ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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『初代キング』との戦いです!


闇の根源!VS『初代キング』!

一誠とシャルバの戦いが始まる同じ頃、新と『初代キング』はホテルから離れた空に浮かんでいた

 

鋭い目で睨み付ける新、牙が剥き出しの口元を笑ませる『初代キング』

 

その近くには『初代キング』の闇に捕らわれた『初代クイーン』もいる

 

『初代キング』が牙の隙間から暗黒を吐いて言う

 

「京都以来よのう、クソガキ。以前とは比べ物にならん程のパワーを感じるぞ」

 

「……京都の時には無い力を身に付けたからな」

 

「ならば、その力とやらを惜しみ無く使え。この崩壊するフィールドと共に果てさせてくれるわ」

 

「最初から時間は掛けねぇよ。一刻も早く戻らなきゃならねぇんだ」

 

新は全身から竜のオーラを解き放ち、同時に形状を変化させていく

 

リュオーガ族との決戦で発現された最強の形態―――『超越の黒竜帝(インフェルニティ・オーバー・ドラグニル)

 

忌まわしき竜の力を解放した新の姿に『初代キング』は更に口の端を吊り上げた

 

「グハハハハハハハハハハハッ!良い、実に良い力の波動だ!貴様のような人材が一昔前に生まれていれば、(ある)いは余が封印などされていなければ―――後世の『キング』になれたかもしれんのう」

 

「テメェには大牙が……息子がいるんじゃねぇのか?」

 

「ああ、おるぞ。良い跡継ぎになると思っておった。だが……あの愚息(ゴミ)はもうダメだ」

 

『初代キング』の放った“愚息(ゴミ)”発言に新のオーラが怒りの色を孕み出す

 

「才に恵まれたにもかかわらず、その力を誇示しないばかりか穏健派に回る始末……。『キング』の器には到底届かぬヘタレじゃ。闇人(やみびと)とは他を喰らい尽くすのがアイデンティティー。その“()”を通さぬ者などゴミ同然じゃ。際限の無い欲望を持ち、他種族に牙を突き立てねばならぬ。“王”もまた(しか)り。欲を持たぬ王など王にあらず。手に入れたい物があれば、実力で奪ってこそ王の象徴であろう?なのに、貴様ら悪魔や堕天使を含めた勢力は協定と言う逃げ道を渡った。種族の誇りを(みずか)ら放棄し、生温(なまぬる)い環境下に堕ちた。余から見れば、それこそ愚の骨頂!争いがあるからこそ生物は進化を辿ってきたのじゃ!己が生き延びるにはどうすれば良いか?―――他を喰らう他無いであろう。そう言った意味では我が愚息よりも神風の方が見込みがあるわけじゃ」

 

「そ、そんな……あなたの息子、なのに……っ」

 

ショックを受けている『初代クイーン』マヤに『初代キング』は非情な侮蔑を浴びせる

 

「今となっては駒にすらならぬ。余の駒とならぬ以上―――子孫でも同胞でもない。貴様共々(ともども)消してくれるわ」

 

「―――――ッッ」

 

一瞬の静寂……頬を伝う涙

 

マヤは言葉を失い、自分と自分の息子を全否定された……

 

新の握り拳が更に震えを増す

 

「……俺、何かこんなのに出くわしてばっかりだな。種族がどうとか、誇りがどうとか、自分優先で周りの奴の事を一切眼中に置かない奴。ラースも最初はそうだった。俺を失敗作だの落ちこぼれだの、勝手に創っといて勝手に決めてよ。迷惑極まりねぇったらありゃしねぇ。けど……最後には分かってくれた。ボコボコに殴り合って、言いたい事を全部吐き出して、気付けなかった事に気付けたから……分かり合えたんだ」

 

「ヨタ話か?」

 

「ラースも最初はゲス野郎だったが……テメェはそれ以上のクソ野郎だ……!自分の息子を“ゴミ”呼ばわりする奴は―――親でも何でもねぇッッ!」

 

