旧魔王派、ジークフリート、アドラスを退けたリアス達は改めて一誠の駒と新の右手をアジュカ・ベルゼブブに見てもらう事にした
先程アスカロンに変化した駒は役目を終えた後に再び駒へと戻っている
一誠が駒に残した何かと、アスカロンの残留オーラが祐斗達の想いに呼応してあの様な変化を起こしたのではないか?―――と、アジュカ・ベルゼブブは語った
新の幻影に関しても同じ現象が働いたとも言えるらしく、それは彼らにしか通じ合えないものが起こしたと言えよう
テーブルの上にチェス盤が置かれ、アジュカ・ベルゼブブは『
小型の魔法陣を展開させて調査を始め、少ししてアジュカ・ベルゼブブは興味深そうに息を漏らす
「ほう、これは……」
「何か分かりましたか?」
リアスが訊ねるとアジュカ・ベルゼブブは一誠の駒を指で
「7つ中、4つの駒が『
なんと一誠の駒が7つの内、4つが『
一誠を転生する際、彼に使用した駒は全て通常の駒だった
リアスが所持していた『
この現象もアジュカ・ベルゼブブが『
「それで、その駒と右手から他に何か分かった事は……?」
リアスが再度聞き、祐斗を含めた他の面々もアジュカ・ベルゼブブの言葉に真剣に耳を傾ける
アジュカ・ベルゼブブはハッキリと語られた
「この駒と右手から俺が言える答えはこうだ。―――どんな状態になっているかは分からないが、彼らが次元の狭間で生きている可能性は高いだろうね。この駒と右手の最後の記録情報が『死』ではないからだ。それと赤龍帝ドライグの魂も
言葉にならない感情が全身を駆け巡り、全員が言葉を失った中、アジュカ・ベルゼブブは説明を続ける
「この駒を受け入れた器―――つまり、魂と肉体が不安定な状態になっている事だけは確かだろう。サマエルの毒を受けたのなら、肉体は助からないだろうね。それはこの駒からの情報でも確認できる。しかし、次にサマエルの呪いを受けそうな魂が、これを調べる限り消滅してはいないのだよ。肉体が滅びれば直ぐに魂にまで毒牙は迫るのだが……。肉体がダメになってから魂が消えるであろう時間が経過しても魂が無事だったとこの駒が教えてくれている。魂だけではどういう状態か把握しづらいが、アザゼル総督サイドからあのオーフィスが彼に同伴しているかもしれないと聞いている、何が起こっていても不思議ではない。たとえ、どんな形であれ魂だけで生きていてもね」
「魂が無事だったとして、滅んだ肉体は……どうすれば良いのでしょうか?」
祐斗がアジュカ・ベルゼブブにそう問う
「ふむ。彼のご両親は健在かな?もしくは彼の部屋にあるDNA情報―――抜けた体毛の類などでも良い」
「ご両親は健在です。……体毛も探せば彼の自室にあるとは思いますが」
「ならば、まず魂が帰還した後に彼のご両親か、その体毛からDNAを検出して出来るだけ近しい体を新たに構築する必要がある。グリゴリが運営する研究施設でそれが出来るのではないだろうか。再現自体は可能だろう。クローン技術の応用でね」
「……問題は他にあると?」
リアスの問いにアジュカ・ベルゼブブは頷きながら話を続ける
「新しい体に魂が定着するのかと言う点と、その体が
つまり、移植は可能で一誠が仮に新しい肉体を得て魂と
「
「うえぇぇぇぇぇぇぇんっ!イッセーさぁぁぁぁんっ!」
アーシアは大声で泣いていた
それは悲しみではなく、歓喜の涙……
朱乃も小猫もレイヴェルも大粒の涙を流していた
絶望の中、一筋の光明―――否、大きな希望が得られたグレモリー眷属
生きている可能性があるなら、彼らは絶対に生きている
それをこの場にいる皆が誰よりも強く認識している
リアスは顔を両手で覆い、喜びの涙を流す
「……新、生きているのね……。そうよね、彼が死ぬ筈ないもの!」
アジュカ・ベルゼブブは調べ終えた駒と右手をリアスに手渡す
「ともかく、これらはキミが持っているべきだ、リアス・グレモリー。もしかしたら、オーフィスと赤龍帝ドライグの力で魂だけでもひょっこり帰ってくるのではないかな?―――俺のつてで次元の狭間を調査してもらおう。ファルビウムの眷属に詳しいのがいた筈だからね」
「……はい、ありがとうございます、アジュカさま」
「さて、俺はここから眷属に命令して例の巨大怪獣討伐を指揮するつもりだ。対抗策ぐらいはどうにかしよう。だが、最後に決めるのはキミ達現悪魔とサーゼクス眷属であるべきだ。それでこそ、冥界は保たれる」
アジュカ・ベルゼブブが手を前に出すとリアス達の前方に転移型魔法陣が展開された
「キミ達も行くと良い。冥界は今、力のある若手悪魔の協力が必要な時だろう。なに、彼らなら来るだろうね。それはキミ達が1番よく知っていると思う。そういう悪魔なのだろう、彼らは」
