ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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闇人の王

見事な勝利を収め、大きな疲労感から眠りに落ちてしまった一誠を運ぶ新

 

 

一誠の寝顔は今までにない程安らかで晴れた様だった

 

 

花嫁衣装のリアスが駆け寄ってくる

 

 

「新!イッセー!」

 

 

「心配すんな、疲れて眠ってるだけだ。見てみろよ、このやり遂げた感満載の寝顔」

 

 

「もう……っ。あなた達は無茶ばかり……っ。でも……許すわ、無事に帰ってきてくれたから……っ」

 

 

リアスが紅の双眸(そうぼう)から雫を流しながら新と一誠の頭を撫でる

 

 

新は照れ臭そうに頬を掻く

 

 

大団円を迎えようとしたその時――――爆発の様な轟音が後ろから響いてくる

 

 

「何処行ったぁぁぁぁああああああっ!あのクソガキ共ォォォォォォォォッ!」

 

 

音の発生源はなんとライザーだった

 

 

奴の周りには守備兵らしき悪魔達が倒れており、下僕悪魔達も必死に止めようとしている

 

 

「はっ!?何してんだあいつ!?あれだけ攻撃を食らったっつうのに、まだ立てるのか!?」

 

 

 

「それよりも、何だかヤバそうな雰囲気になってるね」

 

 

 

「完全に我を忘れていますわ」

 

 

 

「……ヒステリー」

 

 

 

祐斗、朱乃、小猫がライザーの暴走を押さえるべく戦闘体勢に入る

 

 

 

ライザーの眷属達も落ち着かせようと止めるが―――――――

 

 

 

「邪魔だぁっ!どけェェェェェェッ!」

 

 

 

「きゃあっ!」

 

 

 

ライザーは自分の下僕達を炎で吹き飛ばした

 

 

 

ライザーのやってはいけない行動に新は怒りを見せる

 

 

 

「テメェ!何してやがる!今のは自分の下僕だろうが!」

 

 

 

「うるさい!黙れ!何でこの俺が、不死鳥の俺が!貴様ら下級悪魔のクソガキに負けなきゃならねぇんだぁぁぁぁぁぁぁっ!もう少しでリアスは俺の物になったのに!貴様らだけは許さねぇェェェェェッ!」

 

 

 

「うるせー。テメェの心情なんざ知るか!正式な勝負に負けた奴が逆ギレしてんじゃねぇよ!」

 

 

 

「下級悪魔が俺に説教するなァァァァァァァァッ!死ねェェェェェッ!」

 

 

ライザーが手のひらから巨大な炎の塊を新に放つ

 

 

新が闇皇に変異しようとした刹那だった

 

 

ジュバッ!

 

 

 

一筋の青い魔力の様な何かがライザーの炎を貫き、消滅させた

 

 

 

その場にいた全員が上空を見上げると、2つの影が落ちてくる

 

 

 

スタンッと2つの影が軽く地面に着地した

 

 

 

1人は左手に黒いグローブを装着した青年

 

 

 

もう1人は有名なお菓子メーカー『グルコ』のチョコ菓子、カプリンチョをペロペロ舐めている少年だった

 

 

 

「ライザーはフェニックス家の才児(さいじ)と言う話を耳にしていたのだが、多少のトラブルでヒステリーを起こすとは器が知れる」

 

 

 

「アハハッ!こんなんじゃ、前に戦った長男と次男の方がいくつかマシだよね〜!」

 

 

 

2人は出てきて早々ライザーを貶す

 

 

 

「何だ貴様らはァァァァァァァァッ!クズのくせに、俺の邪魔をするのかァァァァァァァァッ!」

 

 

 

「なんて下品な態度だ。とても上級悪魔とは思えないな」

 

 

 

「っ?何なんだお前らは?」

 

 

 

新の質問に青年と少年は振り返る

 

 

 

「まだ知らない者もいるだろうから教えよう。オレは闇人(やみびと)を統率する組織『チェス』のトップにして『キング』の称号を持つ―――――――蛟大牙(みずちたいが)

 

 

 

「同じく、ボクは『チェス』の1人で『ビショップ』の称号を持つ闇人、神風(かみかぜ)だよ〜」

 

