ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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身分証明って大事だよね!

「快適」

 

空を飛ぶ禁手(バランス・ブレイカー)状態の一誠、その背に乗るオーフィス

 

そして闇皇(やみおう)姿の新は『超獣鬼(ジャバウォック)』を倒し、その後の事をグレイフィアに任せて都市部の方に向かっていた

 

街の至る所から煙が上がっており、建物や道路の破損が視界に飛び込んでくる

 

人気(ひとけ)が無いのは都市部全域に避難警報が発令されたからだろう

 

『この混乱に乗じて旧魔王派の残党や闇人(やみびと)などが街で暴れていたとかは考えられないか?もしくは英雄派か』

 

「なるほどな。その通りかもしれない」

 

「……西の方」

 

一誠の背中にいるオーフィスがそう告げてくる

 

「西?」

 

「あっち、あのアーシア、イリナと言う者いる」

 

2人はオーフィスが示した方向に翼を羽ばたかせていった

 

その方角に数分程進んだ時、懐かしいオーラを感じ取る

 

少しの間しか離れていなかった筈なのに、酷く長かった気もしてしまう

 

更に進んだ先の煙が上がっている場所に複数の人影が確認できた

 

空から懐かしい顔ぶれを確認した新と一誠は中央に降り立つ

 

皆も空を飛んできた新と一誠の姿を捉えていた

 

「兵藤一誠!ただいま帰還致しました!」

 

「ただいま」

 

大声で叫ぶ一誠と普通に言う新

 

しかし、周囲を見渡すと―――皆は狐につままれた様にキョトンとしていた

 

英雄派のジャンヌも2人をキョトンと見ている

 

『お前らだと認識していないんじゃないか?』

 

「そんな事あり得るのか?」

 

「……と、とりあえず、俺達らしい事を言ってみるか」

 

一誠は兜のマスクを収納し、顔を見せる

 

「えーと、おっぱい!グレートレッドに乗って帰ってきました!……ほら、新も一緒に―――」

 

「嫌だ」

 

「即答すんなよ!おっぱいって言うだけじゃねぇか!お前だと認識されなくても良いのかよ?」

 

「そんなふざけた身分証明をするぐらいなら、ここから消えた方がマシだ!」

 

「このままじゃ何も話が進まねぇんだぞ!文句言うな、オッパイザー」

 

「その名を口にすんじゃねぇぇエエエエエエエエエエエエッ!」

 

“オッパイザー”呼ばわりに激昂して一誠を殴ろうとした瞬間だった

 

「新!イッセー!」

 

「イッセーさん!新さん!」

 

「新さん!イッセーくん!」

 

「イッセーくん!新くん!」

 

「新先輩!イッセー先輩!」

 

「新!イッセー!」

 

「新くん!イッセーくん!」

 

「新さん!イッセーくんですか!」

 

「竜崎くん!兵藤くん!」

 

「竜崎、兵藤、生きてたのかよ⁉」

 

「新さん、一誠さん、お久しぶりです」

 

「渉、冷静に挨拶してる場合⁉少しは驚きなさいよ!」

 

リアス、アーシア、朱乃、祐斗、小猫、ゼノヴィア、イリナ、ロスヴァイセ、ソーナ、匙が一斉に2人の名を叫び、渉と祐希那は久々の夫婦漫才発動(笑)

 

“おっぱい”と“オッパイザー”で確認を取らないと気付かれない事に新と一誠はショックを受けるが―――新のもとに小猫と朱乃が、一誠のもとにアーシアがそれぞれ駆け寄って抱きつく

 

「イッセーさん!イッセーさんイッセーさんイッセーさんイッセーさん!」

 

「あらら、アーシア。大泣きしちゃって。待たせてゴメンな」

 

「先輩……おかえりなさい」

 

「……お願い。私を置いていかないで……あなたのいない世界なんてもうゴメンなのだから……」

 

「心配かけて悪かったな、朱乃、小猫」

 

「うん、私は泣いてないぞ。私が選んだ男は死んでも死なないからな」

 

「何よ!泣いてるじゃない!私は無理せず泣くもん!うえぇぇぇんっ!」

 

ゼノヴィアとイリナは涙ぐんでいる様子だった

 

「やはり、無事だったのですね。さすがです」

 

ロスヴァイセも新と一誠の帰還を喜んでいた

 

リアスが涙を流しながら新のもとに歩み寄り、頬に手を当てて一言漏らした

 

「……よく、帰ってきたわね」

 

新は頬に触れる最愛の(ヒト)の手に自分の手を重ねて言った

 

「当たり前だろ。お前や―――仲間の皆がいる所が俺の生きるべき場所なんだ」

 

ベチンッ!ベチンッ!