新は全身から竜のオーラを爆発させて一気に距離を詰め、『初代キング』の顔面に強烈な一撃を与えた

 

更に左の前蹴りを腹部に打ち込み、『初代キング』の体を“くの字”に曲げ―――追い打ちとばかりに下がってきた頭部を右膝でカチ上げた

 

両手を合わせたハンマーナックルで『初代キング』を叩き落とす新

 

落下していく『初代キング』は途中で体勢を立て直し、空中に留まる

 

自分の頭上にいる新を見上げ―――口元を歪ませた

 

「グハハハハハハハハハハハッ。劇的に強さが増しておるようじゃのう。壊し甲斐がありそうじゃぁ……ッ」

 

ドスの利いた声音と共に『初代キング』の全身から凄まじいオーラが滲み出てくる

 

左手の籠手―――『邪眼の闇籠手(ネメシス・ギア)』の目玉が一層妖しく輝く

 

背中から骨の腕が1本生え、周りに無数の聖剣と魔剣(まけん)が出現する

 

邪眼の闇籠手(ネメシス・ギア)』は神器(セイクリッド・ギア)をコピーする人工兵器

 

今出してきたのは恐らくジークフリートの亜種『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』と祐斗の『魔剣創造(ソード・バース)』、ジャンヌの『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』の能力だろう

 

「京都で複製させてもらったガキどもの力は悪くない。さて……壊してやるか」

 

その一言の後、空中に漂う聖剣と魔剣の群れが一斉に襲い掛かっていった

 

新はそれらを剣で弾いたり、身を(よじ)って(かわ)していく

 

だが、その間に『初代キング』は距離を詰め―――自前の腕と合わせた3本の腕で殴り掛かる

 

殴打と共に爆発が起き、爆炎に呑み込まれる新

 

「ぐ……ッ!こいつはヘラクレスの……ッ!」

 

「言っただろう?京都で複製させてもらったとなぁ!」

 

『初代キング』は口から闇の波動を吐き出した

 

更なる追撃の対処に間に合わず呑み込まれてしまう

 

爆煙の中から出てきた新は身体中から血を流し、口からも血を吐き出す

 

『やっぱりあの籠手は厄介だな……ッ。時間も掛けられねぇ、一気に勝負を決めたいところだ……ッ!』

 

新も背中から漆黒の巨腕を出して『初代キング』に向けて放ち、自らも突貫していく

 

漆黒のオーラを纏った6本の巨腕が『初代キング』を襲おうとするが……

 

Explosion(エクスプロージョン)

 

ズビィィィィィィイイイイイイッ!

 

無機質な音声が発され、『初代キング』の左手から莫大なオーラが放射された

 

そのオーラが突き進んできた漆黒の巨腕を全て焼き払い、新の肩を(かす)める

 

今度は『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の能力を使用してきた

 

多種多様な『邪眼の闇籠手(ネメシス・ギア)』の能力に翻弄されるが、それでも『初代キング』の攻撃を掻い潜っていく

 

ようやく肉薄する距離にまで辿り着いた新は剣に魔力を流し込み、横一閃の剣戟を繰り出した

 

その瞬間、『初代キング』の体が霧の如く変化して新の剣戟が無力化される

 

上下に分離した『初代キング』の肉体が元に戻り、再び爆発付きの殴打で吹き飛ばす

 

不可解な事態にさすがの新も驚かざるを得なかった

 

「な、何だよ今のは……?剣が効かなかった……ッ?」

 

「クハハハハハッ。驚いておるな?当然じゃ。この力は京都では見せてなかったからのう。何せ現世に出たばかりで力が不安定だったんでな。ならば、教えてやる。余は肉体を霧状に変化する事で如何なる攻撃も無力化できるのだよ。それゆえに三大勢力も、貴様の親父も余を倒せず―――“封印”と言う方法しか成し得なかった」

