ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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発情小猫と驚愕の訪問

「そう、ソーナとそんな事を話したのね」

 

夕食後のリビング、新は(くつろ)ぎながらリアスに昼間の出来事を話していた

 

「1つ聞きたいんだが、ソーナにも許嫁って奴はいるのか?」

 

「いたわ」

 

「“いた”?過去形って事は―――今はフリーだよな」

 

「彼女も私と同様、解消したのよ。少し前の事よ。なんでも勝ったら破談、負けたら即退学と即結婚を条件にチェスの10番勝負を申し込んだそうなの。自分よりも頭の回らない男と一緒になりたくないと言う思いがあったみたい」

 

「んで、結局その勝負に勝って破談って訳か」

 

「圧倒的な全勝で相手の男性のプライドを粉々に砕いたようね。あの次期大公シーグヴァイラ・アガレスに戦術で勝ったソーナだもの、並大抵の者では勝てないわよ。私も今の彼女とのチェス勝負では負け越しそうだわ」

 

更にシトリー眷属はまだ全員揃っていない

 

兵士(ポーン)』数名、『騎士(ナイト)』と『戦車(ルーク)』が1名ずつ余っている

 

丁度その事についての話題をリアスは口に出した

 

「そう言えば、新しい『騎士(ナイト)』と『戦車(ルーク)』のアテが出来たとソーナは言っていたわね。交渉してみるそうよ」

 

「遂にシトリー眷属も戦力増強か。女だったら大歓迎だ」

 

新がそんな事を考えていると、レイヴェルが両手に大量の教科書を持って現れた

 

リビングのテーブルにドスンッ!と大量の本が置かれていき、本の山を前にレイヴェルは言う

 

「今日も昇格試験用の教科書、参考書を出来る限り集めました!あと、駒王学園の中間テスト用の教材もバッチリですわ!」

 

それを機に朱乃、ゼノヴィア、イリナもやって来て、新の大嫌いな勉強会が始まる

 

新と朱乃は中間テストと昇格試験の両方、他のメンバーは中間テストの勉強

 

リアスが新の隣に座って教科書を開こうと―――

 

「小猫はまだ調子が悪いのね?」

 

確かに小猫の姿が見当たらない

 

新は小猫の不調を気にしつつも、勉強に手をつけた

 

 

―――――――――――――――――

 

 

「……クソォ……っ。やる事が多過ぎる……」

 

嫌いな勉強会を終え、更に悪魔の仕事も終えた新は自室のベッドに突っ伏していた

 

毎日続けられる勉強会によって精神は削られ、覚える事が多くて頭はパンク寸前

 

現在リアス達は深夜の勉強会前に英気を養う為の夜食作りをしている

 

休まる暇も無く勉強&禁欲ライフに新のストレスは徐々に増えていった

 

溜まってきた情欲を発散しようかと思ったその時―――部屋の扉が開かれる

 

その方向を見てみると……白装束姿の小猫がいた

 

猫耳と尻尾を出しており、顔も赤くなっていた

 

「小猫、どうした?休んでなくて良いのか?」

 

「…………」

 

小猫は新に近付くと、恍惚とした表情のまま白装束の裾をたくし上げた

 

 

―――THE()・はいてない―――

 

 

なんと小猫はノーパンだった……!

 

小猫のノーパン姿に新は開いた口が塞がらなかった

 

更に小猫は白装束をはだけさせると、ベッドに上がってきて新に抱き付く

 

荒い息遣いとほんのり汗ばんだ小柄な体が密着、小猫は耳元でこう(ささや)いた

 

「……先輩……切ないです」

 

官能的な台詞を言うと小猫は新の手を取って自分の胸に当てる

 

小さくても確かな柔らかさが新の手に伝わり、途端に小猫は口から甘い(あえ)ぎ声を発した

 

「……にゃぁぁ……」

 

「お、おい、小猫?いったいどうした……?」

 

あまりにも唐突過ぎる展開に混乱する新

 

それでも小猫はエロ行動を止めず、新の首筋を舐める

 