 

新と一誠の頭を叩く匙、彼もまた大号泣していた

 

「うわぁぁぁぁぁっ!このバカ野郎どもォォォォッ!俺はな!お前らが死んだって聞いたから、俺はなぁぁぁぁっ!」

 

「うるせぇっ、鼻水垂らし」

 

とりあえず匙を軽く殴る新

 

「グレートレッドらしきドラゴンが上空に出現した時、もしやと感じたのだが……。さすがだな」

 

「やはり、生きていたか。そうでなければオレの好敵手は名乗れん」

 

サイラオーグが少し離れたところから手を上げて微笑み、大牙はフムフムと頷いていた

 

「あっ!」

 

突然声が上がり、そちらに顔を向ければ―――ジャンヌが虚を突かれたかのような表情を浮かべていた

 

「悪いね。イッセーくんと新くんの登場で隙だらけだったからさ、子供は解放させてもらったよ」

 

離れた位置で祐斗が小さな男の子を抱えていた

 

「……お帰り、イッセーくん、新くん。キミ達のお陰でこの子を救えたよ。さすがヒーローだね。キミ達が変わりなしで本当に良かった。グレートレッドと共に来るなんてさすがに読めなかったけどね」

 

「……まさか、シャルバの奸計(かんけい)から生き残るとはね。恐ろしいわ、赤龍帝」

 

一誠を激しく睨み付けるジャンヌは次に新へ視線を向ける

 

「アーくんも生きてて良かった♪もう会えないかと思って心配してたのよ」

 

「そりゃどうも。―――で、どうする?俺達とやるのか?」

 

新がそう挑発すると、ジャンヌは(ふところ)からピストル型の注射器―――『魔人化(カオス・ブレイク)』とフェニックスの涙を取り出した

 

「2人とも、気を付けて!あれは神器(セイクリッド・ギア)能力を格段にパワーアップさせるものだ!」

 

祐斗が新と一誠にそう説明を飛ばし、ジャンヌは首もとに針を向ける

 

「……2度目の使用は相当命が縮まるけれど、使わざるを得ないわ」

 

そう口にした後、ジャンヌはフェニックスの涙で傷を癒してから針を首に射ち込んでいった

 

次の瞬間、ジャンヌの体が大きく脈動する

 

ジャンヌの体から放たれる重圧が増していき、顔に血管が次々と浮かび上がっていく

 

ジャンヌは体をよろめかせながらも笑う

 

「……これで良いわ。力が高まっていくのが分かる!」

 

彼女が吼えると同時に足下から刃が無数に出現していく

 

出現した聖剣がジャンヌ自身を覆っていき、眼前に君臨したのは―――聖剣で形作られた1匹の巨大な蛇

 

頭の部分にジャンヌが上半身だけ露出しており、その姿は蛇型の女モンスター『ラミア』を彷彿とさせていた

 

「またアレですか。あの状態は厄介ですよ。禁手(バランス・ブレイカー)のドラゴンを使っていた時よりも攻守とスピードが上がりますからね」

 

先程までジャンヌと戦っていた渉がそう言う

 

『うふふ、この姿はちょっと好みではないけれど、強くなったのは確実よ。曹操が来るまでの間、これで逃げさせてもらうわ!』

 

「おい、逃げる気かよ!」

 

「ここまで来たら逃がさねぇよ!」

 

一誠は脳内の妄想力を高めて、ジャンヌに向けて久しぶりの夢空間を展開させた

 

「さあ、久しぶりに行きましょうか!『乳語翻訳(パイリンガル)』!」

 

一誠はジャンヌの胸に向けて技を放ち、質問を飛ばす

 

「へい!そこのジャンヌのおっぱいさん!いったいこれからどうするんだい?」

 

『えーとね。路面を壊して、下水道にでも逃げようかなーって思っててー』

 

「あら、意外にギャル風で可愛い!って、下水道に逃げる気か!」

 

「それさえ分かりゃ充分だ。一誠、悪いがここは俺が貰うぜ」

 

ジャンヌが聖剣で作られた蛇腹を軽やかに動かし、一際大きい聖剣を創り出して路面に突き立てようとしたところに新が立ち塞がる

 

『あら、アーくん。そんなところにいたら危ないわよ?お姉さんの胸に飛び込むつもりかしら?』

 

「嬉しい誘いだが、生憎(あいにく)そんな暇はねぇよ。一気に行くぜ!」

 

新は全身から炎と闇が入り交じったオーラを(ほとばし)らせ、左手をジャンヌに向ける

 

濃密なオーラが手に集まり、竜の形を成していく……

 

「新技―――『黒火竜の晩餐(ブラック・グリード)』……ッ!」

 

ズオ……ッッ!