 

『初代キング』の全身から濃い闇が霧状に撒き散らされ、周辺一帯に漂い始めた

 

怪訝そうに周りを見渡す新

 

すると、突如肉体に異変が生じる……

 

急に咳き込み、全身が重い倦怠感に襲われる

 

『な、何だ……ッッ?急に体が疲れてきやがった……っ。目もおかしい……。この黒い霧のせいか……っ?』

 

「苦しいであろう?余の闇は生きとし生ける物の命を喰らう毒だ。口や肺だけでなく、皮膚からも入り込み内部から(むしば)む。耐性の無い者ならば数分足らずで死に追いやるぞ。貴様は余の鎧とその力のお陰で幾分か耐えられるだろうが―――死ぬのも時間の問題だ」

 

「ジワジワ削り取るってのか……ッ!嫌な殺り方だ、クソッタレ……ッ!」

 

新は両手両足にオーラを纏わせ、『初代キング』に拳と蹴りを何度も放った

 

しかし、体を霧状に変化させる『初代キング』には全く通用しない

 

嘲笑うかのように『初代キング』は新を痛めつけていく

 

霧の状態から伸ばした爪で切り裂き、伸ばした腕で殴る

 

その度に爆発が新を呑み込み、血飛沫(ちしぶき)が飛び散る

 

『くそ……ぉっ。こんなのって有りかよ……っ?こっちの攻撃は当たらねぇのに、向こうの攻撃は当たるって……反則だろ……ッッ』

 

全く勝機が見えてこない新に対し、『初代キング』は大口を開けて嘲笑う

 

「無駄な足掻きと言うものだ。京都で余を逃がしたのが運の尽きじゃったのう。神風の助力もあってか、余は本来の力を取り戻した。元々余の肉体は“闇の塊”。それは生物が孕む負の感情と密接な関係にある。怒り、憎悪、悲しみ、怨み、嫉妬、欲望、あらゆる負の感情がこの世を彷徨(さまよ)い続け、やがて集結した結果―――余と言う存在が誕生してしまったのだ」

 

「……っ?どういう事だ……っ!?」

 

「つまり、闇人(やみびと)の真祖たる余は―――貴様らの様な生物が抱える“負の感情の集合体”。ゆえに闇その物と言うわけじゃ」

 

遂に明かされた『初代キング』の正体……

 

それは―――人や動物など、この世に生きるもの全てが持つ“負の感情の結晶”

 

怒りや憎しみと言った負の感情が(あて)もなくこの世を彷徨い続け、それらが次々と同じ負の感情を呼び寄せた

 

戦争や貧困、飢餓、種族差別、様々な問題が引き金となって負の感情を撒き散らし、不幸にも1つの存在を具現化させてしまった……

 

それが『初代キング』の誕生であり、闇人(やみびと)と言う魔族の始まりでもあった

 

「元々は貴様らの理不尽な感情によって生まれた。つまり、我々闇人(やみびと)にもこの世を統治する権利がある。それを貴様らは図々しくも危険視した挙げ句―――淘汰した。心底呆れ果てたものじゃ。貴様らの様に曖昧な倫理観で生きる者など、この世に必要無い」

 

「だから……テメェら以外の種族や、テメェの考えに賛同しない奴は滅ぼすってのか……ッ!?」

 

「その通りだ。貴様もマヤも、出来損ないの愚息(ゴミ)も、何もかも滅ぼしてやろう」

 

絶滅を宣告する『初代キング』に新は(いきどお)り、全身から発するオーラを更に(たかぶ)らせた

 

「そんな話を聞かされたら、黙って見過ごすわけにもいかねぇなぁ……ッ!ここでお前を倒すッッ!」

 

「グハハハハハハハハハハハッ!貴様にそれが出来るのか?貴様の攻撃は余に通用せず、更に我が闇によって体を蝕まれておる!多少抵抗力があったところで死を(まぬが)れるわけではない!分かるか?余が力を取り戻したその時から―――既に貴様に勝機は無いッッ!」