ザラザラした猫特有の舌触りが首を襲う

 

小猫は切なそうな瞳を浮かべたまま、小さく声を漏らす

 

「……先輩の……あ」

 

「あ?」

 

「赤ちゃんが欲しいです」

 

「……AKACHAN(赤ちゃん)ッ⁉」

 

小猫がまさかの“赤ちゃん欲しい宣言”をしてきた……っ

 

小猫は更に白装束をはだけさせ、もはや全裸にも等しい格好で新に覆い被さった

 

小振りなおっぱいも新の眼前に……

 

思わず目の前のおっぱいに手を伸ばしかけた時、新は小猫の顔を見て気付く

 

熱を帯びた表情だが、瞳に少しだけ陰りがあった

 

普通じゃない様子が(うかが)える

 

“小猫にいったい何が起こっているのか?”と考え始めた時、部屋の扉が開かれ―――リアスが入室してきた

 

リアスはこの光景を見るや否や、ズカズカと足音を立てて勢い良く迫る

 

「リ、リアス、小猫の様子が―――」

 

「ええ、分かっているわ」

 

そう言うとリアスは小猫の首元に手を当て、次に瞳を覗き込み、最後に胸と腹にも手を当てた

 

(しば)し考え込み、何かを思い付くと携帯を取り出した

 

「リアス、何か分かったのか?小猫にいったい何が―――」

 

「とにかく、専門のヒトに診てもらいましょう。話はそれからよ」

 

何かを得心しているようなリアスの口振りに、新は頷くしかなかった

 

 

――――――――――――――

 

 

「猫又の発情期って事か」

 

連絡を受けて駆けつけてきたアザゼルが開口一番にそう言った

 

専門医に診てもらった結果、小猫は子孫を残したいと言う本能の状態になっている―――そう診断されたのだ

 

小猫は自室で落ち着いて眠っている

 

調合してもらった“気分を和らげる薬”を飲み、それが効いた

 

新達は現在、兵藤家のVIPルームでその事について話を聞いている

 

「発情期、か……」

 

新がぼそりと呟き、アザゼルが話を続ける

 

「猫又の女は体が子供を宿せるようになって暫くすると一定周期で発情期に入る。要は猫又の本能が働いて子孫を残す為に子作りしたくなるんだよ。その辺は猫と同様だな。で、猫又の女の特性上、相手は気に入っている異種族の男って訳だ。つまり……お前だ、新」

 

「俺?」

 

「小猫はレアな猫又―――猫魈(ねこしょう)だ。子孫を残すのは良い事だと思うぜ。それが闇皇(やみおう)との間の子供なら万々歳だ。だが、ちょっと今回はな……」

 

アザゼルは息を吐いた後に言った

 

「小猫はまだ小さい」

 

「……確かにな。いや、最近は少しばかり育ってきたのが分かるぞ。約1㎝程胸が―――」

 

「もう、体の事よ」

 

リアスが嘆息しながら新にツッコミを入れる

 

「小猫が小柄って事か」

 

「ああ、猫魈(ねこしょう)の出産は心身共に成熟した状態でないと危険を(ともな)う。人間界でも出産は母胎にとって大変な事だろう?小猫はまだ未成熟だ。今のままで新の子を宿したら出産の際に母子共に耐えられずに死ぬ可能性が高過ぎる。それらを含め、もう少し成長してからの方が良いだろう」

 

以前、小猫は自分の体は小さいけれど子供は作れると言っていたが……体は完全に整っていなかった

 

だとすれば、本能的に発情期が来るとは思えない

 

「それなら猫魈(ねこしょう)の本能で子作り出来ないと判断してもおかしくない筈だ。だったら何故―――」

 

「女として分からなくもないですわね」

 

そう言ってきた朱乃に皆の視線が集まる

 

「きっと、小猫ちゃんは新さんとリアスの関係を見て感情が高まったのだと思いますわ。つまり、『私も負けられない』、『次は私だ』と強く心に思ってしまったのでしょうね」

 

朱乃の言葉に顔を見合わせる新とリアス

 