 

 

闇人(やみびと)とは――――――先の悪魔、堕天使、神との戦争に乱入し、三大勢力を絶滅させようとした魔族

 

 

 

その頂点に立つ男と幹部らしき少年が現れた事に新達は戦慄する

 

 

 

「闇人……あいつと、村上と同じ闇人が何故ここに……?」

 

 

 

「そう警戒しないでよ〜?今日はグレモリー家とフェニックス家の結婚式が終わった後に、ボク逹闇人が勢力を盛り返したのを教えてあげようと思って来ただけなのさ」

 

 

 

「だが、不死鳥との戦いに発展したので少々見学させてもらった。村上が"赤龍帝は我々を脅かす存在になるかもしれん"と言っていたので興味を持った。確かに、アレは我ら闇人にとって危険因子になりかねんな」

 

 

 

「危険因子になるから、イッセーくんと竜崎くんを殺しに来たと?」

 

 

 

「いや、そういう訳じゃない。挨拶しようと思って来ただけなんだが、そう言った暇は無いようだ。また近い内にそちらへ伺おう。力を確かめにな」

 

 

 

『キング』の称号を持つ大牙と『ビショップ』の称号を持つ神風はライザーの方を向く

 

 

 

ライザーは未だに激怒していた

 

 

 

「さっきから何を喋っている!そこをどけ!退かないなら、貴様らも焼き殺すぞォォォォォォッ!」

 

 

 

「……ねぇ、キング。ボク的にあいつはマジでムカつくからさ、ちょっとフルボッコにしても良い?」

 

 

 

「殺さないなら好きにしろ。結界を張るから、その中でやれ」

 

 

 

「キヒヒッ、オッケ〜」

 

 

 

ブゥゥゥンッ!

 

 

 

大牙が手を前にやると、ドーム状の結界がライザーと神風を包む

 

 

 

新逹の他、ライザー眷属は結界に弾かれる

 

 

 

「退けクソガキィィィィィッ!今は貴様ごときを相手にしてる暇はねぇんだよォォォォォッ!」

 

 

 

「クソガキ?クソガキってボクの事ぉ?ボクから見たら、君の方がよっぽどクソガキだけど。まぁ良いや」

 

 

 

舐めていたカプリンチョをバリバリ食べて、喉を鳴らす神風

 

 

 

フゥッと息を吐き―――――――

 

 

 

「さっさと寝てろ」

 

 

 

ゴォォォオオオオオッ!

 

 

 

低い声音の直後、膨大な魔力が神風の体から噴き出す

 

 

 

「な、何だこの魔力は!?」

 

 

 

神風の姿が一瞬で消えたかと思ったら、ライザーの眼前で右手を開いていた

 

 

 

ライザーは回避しようと動くが、神風は難なく追い付く

 

 

 

「速い……!この手の動きから逃げられ―――――」

 

 

 

「『雷の一角召喚(ボルト・ウノ・ホルン)』」

 

 

 

神風の手から角を持つ怪物型の雷が放たれ、ライザーを感電させる

 

 

 

「ぐぎゃぁぁああああああああっ!」

 

 

 

ライザーは結界の端まで吹っ飛ばされ、叩きつけられた

 

 

 

「あ、朱乃さんと同じ雷!?」

 

 

 

「ですわね……でも、あの雷はとても凶悪に見えますわ……!」

 

 

 

神風が追い討ちをかけようとライザーに近づく

 

 

 

ライザーは巨大な炎の塊を神風に放ったが―――――片手で静止させられた

 

 

 

「か、片手で俺の炎を!?」

 

 

 

「『雷撃の一角召喚(ライボルト・ウノ・ホルン)』」

 

 

 

神風の手から、さっきとは角の形が違う怪物型の雷が発射され、ライザーの出した炎を簡単に貫いた

 

 

 

「俺の炎が……あんな小さな雷で相殺された……!?」

 

 

 

この様子に大牙は呆れながら言う

 

 

 

「あいつ、頭が悪いな。神風の攻撃はまだ生きていると言うのに」

 

 

神風の放った雷はライザーを結界の天井まで突き上げた

 

