「で、話って何だ?」
昇格試験の話が終わって自宅に戻ってきた直後、新はロスヴァイセの部屋に呼び出されていた
2人揃ってベッドに腰を下ろし、ロスヴァイセは真剣……と言うより緊張感が滲み出ている
チラチラと新の顔を
「どうした、ロスヴァイセ?話があるんじゃなかったのか?」
「そ、そう急かさないでください……っ。心の準備と言うものだってあるんですから……」
「今更何言ってんだよ。京都じゃ俺と一緒に寝たくせに」
「―――っ⁉も、もう!その話は忘れてください!」
ロスヴァイセが顔を真っ赤にして叫ぶ
恥ずかしい過去を蒸し返される前にと、ロスヴァイセは改めて話を切り出す
「新さんは……今の私をどう思いますか?」
「……?どうって―――」
「京都でも、バアル戦でも、リュオーガ族の時も……私は実力不足だと痛感させられました。正直、攻撃魔法には自信があったんです。それを
今にも泣き出しそうな声音で自身の内に抱えていた不安を漏らすロスヴァイセ
度重なる強者との連戦で自分の実力を発揮しきれなかった事を相当悔いているようだ
特に痛感させられたのはリュオーガ族のニトロ・グリーゼと戦った時だ
いくら攻撃魔法を撃ち込んでも全く効かず、一方的に痛めつけられた
小猫、ギャスパー、仁村のサポートが無ければ完全に詰んでいただろう……
更にシド・ヴァルディ、ユナイト・キリヒコ、
当然、今のままでは勝ち目など皆無……
「もっと、もっと強くならなくちゃいけないんです……っ。生徒を守るのが教師の務めなのに、私は守られてばかりで……っ」
今にも泣き崩れてしまいそうなロスヴァイセ
そんな様子を見た新はロスヴァイセと距離を詰め、彼女の手を優しく握る
「新さん……?」
「ロスヴァイセ、お前も不安で仕方なかったんだな。強くなろうとする気持ちは分かる。だが……あまり気負い過ぎない事だ。追い詰め過ぎると周りを見失う。その視野を消さない事が大切なんだ。それに―――」
「……それに?」
「俺にだって1度も勝てなかった相手がいる」
新の意外な告白にロスヴァイセは一瞬目を丸くした
新にも勝てない人物がいるらしい
「新さんが1度も……?」
「ああ、昔の話だけどな。俺が最も嫌っている奴で、何度やっても勝てなかった。全戦全敗だったよ」
「とても、そうには見えません……。経験豊富な新さんがそこまで……」
「事実だ。上には上がいるって事さ。だから、俺だって他人の事を言えない。これから先……もっと強い敵が現れてもおかしくない。まだまだ強くならなきゃいけねぇんだ」
新は目を細めてロスヴァイセと同じく“強くならなきゃいけない”理由を語る
新自身も充分実力を蓄えているが、それでもシドやキリヒコを始め、
不安に駆られていたのはロスヴァイセだけじゃなかった
「俺も自分の力を磨く。だからロスヴァイセ、お前も負けるな」
新の励ましの言葉でロスヴァイセの中に渦巻いていた不安が
「……ありがとうございます、新さん。何だか自信が出てきました。今まで不安だったのが嘘みたいです。お陰で心置き無く出発出来そうです」
「そいつは良かった」
ロスヴァイセが荷物を纏めて部屋を出ようとする―――寸前で足を止め、新の方に振り返った
「最後に1つ、よろしいですか?」
「ん、どうした?」
「やっぱり……こう言う事にはちゃんとケジメをつけなきゃいけないと思って……」
「ケジメ?ケジメって何―――」
チュ……ッ
突然の不意打ちキス
しかも、口同士で……ロスヴァイセから……
一瞬呆気に取られてしまった新は反応が遅れ、ロスヴァイセの唇が離れた直後、手を口元へ
ロスヴァイセは火が噴き出そうなぐらい顔を赤く染めた
「ど……どうしても、これだけは新さんに言っておかないと……安心して発てませんので……言わせてください」
