ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

189 / 263
さあ、待ちに待った爆笑回です!


乳力(にゅうパワー)炸裂!

新と一誠による2度の砲撃、オーフィスの不安定な一撃で疑似空間がバチバチと悲鳴を上げていた

 

強力な砲撃を受けても未だに結界が健在なのは装置がまだ破壊されていないのと、使い手のゲオルクの能力が凄まじい証拠だろう

 

駐車場は見る影も無く崩壊しており、足場なんて無い程にまで地が裂けていた

 

宙に舞う粉塵も大量である

 

その駐車場に新と一誠が降り立つ

 

仲間達は砲撃から生き延びた死神達と戦闘を継続中

 

粉塵が落ち着いてきたところで戦闘の光景が目に飛び込んできた

 

祐斗が神速で死神を斬り伏せ、アザゼルは巨大な光の槍で大勢の相手を一気に消し去る

 

「雷光よ!」

 

朱乃は指先から膨大な量の雷光を生み出して、死神の大群を一網打尽

 

「消し飛びなさい!」

 

リアスも巨大な滅びの弾を幾重にも撃ち出し、風景ごと死神の群れを消滅させていく

 

彼女達の能力はこの様な集団戦だと遺憾無く威力を発揮する

 

広範囲に大きく効果を出すので、相手が一点突破の強敵でもない限りは相当な戦果を生み出す

 

『下級の死神でも下手な中級悪魔よりはよっぽど強いぞ』

 

籠手のドライグがそう言う

 

つまり、リアス達はほぼ全員が今いる死神等のランク相手なら余裕で(ほふ)れると言う事だ

 

リアスと朱乃が新と一誠の近くに飛び降りてくる

 

「イッセー!譲渡でパワーを引き上げてちょうだい!一気に消し飛ばすわ!」

 

「同じく!お願いしますわ!」

 

「了解!」

 

一誠はドラゴンの力を高めて両者の肩に手を置く

 

一誠の譲渡は2人同時まで可能

 

Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)‼』

 

Transfer(トランスファー)‼』

 

パワーが譲渡され、リアスと朱乃のオーラが大きく膨れ上がった

 

2人は空高く飛び上がり、死神の大群に極大な滅びの一撃と雷光を解き放った

 

疑似空間の上空を覆い尽くす程の滅びの渦と雷光の輝きが広がる

 

リアスと朱乃の2人だけで死神を蹂躙出来そうな勢いだ

 

『お前達の砲撃とオーフィスの攻撃、更に「初代クイーン」とやらの攻撃でかなりの死神が吹っ飛んだのだが……。あの2人も基本スペックが高いせいか、赤龍帝(せきりゅうてい)の力を譲渡するだけでこれだけのものになる』

 

「結構スタミナは消費したぞ。特にオーラの消耗が酷い」

 

「ここにいる死神どもを壊滅しなきゃ元手が取れないからな」

 

「やあ、久しいね。赤龍帝に闇皇」

 

前方から新と一誠に話し掛けてくる者がいた

 

魔剣を数多く帯剣した白髪の優男―――ジークフリートである

 

「ジークフリートか。お前が相手をするのか?」

 

新がそう言うとジークフリートは肩を(すく)めた

 

「それは楽しいね。今のキミ達なら僕と良い勝負が出来るだろう。―――けど、先にこちらの方々の相手をして欲しいな」

 

音も無くジークフリートの周囲に死神の群れが集まってくる

 

リアス達が相手をしている死神に比べるとローブと鎌の装飾が凝っており、殺気も強い

 

「死神か。鎌に当たったらヤバいんだよな」

 

「要は当たらなきゃ良いだけだ」

 

新と一誠はそれだけ確認して迫り来る死神達と対峙した

 

死神達の鎌による斬戟(ざんげき)を最小の動きで避けきり、新は剣で切り払い、一誠はドラゴンショットで倒していく

 

更に数を増やされても問題なし、着実に死神を倒す

 

2人の戦闘を見てジークフリートは驚愕していた

 

「―――っ!赤龍帝と闇皇の相手は中級クラスの死神なのに!」

 

『そ、そうなのか。でも、相手できるレベルだぞ?鎌の攻撃は読みやすいし、速度もそれ程でもないから避けられる』

 