 

『初代キング』は霧状の体を利用して腕を伸ばし、鋭い爪で新の脇腹を(つらぬ)

 

肉と血が飛び散り、更に爆破の追撃で新の体が大きく吹き飛ぶ

 

逃がすまいと『初代キング』は聖剣と魔剣の群れを創り、新に向けて放った

 

聖剣と魔剣の豪雨が襲い掛かり、新を切り刻んでいく

 

残虐かつ苛烈な攻撃も苦しいが、何よりも『初代キング』にダメージを与えられないのが大きな要因だった

 

周囲にまとわりつく闇の霧が体を蝕み、更に霧状に変化して新の攻撃を無力化してくる……

 

もはや成す(すべ)は無いのか……?

 

『どうすれば……どうすれば奴に攻撃が届く……ッ⁉』

 

新は必死に頭を働かせた結果―――ある方法を思い付いた

 

しかし、思い付いた策はあまりにも危険で最悪死ぬ恐れもある

 

『…………考えても仕方ねぇ。やってやる……ッ。仮にしくじっても、こいつを止められるなら……ッ!』

 

意を決した新は聖剣と魔剣の群れを全て打ち払い、『初代キング』を睨み付けた

 

「何だ、その目は?まだ勝機があるとでも言いたげな目をしておるな」

 

「僅かな可能性があるなら、それに賭けるしかねぇよ……っ。今までもそうやって生き延びてきたんだからな……ッ」

 

「今まではそうだったかもしれぬが、余の前では何の意味も無い。貴様はここで無様に果てるのだ」

 

「無様には死なねぇよ……っ。ここでお前を取り逃がしたら、俺がここに残った意味も無くなる……ッ!」

 

「その意気こそが無駄な事なのだよ。三大勢力も、余の鎧を奪った貴様の親父でさえも滅する事が出来なかった。たかが独りの悪魔風情に何が出来る?」

 

「“何が出来るか”じゃねぇ……“何をするか”だ……ッッ!俺は悪魔の力を持ち、闇皇(やみおう)の鎧を受け継ぎ……そしてリュオーガ族の血を引く者―――竜崎新だッ!」

 

新は―――口を大きく開いて自分の周囲に漂っている闇の霧を吸い込み始めた……!

 

新が思い付いた策―――それはリュオーガ族の“竜の呼吸法”を駆使して闇を喰らい取り込むと言う荒業だった

 

ラースとの戦いの後、新は密かに“竜の呼吸法”を練習し、荒削りながらも会得していた

 

完璧に会得していれば吸い込んだものを力に転換できるのだが、今の新では吸い込むのがやっとである

 

新の行動に捕らえられたマヤどころか、『初代キング』すらも仰天した

 

「貴様……自分が何をしているか、分かっておるのか……?」

 

「ああ、分かってる。親父は鎧を宿すまでは一端(いっぱし)の人間だった。だが、お前の鎧に体を侵され、俺に鎧を移した直後に闇人(やみびと)化しちまった。それと同じ事をやってやるんだよ……ッ!」

 

「―――ッ!?バカな……ッ!我が闇は生ける物の体を内より破壊し、命を喰らうものぞ!その闇と同化するなど不可能だッッ!」

 

生憎(あいにく)、俺は前に似たような事をやって成功してんだよ。お前の右腕―――伊坂を取り込んでやった。だから、この闇を大量に吸い込んでも少しはイケると踏んだ……ッ!」

 

しかし、いくら耐性が付いたと言えどやはり『初代キング』の闇は想像以上に濃密で、吸い込む度に全身に激痛が走る

 

血管から悲鳴を上げ、皮膚も所々(ところどころ)裂け始め、血があらゆる箇所から噴出していく

 

「ダ、ダメです……っ。今すぐやめてくださいっ!それ以上吸い込んだら本当に死んじゃいますよっ⁉」

 