「…………」
間の抜けた顔をしている新
ロスヴァイセは深呼吸して気持ちを整え―――意を決してぶつけた
「好きです……っ。私、ロスヴァイセは……新さんが好きです……っ!強くなって帰ってきますから、そうしたら……今度デート、していただけますか……っ?」
告白と共にデートの約束まで取り付けてきたロスヴァイセ
間の抜けた顔から一転、新は優しげな笑みを浮かべてロスヴァイセの頭を撫でる
「勿論だ。何処へでも連れてってやる」
「―――っ。……ありがとうございます、新さん……っ」
ロスヴァイセの目から一筋の涙が流れ、新はそれを指で
ロスヴァイセは憂いを絶てたのか荷物を纏めて出発準備を整え、部屋を出ようとする
扉を開けた瞬間―――
「話は終わったかしら?」
「あらあら、ロスヴァイセさんも大胆になりましたわね♪」
「ブッ⁉」
扉から現れたのは新を見据える様な笑顔で立っているリアスと朱乃
新は目が飛び出し、ロスヴァイセも一瞬驚くが、2人の視線は新に向けられている
危険(主に新の)を察知したロスヴァイセは萎縮しながら部屋を出ようとする
「で、では……あの、行ってきます」
「ええ、行ってらっしゃい、ロスヴァイセ」
ロスヴァイセはそそくさと部屋を出ていき、リアスと朱乃はズカズカと新に歩み寄り―――彼の両腕を2人がかりで拘束
「さあ、新?早速試験勉強の時間よ。そのついでにロスヴァイセと何を話していたのか、聞かせてもらおうかしら」
「うふふ、今夜は寝かせませんわ♪」
「いや、待て。今日はもう遅いから、明日から始めようじゃないか。急がば回れって言うだろ?焦って始めたところで何の解決にも―――」
「それとロスヴァイセにキスした件についても、ゆっくり話をしましょうね?」
「いや、違う!あれはロスヴァイセからの不意打ちで、俺がした訳じゃ―――痛い!痛い!爪が食い込む!腕に爪が食い込むゥゥゥッ!」
その後、リアスと朱乃に連れていかれた新は夜通しの質問攻めと勉強地獄を味わった……
―――――――――――――
「……あー、覚える事多すぎだ」
それから数日後、時刻は昼休み
一誠は教室の自席でそうぼやいていた
机の上には教科書が散らばっており、疲労困憊の様子である
「新、そっちは大丈夫か?目元に
「シンパイスルナヨ、イッセイ。アレカラベンキョウシスギテ、オマエノカオノパーツガスベテケイサンシキ二ミエテシマウグライダ」
「それもう完全にヤバい状態じゃねぇか!しっかりしろぉ!正気に戻れぇ!」
勉強地獄によって壊れかけている新をビンタで修理する一誠
ハッと我に返った新は鞄の中から栄養ドリンクを取り出し、一気に飲み干す
ここまでハードになったのも時期が悪かったとしか言えない……
毎晩、夕食後と悪魔の仕事後は勉強会を開き、皆に教えてもらいながら学校のテストと昇格試験の勉強をしている
ブッキングしているせいで両方やらなきゃならないから、2人の頭は爆発寸前だった
「おー、イッセーが勉強してるぜ」
「無駄だぞ。頭に詰め込んでも元がバカでは理解出来まい」
「うっせーな、ハゲにメガネめ。元浜はともかく、松田は俺と同レベルじゃねぇか」
「カカカ、こう言う時は開き直って違う領域に興味を抱くべきさ。ほら!」
松田が
一誠は素早くそれを奪い取り、パッケージをマジマジと見つめる
「こ、これは……っ!今入手困難な超人気作品―――『真・爆乳戦隊パイオツジャー爆裂生乳戦争編』じゃねぇかぁぁぁぁぁっ!て、手に入れやがったのか⁉」
「まあ、独自のルートで入手したのだよ。これをこれを手に入れる為に俺は色んな物を犠牲にしたがな。それでもそれだけの価値はある!」