 

新の左手から莫大な質量のオーラで構成された黒い火竜が飛び出し、眼前のジャンヌを見下ろす

 

今のジャンヌを遥かに凌駕するほど巨躯の火竜は両目を鋭く光らせ、大口を開ける

 

『うそ、でしょ……?』

 

バクンッッ!

 

新が生み出した火竜の恐ろしい気迫に動く事すら出来なかったジャンヌは―――あっという間に火竜に飲み込まれる

 

“弱肉強食”―――まさにそんな場面を目撃した瞬間だった……

 

ジャンヌが火竜の餌食になる瞬間を見てしまい、その場にいた殆どの者が戦慄した

 

ゴキュ……ゴキュ……と不気味な音を鳴らす火竜

 

暫くした後、そのサイズを縮めていく

 

人型のサイズにまで縮むと火竜はペッと何かを吐き出す

 

吐き出されたのは―――全裸となったジャンヌだった

 

尻餅をつくと同時に「きゃあっ」と可愛い悲鳴を上げ、火竜は新の左手へと消えていく

 

「ヒャッホウ!お姉さんのはだkグビャアッ!……こ、小猫ちゃん……、なんで俺だけ……っ」

 

「……いつも通り最低(エッチぃ)です、新先輩」

 

「渉は見んな!」

 

「痛い痛い、首が痛いよ」

 

一誠は喜ぶと同時に小猫に殴られ、小猫は厳しいツッコミ

 

渉は祐希那に首を曲げられそうになっていた

 

一瞬で勝負を決めた新にジャンヌが問いかける

 

「……な、何をしたの?」

 

「簡単な事だ。さっきの火竜でお前のパワーアップの(みなもと)やら副作用やらを喰って消した。ついでに服も喰ったけどな」

 

「どうしてそんな事を?」

 

「さっきお前、自分で言ってたよな。“相当命が縮まる”って。むやみやたらに自分の命を縮めてんじゃねぇ。人間だろうと悪魔だろうと、命は1つしかねぇんだ。もっと自分を大事にしろ」

 

新の不器用だが思いやりのある説教にジャンヌは思わずときめいてしまい、頬を紅潮させる

 

「……もうっ、それって反則じゃないかしら」

 

「何とでも言(いた)たたたたたたたたっ!リ、リアス⁉朱乃⁉なんで俺の脇腹を2人がかりでつねってんだ⁉」

 

「帰ってきて早々、浮気なんてしてる場合かしら?」

 

「あらあら、私的には燃えますけど、今はそんな場合ではありませんわよね?新さん?」

 

「も、勿論分かってるつもりだ。これはあくまで新技のお披露目しようと脇腹が千切れるッ!スンマセンした!勘弁してくれェェェェッ!」

 

……帰って早々、新は愛しい2人(リアスと朱乃)から手痛い折檻をくらうのだった

 

 

―――――――――――――――

 

 

「オーフィスの力を借りて……グレートレッドの体の一部で体を再生させた⁉」

 

「黄泉の国ってところでキリヒコの手を借りて帰ってきた⁉」

 

お互いの経緯を話して素っ頓狂な声を上げる新と一誠

 

ジャンヌを退(しりぞ)けた後、ここに来るまでの経緯を皆に話していた

 

当然、皆は驚いていたが、1番驚いていたのはロスヴァイセだった

 

「……生きているとは思いましたが……まさか、ここまで常軌を逸した助かり方をしているとは……予想の範疇を超えていたと言うか……」

 

「新、お前キリヒコなんかの手を借りて大丈夫か?あいつ……『造魔(ゾーマ)』の一員なんだろ?」

 

「仕方ねぇさ。あの時はあぁするしか方法が無かったんだ戻る為にな」

 

「―――強者を引き寄せる力、ここまで来ると怖いな。首都リリスを壊滅させるモンスターと言う情景を見学しに来たら、まさかグレートレッドと共にキミ達が現れるなんてね」

 

第3者の声、振り向けばそこには曹操の姿があった

 

曹操は相変わらず槍を手に持って、倒された仲間を見て目を細めていた

 