『今までの相手がバカみたいに強すぎたからな。これが一般レベルなんじゃねぇの?』

 

そんな事をヒソヒソ話しながら死神達を次々と倒していく新と一誠

 

「驚いたな。通常の状態でも充分に強いなんてね」

 

「曹操には全く通じなかったけどな」

 

一誠の言葉にジークフリートは苦笑する

 

「彼はまたスペシャルだからさ。気にしない方が良い。今のキミでも充分過ぎる程の強者だよ」

 

ジークフリートから賛辞が送られる

 

この脱出作戦が始まる前、一誠は「俺が曹操に勝つにはどうしたら良いでしょうか?」とアザゼルに訊いた

 

一誠の力と神器(セイクリッド・ギア)の事をよく理解しているアザゼルだからこそ訊いてみたらしい

 

『……今のお前はある意味で曹操よりも強いさ。攻撃が当たればの話だが。……だが、まるで当たる気がしないんだろう?そうだな……奴専用の必殺技でも作って初見で葬るのが1番だろうな。無論、あのバカげた技量を超えられるだけの技ならな』

 

ヴァーリですら強敵と賞賛する曹操を倒せるだけの技……逆立ちしても到底思い付きそうにない

 

『……はぁ、なんで俺を狙う敵って、こんなアホみたいに強い奴ばかりなんだ?俺、少し前までただの高校生だぞ?強ェ野郎ばっかり群がってくるとか……しまいには泣くぞ!』

 

『―――とか考えてるんだろうな、一誠(コイツ)

 

「だから言ったろ?お前は現時点でも相当強いってな」

 

そう言いながら新と一誠のもとにアザゼルが下りてきた

 

「サイラオーグや曹操と戦っていりゃ、このぐらいの死神じゃ束になってもお前の相手にはならないだろうよ。ま、新や俺にとっても同じだ」

 

≪死神を舐めてもらっては困ります≫

 

突如駐車場に響き渡る謎の声

 

不穏な気配を感じて、そちらに視線を送れば―――空間に生じた歪みから何かが現れようとしていた

 

歪みの中心から姿を現したのは、装飾が施されたローブに身を包み、道化師の様な仮面を着けた死神らしき者

 

ドス黒い刀身の鎌を(たずさ)え、明らかに他の死神よりも高位の存在だと認識出来た

 

アザゼルがその者を見て驚愕する

 

「貴様は……!」

 

≪初めまして、堕天使の総督殿。私はハーデスさまに仕える死神の1人―――プルートと申します≫

 

「……ッ!最上級死神のプルートか……ッ!伝説にも残る死神を寄越すなんてハーデスの骸骨オヤジもやってくれるもんだな!」

 

≪あなた方はテロリストの首領オーフィスと結託して、同盟勢力との連携を陰から崩そうとしました。それは万死に値します。同盟を訴えたあなたがこの様な事をするとは≫

 

「……なるほど、今回はそう言う事にするつもりか。そう言う理由をでっち上げて俺達を消す気か!その為にテロリストどもと戦っていた俺達に襲い掛かったと!どこまで話が済んでるんだ⁉この道化師どもが!」

 

≪いずれそんな理由付けもいらなくなりますが、今回は一応の理由を立てさせて頂いただけです。―――さて、私は悪魔や堕天使に(おく)れを取るほど弱くはないですよ≫

 

「と言うよりもお前ら、単に俺達に嫌がらせしたいだけだろう⁉」

 

≪ええ、そうとも言いますね。死神にとって悪魔も堕天使も目障りですので≫

 

「―――ッッ!舐めてくれるもんだなッ!」

 

≪舐めてはおりません。真剣です。偽者と言う事になったオーフィスをいただきます≫

 

そう言った直後に最上級死神プルートの姿が消え去り、金属音が聞こえてくる

 

アザゼルは人工神器(セイクリッド・ギア)の槍で死神の鎌を受け止めていた

 

「……さっき曹操の野郎にやられたばかりで人工神器(セイクリッドギア)も回復しきってないが、出し渋りは危険を(ともな)うな!ファーブニル!もう少し踏ん張ってもらうぞ!」

 