元浜はメガネをキラリと光らせ、松田が一誠の首に腕を回し、そのままイヤらしい顔付きで耳打ちする
「なあ、イッセー殿。もうテストなんて忘れて俺の家で鑑賞会しようぜ?お前ん家、アーシアちゃんがいるからこう言うの見られる機会無いんだろう?」
確かに家ではプライベートな事が出来にくくなっており、夜もアーシアと過ごす時間が多いのでこう言った物を見る機会が少ない
健全な男子たる者、やはりエロいDVDは見たいようだ(笑)
「言っておくが竜崎、貴様には見る権利すら無いからな」
「その通り。女体に囲まれたお前などテスト勉強で頭を破裂させて死んでしまえば良い」
「別に構わねぇよ負け犬ども。つーか、それ持ってるし」
新の余裕な発言にハゲとメガネは“チクショウ!リア充め!”と顔を悔しさで歪ませる
一誠もテストを忘れて鑑賞会を開こうかと決心しようとした時―――メガネ女子の
「あらあらまあ、テスト前だってのにエロ3人組はお盛んね。あら、でもこれ面白そうね。―――どう思う、アーシア?」
桐生の隣にいたアーシアがエロDVDのパッケージを見つめ、途端に顔を真っ赤にさせた
「はぅぅぅっ!イッセーさん!ま、またこんなエッチなものを!あんなにいっぱい持っているじゃないですか!」
「アーシアちゃん、俺のコレクションを何処まで知っているの⁉」
一誠が驚く中、ゼノヴィアも登場して興味深そうにパッケージを見ていた
「うん、前に新のコレクションをアーシアとイリナと拝見したが、最後にやる事は結局同じだと思うんだ。性交だろう?なあ、イリナ」
「か、過程や雰囲気が大事だって、リアスさんと朱乃さんも言っていたわ!きっとそう言う事なのよ!」
「ふむ。雰囲気か。確かに必要か。ただ抱かれるだけじゃ“女”を堪能出来ない、と。そう言う事だな、イリナ」
「って、クリスチャンな私にその手の話を振らないで!大変な事になっちゃうし!けれど、興味もあって……!ああ、複雑な乙女心をお許しください!」
いつの間にか来ていたイリナも頭を抱えたり、お祈りしたりと忙しい様子
話からすると、リアスと朱乃も見ているようだ
「新!お前ゼノヴィアやイリナにも見せてたのか⁉」
「いや、2人とも勝手に見てた。ついでにお前がDVDを隠しそうな場所もアーシアにバラしてみた。多分、空き部屋のクローゼットに置いてある使わなくなった家財道具の中とか、そんなもんだろ?」
隠し場所の核心を突かれた一誠はグゥの音も出せなかった……
羞恥に包まれる一誠を松田と元浜は半笑いしつつ、同情的な視線を向けた
「わ、私もエッチになりますから!心配しないでください、イッセーさん!」
大声でそう宣言するアーシア、隣では桐生が意味深な笑みを浮かべていた
『おのれ、桐生までアーシアにエロエロな影響を与えやがって!俺の可愛いアーシアがエロエロになったら……それはそれで最高かな⁉』
―――などと考えていると、教室の扉が勢い良く開かれる
やって来たのは―――1年のシド・ヴァルディだった
「イッセー先輩~、あ~そ~ぼっ♪」
能天気な事を言ってくるシドだが、彼の登場に新達は警戒心を抱く
それもその筈、シドはここに潜入してきた
警戒しない方がおかしい上に、こんな
特に自分達の正体がバラされる事だけは避けたい
「アレアレ?どうしたの、イッセー先輩?あからさまに嫌な顔しちゃってさぁ」
「……悪いけど、お前の相手をする程こっちは暇じゃないんだよ」
「へ~、そのDVDを見るのに忙しいから?」
「違うわ!テスト勉強中だって言ってんだよ!」
「な~んだ、つまんないのぉ」
不貞腐れるシドに桐生が話し掛ける
「ところでさ、1年くん。兵藤とは妙に馴れ馴れしく話してるけど、お二人はどんな関係?」