「……僅かな間で超えられたと言うのか。異常なるは、グレモリー眷属の成長率……。ヘラクレスはともかく、ジャンヌは『魔人化(カオス・ブレイク)』を使った筈なのだが……2度使うと弊害が出ると言うのかな……」

 

仲間の心配よりも負けた理由を独りごちながら模索しているようだった

 

曹操が登場した事で一気に空気が一変

 

次に曹操の視線が一誠に移る

 

ただ……以前のように興味に彩られたものではなく、異質なものを見ているかのような目付きだった

 

「……帰ってきたと言うのか、兵藤一誠。旧魔王派から得た情報ではシャルバ・ベルゼブブはサマエルの血が塗られた矢を持っていたと聞いていたのだが」

 

「ああ、喰らったぜ。体が1度ダメになっちまったけど、グレートレッドが偶然通りかかったようでさ。力貸してもらって肉体を再生させた。……先輩達やオーフィスの協力があってこそだったけどな」

 

一誠の台詞を受けて皮肉めいたものでも返すのかと思いきや……曹操は目元をひくつかせていた

 

「……信じられない。あの毒を受けたら、キミが助かる可能性なんてゼロだった。それがグレートレッドの力で体を再生させて、自力で帰還してくるなど……っ!グレートレッドとの遭遇も偶然で済ませられるレベルではないんだぞ……っ!」

 

『……なんか、すっげぇ信じられないって顔でブツブツ話してやがるぞ……』

 

『とりあえず、すぐに襲い掛かってくるって事は無いみたいだ。今のうちに―――』

 

『おお、そうだ!「悪魔の駒(イーヴィル・ピース)」!』

 

そう、今の一誠には『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』が宿っていない

 

このままでは本当の意味で再生した事にならない

 

新も右手が欠落している為、リアスに言う

 

「リアス、俺の右手持ってる?」

 

「勿論よ」

 

リアスが懐から“新の右手”を取り出し、新のもとに向ける

 

右手は意思を持ったかのように輝きを増し、欠落した部分と接合する

 

静かにゆっくりと接合が(おこな)われる中、リアスの唇が新の唇と重なった

 

新はそのままリアスを抱き寄せる

 

「―――私と共に生きなさい」

 

「ああ、俺はリアスと共に生きる。お前と―――仲間達と共に生きる!」

 

強く宣言し、決意を固めた新は接合された右手を回す

 

一誠の方もアーシアから7つの『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を渡され、抱き合っていた

 

「……イッセーさん……っ。もう、何処にも行かないでください……っ!」

 

「勿論だ!もうアーシアを悲しませたりしない!」

 

気持ちを新たにした一誠、駒も肉体に馴染んで気合を入れ直した時だった

 

不気味な波動……そちらを見やれば、車道の一角に黒いモヤのようなものが発生し、そこから鎌らしき得物が飛び出してきた

 

装飾が施されたローブ、道化師のような仮面を着けた者―――最上級死神(グリムリッパー)プルートが現れた

 

≪先日ぶりですね、皆さま≫

 

「プルート、何故あなたがここに?」

 

曹操にとっても予定外の登場だったらしく、プルートは曹操に会釈する

 

≪ハーデスさまのご命令でして。もしオーフィスが出現したら、何がなんでも奪取してこいと≫

 

プルートの視線が一誠の隣にいるオーフィスに注がれた

 

ハーデスはまだオーフィスを狙っているようだ

 

「お前の相手は俺がしよう。―――最上級死神プルート」

 

またまた聞き覚えのある声

 

新達と曹操、プルートの間に光の翼と共に空から舞い降りてきたのは―――純白の鎧に身を包んだ男……

 

「やはり、帰ってきたか、兵藤一誠」

 

「ヴァーリッ!」

 

「あのホテルの疑似空間でやられた分を何処かにぶつけたくてな。ハーデスか、英雄派か、闇人(やみびと)か、悩んだんだが、ハーデスはアザゼルと美猴(びこう)達に任せた。英雄派と闇人(やみびと)は出てくるのを待っていたらグレモリー眷属がやってしまったんでな。こうなると俺の内に溜まったものを吐き出せるのがお前だけになるんだよ、プルート」

 

大胆不敵に告げてくるヴァーリ

 

いつもと変わらないポーカーフェイスだが、語気に怒りの色が見える

 

相当ストレスが溜まってるようだ……

 

プルートが鎌をくるくる回してヴァーリに構える

 

