ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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11巻編ラストです!


帰る、帰ろう、帰れない……

『初代キング』を倒し、マヤに運び来られた新はホテルの屋上に到達

 

そこでシャルバを倒した一誠と合流を果たす

 

「……そっちも終わったのか」

 

「ああ、お互いボロボロだな……」

 

サマエルの呪いで全身が痛む一誠、『初代キング』の闇を取り込んだ副作用で全身が黒く染まり、機能が低下していく新

 

2人はオーフィスを魔力の縄から解放した

 

「赤龍帝、闇皇、どうして我助けた?」

 

オーフィスの問いに2人は嘆息しながら言う

 

「お前、アーシアとイリナを助けたじゃねぇか」

 

「あれ、あの者達への礼。赤龍帝と闇皇が我助ける理由にならない」

 

「アーシアとイリナは俺達の大事な仲間だ。それを助けてくれたなら、俺もお前を助ける理由が出来ちまう。―――俺はお前が悪い奴には思えなくなってきたんだよ」

 

「オーフィス、何故あいつらと手を組んだ」

 

新の問いにオーフィスはこう答えた

 

「グレートレッドを倒す協力をしてくれると約束してくれた。我、次元の狭間に戻り、静寂を得たい」

 

あまりにも安易過ぎる口約束に2人は呆気に取られてしまった

 

「あいつらがお前との約束を果たすわけねぇだろ。随分と利用されたんじゃないのか?」

 

「グレートレッド倒せるなら、我はそれで良い。だから蛇を与えた」

 

オーフィスは更に続ける

 

「赤龍帝の家に行ったのは、我が望む夢を果たせる何か、あるかもしれないと思っただけ。普通ではない成長。そこに真龍、天龍の隠された何かがあると思った。我、なぜ存在するのか、その理由、あると思った」

 

「……そっか。ようやく分かったわ」

 

オーフィスの言葉に新と一誠は確信を得た

 

“こいつは誰よりも純粋なんだ”と……

 

それを旧魔王派や英雄派が担ぎ上げて利用し、闇人(やみびと)も便乗して利用してきた

 

―――自分達の私利私欲の為に

 

それは世界を手中に収めたり、超常の存在との戦いであったりと様々な思惑が交錯する

 

だが、それはオーフィスにとってどうでも良い事だった

 

全ては『禍の団(カオス・ブリゲード)』が作り出した借り()めの首領……

 

ただ自分の夢に純粋で何も知らないドラゴン

 

単に強くて無限なだけ―――それを皆が恐れてしまい、神聖化してしまった挙げ句、テロリストの親玉に仕立て上げてしまった……

 

寂しくて可哀想なドラゴン……それがオーフィスなのかもしれない

 

呪いと痛みの影響で意識が薄れてきた2人

 

一誠がオーフィスに言う

 

「なあ、オーフィス。俺と―――俺達と友達になるか?」

 

「……友達?それ、なると、何かお得?」

 

「せめて、話し相手にはなってやるよ」

 

「そう。それは楽しそう」

 

「ああ、楽しいさ。だから、帰ろう―――」

 

 

――――――――――――――

 

 

崩壊していくフィールド

 

建物が崩れ、瓦礫や風景が次元の穴に吸い込まれていく

 

新達はそのフィールドを歩いていた……だが、当人達にもう歩く力は残っていない

 

新はマヤに、一誠はオーフィスに肩を貸してもらって移動していた

 

『相棒!もうすぐだ!アザゼル達が俺達を呼び寄せる龍門(ドラゴン・ゲート)を開いてくれる筈だ!そうすれば後はあちらが俺達を呼び出してくれる!』

 

「そうですっ!向こうであなた達の帰りを待っている人達がいるんですよ!ほらっ、しっかりしてくださいっ!」

 

必死に呼び掛けるドライグとマヤだが、2人の体力はもはや限界を超えている

 

頭も思ったように回らない……

 

「……なぁ、オーフィス」

 

「?」

 

「お前、帰ったら何がしたい……?」

 

「帰る?我、どこにも帰るところ無い。次元の狭間、帰る力ももう無い」

 