桐生が妖しげな顔付きで訊くと、シドは少し考えた後にこう言ってきた
「そうだねぇ、イッセー先輩とは―――激しくし合った仲かな?」
「ちょ!誤解を生む発言!」
シドの発言に教室内がざわめき始める
特に女子からは黄色い声が上がり、桐生が一誠の反応を面白がって更に訊き出す
「激しくし合ったって……シたの?(エロ的な意味で)」
「うん、この前したよ(
「「「「「2度目⁉2回もしたの⁉」」」」」
シドの発言は大いなる勘違いを呼び、女子達の騒ぎ声が一気に加速する
「噂の転校生が野獣兵藤と2回もしたの⁉」
「しかも、1回目は兵藤が攻め!2回目は彼が攻めみたいよ!攻め受け両方OK!」
「木場きゅんだけじゃなくて、1年の後輩ともイケナイ関係を⁉」
「野獣兵藤×木場きゅん×転校生シドきゅん!新作はまさかの三角関係に突入よ!」
「ちょおおおおおおおおおお⁉何か話があらぬ方向に脱線してるぅぅぅぅぅぅぅっ⁉」
BLネタ祭りに一誠の顔が百面相を発動し、松田と元浜はゆっくりと後ずさる
「イッセー、お前いつの間にそんな道を歩み始めたんだ……?どんどん遠ざかっていくぞ」
「誤解だ!大きな誤解だ!俺は健全な男子で女体大好き!あいつとはそんな関係じゃねぇ!」
「安心しろ。たとえお前が魔道に足を踏み入れても、俺達は友達未満他人以下だ……」
「一気に格下げすんじゃねぇぇぇぇぇぇっ!チクショォォォォォッ!俺はホモじゃないのにぃぃぃぃぃぃぃっ!」
堪らず一誠は大泣きしながら教室を飛び出していき、シドは一誠の後を追い掛ける
「イッセー先輩、何処行くの~?もしかして駆けっこ?だったら遊ぼうよ~っ♪」
「来んじゃねぇ全ての元凶ぉぉぉぉぉぉ!お前のせいだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
嘆息しつつ、新も一誠とシドを追い掛けていった
しかし、発狂した一誠とそれを面白がるシドの足が速いせいで追い付けず、途中で見失ってしまう
“まあ、あの話題には関わらないでおこう”と切り替えて戻ろうとした矢先―――
「竜崎か」
「ん?匙か」
匙と出くわしたのだった
―――――――――――
「……兵藤の奴、そこまで荒れてんのか?」
「ああ、最近じゃドライグと同じで情緒不安定になってきている。あいつにもカウンセラーと薬が必要かもしれねぇな」
生徒会室にて嘆息する匙と他人事目線で語る新
実はドライグは一誠がおっぱい関連でパワーアップを続けたせいで、心の病に
アザゼルから専門のカウンセラーを紹介して診てもらい、ドラゴン用の気分を落ち着かせる薬を処方してもらったらしい
今では週一でカウンセラー、1日3回のお薬タイムが欠かせなくなったとか……
「天龍がしっかりしてくれないとヴリトラで暴走した時、大変な事になるな」
「ドラゴンってのは繊細で扱いが難しいんだろ」
「お前が言っても説得力が無いぞ、ドラゴンの欠片から作られたくせに」
「ハハッ、俺は特別製だ」
冗談を交えながら湯呑みのお茶を
「そういや、昇格推薦だってな。聞いたぜ。おめでとさん」
「ああ、サンキュー。急な話だから正直よく分からねぇけど」
「ま、俺は妥当かなって思うぜ。お前ら、かなりの死線くぐってるもんな。ロキ戦や京都、リュオーガ族の時では俺もそれに参加したけど、だからこそよく分かるぜ。ありゃ死ぬ。普通死ぬわ。どんだけの強敵揃いだよ、お前らの相手って。神話や歴史に残る連中ばかりじゃないか。それにあの転校生、シドって言ったっけ?そいつもバカみたいに強いって聞いたぞ。しかも、そんな奴らが12人もいる組織って……更にどんだけって感じだ。それを生きて結果出してんだから、当然っちゃ当然だ。飛び級か?既に実力的には上級悪魔クラスだろ、お前と兵藤、木場とかさ」