≪ハーデスさまのもとにフェンリルを送ったそうですね。先程、連絡が届きましたものですから。神をも噛み殺せるあの牙は神にとって脅威です。―――忌々しい牽制をいただいたものです≫

 

「いざと言う時の為に得たフェンリルだからな」

 

≪各勢力の神との戦いを念頭に置いた危険な考え方です≫

 

「あれぐらいの交渉道具が無いと神仏を正面から相手にする事が出来ないだろう?」

 

≪まあ良いでしょう。しかし、真なる魔王ルシファーの血を受け継ぎ、尚且つ白龍皇であるあなたと対峙するとは……。長く生きると何が起こるか分からないものです。―――あなたを倒せば私の魂は至高の頂きに達する事が出来そうです≫

 

プルートは白龍皇の挑戦を嬉々として応じ、ヴァーリは兜をつけ直して言う

 

「兵藤一誠は天龍の歴代所有者を説き伏せたようだが、俺は違う」

 

ドンッッ!

 

いきなり特大のオーラを纏い始めるヴァーリ

 

「―――歴代所有者の意識を完全に封じた『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』のもう1つの姿を見せてやろう」

 

光翼が広がり、魔力を大量に放出させる

 

純白の鎧が神々しい光に包まれ、各部位にある宝玉から歴代白龍皇の所有者とおぼしき者達の意識が流れ込んでくる

 

「我、目覚めるは―――律の絶対を闇に堕とす白龍皇なり―――」

 

『極めるは、天龍の高み!』

 

『往くは、白龍の覇道なりッ!』

 

『我らは、無限を制して夢幻をも喰らう!』

 

それは恨みも妬みも吐き出さない代わりに圧倒的なまでに純粋な闘志に満ちていた……

 

「無限の破滅と黎明の夢を穿(うが)ちて覇道を往く―――我、無垢なる龍の皇帝と成りて―――」

 

ヴァーリの鎧が形状を少し変化させ、白銀の閃光を放ち始めた

 

「「「「「「(なんじ)を白銀の幻想と魔道の極致へと従えよう」」」」」」

 

Juggernaut(ジャガーノート) Over(オーバー) Drive(ドライブ)!!!!!!!!!!!‼』

 

そこに出現したのは白銀の鎧に包まれし、極大のオーラを解き放つ別次元の存在としか思えない者だった

 

周囲の公共物、乗用車が触れてもいないのに潰れていく

 

ヴァーリが体から滲ませるオーラだけで物が破壊される……

 

新と一誠は直ぐに奴がバケモノだと理解できた

 

「―――『白銀の(エンピレオ・)極覇龍(ジャガーノート・オーバードライブ)』、『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』とは似ているようで違う、俺だけの強化形態。この力、とくとその身に刻めッ!」

 

言い放つヴァーリに斬りかかるプルート

 

残像を生み出しながら高速で動き回り、赤い刀身の鎌を振るう

 

バリンッ!

 

儚い金属音が響き渡る。―――プルートの鎌がヴァーリの拳によって難無く砕かれた

 

≪ッッ!≫

 

驚愕している様子のプルートだったが、そのプルートの顎に鋭いアッパーが撃ち込まれていく

 

激しい打撃音を叩き出して、プルートが上空に浮かされる

 

そのプルートに向けてヴァーリは右手を上げ、開いた手を握った

 

「―――圧縮しろ」

 

Compression(コンプレッション) Divider(ディバイダー)!!!!』

 

Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)‼』

 

空中に投げ出されたプルートの体が縦半分に圧縮し、更に横に圧縮していく

 

プルートの体が瞬時に半分へ、また半分へと体積を減らしていく

 

≪こんな事が……!このような力が……ッ!≫

 

プルートは自身に起こった事が信じられないように叫ぶが―――ヴァーリは容赦無く言い放つ

 

「―――滅べ」

 

目で捉えきれない程のサイズまで圧縮されていった死神は遂に何も確認できなくなる程体積を無くしていく

 

空中で震動が生まれたのを最後にプルートは完全に消滅、それがその死神の最期……

 

最上級死神プルートはこの世に微塵の欠片も残さず消えていった

 

 

―――――――――――――

 

 

白銀から通常の禁手(バランスブレイカー)に戻ったヴァーリは肩で息をしていた

 

消耗は激しいが、最上級死神を何もさせずに瞬殺した力は本物だ……

 

何処までも強くなるヴァーリ

 

新達もヴァーリのかけ離れた実力に言葉を失っていた

 

「……恐ろしいな、二天龍は」

 