 

 

神風がすぐに追ってライザーの頭を掴み、雷を発しながら地面に叩き落とす

 

 

 

「キャハハハハハッ!どうしたの!?不死身を売りにしているフェニックスが、弱い技たった二発でグロッキーかぁい!?」

 

 

 

神風がライザーから離れる

 

 

 

本人曰く弱い技たった二発、それだけでライザーの肉体は既にボロボロだった

 

 

 

「な、ナメるなぁ……!俺は不死鳥フェニックスだ……!リアスにも勝った……不死身の悪魔なんだぞ……!」

 

 

 

「キヒヒッ。不死身ねぇ?面白いジョークを言ってくれるじゃないか。君のド三流以下のクソ演説を聞いてると、笑いが止まんないよ!キャハハハハハッ!」

 

 

 

「黙れクソガキィィィィィッ!」

 

 

 

ライザーは両翼から無数の刃物状の炎を飛ばすが、神風は余裕で回避する

 

 

 

「ぐっ……!クソッタレがァァァァァァァァッ!」

 

 

 

今度は拳に炎を宿らせて殴ろうとしたが、左手で防がれた

 

 

 

更に腕を捻られて転がされ、頭を踏みつけられる

 

 

 

「キヒヒッ。まるでド素人じゃないか!君はお父さんやお兄さん逹から、格闘技すら学ばなかったのかい?」

 

 

 

頭をグリグリ踏みつける神風をライザーは憎々しげに睨み付ける

 

 

 

「ほらほらぁ、待っててやるから早く起きな。それでも力を入れてるの〜?」

 

 

 

「ぎっ……!オォォォォオオオオオッ!ングァァァァアアアアアアアッ!」

 

 

 

ライザーは力を入れて起き上がろうとするが、ビクともしない

 

 

 

「なんて事だ……!あのライザー・フェニックスが、まるで子供扱いじゃないか……!」

 

 

 

新も祐斗逹も目の前の光景に、信じられないと言う表情を浮かべる

 

 

 

神風はニヤリと笑いながら言い放った

 

 

 

「弱いね、君」

 

 

 

ライザーは屈辱にまみれて涙を流す

 

 

 

「チクショウ……!何故だ……!何故大昔に、神に封印された王の一族が……今頃になって出てきたんだ……!」

 

 

「キヒッ。『初代キング』が封印されちゃったからこそ、ボク逹は今まで隠れながら勢力を蓄えてたのさ♪後もうひとつ。本当はキングと一緒にパーティーの招待客に成り済まして、勢力が復活した事を教えてあげようと思ったんだけど――――――君みたいな家柄を振りかざして粋がってるバカに拍手するのは、例え演技でもボクのプライドが許さないよ」

 

 

 

ドガッ!神風はライザーの顎を蹴り上げ、宙に浮いたところで再び蹴り飛ばす

 

 

 

「ごばぁっ!」

 

 

 

「つ、強い……!」

 

 

 

「強いだけじゃねぇ、あいつの戦い方は……邪悪過ぎる……!」

 

 

 

欠伸をする神風に、全員は震えが止まらない

 

 

 

不死鳥フェニックスが成す術なくやられている……

 

 

 

こんな悪夢みたいな事は一度たりとも無かった筈であろう

 

 

 

「もうそろそろ飽きてきたな〜。いい加減寝ちまいなよ?」

 

 

 

「……っ!ナメるなぁ……!貴様みたいなクソガキに!いつまでも一方的にやられると思うかァァァァァァァァッ!」

 

 

 

ライザーは眼前の神風に向かって叫ぶが――――誰もいない

 

 

 

既に神風はライザーの頭に乗っかっており、手のひらを見せていた

 

 

 

「黙れ。君のド三流以下の演説じゃあ、敢闘賞すら取れないよ。『雷撃の一角召喚(ライボルト・ウノ・ホルン)』」

 

 

 

ドガァァァァァンッ!

