ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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天輪聖王

力のある言葉を発した曹操の体に変化が訪れる

 

神々しく輝く後光輪が背後に出現し、曹操を囲む様にボウリング球程の大きさの球体が7つ―――宙に浮かんで出現した

 

未だ嘗て無い程シンプルで静かな禁手化(バランス・ブレイク)……

 

「これが俺の『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』の禁手(バランス・ブレイカー)、『極夜なる天輪聖王(ポーラーナイト・ロンギヌス)()輝廻槍(チャクラヴァルティン)』―――まだ未完成だけどね」

 

曹操の状態を見て、アザゼルが叫ぶ

 

「―――ッ!亜種か!『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』の今までの所有者が発現した禁手(バランス・ブレイカー)は『真冥白夜の聖槍(トゥルー・ロンギヌス・ゲッターデメルング)』だった!名称から察するに自分は転輪聖王とでも言いたいのか⁉くそったれめが!あの7つの球体は俺にも分からん!」

 

「俺の場合は転輪聖王の『転』を敢えて『天』として発現させた。そっちの方がカッコイイだろう?」

 

「天を目指すから“天輪聖王”ってか?嫌味なカッコつけ方だぜ……」

 

ヴァーリが新と一誠の隣に並んで言う

 

「気を付けろよ。あの禁手(バランス・ブレイカー)は『七宝(しっぽう)』と呼ばれる力を有していて、神器(セイクリッド・ギア)としての能力が7つある。あの球体1つ1つに能力が付加されているわけだ」

 

その一言に新と一誠は仰天する

 

「なっ、7つだと⁉」

 

「2つとか3つとかじゃなくてか⁉」

 

「ああ、7つだ。それのどれもが凶悪だ。と言っても俺が知っているのは3つだけだが。だから称されるわけだ。最強の神滅具(ロンギヌス)と。紛れもなく、奴は純粋な人間の中で1番強い男だ。……そう、人間の中で」

 

ヴァーリにここまで言わせる程の聖槍使い……

 

奴の体から放たれる重圧自体はサマエル程ではないにしろ、油断は一切禁物

 

新と一誠は京都で曹操に追い詰められたのだから

 

それも“通常状態”の聖槍で……

 

曹操が空いている手を前に突き出すと―――球体の1つが呼応して曹操の手の前に出ていく

 

「七宝が1つ―――輪宝(チャッカラタナ)

 

小さく呟いた後、球体が消え去り―――ガシャンッ!と何かが派手に壊れる音がロビーに響いた

 

音のした方に振り返れば―――ゼノヴィアのエクス・デュランダルが破壊されていた

 

「……ッッ!エクス・デュランダルが……ッ!」

 

突然の事になす術も無くデュランダルが破壊され、制御機能としての鞘となっていたエクスカリバーの部分も四散する

 

誰もが反応出来ず、エクス・デュランダルの破壊に呆気に取られた

 

「―――まずは1つ、輪宝(チャッカラタナ)の能力は武器破壊。これに逆らえるのは相当な手練れのみだ」

 

曹操が不敵に一言漏らした次の瞬間―――ゼノヴィアの体から鮮血が噴き出ていく……

 

「ごぶっ」

 

腹部に穴を開けられたゼノヴィアは口から血を吐き出し、その場にくず折れていく

 

どう見ても致命傷だった

 

「ついでに輪宝(チャッカラタナ)を槍状に形態変化させて腹を貫いた。今のが見えなかったとしたら、キミでは俺には勝てないな、デュランダル使い」

 

曹操の一言を聞いて全員がその場から散開した

 

「ゼノヴィアの回復急いで!アーシア!」

 

リアスが直ぐに反応してアーシアに回復の指示を出す

 

アーシアは呆然と倒れ込むゼノヴィアを眺めていたが、直ぐに我を取り戻してゼノヴィアに駆け寄った

 

「ゼノヴィアさんッッ!いやぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

アーシアは泣き叫びながらゼノヴィアの回復を始める

 

新はキッと曹操を睨み付け、剣を取り出して飛び出す

 

一誠も祐斗と共に怒りに包まれながら飛びかかった

 

「テメェェェェェッ!」

 

「曹操ォォォォォォォッ!」

 

「許さないよッ!」

 