アザゼルは槍から黄金のオーラを発生させて、素早く全身鎧(プレート・アーマー)を装着

 

12枚の黒い翼を展開させ、プルートを空中に押し上げて飛び出していった

 

駐車場の上空で派手に剣戟を始める両者

 

死神プルートの動きはアザゼルに負けず劣らずの速度で、漆黒の像が幾重にも残る程だった

 

「先生!」

 

「イッセー、来るな!こいつの相手は俺がする!」

 

そう言うなり、アザゼルはプルートとの空中戦を継続

 

激突する度に宙が大きく震える

 

「さて、キミ達の相手は僕じゃないとダメなんだろうね」

 

今度はジークフリートがそう言ってきた

 

既に龍の腕が4本生えており、自前の腕と合わせた6本の腕に魔剣を握っていた

 

ジークフリートの神器(セイクリッド・ギア)能力は腕の本数分の倍加

 

つまり、4回の倍加を(おこな)う事が出来る

 

身構える新と一誠だが―――そこに祐斗が現れ、2人に一言告げる

 

「悪いね、イッセーくん、新くん。―――彼は僕がやる」

 

祐斗がハッキリと敵意を向けるのは珍しく、目線を真っ直ぐとジークフリートに向けていた

 

ジークフリートは祐斗の登場と口上に苦笑した

 

「木場祐斗か。新しい能力を得たそうじゃないか」

 

「京都であなたに圧倒されたのが個人的に許せなかったもので。赤龍帝と闇皇を相手に修行を重ねたんだ」

 

「それは面白い」

 

祐斗は手元に聖魔剣(せいまけん)を新たに作り出し、ジークフリートに構える

 

ジークフリートも6本の魔剣を祐斗に向けた

 

祐斗が瞬時にその場から消え去り、金属音が前方から聞こえてくる

 

ジークフリートが剣を動かす先に火花が生まれていた

 

高速で繰り出す祐斗の剣戟をジークフリートは最小の動きで(さば)いている

 

祐斗の姿はもはや視認すら出来ない程速いが、以前の戦いではジークフリートに全く届かなかった

 

それもゼノヴィアと2人がかり……

 

『何か秘策でもあるのか、木場……』

 

心配げに見守っていた一誠だが、ジークフリートの衣服に傷が生じていた

 

僅かだが、祐斗の剣戟がジークフリートに届きつつある

 

しかし、ジークフリートはまだ余裕の笑みを浮かべていた

 

「なるほど。以前よりも速度と技量が上がっているね。けれど、キミの剣は僕に切っ先が触れる程度でしかないだろう」

 

ジークフリートの頬に一筋の傷が生まれる……

 

以前よりも攻撃は通じているが、深い斬り込みはまだ届かないようだ……

 

ジークフリートの魔剣が光る

 

「ノートゥング!ディルヴィング!」

 

魔剣の1本を横に薙ぐと剣戟と共に空間に大きな裂け目が生まれ、更に他の魔剣を振り下ろすと地響きと共に大きなクレーターが作り出される

 

どうやらノートゥングは切れ味重視、ディルヴィングは破壊力重視の魔剣のようだ

 

「次はこれでどうかな!バルムンク!」

 

ドリル状の莫大なオーラを纏った魔剣バルムンクを祐斗にむけて突き出すと―――剣から放たれた禍々(まがまが)しい渦巻きが空間を大きく削りながら襲い掛かっていく

 

祐斗は得物を聖剣にチェンジすると素早く龍騎士団を生み出し、それらの半分を盾にした

 

強大な渦巻きのオーラによって、龍騎士団は無惨にも四散していく

 

残った半数がジークフリートに高速で斬りかかっていく

 

「ハッ!ダインスレイブ!」

 

ジークフリートが魔剣ダインスレイブを横に薙ぐと地面から巨大な氷の柱が祐斗に向かって次々と発生し、龍騎士団を貫いて凍らせていく

 

(はかな)い音を立てて氷と共に龍騎士団は散り逝く

 

ジークフリートの魔剣コレクションによる攻撃は相変わらずの猛威を振るっていた

 

残りの龍騎士団がジークフリートに斬りかかるが、ジークフリートは祐斗の創った龍騎士団の弱点を察したのか―――龍騎士団の剣戟を体捌きだけでやり過ごす

 