「……それなら、俺の家に……帰れば良い」

 

「赤龍帝の家?」

 

「……ああ、そうだ。アーシアと……イリナと……仲良くなれたんなら……きっと、他の……皆とも……」

 

足が先に進まない……目線が横に……上に傾く……

 

倒れたのかすらも分からない……

 

新に至っては―――自分の足元に生まれた闇に飲み込まれそうになっていた……

 

これも『初代キング』の闇を取り込んだ副作用なのだろうか、新の体がゆっくりと沈んでいく

 

既に膝下までが闇に飲まれている……

 

マヤは新の右手を掴んで必死に引っ張り上げようとするが、全く上がる気配が無い

 

「……オーフィス、お前、誰かを……好きになった事はあるか……?」

 

『相棒、気をしっかりしろ!皆が待っているのだぞ!』

 

「……『初代クイーン』、もう良い……俺の体は、既に闇の塊だ……このままじゃ……」

 

「何を言ってるんですか⁉さっき言ったじゃないですか!必ず連れて帰るって!約束したなら、それを破っちゃいけませんっ!皆さんの所に帰りましょうっ!」

 

新の体が胴まで沈む……

 

それでもマヤは必死に引っ張り上げようとする……

 

新は止まりつつある頭を働かせ、最期の手段を取った

 

肩口まで闇に飲まれたその時―――(みずか)ら右手を切断した

 

切断された事で右手だけ離れ、それを掴んでいたマヤは勢い余って後方に転ぶ

 

「な、何を―――」

 

「……俺の体の一部……それで龍門(ドラゴン・ゲート)を通れる筈だ……。それで……あんたは助かる……」

 

沈み逝く新を前にマヤは頻りに首を横に振り、新のもとへ駆け寄ろうとする

 

だが、新はもう闇の中に消える寸前だった……

 

「ドライグ、この者は呪いが全身に回っている。―――限界」

 

『分かっている、オーフィス!そんな事は分かっている!だが、死なぬ!この男はいつだって立ち上がったのだ!なあ、帰ろう!相棒!何をしている!立て!お前はいつだって、立ってきたじゃないか!』

 

2人の脳裏にそれぞれの想い人が(よみがえ)る……

 

≪―――新、必ず帰ってきてね≫

 

≪―――イッセーさん、約束ですよ。必ず戻ってきてください≫

 

「愛してるぜ、リアス…………」

 

「大好きだよ、アーシア…………」

 

一誠の全てが止まり、新の全てが闇に消える……

 

「……ドライグ、この者、動かない」

 

『…………ああ』

 

「……ドライグ、泣いている?」

 

『…………ああ』

 

「我、少しの付き合いだった」

 

『…………そうだな』

 

「悪い者達ではなかった。―――我の最初の友達」

 

『……ああ、楽しかった。……なあ、オーフィス。いや、この男の最後の友よ』

 

「なに?」

 

『俺の意識が次の宿主に移るまでの間、少しだけ話を聞いてくれないか?』

 

「分かった」

 

『この男と、この男の友の事を、どうか覚えておいて欲しい。その話をさせてくれ……』

 

「良い赤龍帝だった?」

 

『ああ、最高の赤龍帝だった男と、その友の話だ』

 

 

――――――――――――――

 

 

「召喚用の魔法陣を用意できた。―――龍門(ドラゴン・ゲート)を開くぞ」

 

皆の前でアザゼルと元龍王のタンニーンの協力を得て召喚用の儀式が執り(おこな)われる

 

中級悪魔の昇格試験センターにある転移魔法陣フロアにグレモリー眷属と関係者が一堂に会していた

 

疑似空間での戦闘後、アザゼル達は新と一誠を呼び寄せるだけの魔法陣を描ける場所に移動し、|強制召喚の準備を始めた

 

元龍王のタンニーンの他、白龍皇たるヴァーリもサマエルの呪いによるダメージに耐えながら魔法陣の隅で待機していた

 

リアスや他の眷属達はその様子を心配そうに見守っている

 

疑似空間で生み出された『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』のアンチモンスター軍は現実の冥界に出現し、各都市部に向けて進撃を開始した