アジュカ・ベルゼブブの言う通り、“生きているのなら、彼らは必ず帰ってくる。どんな事になろうとも生きてさえいれば彼らは絶対に帰ってくるだろう”
ここにいる誰もがそれを信じて疑わなかった
『イッセーくん、新くん、僕達は待つよ。だから、必ず帰ってきて欲しい。冥界は―――冥界の子供達はキミ達の帰還を待ち望んでいるんだ!』
―――――――――――――――――
『……んあ、寝てた……?』
一誠が目覚めたのは赤い地面の上だった
周りを見渡せば赤い地面、空は様々な色が混ざりあったような景色が広がっていた
『目が覚めたか。一時はどうなるかと思ったぞ』
記憶が曖昧なところにドライグの声が聞こえてくる
『ドライグ?ああ、俺、気を失ってた―――って、あれ?おかしいな。なんだか、体の感覚が変だ』
一誠は自身の変化に気付いた
“何かに触れている感覚が無い”
いつものようにマスクを解除しようとするが……解除できない
試しに手の部分だけ鎧を解除してみると―――中身の腕が無かった
自分の身に何が起こったか全く理解できない一誠にドライグが言う
『お前の肉体はサマエルの呪いで滅びかけていた。魂だけを抜き出して鎧に定着させている状況だ。現在、魂だけの状態と言える。しかし、成功するかどうかのかなり危ない橋だったぞ』
“体が滅んだ”―――“魂だけの状態”―――
ふとその事を考えた一誠は直ぐに―――頭を抱えて絶叫した
『……なんてこった!体が無ければアーシアとエッチ出来んじゃないかぁぁぁっ!なんてこったよ!体が無いとおっぱいに触る事も出来ないんだぞ⁉成長途上のアーシアのおっぱい!それに触る事が出来ないなんて、そんなのってないだろォォォォォォッ!』
『……え?そ、それが感想なのか……?』
間の抜けた声を出すドライグに一誠は再度荒ぶる
『「え?」じゃねぇよ!これは死活問題だ!せっかくアーシアと良い関係になれてきたのに体が無いんじゃエロエロな事が出来ねぇじゃねぇかッ!アーシアのおっぱいを手で!生で揉めないなんて死んだ方がマシだぁぁぁぁっ!鎧だけの状態でどうエッチしろって言うんだよ!アーシアのおっぱいはこれからが本番なんだぞ⁉ただ見守っているだけの状態なんて最悪極まりないじゃないか!……ああ!最近だと通信でユキノさんやチェルシー、ディマリアとも良い感じに話が弾んで、良い関係を築けてきたってのにぃぃぃぃぃっ!ユキノさんの天然素材100%おっぱいも!チェルシーの美乳おっぱいも!ディマリアの爆乳おっぱいも揉めないままだなんて!チクショウ!最悪鎧プレイでも良いよ、くそったれぇぇぇっ!鎧でおっぱいを感じ取れば良いんだろう⁉』
『あー、えーと……あのだな、相棒』
『んだよ、ドライグ!俺は今最高に悲しみに暮れてんだ!話は後にしてくれ!くっそぉぉぉっ!せっかく、あの偽者魔王のシャルバをぶっ倒して帰還しようと思ってたのに……。あ、そう言えばオーフィスは?あいつを助ける為に俺はあのフィールドに残ったんだろう』
記憶が戻ってきた一誠がオーフィスを探すべくキョロキョロと辺りを見回してみると―――オーフィスが「えいえいえい」と赤い地面をペチペチ叩いている姿が見えた
『お、お前、何をしてんだ?』
一誠が近づいて訊いてみるとオーフィスはこう答えた
「グレートレッド、倒す」
オーフィスの一言で一誠は“今、自分が何処にいるのか”初めて気付いた
赤い地を駆け、程無くして果てが見えてきた
そこに見えたのは赤い突起物―――角だった
更に歩みを進めると巨大な何かの頭部が見えた
何処かで見覚えのある生物……
そう、赤い地の正体は―――グレートレッドの背中だった
『……な、なんで俺、グレートレッドの上にいるんだよ……?』
ドライグが嘆息して言う
『お前はシャルバ・ベルゼブブを倒した後、崩れゆく疑似空間フィールドで力尽きた。その後すぐにフィールドも完全に崩れきったのだ。そこに偶然グレートレッドが通り掛かった。そこでオーフィスはお前を連れて、グレートレッドの背に乗ったのだ。ここは次元の狭間だ。ちなみにだが、既にあれから幾日か過ぎている。お前の巡り合わせを考慮すると、グレートレッドを自然に引き寄せたように思えてならんがな……。ただでさえ各伝説級の存在との遭遇率が異常なのだからな。他者を引き寄せる己の力だけで危機を脱するなんて相変わらずお前は読めんよ』
それはもはや深刻を通り過ぎて危険レベルにまで達していた……
オーフィスはグレートレッドをペチペチ叩くのを止めて空を眺める
『何だよ、お前、元の世界に戻らなかったのか?』
「我にとって、元の世界はここ」