新、一誠、祐斗は同時攻撃を仕掛けるが、曹操は聖槍で軽々とさばき―――再び球体の1つを手元に寄せた

 

「―――女宝(イッティラタナ)

 

その球体が3人の横を高速で通り過ぎ、リアスと朱乃のもとに飛んでいった

 

リアスと朱乃は反応してその球体に攻撃を加えようとするが―――

 

「弾けろッ!」

 

曹操の言葉に反応して球体が輝きを発し、リアスと朱乃を包み込む

 

「くっ!」

 

「こんなものでっ!」

 

2人がまばゆい光に包まれながらも攻撃をしようとする

 

しかし、リアスも朱乃も手を突きだしたまま何も起こらない

 

自分の手元を怪訝に(うかが)い、もう一度球体に攻撃を加えようと手を突きだすが……やはり何も起こらない

 

女宝(イッティラタナ)は異能を持つ女性の力を一定時間、完全に封じる。これも相当な手練れでもない限りは無効化出来ない。―――これで3人」

 

『女の力を封じる⁉リアスと朱乃でも完封されたって事は―――アーシアの回復を封じられたらアウトじゃねぇかッ!』

 

あまりにも強い『七宝』の力に新は兜の中で歯軋りをする

 

曹操は高笑い、その表情は完全に戦いを楽しんでいるものだった

 

「ふふふ、この限られた空間でキミ達を全員倒す―――。派手な攻撃はサマエルの繊細な操作に悪影響を与えるからな。出来るだけ最小の動きだけで、サマエルとゲオルクを死守しながら俺1人で突破する!なんとも最高難度のミッションだッ!だが―――」

 

黒歌とルフェイが手に魔力、魔法の光を(きら)めかせて、ゲオルクとサマエルの方に突き出していた

 

防御が薄い彼らに攻撃を加えるつもりだが、そこにも曹操の球体が1つ向かう

 

「ちょこざいにゃん!」

 

黒歌がもう一方の手を突き出して迎撃しようとする

 

「―――馬宝(アッサラタナ)、任意の相手を転移させる」

 

『転移だと?……まさか!』

 

曹操の発言と同時に黒歌とルフェイの姿がその場から消え去り、違う場所に出現する

 

球体の能力を察した新と一誠の目にとんでもない光景が映り込む

 

手を突き出したままの黒歌とルフェイ

 

彼女達の手の先がゼノヴィアを回復させるアーシアに向けられていた

 

攻撃は元々サマエルとゲオルクに向けられていたものだったが、強制転移の影響で矛先が変わっていた

 

手に灯った攻撃の火は急に止める事など出来ず―――

 

「ふざけるなよォォォォッ!『龍星の騎士(ウェルシュ・ソニックブースト・ナイト)』ッ!」

 

Change(チェンジ) Star(スター) Sonic(ソニック)!!!!』

 

一誠は瞬時に体内の駒を切り替え、装甲をパージした高速仕様の鎧でアーシアのもとに飛び出していく

 

高速でアーシアの前に到着し、彼女の壁となる一誠

 

アーシアはゼノヴィアの治療に夢中で反応すら出来ていなかった

 

薄い装甲では矛先を変えられた黒歌とルフェイの魔法攻撃に耐えられはしないだろう

 

それでも一誠は命を賭けてアーシアを守る―――

 

けたたましい轟音と共に2人の魔法攻撃が容赦無く炸裂

 

衝撃と激痛が一誠の全身を駆け巡った

 

薄い装甲の鎧はものの見事に魔法攻撃で破壊され、一誠は大量の血を吐き出す

 

胸から腹部にかけて黒焦げとなり、肉が弾け飛び、鮮血が溢れ出していく

 

一誠がくず折れる中で曹操は嘲笑するかの様な笑みを見せた

 

「赤龍帝、キミの力はもう知っている。バアル戦では不安定で強力な能力にも目覚めたようだが―――。やりようなんていくらでもあるさ。トリアイナのコンボは強力だ。だが、一瞬だけ内の駒を変更するところにタイムラグがある。それを踏襲した攻撃方法で攻めれば俺なら潰せるんだ。―――攻略法が確立すれば数手でキミを詰められるよ」

 

曹操はトリアイナの特性と一誠の弱点を完璧に把握していた

 