マヤが必死に呼び掛けるも、新は吸い込みを止めなかった

 

全ては『初代キング』を倒す為に……っ

 

闇の霧を吸い込んでいく内に変化が訪れる

 

新の体が端々から黒く塗り潰されていく

 

口から始まり頭部、肩、腕、手、胴、足の先まで黒く染まる

 

やがて周りに漂っていた闇の霧を吸い終わると……新の双眸(そうぼう)が真紅に輝き、眼前の『初代キング』に鋭い眼孔を見せつけた

 

目の前の事態に『初代キング』は信じられないとばかりに仰天する

 

「まさか、本当に我が闇を()ろうたのか……!?あれだけ濃い闇を一挙に喰らえば即死の筈……ッ!それをこやつは……ッ!」

 

ワナワナと震える『初代キング』

 

一方、全身が漆黒に染まった新は全身から闇を噴き出し、『初代キング』に向かって飛び出していく

 

両の拳からも闇を噴き出させ、殴り掛かる

 

空を切る様な音と同時にドゴッと鈍い音が発せられる

 

―――『初代キング』に攻撃が通じたのだ

 

体を霧状に変化させ、新の攻撃を無力化してきた『初代キング』に初めてダメージを与えられた……

 

「ぐあ……っ!余に攻撃が当たる……っ⁉我が闇を喰らった事で、余と同じ体質の存在になったとでも言うのか……!?バカな……こんなバカな事、あり得ぬ……ッッ!」

 

「確かにバカげた方法だよな……ッ。正直、かなり(こた)えてる……ッ。今にも意識が吹っ飛びそうな痛みが体ん中を走ってやがる……っ。けどよぉ、今はこうでもしねぇとお前を倒せそうにねぇんだ……ッ!」

 

痛み、吐き気、震えが止まらぬ体に鞭を打ち付け、新は闇の拳を何度も放り込む

 

新の拳が打ち込まれる度に『初代キング』の体が大きく(うね)り、霧状の体が弾け飛ぶ

 

異様な強化を遂げ、自分にダメージを与えていく新に―――『初代キング』は憤慨した

 

「おのれェェェェェ……ッ!たかが(いち)悪魔ごときが、調子に乗りおってェェェェェ……ッ!気に入らぬゥゥゥッ!気に入らぬゾォォォォッ!」

 

怒り狂った『初代キング』は3本の腕を伸ばし、鋭い爪を突き立てようとする

 

しかし、その攻撃は新の闇の拳によって弾かれてしまう

 

新は両足からも闇を噴出させ、『初代キング』の背中から生えた腕に強烈な蹴りを入れた

 

その蹴りを喰らった腕は根元から千切(ちぎ)れ飛び、空中で霧散した

 

勢いを付けた新の猛攻は留まらず、更に蹴りも加えて『初代キング』を打ちのめしていく

 

新もこれまでのダメージと闇の霧を吸い込んだ副作用で全身の痛みと裂傷が進み、口と鼻からも血が噴き出す

 

今はそれを(かえり)みず、目の前の『初代キング』を倒す事に専念していた

 

「が……ッ!ぐっ、ゴボッ……ッ!ブルァァアアアア……ッッ!何故だ……ッ!何故こんなガキにやられねばならんのだ……ッ⁉余は『キング』、闇人(やみびと)の真祖であるぞッ!浅はかな思考と歴史しか持たぬ害虫風情にやられる事などぉっ、あってはならんのだァァァァァッ!くだらぬ理想や世迷い言をを吐き連ね、弱き(やから)同士で群れを作っておるこやつらごときにィィィ……何故に余が押されねばならんのだァァァァァァァァァッ!」

 

「弱いからこそ手を取り合うんだよ……っ。大事な仲間がいるから手を取り合い、大事な仲間がいるから互いに助け合う!仲間に支えられてきたから今の俺があるんだッ!テメェの様な独り善がりの奴には絶対に分からねぇ活力が、この世の中にはあるんだよッ!」

