんだよぉぉぉ⁉なんでボクが……ボクだけが!こんな目に遭わなきゃいけないんだァァァァァアアアアアアッ⁉」

 

 

――――――――――――――――

 

 

砲撃が止み、新と一誠は疲弊しきっていた

 

今までのダメージに加え、最後の最後で発現した新技の消費は並大抵のものじゃなかった

 

もはや、まともに立つ力さえ残っていない……

 

だが、それ以上に―――喜ばしい事態があった

 

先程まで対峙していた神風の姿が何処にも見当たらない

 

消滅したのか、空の彼方へ吹き飛ばされたのか定かではないが……その場にいない事は確かだった

 

「……勝ったんだよな、俺達……?」

 

一誠が(ほう)けた口調でそう言い、新と顔を見合わせる

 

それに対して新は「……ああ、勝ったんだろ」と小さく呟いた

 

その証拠に神風が張っていた結界が解かれ、リアス達は外に解放される

 

それを見た一誠は今まで溜まっていたモノを吐き出すかのように叫んだ

 

「……勝った……っ。俺達、勝ったんだ……!ヤッッタァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!」

 

一誠は大いに(はしゃ)ぎ回り、思い余って新の背中をバシバシと叩く

 

「やった!やったやったやった!俺達、勝ったんだッ!あの神風を倒したんだよな⁉なあ⁉」

 

(いて)ぇよ……っ、バカ。死んだかどうか分からねぇが……少なくともこの場から神風の気配が消えたのは確かだ。とりあえず―――喜んで良いんじゃね……?つーか、俺も嬉しい……!」

 

新も嬉しさを隠せずに笑みを見せる

 

遂に冥界中を恐怖に(おとしい)れた魔獣騒動が終結を迎え、その元凶たる神風を倒した……!

 

戦闘の疲労と嬉しさのあまり、大の字に倒れる新と一誠

 

『相棒、良い戦いだった。まだまだ足りない部分もあるだろうが……それでも良い戦いだった』

 

ドライグが賛辞を送ってくる

 

「なんだよ、急に」

 

『……いや、お前はこれで良いんだろうな』

 

「……何だか、元気ないじゃないか」

 

『……お前の体を再生するのに俺は色々と使い過ぎてしまった……もうじき、意識を失う……』

 

「……な、なんだよ、そりゃ!どういう事だよ!なんで話してくれなかった⁉」

 

『……安心しろ……俺がいなくても赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)が機能するようにはしておいてやる。……だから……最後に良い戦いが見られて……良かったよ……』

 

ドライグの声がどんどんかすれ、小さく弱くなっていく

 

「待ってくれよ!……俺、まだ……お前がいなきゃ何も出来ねぇよっ!」

 

『出来るさ……お前には……仲間が……る……。……俺はもう必要……ない……さ』

 

既に声が所々(ところどころ)聞こえなくなってきている

 

一誠は涙が止まらなかった

 

ボロボロと流れ、鼻水も出てくる

 

それでも脳裏に次々と(よみがえ)るドライグとの思い出が溢れて、どうしようもなかった

 

ドライグは最後にハッキリとした口調で言った

 

『俺の相棒―――イッセー、ありがとう。楽しかったぞ…………――――』

 

「ドライグ……?なあ……返事をしてくれよ……なあ、相棒……」

 

問いかけても返事をしない宝玉

 

“もう、喋ってくれないのかよ……?”などと思っていた一誠の耳に入ってきたのは―――

 

『…………グゴゴゴゴ』というイビキだった

 

「……あれ?い、いびき?ね、寝てる……?」

 

「ドライグ、次元の狭間と今の戦いで力使って疲れた。寝てる」

 

一誠の籠手にそっと触れてくるのはオーフィス

 

「……オーフィス?って、ドライグは寝てるだけなの⁉ドライグ!……バカ野郎……ッ!バカ野郎……っ!」

 

一誠は籠手を抱きながら泣くしかなかった

 

仲間達の気配がどんどん近付き、戦いと長く険しかった試験がようやく終わりを迎えた

 

「帰ろうぜ、オーフィス。今度こそ―――皆で」

 

「我、赤龍帝の家に帰る」

 

オーフィスが浮かべていたのは可愛らしい笑顔だった

 

―――“やっと戦いが終わった”―――

 

喜ばしい現状を噛み締め、駆け寄ってくるリアス達の歓声を浴びながら(しばら)く安堵に浸る2人だった―――が、万事良く決めたところで一誠はとある事を思い出してしまう

 

「…………あ、学校の中間テスト、どうしよう……」

 

「……もう、そっちは死亡確定で良いんじゃね……?」

 

そこで一誠は絶望し、新は悟りを開いたような声音で言った




今回の話で出てきた新と一誠の新技!

新は完全にモード雷炎竜……っ。これは前々から考えていました

一誠は連続のソリッドインパクト!遠距離だけじゃ勿体無いから、近距離用の必殺技も作っちゃいました!

さて、次回は魔獣騒動後の動向を書いていきます!

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