そう言いながら近付いてくる曹操

 

「ヴァーリ、あの空間でキミに『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』を使わせなかったのは正解だったか……」

 

「『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』は破壊と言う一点に優れているが、命の危険と暴走が隣り合わせ。今俺が見せた形態はその危険性を出来るだけ省いたものだ。しかも『覇龍(ジャガーノートドライブ)』と違うのは伸びしろがあると言う事。曹操、仕留められる時に俺を仕留めなかったのがお前の最大の失点だな」

 

ヴァーリの言葉に曹操は無言だった

 

曹操の視線が今度は一誠に移る

 

「確認しておきたい。―――兵藤一誠、キミは何者だ?」

 

苦慮する一誠を前にして曹操は首を捻る

 

「やはり、どう考えてもおかしいんだよ。自力でここまで帰ってこられたキミは形容しがたい存在だ。もはや、天龍どころではなく、しかし、真竜、龍神に当てはまるわけでもない……。だからこそ、キミはいったい―――」

 

「じゃあ、おっぱいドラゴンで良いじゃねぇか」

 

面倒くさいのでそう断ずる一誠

 

曹操は一瞬間の抜けた表情を見せるが―――直ぐに苦笑して頷いた

 

「……なるほど、そうだな。分かりやすいね」

 

それだけ確認すると、曹操は聖槍の先端を向ける

 

「さて、どうしようか。俺と遊んでくれるのは兵藤一誠か、竜崎新か、それともヴァーリか、もしくはサイラオーグ・バアルか。または全員で来るか?いや、さすがに全員は無理だな。神滅具(ロンギヌス)3つを相手にするのは相当な無茶だ」

 

挑発的な物言いをする曹操

 

ヴァーリや最大の、渉や大牙まで参戦したら、いくら曹操と言えど耐えられないだろう

 

ヴァーリが新と一誠に歩み寄り、訊いてくる

 

「奴の七宝(しっぽう)、4つまでは知っているな?」

 

「ああ、女の異能を封じるのと、武器破壊、攻撃を転移させるのと、相手の位置も移動できるんだよな」

 

「他の3つは飛行能力を得るものと木場祐斗が有する聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)禁手(バランス・ブレイカー)のように分身を多く生み出す能力、そして最後は破壊力重視の球体だ」

 

「とりあえず、礼は言っとく」

 

いつの間にか新と一誠が戦う雰囲気になっていた

 

新と一誠が1歩前に出たのを見て、曹操は嬉しそうに笑みを浮かべた

 

「俺の相手は赤龍帝と闇皇か。他はそれを察してまるで動かないときた」

 

曹操の言う通り、皆は新と一誠の曹操とのバトルを確認および容認してくれたようだ

 

「ああ、俺も一誠も借りを返さないと気が済まねぇんだ」

 

戦意を感じ取った曹操は肩を槍で軽く叩く

 

「面白い。あの時はトリアイナの弱点とサマエルの縛りで突いて差し込ませてもらったが、今度は全力のキミ達と戦おうじゃないか」

 

「勿論、そうさせてもらうさッ!いくぜ、ドライグッ!」

 

『応ッ!相手は再び最強の神滅具(ロンギヌス)ッ!ここで倒さねば赤龍帝を名乗れんぞ、相棒ッ!』

 

「あったり前だろうがッ!行くぞ、新ァッ!」

 

「ああ、今度は全力でやってやる!竜の力を解き放ってなッ!」

 

2人は莫大なオーラをそれぞれ放っていく

 

「―――我、目覚めるは王の真理を天に掲げし、赤龍帝なり!」

 

呪文を唱える一誠と竜の力を解き放つ新

 

「無限の希望と不滅の夢を抱いて、王道を往く!我、紅き龍の帝王と成りて―――」

 

一誠の鎧の色が真紅と化し、新の全身が赤と黒の鱗に覆われていく

 

「「「「「「(なんじ)を真紅に光り輝く天道へ導こう―――ッ!」」」」」」

 

Cardinal(カーディナル) Crimson(クリムゾン) Full(フル) Drive(ドライブ)!!!!』

 

―――『真紅の赫龍帝(カーディナル・クリムゾン・プロモーション)』―――

 

―――『超越の黒竜帝(インフェルニティ・オーバー・ドラグニル)』―――

 

新と一誠の最強形態が、今ここに君臨した

 

曹操とのリベンジマッチに向けて……




いよいよクライマックスに近付いてきました!

次回は曹操とのリベンジマッチです!

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