小猫は新とリアスの関係を見て、自分も何かしなくちゃいけないと焦ってしまったのだろう

 

つまり……

 

「私と新の影響で体の準備が充分に整わないまま、発情期に入ってしまったのかしら……」

 

リアスが気落ちさせながらそう呟いた

 

自分の想いが大事な眷属である小猫を必要以上に刺激してしまったのだと負い目を感じているのだろう

 

それは新も同じ、もう少し気遣っていればと後悔していた

 

甘えさせてやるだけでも違った結果になっていた筈なのに、気付いてやれなかった……

 

アザゼルが場の何とも言えない空気を察して頭をポリポリ掻く

 

「何はともあれ、発情期を無理矢理抑え込んでもな。薬で抑制し続けても今度は成熟した後に本能が働かなくなる可能性も無い訳じゃない」

 

今は薬で落ち着かせているが、そればかりに頼って小猫の体を壊す訳にもいかない

 

アザゼルは新に指を突きつけて告げた

 

「1番良いのは、小猫の状態が完全に落ち着くまで新自身が耐える事だ」

 

「……やっぱり、それしか無いか」

 

「そうだ。オイシイ場面かもしれないが、あいつの体を想うなら小猫の誘惑に耐えろ。万年発情期のイッセーと違って、お前なら自制が利くだろ?」

 

「ちょ、先生!万年発情期って酷くないっすか⁉」

 

一誠が異議を申し立てるがアザゼルは華麗にスルー

 

確かに性欲を制御出来る新ならば、何とか耐えられる筈……とは言え禁欲はやはりツラい物がある

 

難しい表情でいると、リアスが新の手を握ってくる

 

「お願い新。小猫の誘惑に負けないで。子作りしちゃダメよ?無事に耐えてくれたら、私がご褒美をあげるわ。ね?」

 

愛しの女性に懇願されてしまっては気合を入れて耐えるしかない

 

新はリアスの手をグッと握り返す

 

「分かった、耐えてやるさ。リアスの褒美―――いや、それ以前にお前と小猫の為にも耐えきってやる」

 

「ええ、それでこそ私の愛しい新だわ」

 

両者が暫し見つめあっていると……アザゼルが「バカップルが暑苦しいぞ」と茶々を入れてくる

 

それに気付いた新とリアスはパッと手を離す

 

リアスは顔を一気に赤く上気させていた

 

「見せつけやがって。そう言うのは2人だけの時にやれってんだ。なあ、お前ら?」

 

アザゼルが一誠達に話を振る

 

「羨ましい限りっすよ」

 

「お二人の様子は安心して見てられます」

 

「良いなーと思いつつも2人の仲を見守れる安堵感は癒されるぞ」

 

「そうねぇ。見つめ合った時、2人の間に演出的なお花が満開だった気がするわ!」

 

一誠、アーシア、ゼノヴィア、イリナの言葉に流石の新も恥ずかしくなり、顔を伏せる

 

「うふふ、浮気へのポイントがまた1つ高まりましたわ」

 

「今の場面を録画してライザーお兄さまに見せたら悶死しそうですわね。うふふ」

 

「お前らも不穏な事言ってんじゃねぇっ!」

 

「……ったく、良い女達に恵まれているな、新は。それとついでの報告だ。―――朱乃」

 

ここでアザゼルが朱乃に話題を振る

 

「バラキエルは承諾した。俺もそれで良いと思う。後はお前の意志次第だ」

 

「父が……そうですか。分かりました。これ以上、眷属に迷惑は掛けられませんものね。―――ギャスパーくんも頑張っているのですもの、私も近くに必ず」

 

朱乃の決意に満ちた表情

 

リアスは知っているような顔ぶりだった

 

アザゼルは朱乃の言葉を聞いて頷いた

 

「分かった。―――と、それは置いておくとして、他の皆もちょっと良いか」

 

アザゼルが改まった声音で皆を見渡す

 

「明日、この家に訪問者を呼ぶ予定だ。リアス、それについての了解を取りたい」

 

「あら、初めて聞いたわ。突然ね」

 

「ああ、ちょっとな」

 

アザゼルの表情はいつになく真剣なものだった

 

「お前達はその訪問者に確実に不満を漏らす。いや、そいつらに対して殺意を(いだ)いてもおかしくない筈だ」

 

アザゼルの発言に皆が顔を見合わせて驚く

 

不満どころか殺意を抱くまでの相手とは……?