『……言い間違えた。冥界、もしくは人間界に戻らなかったのか?どうしてだ?』
「ドライグが共に帰ろうと言った。だから、ここにいる。一緒に帰る」
『……お前、本当に変な奴だな。でも、やっぱり悪い奴じゃねぇよな……。はぁ……。つーかさ、俺、帰れるのかな。先生達からの召喚は無かったのか?』
『あった。しかし、お前の内にあった駒だけがあちらに帰還してな。特異な現象だった。
『召喚あったんかい!しかも駒だけ帰った⁉マジか!あ、本当だ。駒の反応が感じられない!』
『
完全に消滅していないだけでも
『あの駒があってこその相棒の強さがあるからな』
『その通りだよ……。とりあえず、皆に無事を……無事ってわけじゃないんだけどな……。ま、まあ、生きている事だけは伝えたいところだな。って、俺ってずーっとこのままでも大丈夫なの?』
一誠の問いに対してドライグが答える
『現在はグレートレッドからパワーを借りている。今は問題ない』
『じゃあ、グレートレッドと一緒じゃなきゃダメって事じゃんか!どちらにしても普通には帰れないのかよ!あー、こいつはまいったな……』
『そろそろ先程の会話の続きに戻しても良いだろうか、相棒』
『ん?何かあったっけ?』
『ああ、現在の状況の再確認だ』
『現在の状況って……。この状態じゃ、俺はグレートレッドと一生次元の狭間で旅に出なきゃならないんだろう?女の乳も尻も
『ハハハハ!まだこの状態でもハーレム王を諦めないとは!さすが俺の相棒だ!』
『笑い事じゃねぇ!俺にとっては真剣な事だ!』
『それで良い。それでこそ、歴代所有者の残留思念がお前に全てを託したと言える』
ドライグの言葉に一誠は一瞬言葉を失い、
白い空間が見え、椅子とテーブルも見えてくるが……誰1人としてその場にいない
ドライグが静かに語る
『……相棒、お前の魂は危機に瀕していた。サマエルの毒でな。肉体は既に手遅れで手放すしかなかった。肉体の次に呪いに犯されるのは魂だ。あのままでは、お前の魂はサマエルの毒によって消滅するところだった。俺もさすがにダメだと思ったぞ。次の所有者のもとに意識が移ると覚悟した程だ』
『……待てよ、じゃあ俺の魂はどうやって助かったんだ?』
『彼らの残留思念がサマエルの呪いからお前の魂を守ったんだよ。彼らが身代わりになって呪いを受けている間に、お前の魂を肉体から抜いて鎧に定着させたのだ。絶妙なタイミングだった。一瞬でも判断が遅ければ、今ここに俺もお前もいない』
『…………んだよ、それ……。じゃあ、俺は……先輩達が助けてくれたお陰で、ここにいられるって事なのかよ……ッ!まだ先輩達とろくに話してもいないんだぞ⁉せっかく、あのヒト達は赤龍帝の呪いから解き放たれて、良い顔するようになったんだ!あの疑似空間でも俺にアドバイスくれたし!これからも上手くやっていけそうだって思えたんだ!こんな……こんなお別れなんて無いだろうがよッ!』
『……気持ちは分かる。だから、彼らの最後の言葉を聞いてもらえるか?一応、声だけ残した。―――彼らの最後のメッセージだ』
以前にもあったシチュエーションに嫌な予感を
籠手の宝玉から映像が映し出され、歴代所有者は晴れやか過ぎる程の満面の笑顔で―――
『『『『『ポチっとポチっとずむずむいやーん!』』』』』
……もはや返す言葉も無かった
『どんだけあの歌が好きなんだよ⁉』
映像の隅で歴代白龍皇の1人も―――
『おケツも良いものだよ、現赤龍帝』
『んなもんヴァーリの野郎に言えよぉぉぉぉぉぉぉっ!』
そして映像が消える
何とも締まらない歴代所有者の遺言だった……
嘆息する一誠にドライグは言う
『右手側の奥を見ろ』
ドライグに言われて視線を移すと―――そこにはせり上がった肉の塊があった
『あれは?』
『あれは繭だ。いや、培養カプセルと言っても良い』
『繭?培養?何が入っているんだ?』
『ああ、お前の肉体だ。1度滅んだ肉体があそこで新たな受肉を果たそうとしている。グレートレッドの体の一部とオーフィスの龍神の力を拝借して、お前の体を新生させているところだ』
驚きで言葉を失う一誠にドライグは愉快そうに笑った
『お前の体は真龍と龍神によって再生される。―――相棒、反撃の準備に入ろうか』
―――――――――――――――――
「……………………ん……………………んぁぁ…………っ。―――っ?ここは…………」
新は体の重い感覚と共に目を覚ました
いつもと違う感覚―――『初代クイーン』を帰還させるべく右手を切除した為か、バランスが取れず1度体勢を崩し、改めて起き上がる
『初代キング』を倒し、闇に飲まれて何日が経過したのか、自分が今何処にいるのか?