 

 

 

神風は再度、一角怪物型の雷でライザーを痛めつける

 

 

 

「ライザー様っ!」

 

 

 

「お兄さまっ!」

 

 

 

ボロボロになって地面に突っ伏すライザーに、神風は容赦なく罵倒する

 

 

 

「もうちょっと必死になりなよ。そうすれば無駄口も減るでしょ?」

 

 

 

弱々しく頭を起こすライザーは眷属逹に向かって叫んだ

 

 

 

「クソがァァァァァァァァッ……!レイヴェル……!ユーベルーナ……!フェニックスの涙をよこせェェェェェッ……!」

 

 

 

「も、もうお止めくださいお兄さま!」

 

 

 

「うるせぇぇぇぇぇっ!良いからさっさとよこせェェェェェッ!」

 

 

 

ライザーの醜悪過ぎる態度に呆れる大牙だが、「一度分からせてやる必要があるか」と一時結界を解除する

 

 

 

ライザーはレイヴェルとユーベルーナからフェニックスの涙を奪い、それを飲み干したところで再度結界が張られる

 

 

 

2つも一気に飲んだため、ライザーの魔力が大幅に上昇した

 

 

 

「ハハハハハハハハッ!どうだ!?これさえあれば、俺は無敵なんだよォォォォォォッ!フェニックスの炎で消し飛べェェェェェッ!」

 

 

 

ライザーは今までにないくらい、巨大な炎を神風に投げつけた

 

 

 

だが神風はその炎を"ただの蹴り"で消滅させた

 

 

 

そして飛び上がって、ライザーの左頬を蹴る

 

 

 

「ブガァァァアッ!」

 

 

 

「やっぱこの程度の相手に、上級技は必要ないや。使っても精々―――――――中級レベル一発で充分だよッ!」

 

 

 

神風の膝落としがライザーの鳩尾に食い込む

 

 

 

ライザーは口から血が混じった吐瀉物を撒き散らす

 

 

 

神風はライザーの首を掴んで殴り飛ばしたり、蹴り飛ばしたりと―――――――完全にサンドバッグ状態になったライザーを弄ぶ

 

 

 

「おいおい冗談だろ……?フェニックスの涙を2つ使って回復したライザーを、一方的にボコってやがる……!」

 

 

 

「ビショップ。そろそろ遊びは終わりにしろ」

 

 

 

「オッケ〜」

 

 

 

神風は倒れたライザーの上に乗り、手のひらを向ける

 

 

 

「『雷撃の二角召喚(ライボルト・ドス・ホルン)』」

 

 

 

二本角を持つ怪物型の雷が満身創痍のライザーを感電させる

 

 

 

「ウゲガァァァァアアアアアアアアアッ!」

 

 

 

雷が止み、ライザーは黒い煙を上げながら体をピクピク痙攣させる

 

 

 

神風は「もう終わったね」と二本目のカプリンチョ(苺味)を取り出して舐める

 

 

 

大牙は結界を解こうとしたが、ライザーはまだ立ち上がろうとしていた

 

 

 

「ふ……ふざ、けるな……!俺は……俺はフェニッ……クスだ……!」

 

 

 

「もう立つな!これ以上は精神が崩壊しちまうぞ!」

 

 

 

パリッ……パリッ……

 

 

 

神風はカプリンチョを二口で食べきり、ライザーの方を向く

 

 

 

「ま〜だ起き上がれるの?大したモンだねぇ。さっすが不死鳥フェニックス♪その敬意に免じて―――――――ボクの最大技で眠らせてやるよ」

 

 

 

神風の目から妥協の色が消えた

 

 

 

これ以上攻撃をくらえば、フェニックスと言えど精神が崩壊する恐れがある

 

 

 

ライザー眷属逹は結界を壊そうとするが、傷ひとつ入らない

 

 

 

「ぎ……ギサマ……なんぞに、負ゲル……俺、じゃねぇ……!俺はフェニックス……家の……ライザー・フェニックス……!フェニックス家の看板をォォ……!背負ってるんだよォォォォォォッ!」

 

 

 

ライザーが頭上に巨大な火の鳥を生み出し、神風に向かって放つ

 

 

 

地面に炎の(わだち)を刻みながら舞い進む火の鳥に神風は笑い、その刹那―――――――

 

 

 

グキグキグキッ!ガバァッ!