 

不意に頭を(よぎ)ったのは―――ヴァーリチーム

 

「イッセー、新。お前らが今頭に過ったの集団があるだろう?それで半分正解だ」

 

「―――っ!先生、ヴァーリ達がまたここに?」

 

ロキ戦の時は一時的な協力関係だったので争いはしなかったが、基本は敵同士

 

だが、会って直ぐに殺意を抱く程では無い筈……

 

「ヴァーリはテロリストですもの。一時共闘したけれど、ここにもう一度用があると言うのなら、戦う準備ぐらいはして当然だわ。けれど極端な話、直ぐに殺意を抱くと言うのは無いのではないかしら。私個人の見解では、敵だけれど英雄派程の危険性は無いと思うわ。会うぐらいならまあ……警戒は最大で(おこな)うけれど」

 

リアスの意見にアザゼルは息を吐きながら頬を掻く

 

「まあ、ヴァーリチームに関してはお前達も曖昧な立ち位置である事は認識しているだろう。ただな……。今言ってもしょうがない部分があってな。明日の朝まで待ってくれ。それで分かる。だが、俺の願いとしては決して攻撃を加えないでくれ。それだけだ。話だけでも聞いてやればそれで充分なんだ。―――上手くいけば情勢が変化する大きな出会いになるかもしれない。俺も明日の朝、もう一度ここに来る。―――だからこそ、頼む」

 

頭を下げるアザゼル

 

それを見て大いに(いぶか)しげに思う一同

 

話から察するにヴァーリチームと共に来るらしい

 

新は1つ気になる点をアザゼルに問う

 

「アザゼル、訪問者はヴァーリチームが同行する“そいつ”だけじゃないんだな?」

 

「…………」

 

「お前は確かそいつ“ら”と言ったよな?つまり、訪問者はヴァーリチーム同行の“そいつ”の他に“もう1人”―――来るって事なんだろ?」

 

新の問いに皆の視線がアザゼルに集まり、アザゼルは渋々認めた

 

「ああ、その通りだ。ヴァーリチームと共に来る奴と他に……もう1人訪問者を呼ぶ。そいつにも決して攻撃を加えないでくれ」

 

「ヴァーリチームの他にもう1人って……誰なんですか、先生?」

 

「それも明日まで待ってくれ。()いて言えば―――イッセー、お前の知り合いが付添人だ」

 

疑問と不安を感じつつ、次の朝、新達は「それら」と出会う事になる

 

 

―――――――――――――

 

 

翌朝の兵藤家、新もリアス達と共に集結していた

 

眠気を我慢しているとインターホンが鳴らされ、ドアを開ける

 

玄関前に立っていたのは―――黒いゴスロリ衣装を着た細身の女子

 

見覚えがある……否、忘れる筈が無い……ッ

 

その女の子は一言だけ簡素に漏らした

 

「久しい。ドライグ」

 

訪問者の正体に新は絶句、一誠も指を突きつけて叫んだ

 

「オ、オ、オ、オ、オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ、オーフィス⁉」

 

一誠の叫びが家中に響き渡った

 

しかし、絶叫の事態はこれだけで終わらなかった……

 

オーフィスの後ろからヒョコッと出てくる人影

 

オーフィスとは対照的に白を基調とした髪に、フワフワした衣装に身を包んでいる少女

 

頭部の両端に羽飾りを付け、中央にはアホ毛がピョコンと立っていた

 

その少女はにこやかに挨拶する

 

「皆さん、初めまして。闇人(やみびと)の『初代クイーン』―――マヤ・トゥルーイブニングと申します。本日は皆さんとお話をしに来ました」

 