「その新しい禁手(バランス・ブレイカー)の弱点は少しの手合いだけで理解できた。―――キミの能力を龍騎士達に反映出来るんだね?けれど、技術はまだ反映出来ていない。速度だけの騎士団ではこの僕に通じるわけもない!」

 

ジークフリートが最後の1体を軽く受け流そうとしたその時―――ラスト1体の龍騎士は今までの龍騎士とは違い、軽やかな動きを見せてジークフリートの龍の腕を1本切り落とした

 

同時にジークフリートの体が大きく仰け反り、苦痛にまみれた表情となった

 

自身を斬った龍騎士に視線を配らせるジークフリート

 

龍騎士は兜を外す―――そこには祐斗の姿が

 

「……バカな……ッ!では、あちらのキミは!」

 

少し離れた位置で龍騎士団に指示を飛ばしている祐斗だが……そちらの方は姿が徐々にぼやけていき、遂には消えていった

 

龍騎士姿の祐斗は甲冑を脱ぎ捨てると不敵に笑む

 

「あちらの僕は幻術ですよ。魔力で作り出したもの。本物の僕は龍騎士の鎧を身に纏い、騎士団に紛れ込んであなたが油断するのを待っていたんです」

 

「マジかよ!あいつ、そんな事をやっていたのか!」

 

驚く一誠を他所に祐斗が話を続ける

 

「盾にした時に紛れたんだ。そして、あなたが僕の龍騎士団の弱点を把握して、油断するのを待った。案の定、あなたは僕の能力の弱点を見つけ、油断してくれた。―――相手の弱点を探るのが英雄派の戦い方でしょうから。それを逆手に取りました」

 

この土壇場で自分の能力の弱点を逆に利用した祐斗

 

ジークフリートは自分の過失に憤慨している様子だったが、それ以上に驚いてもいる

 

「このダメージ……キミは龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の力を得たのか!」

 

ジークフリートの言葉に新と一誠も驚き、祐斗が手に持つ聖剣を前に突き出して言う

 

「ええ。―――『龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の聖剣』、あなたの神器(セイクリッド・ギア)が龍―――ドラゴンを冠する以上、例外無くこれには(あらが)えない」

 

「……龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の魔剣、聖剣は神器(セイクリッド・ギア)で創り出すのが1番困難だと言われていたんだけどね。発現してしまったのか。大した才能だ」

 

「元々龍殺し(ドラゴンスレイヤー)についてはイッセーくんが再び暴走した時用の止める手段の1つとしてディオドラ・アスタロト戦後すぐにアザゼル先生から打診されていたんだ。龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の聖剣、または魔剣をね。勿論、龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の聖魔剣にも出来る」

 

祐斗は苦笑する

 

「けれど、その後イッセーくんが『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』をやめて、暴走しない道を選ぼうと模索していたから、僕は龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の聖魔剣の修行を中断していた。でも、あなたに敗北した後、再び発現を目指したんだ」

 

祐斗の言葉にジークフリートは悔しそうに歯噛みしていた

 

よほど虚を突かれたのが屈辱だったのだろう

 

「さすがね」

 

いつの間にか新と一誠の近くに下りてきたリアス

 

そのまま言葉を続ける

 

「新、イッセー、祐斗と毎回トレーニングしているでしょう?」

 

「ああ、そうだけど」

 

「……私はそれが凄いと思うの。あなた達とそこまで付き合える祐斗の実力に感服するわ。今のあなた達は相当な強さを持っている。全力を出し切れば、獅子の神滅具(ロンギヌス)と同化したあのサイラオーグと戦える程よ。そのあなた達と毎回トレーニングに付き合える祐斗をどう思う?」

 

「生身で俺と新に付き合える時点であいつもバケモノですよ」

 

祐斗は弱点とされていた防御力を高める事をほぼ捨て、「当たらなければ良い」と言う持論を極めようとしている

 

防御を捨て、回避に全てを費やしているのだ

 

「新とイッセーのパワーの陰に隠れてしまうけれど、あの子も相当な手練れに育っているわ。私から見ればあなた達と祐斗は若手悪魔を代表できる程の実力者よ」

 