 

 

 

なんと腹が裂けて口の様な形になった!

 

 

 

牙が生え揃う口となった腹に、雷の魔力が集中する

 

 

 

「『超雷撃の三ツ又角召喚(ギガボルト・ホルン)』!」

 

 

 

ゴバァッ!

 

 

 

神風の腹から三つ首と三本角の怪物を型どった雷が放出され、ライザーの火の鳥を噛み砕いた

 

 

 

そして―――――そのままライザーを飲み込んだ

 

 

 

「ライザー様ァァァァァァァァッ!」

 

 

 

結界の中に立ち込める爆煙

 

 

 

飛び散った血液

 

 

 

大牙が結界を解くと、煙が風に流され消えていく

 

 

 

そこに残っていたのは、キヒヒと奇怪に笑う神風と―――――――頭部のみの姿にされたライザーだった

 

 

 

「キャハハハッ!白目向いちゃってるよこいつ!だっせ〜!フェニックスが聞いて呆れるわ〜!キャハハハハハハハハッ!」

 

 

 

頭部だけになったライザーを眷属逹の方へ転がす神風

 

 

 

新逹は目の前の惨状を未だ受け入れられずにいた

 

 

 

「……酷いよこんなの。もう彼は戦える状態じゃなかったのに」

 

 

 

「はぁ〜?何か言いました〜?戦える状態じゃない?いやいや仕方ないっしょ。だってさ、あのバカ鳥が立ち上がるからボクも最大技を使う羽目になっちゃったんだよ?悪いのはソ・イ・ツ。分かる?」

 

 

 

神風は悪びれる様子も無くライザーを指差す

 

 

 

「つーかさぁ。ボクから言わせればぁ、君達はチョーヌル過ぎるっつ〜の!悪魔や堕天使や神だって、三つ巴の戦争で互いに殺し合ったくせにさ〜!なぁにバカ抜かしちゃってんの〜!?なぁに良い子ぶっちゃってんの〜!?」

 

 

 

ライザー眷属逹は今にも飛びかかろうとしたが、大牙が割って入る

 

 

 

「ビショップ、あまり挑発するな。お前の悪い癖だ。少しは場を弁えろ」

 

 

 

キング――――大牙が睨むと、神風はピクッと眉を動かし、すぐに引き下がる

 

 

 

「さっさと治療してくるんだ。かなりマズイ状態だが、治療していけば大事には至らない。早く救護してやれ」

 

 

 

ライザー眷属逹は急いで会場の医療班を呼びに行く

 

 

 

大牙は新達の方へ歩み寄るが、新逹は警戒する

 

 

 

「見苦しい場面を見せてスマなかった。本当はこんなにするつもりは無かったんだが、ビショップは何ぶん加減しようとしない。オレに免じて、殺気を鎮めてくれないか」

 

 

 

大牙は新逹に頭を下げる

 

 

 

闇人の『二代目キング』らしからぬ行動に、新逹は唖然とする

 

 

 

「……変な奴だな。悪魔だけでなく、全ての魔族を滅ぼそうとする一族の王が……その相手に頭を下げるなんてよ」

 

 

 

「オレは『初代キング』―――――父さんとは違うやり方で闇人を頂点に導く。力だけで押さえ続けては何れ瓦解してしまう。力の他にも、カリスマ性と言う物が必要なんだ。何処の世界でも、それは同じだ」

 

 

 

そう言うと大牙は神風を連れて魔方陣を作り、その中に入る

 

 

 

「赤龍帝にも伝えておいてくれ。"近い内に、お前達の力を確かめに来る"と」

 

 

 

魔方陣が青い光を放ち、闇人のキングとビショップは姿を消した

 

 

 

「僕達はこれから先、あんな人達を相手にしなきゃいけなくなるみたいだね……」

 

 

 

「そうみたいだな……ハハッ。まだ手が震えてやがる……」

 

 

 

「私も、手がこんなに震えていますわ……」

 

 

 

「……怖かった」

 

 

 

新逹はしばらくの間、その場に佇んでいた

 

 

 

近い内に力を確かめに来る……

 

 

 

そう思うと、これからの戦いに対しての不安が生じた


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