無防備なアーシアに想定外の攻撃が加われば、そこに一誠が向かうのは明らかだ

 

そして、高速で動けるトリアイナ版『騎士(ナイト)』の弱点は紙耐久とも言える薄い装甲

 

それを認識した上で魔法攻撃の強力な黒歌とルフェイを強制転移でアーシアの前に出現させた

 

そこに一誠が飛び込んでくるのを計算して―――

 

1度しか見ていないにもかかわらず、一誠の技を全て把握しきっている……

 

まるで相手にならないとばかりに実力の差を見せつけられた

 

「イッセーさんッ!」

 

アーシアが致命傷を受けた一誠に気付き、回復のオーラを飛ばそうとする

 

しかし、一誠はゼノヴィアの治療を優先させた

 

「来るなッ!アーシアッ!……俺はまだ良い。先にゼノヴィアを治療しろ……」

 

「でも!イッセーさん、お腹が……ッ!」

 

倒れる一誠を見て新は更に怒りのボルテージを上昇させ、鎧を着込んだアザゼルとヴァーリが飛び出す

 

「ヴァーリィィィィッ!俺に合わせろッ!」

 

「まったく、俺は単独でやりたいところなんだがな……ッ!」

 

両者は瞬時に曹操との距離を詰め、アザゼルは光の槍、ヴァーリは魔力のこもった拳を同時に撃ち込んでいく

 

「堕天使の総督と白龍皇の競演!これを御す事が出来れば俺は更に高みを目指せるなッ!」

 

嬉々としてその状況を受け入れる曹操

 

アザゼルとヴァーリが撃ち込んでくる高速の攻撃を軽々と避けていく

 

新はその様子を見て驚愕せざるを得なかった

 

「あいつ、本当に人間なのか……ッ⁉」

 

「力の権化たる鎧装着型の禁手(バランス・ブレイカー)は莫大なパワーアップを果たすが―――、パワーアップが過剰すぎて鎧からオーラが(ほとばし)り過ぎる!その結果、オーラの流れに注視すれば、次に何処から攻撃が来るか容易に把握しやすいッ!ほら、手にしている得物や拳に攻撃力を高める為、オーラが集中するからねッ!」

 

曹操が避けながらそう告げてきた

 

鎧装着型の弱点の指摘に新も攻撃の手を躊躇(ためら)

 

確かに自分や一誠の攻撃方法は殆どがオーラを集中させた拳や蹴り、剣の(たぐい)

 

曹操の的確な分析力に舌打ちをする新

 

アザゼルとヴァーリの攻撃を避けきる曹操の右目が金色の輝きを放つ

 

邪視(イーヴィル・アイ)と言うものをご存知かな⁉そう、眼に宿る特別な力の事だ!俺もそれを移植してね!赤龍帝と闇皇にやられ失ったものをそれで補っている!俺の新しい眼だ!」

 

2人の攻撃を避けきった曹操が目線を下に向けた刹那、アザゼルの足下が石化していく

 

「―――メデューサの眼かッ!」

 

眼の正体に気付いたアザゼルが舌打ちをした

 

メデューサとは毛髪が蛇になっており、見た者を石にしてしまう女性型のモンスター

 

曹操はその眼を移植していたのだ

 

七宝の能力に聖槍、更には石化の邪視(イーヴィル・アイ)……曹操はもはやチートの塊と化していた

 

ドズンッ!

 

鈍い音と共にアザゼルの腹部に聖槍が突き刺さった

 

黄金の鎧は難なく破壊され、鮮血が迸る

 

「……ぐはっ!……何だ、こいつのバカげた強さは……ッ!」

 

アザゼルは口から大量の血を吐き出し、くず折れていく

 

曹操は聖槍を引き抜きながら言った

 

「いえ、あなたとは1度戦いましたから、対処は出来てました。―――その人工神器(セイクリッド・ギア)の弱点はファーブニルの力をあなたに合わせて反映出来ていない点です」

 

「アザゼルッッ!おのれ、曹操ォォォォォォッ!」

 

「両親にバケモノとされて捨てられたキミを唯一拾って力の使い方を教えたのがアザゼル総督だったかなっ⁉育ての恩人をやられて激怒したか!」

 

ヴァーリが魔力の一撃を繰り出すが―――そこにも球体の1つが飛来していく

 