 

もう数十発は打ち込んだであろう

 

新の闇の拳と蹴りの乱舞によって『初代キング』の体はどんどん歪みを増していく

 

いくつもの穴が空き、左籠手の目玉にも亀裂が入っていた

 

「おおぉぉぉぉぉぉぉのれぇぇぇぇえええええええ……ッッ!クソガキがァァァァァッ!」

 

『初代キング』は新を突き飛ばすと―――自らの頭上に巨大な闇の塊を生み出した

 

自分の体躯の何十倍もの大きさを持つ闇の球体

 

その中で今まで喰らってきた人の負の感情が(うごめ)いていた

 

怒り、憎しみ、怨み、悲しみ、妬み、ありとあらゆる負の感情が呻き声を発する

 

「滅びろォッ、我が闇によって消え失せろォォォォォォォォオオオオオオッ!」

 

『初代キング』が腕を振り下ろすと、闇の球体は新に向かってゆっくりと進んできた

 

怨嗟を辺り一帯に撒き散らし、フィールドの崩壊を早めていく

 

新は迫ってくる闇の球体に対して構えを取った

 

右手に闇を集め、自らの魔力と合わせる

 

揺らめく闇と魔力が合わさり―――手から黒い火竜が生み出される

 

いつものと違って禍々(まがまが)しさが格段に増しており、火竜の目が不気味に輝いていた

 

「消えるのは―――テメェだァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアッッ!」

 

ゴオオオオオォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

新の手から一気に解き放たれた黒い火竜は猛然と突き進み、『初代キング』が放った闇の球体を容易く(つらぬ)いた

 

そして、黒い火竜が霧状に変化している『初代キング』を一片も逃さず呑み込む

 

極大の火竜に呑み込まれた『初代キング』は体の端々から崩れ、火竜に焼き尽くされていく

 

「……クハッ、グハハハハハハハハハハハ……ッ!これが……余の終わりか……!余の闇で余が終わるとは……ッ。何と言う皮肉だ……!だが、いずれ貴様も死に至るぞ……!余が消えたところで、貴様は死を(まぬが)れたわけではない!我が闇によって滅び逝くのだッッ!グハハハハハハハハハハハ……ッ!」

 

自嘲を交えた断末魔を放った直後、『初代キング』は粒子状に崩壊し―――黒い火竜に焼き消されていった……

 

『初代キング』の消滅を確認した新は右手をダラリと垂れ下げ、途端に口から黒ずんだ血を吐き出す

 

しかし、のんびりしている暇は無い

 

痛む体に鞭打ってフラフラと飛び、闇に捕らわれているマヤを解放する

 

「よぉ……無事か……?」

 

「それはこちらの台詞です……!あなた、なんて無茶な事を……!」

 

「俺と一誠は無茶が売りなんでな……。こうでもしねぇと奴に太刀打ち出来なかった……ッ。リアスの前でこんな事したら、間違いなくキレられてただろうな……」

 

自嘲する新の視界に、遠くの方で噴き上がった紅い帯状の極大な魔力が映り込む

 

それは一誠の砲撃だと理解できた

 

「……どうやら一誠(あいつ)の方も勝負が着いたみたいだ……。じゃあ、さっさと向かうか……。もう、身体中が(いて)ぇよ……」

 

「これ以上の無理はダメですっ!私が運んでいきますから、あなたはおとなしくしてください……っ!」

 

ふぬぬと(りき)み顔で新を運ぶマヤ

 

頬を膨らませ、顔を真っ赤にしてフラフラと飛ぶのが精一杯だった……

 

だらしない格好で連れていかれる新は自嘲する

 

「……ホント俺って……最後の最後で締まらねぇ事が多いな……っ」

 

 




遂に『初代キング』を倒した!……が、その代償はあまりにも大きい……

次回でこの11巻編がラストになるかも⁉

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