自慢の拳属を誇るようにリアスは笑んでいた

 

「赤龍帝と闇皇との修行が僕をどこまでも高まらせてくれる。一度、彼らとのトレーニングをオススメするよ。―――ただし、毎回死ぬ覚悟を持って臨まないといけないけどね。イッセーくんと新くんは手加減なんてしてくれないから」

 

祐斗にそう言われたジークフリートが息を吐く

 

「……そうだね。それも考えよう。けれど、まずはこれらを退けてからだよ」

 

ジークフリートの周囲に霧が発生し、そこから死神の大群が再び姿を現す

 

ゲオルクが『絶霧(ディメンション・ロスト)』を介して外部から死神を召喚してきたのだろう

 

駐車場を埋め尽くす勢いで出てくる死神

 

「上手く鎌を避けきったキミ達だが、さすがにこの物量をぶつければ鎌も当たるよね」

 

ジークフリートは愉快そうに笑んでいた

 

もはや物量作戦、何体やられても鎌さえ通れば良いと言う態勢だ

 

「……あらあら、これはちょっと大変ですわね」

 

空中で雷光を落としていた朱乃も新達のもとに合流してきた

 

新、一誠、リアス、朱乃、祐斗は1ヶ所に固まって構える

 

死神の数は軽く見積もっても1000体以上……

 

駐車場、ホテルの上下、空中にも死神が跋扈(ばっこ)している

 

アザゼルとプルートの一騎打ちだけ別世界の如く誰も近づかない

 

一気に斬りかかられたら避けようも無い……

 

特に新と一誠は先の砲撃によってオーラを消費し過ぎている

 

次の一手に苦慮していると―――

 

『やあ、兵藤一誠。ピンチのようだね』

 

『それは大変だ』

 

『死神はとても厄介だ』

 

一誠に話しかけてくる謎の声

 

それは神器(セイクリッド・ギア)の深奥に眠る歴代所有者のものだった

 

一誠は目を閉じてそっちに意識を向ける

 

歴代の所有者達は何故かタキシードにワイングラスと言う紳士の出で立ちで椅子に座っていた

 

その内の1人が空っぽのグラスを揺らしながら紳士的な口調で話す

 

『ふふふ、こんなピンチを抜け出すにはあれしか無いんじゃないかな?』

 

『そうさ!あれしかない!』

 

『あれだろう!』

 

「あれって、まさか『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』とかまた言うんじゃないでしょうね⁉」

 

危惧した一誠の意見に歴代の所有者達はチッチッチッと指を横に振った

 

『違う!』

 

『そう、私達は「覇龍(ジャガーノート・ドライブ)」を卒業したのだ!』

 

『もっと素晴らしいものをキミ達に教えてもらったからね。―――そう』

 

『『『『『『乳力(にゅうパワー)をッ!』』』』』』

 

「…………う、うん……?何を言うとるんだぁぁぁぁぁぁっ⁉何を言い出すかと思えば乳力(にゅうパワー)⁉それは先生が提唱したとんでもないものでして、実証された力とは違うんですよ⁉」

 

一誠が猛抗議するものの、歴代の所有者達は聞く耳を持たず白い世界の宙に映像を映し出した

 

そこには見覚えのある乳―――と言うより、新の隣にいるリアスのおっぱいだった……

 

歴代の所有者の1人が宙に映し出された乳に指を差す

 

『―――あの乳に頼ろうじゃないか』

 

『そうさ、あの乳は未来を守るおっぱいドラゴンと同じ様におっぱいカイザー……否、オッパイザーの(みなもと)なのだからね』

 

『私達はキミ達に触れて、おっぱいを(たしな)む紳士になれた。ふふふ、悪くない気分だ』

 

「ゑっ⁉何を口走っているのこの人達⁉わけが分からないよ!ってか、オッパイザーって何だ⁉新か⁉新の事を言ってんの⁉変な呼び名を次々と生み出さないでくれ!後で俺が殺されるから!」

 

嘆く一誠に歴代の所有者達は真剣な表情で言い放った

 

『―――スイッチ姫のステージを再び上げる時が来たようだ』

 

その一言に一誠は言葉を失った

 

“エロい事に……否、エライ事になろうとしている……!”と

 