「―――珠宝(マニラタナ)、襲い掛かってくる攻撃を他者に受け流す。ヴァーリ、キミの魔力は強大だ。当たれば俺でも死ぬ。防御も厳しい。―――だが、受け流す(すべ)ならある」

 

ヴァーリの魔力は球体の前方に生まれた黒い渦に吸い込まれていった

 

全てを吸い取った渦は消失し、小猫の前方に新しい渦が発生する

 

「―――しまった!小猫ォッ!」

 

曹操の説明に気付いた新は小猫に向かって叫ぶが、急な不意打ちを避ける暇など無かった

 

発生した渦からヴァーリの魔力が放たれ―――

 

「バカ、なんで避けないの!白音(しろね)ッ!」

 

黒歌が悲鳴を上げて小猫の前に立ち、盾となる

 

爆音がロビー内を駆け巡り、小猫の目の前で黒歌は曹操に受け流された魔力の一撃をまともに食らってしまった

 

血を噴き出し、煙を上げて倒れていく黒歌

 

小猫が直ぐ様その体を抱き留めた

 

「……な、なに、ちんたらしてんのよ……」

 

消えそうな声音で黒歌はそう言い、小猫が首を横に振って叫ぶ

 

「……ね、姉さまッ!」

 

「曹操―――、俺の手で俺の仲間をやってくれたな……ッ!」

 

怒りのオーラを全身に(たぎ)らせるヴァーリ

 

ここまで激昂したのは初めてだろう

 

「ヴァーリ、キミは仲間想い過ぎる。まるでそこに無様に転がる赤龍帝のようだ。―――二天龍はいつそんなにヤワくなった?それと、俺の七宝のいくつかを見た事のあるキミが、能力が把握しづらいのは分かっているよ。―――キミに見せていない七宝でわざわざ攻撃しているからな。良かったな?これで七宝の全てを知っているのはキミだけになったぞ」

 

「では、こちらも見せようかッ!我、目覚めるは、覇の(ことわり)に全てを奪われし―――」

 

ヴァーリは『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』の呪文を唱え出したが、それを察した曹操がゲオルクに叫ぶ

 

「ゲオルクッ!『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』はこの疑似空間を壊しかねない!」

 

「分かっている―――。サマエルよ!」

 

ゲオルクが手を突き出して魔法陣を展開させると、それに反応してサマエルの右手の拘束具が解き放たれた

 

『オオオオオオオオオオォォォォォォォォォォオオオオンッ』

 

不気味な声を発しながらサマエルの右手がヴァーリに向けられ、空気を震撼させる音と同時にヴァーリが黒い塊に包み込まれた

 

『オオオオオォォッォォォォォォオオオォォォォォオオオッ』

 

サマエルが吼えると黒い塊が勢い良く弾け飛び、四散した塊の中からヴァーリが解放される

 

しかし、彼の鎧は塊と共に弾け飛んでいき、体中からも大量の血が飛び散っていく

 

「……ゴハッ!」

 

ヴァーリはロビーの床に倒れ込んでしまった

 

白龍皇ヴァーリがなす術も無くやられた……

 

床に倒れるヴァーリを見下ろし、曹操は息を吐いた

 

「どうだ、ヴァーリ?神の毒の味は?ドラゴンにはたまらない味だろう?ここで『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』になって暴れられてはサマエルの制御に支障をきたすだろうから、これで勘弁してもらおうか。俺は弱っちい人間風情だから、弱点攻撃しか出来ないんだ。―――悪いな、ヴァーリ」

 

「……曹操……ッ!」

 

「あのオーフィスですら、サマエルの前では何も出来ないじゃないか。サマエルだけがオーフィスにとっての天敵だった。俺達の読みは当たってたって事だ」

 

曹操は肩を槍で軽く叩きながらそう言う

 

オーフィスを包む黒い塊は未だにオーフィスから何かを吸い上げていた

 

「…………曹操ッ!」

 

新が憤怒の声音を吐き出して1歩前に出る

 

曹操は不敵な笑みを見せた

 