「いや、昇格に関してはまず中級からだ」
「へー、上が融通利かなかったのかね。会長はお前や兵藤、木場や姫島先輩が飛び級で上級になってもおかしくないって言ってたぜ。
ソーナも匙もそう言った目線で見ていたようだ
それだけの殊勲を挙げたのなら、当然と言えば当然だろう
「兵藤と木場、お前なんて特にバカみたいに強いもんな。俺、この間木場に手合わせ願ったんだけどさ。強すぎだ。攻撃がほぼ当たらなかったぞ?テクニックタイプのお手本みたいな奴だよな、木場って。その木場とガチンコでほぼ毎日トレーニングしてんだろう?お前ら本当にバケモノだぞ?」
「今度は俺が手合わせしてやろうか。竜の力をもう少し上手く使いこなしたいからな。実験台になれ」
「実験台って時点でヤダよ!上級悪魔クラスっつったけど、お前に関しては最上級悪魔クラス、下手すりゃ魔王クラスだぞ⁉そんな奴の実験台なんざ御免だ!死んじまうわ!」
ビビりまくる匙に笑う新
何とも珍しい光景である
ハァッと息を整えた匙はこんな事を言い出す
「俺も昇格したいところだが、それよりもまずは強くならないとな」
「お前も充分な強さだろ、ヴリトラ持ってるくせに」
「いや、俺だけじゃなくシトリーのメンバー全員で強くなりたいんだ。最近、うちの会長は『
「人工
それは『聖書に記された神』が創ったと言う
「ああ、俺達シトリー眷属はさ、アザゼル先生の実験によく付き合っていてさ。1つの成果として、今度シトリー眷属の非
「へー、そいつはスゲェな」
「人工
生徒会は貢献する形でグリゴリの実感も手伝っているようだ
匙は楽しそうに語る
「人工
アザゼルは五大龍王の一角『
あれが恐らく契約、封印系統に分類されるのだろう
『今度、人工
などと新が欲張りな事を考えていると、生徒会室に他のシトリーメンバーが帰ってくる
「あー、竜崎くんだ。昇格推薦おめでとー!」
お下げ髪の『
新も“サンキュー”と軽く礼を言い、1年の『
「
「あー、あれか。了解、仁村」
更に2年のもう1人の『
「元ちゃん、私の用件も会長からの用事なの。私も後で向かうね」
「マジかよ、花戒。ブッキングしちまってるな……。とりあえず、近いところからやっていくか。竜崎、俺行くわ。他の奴と話しながらゆっくりしていってくれ」
そう言うなり匙は早足で生徒会室を後にしていった
新が湯呑みのお茶を啜ってると、花戒と仁村がチラチラと視線を送っている事に気付く
「ん、どうした?」
「竜崎くんが元ちゃんと一緒にいるの、珍しいと思って」
「そうですよ。ちょっと新鮮な感じ」
「たまたま出くわしたんだ。発狂した一誠を見捨てた直後に」
「「何が遭ったの……?」」
口を揃えて問う2人に新は事の経緯を明かし、それを知った生徒会の面々は苦笑い
更に話を続ける
「匙から聞いたぜ。人工
「ええ、私達も強くなりたいから。アザゼル先生から“その時は
「あのクソ教師……と言いたいところだが、その申し出を敢えて受けようか」
疑問符を浮かべる花戒と仁村
新が話を続ける
「俺も自分の力をもっと使いこなしたいから、実戦で磨き上げようと思ってんだ。実戦練習ならいくらでも付き合ってやる」
「そんな事言って……私達の体が目的じゃないんですか?」
「半分当たり」
あっけらかんと答える新に、花戒と仁村がプンスカ怒る
「もうっ、竜崎くんは少し自重してください!いつもいつも私達に恥ずかしい思いばかりさせて……」
「桃先輩はまだマシな方です。私なんて裸でお姫様抱っこですよ……?あんな漫画やアニメのヒロインみたいな事されたら……っ」
羞恥にまみれた過去を思い出し、顔を赤らめる2人
ジッと新を睨み付ける
「と、とにかく!いつか責任取ってもらいますからね!」