何1つ見当も付かない中、現状だけは確認しようと辺りを見渡す
視界に広がるのは―――霧が立ちこめる薄暗い河原の様な光景だった
枯れ果てた木々と植物に溢れ、生物らしき影もいない
足元や他の地には
「まさか、ここが三途の川ってヤツか……。それともヘルヘルムの森か……。いずれにしろ、俺は死んじまったのか……?」
疑問が頭の中を渦巻く最中、新は何かの気配を察知
重苦しい体を動かして気配がする方向に視線を移す
視線の先に見えるのは―――周りに漂っているものよりも少し深く立ち込めた霧の塊
良からぬ気配に警戒を強めていると……霧が徐々に晴れていく
霧の中から現れたのは―――2人の人物だった
片方は骸骨と機械が入り混じったような姿を持つ異形
もう片方は見覚えのある人物……以前、異国で新と対峙した男……
「
「―――ッ。お前は……キリヒコ……ッ」
そう、もう1人の人物とは『
キリヒコの登場に警戒を更に高める新だが、キリヒコは「
「今のあなたは我々に敵意を向けている場合ではないでしょう?」
キリヒコの指摘にグゥの音も出せない新はひとまず攻撃体勢を解く
「
「黄泉の国……?じゃあ、俺は死んだのか?」
「その質問に対する答えは
「……そうか。とりあえず、死んでないだけ
「他に聞きたい事はありますか?」
色々訊きたい事は山程あるが、現状を早く知りたい新は質問を3つに絞る
「まず1つめの質問だ。お前の横にいる骸骨は何者だ?」
「彼ですか?彼は同じメンバーの1人と言いましょうか。『
「―――ッ!『
「
意味深な言葉を吐くキリヒコ
新が視線を移すとブラッドマンは
「……酒と煙草が奏でる
「………………思った以上にめんどくさそうな奴だな」
「彼はこう言った人物ですので、そこはあまり気にしないでください。
1つめの質問が終わり、直ぐに2つめの質問を飛ばす
「2つめ、その言い回しを大雑把に解釈すれば俺の中に巣食っていた『初代キング』の闇をキリヒコが取り出したって事になるよな?……どうやって取り出した?」
「以前、あなたと異国で対峙した時を覚えていますか?あの時、私は受けたダメージを“データ”として
キリヒコが例の
気になる点がいくつも浮上してくるが、新は『ここから出る方法』を最後の質問としてキリヒコに問いただした
すると、キリヒコは顎に指を添えて答える
「
確かにシンプルだが、危険な匂いを漂わせるキリヒコの提案に新は疑心暗鬼となる
「……もし、断ったらどうなる?」
「そうなれば、あなたはこのまま黄泉の国を彷徨う事になります。
「相変わらず卑怯な奴だな、テメェは……ッ!」
「
わざとらしい笑みを浮かべるキリヒコに新は歯噛みした
しかし、膠着状態を続けては“まだ完全に死んでいない”と言うチャンスを無駄にしてしまう……
良からぬ思惑を孕んでいるのは間違いないが、このまま何もせずにいるわけにはいかない
背に腹は替えられない……新は渋々キリヒコの要求を呑むしかなかった
「…………分かった、呑んでやるよ。お前の要求を」
「要求とは人聞きの悪い。お互いにメリットがある提案ですよ。私は良いデータを入手、あなたは生きてここから出られる。悪魔社会で言うところの対価でしょう?」
「何でも良いから、さっさと始めろ」
そう言われるなりキリヒコは
すると、2つの銃口が蛇の如く伸び始め―――新の胸に突き刺さる
次に
それを見てフムフムと頷くキリヒコ
『
キリヒコが更に複数の小型魔法陣を展開し、高速で打ち込み始めた
いよいよ反撃開始の時です!その裏で暗躍するキリヒコにも注目⁉
ちなみに今回登場したブラッドマンのイメージモデルはsic版魔進チェイサーです☆(黄泉の国の番人=ロ○ミュードの番人的な意味で)