ペコリと頭を下げる『初代クイーン』

 

当然、その場は驚愕1色に包まれた

 

「しょ、しょ、しょしょしょしょ、初代クイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインッ⁉」

 

再び一誠の絶叫が家中に響き渡る

 

玄関に集まっていた眷属全員が直ぐ様臨戦態勢に入った

 

その反応も至極当然である

 

オーフィスは各勢力に多大な被害を出している『禍の団(カオス・ブリゲード)』のトップ

 

ここに来る事自体あり得ない話だ

 

マヤ・トゥルーイブニングと名乗る少女も闇人(やみびと)の『初代クイーン』

 

闇人(やみびと)も各勢力に攻撃を仕掛けている危険な種族

 

その『初代クイーン』がオーフィスと共に訪問してきた……っ

 

あり得ない事態の連続に謎と疑問が駆け巡る

 

そんな中、アザゼルが新達とオーフィス・マヤ組の間に入った

 

「ほらほらほら!昨夜言ったじゃねぇか!誰が来ても殺意は抱くなってよ!攻撃は無しだ!こいつらもお前らに攻撃を仕掛けてはこない!やったとしても俺達が束になっても勝てやしねぇよ!」

 

アザゼルの言葉にリアスが激昂する

 

「いくらなんでもこれは非常識だわ、アザゼル!そのドラゴンは各勢力に攻撃を加えるテロリスト集団の親玉!悪魔の世界にも多大な損害を出している謂わば仇敵(きゅうてき)なのよ⁉どうしてあなたがそんな怨敵(おんてき)をここに招き入れるの⁉その上、闇人(やみびと)も各勢力に多大な被害を出している天敵!同盟にとって重要な場所となっているこの町の、しかもこの家に!オーフィスと『初代クイーン』がここに入れたって事は、ここを警備する者達をも騙して入れたって事よね⁉どうしてそこまでして!」

 

リアスの言う通り、この町は天界と冥界が協力関係を取り、他勢力との交渉の場にも使われる最重要地点

 

天使、堕天使、悪魔のスタッフが新達以外にも複数入り込んで場を維持している

 

そこにこの2人が入れたと言うのは、アザゼルがスタッフを説得したか……騙したかの2つである

 

天界の使いであるイリナが面食らっている様子から見て―――天界からの事前報告は無い

 

無論、悪魔サイドからも連絡は無かった

 

これだけの相手が来るなら事前にサーゼクスからの連絡がある筈……

 

それが無かったと言う事は―――

 

「アザゼル、お前サーゼクス様や天使長ミカエルに黙って……こんな事をしたのか⁉」

 

新もアザゼルの真意に気付いて問い詰める

 

激昂するのも無理は無い……

 

何せこれは明らかに―――

 

「協定違反だわ、アザゼル!堕天使サイドが魔王さまや天使長ミカエルに糾弾されても文句は言えない程の!誰よりも各勢力の協力を訴えていたあなたが……」

 

キレていたリアスが途端に語気を鎮めていく

 

「……協力体制を誰よりも説いていたあなたですものね。このオーフィスと『初代クイーン』の訪問にそれが懸かっていると判断したって事ね?」

 

リアスはそう言う結論を口にした

 

確かに最初に出会った時はとても胡散臭く、疑わしい臭いが止まなかったが……今では心底から信頼出来る堕天使の総督

 

何度も窮地を突破出来たのもアザゼルのお陰であり、新達がここまでの成長を築けたのもアザゼルの知識と協力があったからこそだ

 

誰よりも面倒見の良いアザゼルが今更裏切るなんて事はある筈が無い

 

それをリアスは激昂しながらも次第に思い出したのだろう

 

「ああ、スマンな、リアス。俺はこいつらをここに招き入れる為に色んなものを現在進行で騙している。だが、こいつらの願いは、もしかしたら『禍の団(カオス・ブリゲード)』と闇人(やみびと)、両者の存在自体を揺るがす程のものになるかもしれないんだ。……無駄な血を流さない為に、それが必要だと俺は判断した。改めてお前達に謝り、願う。―――スマン、頼む。こいつらの話だけでも聞いてやってくれないだろうか?」