「せ、先生っ!大変な事になってる!」

 

「なんだ、バカ野郎!こっちは死神さまと超絶バトル中だ、くそったれ!って、この会話!タンニーンから聞いた話と被るんだが⁉まさか、あれか⁉あれなのか⁉」

 

「―――ッ!……今、猛烈に嫌な予感が走ってきた……ッ」

 

死神プルートの鎌を掻い(くぐ)るアザゼルと嫌な予感を察知した新に向かって一誠は言った

 

「歴代の先輩達が部長のおっぱいを次の段階に進めようって言ってきてるんだ!しかも、新をオッパイザーって呼んでる!」

 

「ブッ⁉」

 

それを聞いた新は目玉が飛び出す程に仰天

 

逆にアザゼルは狂喜乱舞した

 

「きたぁぁぁぁぁっ!よぉぉぉぉぉしっ!今すぐやれ!つつけ!揉め!触れっ!しゃぶれっ!ふはははははははっ!おい、英雄と死神ども!うちのオッパイザーとスイッチ姫が噂の乳力を発揮するぞ!グレモリー眷属必勝のパターンだッ!」

 

「何それ⁉なんで敵を煽ってるの⁉」

 

「一誠ェェッ!貴様なにを話していた⁉お前の変態スパイラルに俺を巻き込んでんじゃねぇェェッ!変な呼び名も定着させるなァァァァッ!」

 

「おおおお落ち着け新!俺が言ったわけじゃないんだ!先輩達と先生が勝手に呼んでるだけで!」

 

「…………まさか、そんなバカな……」

 

「なんでジークフリートが戦慄しているの⁉」

 

『いいか、後輩よ。あの乳に向けて譲渡の力を使う時が来たのだよ』

 

再び一誠の脳内に聞こえてくる歴代所有者の声

 

「じょ、譲渡の力……?ギフトを部長のお乳に使えと⁉」

 

『ああ、そうだよ。キミ達はあのお乳にギフトを使ったらどうなるか、ずっと疑問だった筈だよ。―――それが今解明されるんだ』

 

“リアスのおっぱいにギフト”

 

確かに以前、リアスのおっぱいに赤龍帝の力を譲渡したらどうなるか?と言う疑問が挙げられた

 

大きさを増すのか、美しさが増すのか、それとも弾力が増すのか……

 

いつか必ず解明したいと思っていた議題……

 

「それを今やって良いと言うのか……!」

 

一誠は荒れ狂う新の肩を掴み、その疑問の解明を提案しようとする

 

「なんだ、このクソ野郎!今なら右手以外の骨をへし折るだけにしといてやる!ここを生きて出たら完治した後に左手以外の骨をへし折ってやる!」

 

“オッパイザー”の呼び名を付けられて殺意剥き出しの新に一誠は真剣な面持ちで言った

 

「新、今こそ……部長のおっぱいに赤龍帝の力を譲渡したらどうなるか?それを解明する時が来たみたいだ。俺達の最大の探究心が明らかになる……!」

 

「――――ッ」

 

「お前だって今まで気になってきた筈だ!部長のおっぱいにギフトを使ったら、どんな現象が起きるのか!そして、それは今この場を切り抜ける最大の武器になるかもしれねぇんだぞ!」

 

「………………ッ」

 

「二度三度とは言わない!ただの一度!一度だけで良い!俺の提案を呑んでくれッ!」

 

まるでカ○ジを彷彿とさせる一誠の必死の説得に新は歯を食い縛り……遂に―――折れた

 

「………………分かった。今だけは、今だけは敢えて恥を被ってやるよ……ッ!」

 

「ホントすまない。でも、お前ならきっと分かってくれると思ったぜ。じゃあ、早速部長に―――」

 

「俺から言う。泥舟に乗った以上、トコトン沈んでやる……」

 

もはやヤケクソになっていた新はリアスに確認を取る

 

「リアス、聞いてくれ」

 

「何?今更何が来ても驚かないわ」

 

威風堂々たる覚悟を見せつけているかの様な(たたず)まいのリアス

 

新は意を決して告げた

 

「……お前の乳に赤龍帝のパワーを譲渡させてくれ」

 

「―――っ」

 

新の言葉に止まるリアス

 