 

既に悪魔と堕天使の同盟による迎撃部隊が派遣されたが……規格外の大きさと凶悪な堅牢さに手を焼いていた

 

魔獣達は進撃と共に数多くのアンチモンスターを独自に生み出し、そこに旧魔王派や闇人(やみびと)の残党が合流

 

巨大な魔獣達の進行方向にある村や町を襲撃し始めたそうだ

 

冥府の神ハーデスは英雄派、旧魔王派だけでなく闇人(やみびと)にも裏で力を貸していた

 

悪魔や堕天使、各神話勢力に一泡吹かせられるなら何をしても良いと言う判断なのだろう……

 

事態はどんどん深刻になっていき、魔王達も各勢力に打診しているのだが……神々を仕留められる聖槍を持つ曹操の存在がネックとなり、協力を仰げない

 

もし各勢力の神々や冥界の魔王が聖槍で(ほふ)られたら、情勢は(くつがえ)ってしまう

 

それを懸念しているせいで各トップ陣は動きづらい状態となっていた

 

その為、力のある若手悪魔や最上級悪魔の眷属チームにも超巨大魔獣迎撃の話が届いている

 

魔王が出られない以上、祐斗達が率先して戦わなければならない

 

同盟関係にある各勢力からも救援部隊が派遣される

 

天界からは『御使い(ブレイブ・セイント)』、堕天使サイドからは神器(セイクリッド・ギア)所有者、北欧からはヴァルキリーの部隊などが冥界―――悪魔側の危機に応じてくれるようだ

 

ゼノヴィアとイリナは無事に事件の顛末を各上層部に伝える事が出来た

 

今は天界でデュランダルの修復に入っている

 

しかし、このままでは魔獣が魔王領にある首都を破壊しかねない

 

既に都民の避難が開始されているが、全ての完了が間に合うかどうかは厳しい……

 

『……キミ達の力が必要だ、イッセーくん、新くん。赤龍帝と闇皇の力を今こそ冥界の為に使わないといけない。―――首都ではキミ達の登場を心待ちにしている子供達が多いんだよっ!だからこそ、帰ってきてくれ!』

 

「―――よし、繋がった!」

 

アザゼルがそう叫び、巨大な魔法陣に光が走る

 

アザゼルの持つファーブニルの宝玉が金色に光り、ヴァーリの体も白く発光し、タンニーンの体も紫色に輝いた

 

呼応するように魔法陣の輝きが一層広がっていく

 

力強く光り輝く魔法陣は遂に弾けて何かを出現させようとした

 

まばゆい閃光が止み、魔法陣の中央に出現したのは―――紅い7つの『兵士(ポーン)』の駒と、うずくまり泣きじゃくる『初代クイーン』のマヤだった……

 

目の前で起きた現象がまるで理解できない祐斗達

 

『初代クイーン』が手に持っているのは―――分離させた新の右手だった

 

兵士(ポーン)』の駒7つと新の右手を持った『初代クイーン』

 

それが何を意味するのか未だに理解できなかったが、アザゼルが力無くその場で膝をつき―――フロアの床を叩いた

 

「……バカ野郎ども……ッ!」

 

アザゼルの絞り出した声を聞いて徐々に理解し始める

 

朱乃はその場に力が抜けるように座り込み、リアスは呆然とその場に立ち尽くしていた

 

「……イッセーさんは?……え?」

 

怪訝そうに窺うアーシア

 

反応を示さない小猫にレイヴェルが抱きつき、信じられないように首を横に振って嗚咽を漏らし始める

 

『……卑怯だよ、イッセーくん。新くん。駒だけを、腕だけ帰すなんて……。……ちゃんと戻るって言ったじゃないか……っ』

 

祐斗の頬を伝う涙が止まらない

 

その日、グレモリー眷属は赤龍帝(イッセー)闇皇(アラタ)を同時に失った―――




今回は短めでした……。やっとここまで来ましたが……原作に比べるとまだ半分程度……長いっす。

次章のタイトルは補習授業のヒーローズとブラックウィドウです!

今度は英雄派、神風一派との激闘が始まります!

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