 

アザゼルが再び新達に頭を下げる

 

プライドの高いアザゼルがここまでするからには、きっと大きな意味を持つのだろう

 

「俺は先生を信じます。俺がここにいるのは先生のお陰ですから」

 

一誠はそれだけ言って籠手を消した

 

他の皆も顔を見合わせつつも手に持っていた武器をしまった

 

「……その2人に殺気が無いのは確かだ。話を聞くぐらいなら良いだろう」

 

「……先生にはいつも世話になっている。その2人に今すぐにでも斬りかかりたいところだが……我慢しよう」

 

新はポケットに手を突っ込み、ゼノヴィアは腕を組んで瞑目した

 

「……ミカエルさまに黙ってまでオーフィスと『初代クイーン』を……私としては正直どうしたら良いか分からないけれど、アザゼル先生とリアスさん達を信じるしかないわ」

 

イリナも複雑な思いを抱きつつも了承した

 

「もとより、私はイッセーさんとリアスお姉さまを信じるだけです」

 

「右に同じですわ」

 

アーシアとレイヴェルも了解した

 

まだここに来てない祐斗とギャスパー、新の家で寝込んでいる小猫、北欧に一時帰還しているロスヴァイセも同じ気持ちを抱いてくれるだろう

 

溜め息を吐くリアスはアザゼルに訊く

 

「それで、上にあげてお茶でも出せば良いのかしら?オーフィスと『初代クイーン』だけなの?例のヴァーリチームは?」

 

そう訊いた直後、玄関前に小さな魔方陣が出現する

 

そこから現れたのは魔法使いの被るとんがり帽子にマントと言う出で立ちのヴァーリチームの魔法使いルフェイ

 

そして灰色の毛並みを持つ大型犬

 

ルフェイは良しとして、問題は大型犬の方……

 

サイズが小さくなっているが、その大型犬は―――神喰狼(フェンリル)だった

 

神をもその牙で食い殺す神殺しの狼がルフェイと共にやって来た

 

「ごきげんよう、皆さん。ルフェイ・ペンドラゴンです。京都ではお世話になりました。こちらはフェンリルちゃんです」

 

物腰柔らかく丁寧に挨拶をくれるルフェイ

 

フェンリルも彼女になついているのか、敵意は無いようだ

 

更に魔方陣がもう一度展開するとそこからグラマーな美女が登場する

 

出てきた途端に新に抱き付く

 

「おひさ~リューくん!相変わらずおっぱいが好きなのかにゃ~?」

 

黒歌(くろか)!ったく、スゲェ面子(めんつ)だな……」

 

出てきたのは小猫の姉、黒歌だった

 

再度魔方陣が光を放って出現してくる

 

次に現れたのは―――ギターを携えた少年

 

「よっ、一誠!久しぶりだNA()!」

 

「……っ!ダイアン⁉お前までどうしてここに⁉」

 

「今日は『初代クイーン』の付添人として来たんだZE()♪」

 

彼は一誠の親友の1人、阿久津野大庵(あくつのだいあん)

 

転生闇人(やみびと)でありながらも、一誠と友好関係を続けている

 

他に登場する気配は無い

 

どうやらこれで訪問者は全員のようだ

 

オーフィスは一言だけ漏らす

 

「話、したい」

 

それに続いて『初代クイーン』マヤも前に出てくる

 

「突然の訪問で混乱してる方も多いと思いますが、皆さんとお話をしたくてここまでやって来ました。どうかよろしくお願いします」

 

「お茶してやれ。このセッティングをする為、俺は他の勢力を騙しに騙してんだからな。これがバレて悪い方向に進んだら、俺の首が本当の意味で飛ぶんだよ」

 

アザゼルの念押しに新も一誠も腹を括る事にした

 

こうして、最強の存在と闇人(やみびと)の『初代クイーン』を交え、緊迫したお茶会が(おこな)われる……


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