「お、ようやくキミが出てくるか、闇皇。キミの正体を知った時はさすがに驚いたよ。―――リュオーガ族、古代の竜の一族を創造したドラゴンの欠片から生まれたキミはまさに規格外だ。バアル戦でもその力の片鱗を見せてもらった。実を言うと、この中でキミが1番の障害になるんじゃないかと踏んでるよ。ただ……キミもとっくに気付いているんだろ?その竜の力を振る舞えない事に」

 

曹操の指摘は図星だった

 

確かに竜の力を解放すれば格段にパワーアップを果たすが……それはサマエルの格好の餌食になりやすい

 

オーフィスを閉じ込め、ヴァーリですら簡単に(ほふ)れる力を持つサマエルを前に―――新はリュオーガ族の力を振る舞う事など出来なかった

 

頭に血が上り過ぎるのを抑え、何か有効な手段は無いかと模索する

 

(しばら)くして……新は1つの賭けに出た

 

「……成功確率は五分五分―――仮に成功してもダメージは必至か。かなり危険だが……やってやる……!とにかく一撃でも入れねぇと収まりがつかねぇんだよッ!」

 

「ハハハ、何か良い手でも見つかったか?来なよ!」

 

相変わらず嬉々として挑戦を受け入れる曹操

 

新はまず幾重もの斬撃を曹操に撃ち放った

 

曹操は全ての斬撃を軽々と(かわ)したり、聖槍で切り払っていく

 

その最中に新は剣に魔力を流し込み、足下に闇を生み出す

 

新の得意技―――『暗黒捕食者(ダーク・グリード)』だ

 

足下に生み出された闇が新を沈めていく

 

その様子を怪訝そうに眺める曹操

 

新の体が完全に闇の中へ消えた―――次の瞬間、闇は幾重にも分散して曹操の周囲を取り囲んでいく

 

眼を凝らして闇を見据える曹操に1つの斬撃が飛来する

 

闇の1つから飛んできた斬撃を寸前で避けるが、次々と闇から魔力の塊や斬撃が飛び交ってくる

 

「なるほど、そう来たか。四方八方に張り巡らせた闇から攻撃を仕掛ければ、オーラの流れを読みにくいと。だが、それでも戦法がまだ荒いな!出てくる瞬間、微量ながらもオーラは感じ取れるんだよ。仲間をやられ、怒りに燃えていれば尚更だ!」

 

結局のところ、この攻撃も曹操には通用せず全て避けられていた

 

それでも新は姿を見せず、執拗に闇からの攻撃を続ける

 

いつまでも攻撃が当たらない事に痺れを切らしたのか、前方の闇から剣を握った籠手が飛び出してくる

 

オーラが集まった剣戟は直ぐに気取られ、聖槍で容易に防がれてしまった

 

だが、曹操の表情が一変する

 

その顔は不意を突かれ、呆然としているようだった

 

何故なら、前方の闇から出てきたのは―――剣と籠手のみだったからだ

 

まさにその一瞬、曹操の左側に位置する闇から新が姿を現し、“籠手を取り外した生身の右拳”を曹操の顔面に打ち込んだ!

 

小気味良い音と共に頬を打ち抜かれ、視界が歪む曹操だったが―――殴られながらも反応して聖槍を繰り出した

 

聖槍の刃先が新の鎧ごと脇腹を(えぐ)り、血が噴出する

 

「ぐ……ッ!」

 

激痛によって新の動きが一瞬止まり、曹操が聖槍の柄の部分で新を突き飛ばす

 

新は血を撒き散らしながら転がり、曹操は首をコキコキと鳴らす

 

「今のは良い攻撃だった。オーラを残留させた剣と籠手を囮に使い、オーラを纏ってない生身の攻撃なら俺に届くと踏んだわけだ。さすがは戦闘のプロ、見事な判断力だったよ。虚を突かれたが……オーラを乗せていない攻撃では、俺を殺せないな。そこだけが失態だ」

 

「クソッタレェ……ッ!あの状態で的確に腹を抉りやがった……!どういう反射神経してんだよ……ッ」

 

曹操を憎々しげに睨み付ける新

 

曹操は余裕を表すかの如く聖槍を回した

 

『やはりここでサマエルを使用したのは正解だったな。たった1度の使用でオーフィス、赤龍帝、白龍皇、闇皇と多くの障害を封じる事に成功した。後は……これ以上の邪魔が入らないように用心するだけか』


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