まさに京都の時と同じ場面……

 

少し考えた後にリアスは力強く言った

 

「やっぱり、分からないわ。京都でもよく分からなかったし、今も正直理解が出来ない。―――けれど、分かったわ!私の胸に譲渡してみせてちょうだい!」

 

リアスの(いさぎよ)さに新は歯を噛み締め、自分自身も覚悟を決めた

 

鎧の中で号泣し、一誠に向かって叫ぶ

 

「一誠ッ!こうなった以上、覚悟を決めてやる!」

 

「よく言った!じゃあ、まずは部長のおっぱいに触れてくれ!お前を通して赤龍帝のパワーを部長のおっぱいに流し込む!」

 

新は一誠の言う通り、手の部分だけ籠手を消し―――生の手でリアスのおっぱいに触る

 

準備が整い、一誠は高らかに叫んだ

 

「いくぜ、ブーステッドギア!新を通して部長のお乳に力を流せぇぇぇぇぇっ!」

 

新の手から赤龍帝のパワーが流れ、更にそれがリアスのおっぱいに送り込まれる

 

Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)‼』

 

Transfer(トランスファー)‼』

 

「いやぁぁんっ!」

 

赤龍帝の譲渡にリアスが鳴いた―――いや、()いた……

 

その刹那―――リアスのおっぱいが紅いオーラを発し始めた

 

Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)‼』

 

一誠の宝玉から聞き覚えの無い音声が鳴り響く

 

そして、リアスのおっぱいがまばゆい輝きを放った直後―――紅い閃光が新と一誠を包み込んだ

 

アーシアの回復のオーラに似た光

 

温かな光に包まれた2人に変化が訪れる

 

「「これは―――オーラが回復していく!」」

 

先程の連続砲撃で消費されたオーラが回復していき、その光景を見ていたアザゼルが叫んだ

 

「第3フェーズだッ!リアス!お前はッ!お前の乳は第3フェーズに入ったぞ!乳力(にゅうパワー)だ!また1つ俺が唱える乳力の実在証明の証拠が見つかったぜ!」

 

アザゼルのアホな言葉はさておき、2人は砲撃の準備を始めた

 

新は竜の力を解放して両手に黒い火竜を形成し、一誠はトリアイナ『僧侶(ビショップ)』に昇格

 

両者共に死神の大群に照準を合わせる

 

「「いっけぇぇぇえええっ!」」

 

砲身から放たれる莫大なオーラの砲撃と2匹の黒い火竜が死神達を消滅させていった

 

今の一撃で死神軍団の三分の一が消えたが、またもやオーラを消費しきってしまった

 

ところが―――リアスのおっぱいから再び紅い閃光が一直線に放たれ、2人を包み込む

 

先程と同じくオーラが即座に回復

 

Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)Bust(バスト)‼』

 

紅いオーラを受けて宝玉のテンションも上がっていた

 

その光景を見ていたジークフリートが叫ぶ

 

「マズいッ!あの胸を放置しておくと危険だ!召喚に応じる胸、赤龍帝と闇皇のオーラを回復させる胸、このままでは次にどうなるか分かったものではない!真に恐ろしいのは赤龍帝でも闇皇でもオーフィスでもなく、リアス・グレモリーの胸かもしれない。赤龍帝、闇皇、リアス・グレモリー、この3人が揃うと奇跡レベルの現象が何度でも発現すると言う事か……!その中心となるのが―――あの胸だ!」

 

「んなアホな事をシリアス顔で叫ぶなッ!」

 

ジークフリートの考察にリアスの顔は真っ赤っか

 

空中でプルートと戦うアザゼルも叫ぶ

 

「さしずめ『紅髪の魔乳姫(クリムゾン・バスト・プリンセス)』と言うべきか!一言で表すなら『おっぱいビーム』!または『おっぱいバッテリー』だな!」

 

「うるせぇぇぇぇっ!黙って戦え!もしくは死ね!クソ堕天使!」

 

「変な名称とか付けないでください!あんたが言うとだいたい定着しちゃうんだよ!」

 

「……そっか、私、遂に『ビーム』で『バッテリー』なのね」

 

もはやリアスも諦めムードになっていた……

 