「なるほど、つまり俺も一肌脱げと」
「そう言う事じゃなくて!何で上着を脱ごうとしてるの⁉」
「ハハハッ、冗談だ。からかうのが面白くてつい」
からかわれた花戒は手に持ってた書類で新をペシペシと叩き、同じく仁村は頬をプクーっと膨らませる
「「……
「ん、何か言ったか?」
「な、何でもありませんっ。それより元ちゃんの手伝いに行ってきます!」
「あ、私も行きますっ、桃先輩!」
花戒と仁村はそそくさと逃げるように生徒会室を飛び出していった
その様子を見ていた草下から「あんまり2人をからかわないであげて」とダメ出しを受けていると、『
「竜崎、サインをくれないかい?」
「別に構わんが、俺ので良いのか?」
「勿論。この間のバアル戦、記録映像で見て感動したよ。最高の殴り合いだった。それにリュオーガ族の事も聞いて、ますますキミに惚れてしまったよ」
彼女は前々から新のファンらしく、
何でも泥臭い男が好みらしい
職業柄、新は“泥臭い”と言うより“血生臭い”の方が表現として合っているのだが……そこは割愛(笑)
由良は美少年顔で女子人気が高いのだが、やはり彼女も年相応の女の子の反応を見せてくれる
ちなみに『
「年下は良いものよ。最近だと転校生のシドくんも捨てがたいわ」
「年下なら何でも有りかいっ」
新がツッコミを入れた直後、由良が悪戯な笑みを浮かべて耳打ちしてくる
「ああ言ってるけど、巴柄は最近キミの事も意識し始めているんだよ。
「ちょっと翼紗⁉何吹き込んでるの⁉やめてぇっ!」
顔を真っ赤にした巡が由良を追いかけ回す
“等身大の何なのかスッゲェ気になる……”と新は冥界興行の販売力を危惧した
「私はやっぱり木場きゅん派なんだけど……高嶺の花って感じだよねー」
草下は木場ファンだったのだが、最近では夢と現実をキッチリ分けようかと考えているらしく―――
「……
「―――っ?」
視線に気付いた新がそちらを向くと草下は慌てて目を逸らし、その事に気付いた由良が巡の追撃を
「憐耶、今度竜崎にキミの事を紹介しようか?」
「本当⁉でも、副会長の方を先に紹介してあげて。椿姫さん、本気で竜崎くんに恋しちゃってるから」
由良の発案に喜ぶ草下だが、順番をまず『
何やかんやで新も生徒会の面々と打ち解け合っており、最近では両眷属の女子同士で交流も持ち始めている
学園に通う数少ない悪魔同士、交流を持つのは良いコトだ
「竜崎くんが来ていたのですね」
聞き覚えのある声に気付いて振り向くと―――そこにはソーナがいた
「あ、会長。邪魔してるぜ」
「ええ。お客さんが来ているけれど、皆に用事を頼みます。椿姫が部活棟で苦戦しているそうです」
「「「はい!」」」
ソーナ会長の命令を受けて、皆が返事をして生徒会室を飛び出していく
残ったのは新とソーナだけ
途端に静寂に包まれる生徒会室
ソーナ会長は自分の席に戻り、書類に手をつけ始めた
仕事の邪魔をしてはいけないと感じ、新も退室しようとした矢先―――不意にソーナ会長が言う
「リアスに告白したようですね」
「リアスから聞いたのか?」
「ええ、一応。彼女とは幼い頃からの友人ですから。最近は通信用の魔方陣越しに
「ハハハッ、そりゃどうも」
頬をポリポリ掻く新にソーナ会長は真っ直ぐ視線を送りながら言った
「あなたは私が出来そうに無かった事を全て叶えるのね」
「どういう事だ?」
「婚約―――ライザー・フェニックスの件、木場祐斗くんの件、ギャスパーくんの件、小猫さんの件、朱乃の件、……リアスが抱えていたものをあなたが全部軽くしたの。……私はあなたよりも長くリアスの傍にいながら、友人でありながら何も出来ませんでした。『上級悪魔だから』『悪魔のしきたりだから』と概念に捕らわれ、それらの壁を私は越えられなかった。……周囲の視線と自分の立場を