「あの3人を止めるんだッ!」

 

そう叫ぶジークフリートだが、新と一誠は構う事無く火竜とドラゴンブラスターを撃ち続けた

 

死神を一気に吹き飛ばし、オーラが尽きれば『おっぱいビーム(笑)』で回復させていく

 

おっぱいから紅い閃光を放ちながらリアスが言う

 

「新……、私、何だかもう色々と諦めたわ」

 

「―――ッ!ど、どういう事だ?」

 

リアスは首を振りながら悟りを開いた様な表情で続けた

 

「いえ、新たな決意表明をした方が良いわね。―――私はあなたが強くなるのなら、この胸を強化オプションにしても良いわ」

 

「な……っ、俺はお前をそんな風に思った事は1度も無いッ!俺もお前も一誠の変態スパイラルに巻き込まれただけだ!」

 

リアスは微笑して頷く

 

「ええ、分かってる。―――でも、私の胸はそれを選んでしまった。ふふふ、きっとあなたを助けたい私の心中を察して何かが起こってしまったのかもしれないわね」

 

その時、新の視界に信じられない光景が映り込んだ

 

―――“リアスのおっぱいが縮んでいく”―――

 

「あ、あああああああっ!リ、リアスの乳が縮んでいく⁉」

 

「な、何だって⁉あああああああっ!なんて事だ!部長のおっぱいがあああああああっ!」

 

「あなた達にオーラを送ると同時にサイズが落ちていくのかしら……?けれど、まだこのサイズならオーラは送れる!」

 

新は砲撃を一時中断してリアスに向かって叫んだ

 

「やめろ!このままじゃ、お前の乳が消えて無くなってしまう!」

 

「一時的なものかもしれないわ。一晩眠ればきっと元のサイズに戻っている筈よ!」

 

「それでも俺は耐えられない!惚れた女の血肉を食い潰す様な真似をするぐらいなら、俺は自ら首を掻き切ってやる!一誠もろとも首を掻き切って死んだ方がマシだッ!」

 

リアスは泣きながら笑顔を作った

 

「ありがとう、新。でもね、これで良いのよ!私にとって、あなたと一緒に戦える事が嬉しい事なのだから―――。愛しているわ、新!」

 

その一言に新は涙を溢れさせた

 

ここまで言われた以上、男として止まる訳にはいかなかった……

 

「俺も……俺も愛してるぞ!リアスッ!」

 

「どこまでも一緒よ!新!」

 

それを機に送られてくるオーラの質量が上がる―――その代わり……

 

『……うへへへ、おっぱい、たのちーなぁ』

 

遂にドライグの精神が壊れた……

 

ヨロヨロと向きを直す新は怒りを孕ませて叫んだ

 

「一誠ェェェェェッ!リアスの乳を縮ませ、ドライグまで精神崩壊に追い詰めたこいつらをォッ!跡形も残さず吹き飛ばすぞォッ!元はと言えば、こいつらが喧嘩売ってきたのが原因だからなァァァァァァァァァッ!」

 

「勿論だぁぁぁぁっ!部長のおっぱいとドライグの仇ィィィィィィィィィィッ!」

 

完全な八つ当たりに移行した2人はその後も苛烈な砲撃を続けた

 

疑似空間は新と一誠の連続砲撃によって崩壊しつつあった

 

「止めろォォォォォッ!あの3人を止めるんだァァァァァッ!このままじゃ本当に乳のパワーで構成員が全滅するッ!」

 

ジークフリートが必死に死神達に作戦を指示するが―――アザゼルもグレモリー眷属に指示を送った

 

「お前ら、全力でおっぱいデルタフォースを救えッ!そいつらが俺達の(かなめ)だッ!」

 

「あの3人の邪魔はさせないよ。せっかく盛り上がっているのだから、邪魔したら悪いだろう?」

 

「うふふ、羨ましいわ、リアス。私も後で新さんに甘えちゃおうかしら。2人の仲が燃え上がる度に浮気心も更に燃えるわね」

 

その後もおっぱいデルタフォース(笑)の砲撃は続いた……

 




新たなチーム名が完成しちゃいました(笑)

おっぱいデルタフォース……酷いわ

次回はいよいよ闇人勢力のおでましです!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。