「……会長も会長なりにリアスを心配してたんだな」
「あなたはそれらを意にも介さずに解決していった。私はそれがたまらなく嬉しくて……、たまらない程に妬みもしたわ。私に出来ない事をあなたは全部解決してしまうのだもの。だからこそ、お礼を言いたいのです。―――リアスを救ってくれてありがとう」
ソーナ会長は息を吐くとクールな表情を緩める
「ねえ、竜崎くん……いえ、プライベートの時は新くんで良いのかしら?リアスをよろしくお願いします。わがままで直線的で短気なところもあるけれど、誰よりも繊細なのよ。傍で支えるヒトが必要です。だからこそ、あなたにお願いしたいの」
「ああ、リアスの事は任せろ。俺にとっても大切な女だ」
「そうね、……私の事もソーナで良いわ。リアスの想い人なら、私にとっても友人も同じなのだから」
「お、そいつは助かる。堅苦しいのは苦手なんでな」
「ふふっ、あなたはいつでも堅苦しさから離れてるじゃない」
新の反応を見てソーナ会長はおかしそうに小さく笑った
普段がクールなので、可愛い笑い方のギャップにやられそうになる
ソーナ会長は息を吐くと一言漏らした
「私も彼氏作ろうかしら」
「お、新鮮な言葉。それなら俺が立候補してみようか―――なんつって」
新が悪戯な笑みを浮かべてそう提案すると、ソーナ会長は急激に顔を赤らめてしまい……邪念を振り払うが如く書類に集中
「新くん、リアスに怒られるわよ……?」
「フッ、説教なら―――もう散々くらってるぜ……。あ、ちなみに匙はどうなんだ?」
「弟、と言ったところかしら」
想いが遠いどころか脈なしの心境に新は心中で“匙、ドンマイ♪”と吹き出しそうになる
「それとゲームですが、見事でした。あのサイラオーグ・バアルを倒せるなんて、あなたの成長ぶりには驚かされるばかりです」
「そう言ってくれるのはありがたいが、実際のところ5人がかりでやっと倒せたってレベルだ」
「だとしても、結果としてあなた達の勝利です。見事としか言えないわ」
いつに無く褒め言葉を贈ってくれるソーナ会長
実際はソーナ会長の方も凄い
まだ眷属が完全に揃った状態でもないのに、大公アガレスをゲームで倒した
新達とは対照的にゲームのルールとソーナ会長の戦術がピッタリだったのだろう
「ともかく、リアスをよろしくね、新くん。それと昇格推薦おめでとう。私からもお祝いを言わせてもらうわ」
「サンキュー、ソーナ。リアスの事もそうだが、また何か遭った時は遠慮無く言ってくれ」
「そうね、期待しています。―――頑張りなさい。中間テストもね」
微笑みを見せるソーナ会長
本音を言ってしまえば“中間テストなんか知らねっ”と放棄しているところだが、ソーナ会長からの賛辞を無下にする事も出来ず……
新は気合を入れ直し、中間テストも頑張る事にした
―――――――――――
「……まさか、あんたがそんな事を言い出すとは……どういう腹積もりだ?」
「むっ、堕天使総督は失礼ですね。これはお互い無駄な血を流さない為の提案なんですよ?そんなに信じられないのですか?」
「生死不明の『初代クイーン』がいきなり出てきて、そんな事言われたら誰だって疑うだろ。1つ訊くが、こいつはあんたの独断か?」
「いいえ、大牙も賛同してくれました。あの子も『2代目キング』として現状の変化を望んでいます」
「あいつがねぇ……」
「どうです?お互い持ちつ持たれつと言う訳ですし、私自身もあなた達に興味が湧いたからこその提案なんです」
「はぁ……こちとら確実に反感買われる奴の訪問予定を組み立ててるってのに、とんだサプライズゲスト追加かよ……。頭が痛くなってきやがった」