シドとのリターンマッチ後、新と一誠はアーシアの治療によって何とか事無きを得た
しかし、これから先の事を考えると喜ぶ暇など無いだろう……
シド・ヴァルディ、ユナイト・キリヒコの様に規格外の強さを備えた猛者がまだ10人も背後に控えている
そして、それらを凌駕する者の存在も……
未だ謎に満ちた組織―――
新は治療を終え、自宅に戻ってからも
パソコン、スマホ、情報屋、あらゆる
だが、それも無駄な努力に終わる……
情報屋を巡っても誰もが口を閉ざすか、逆に“何も聞かないでくれ”だの“死にたくない”だの言う者もいれば、金を渡して追い返してくる者もいた
想像以上に
何1つ進展が無いまま自宅のリビングに戻り、土産として買ってきた酒とチーズをテーブルに並べる
グラスに酒を注ぎ、6片に切り分けられたチーズを1つ、口に放り込む
グラスの酒を一気に飲み干す新
情報を1つすら仕入れられなかったイライラ―――ではなく、
『当然と言っちゃ当然か……。あれだけ派手にやらかしてる勢力だ。情報面でも達者なんだろうな……。口止めはお手の物か。いや、無理も無いか……』
今までに無い壮大な規模の脅威が潜んでいる事に新は溜め息しか出なかった
飲まなきゃやってられんとばかりに酒を注ぎ、飲み干し、チーズを食べる
それで満たされるのは腹だけで、目の前の問題が解決に満たされる事は無い
酒を飲んで上の空、そんな状態を繰り返していると―――誰かがリビングに下りてきた
「あら、こんな遅くに独りで酒飲み?随分と良いご身分ね」
「……レイナーレか」
「じゃっじゃ~んっ♪うちもいるっすよ~」
下りてきたのはリアス達と同じく新の家に住んでいる堕天使のレイナーレとミッテルト
今は就寝時間をとうに過ぎているのだが、新の気配に気付いて下りてきたのだろう
彼女達は新の隣に座り、いつの間にか用意してきたグラスに酒を注ぐ
「独り占めは感心しないわね。お土産なら私達に
「ん~、このチーズ激ウマ~♪レイナーレ様も1つどうっすか?」
レイナーレが酒を飲み、ミッテルトはチーズを食べる
酒盛りに参加した彼女達は早くも酒瓶を1本空け、2本目に突入
新は
「……いつもなら注意してくるのに、何か遭ったの?」
新の様子を不審に思ったレイナーレが早速訊いてくる
新は浮かぬ表情で言う
「……ここ最近、死に目に遭い過ぎて嫌な予感しかしないんだよ。今までは何とか生き延びてきたが、いつか終わりが来るんじゃないか……俺でさえ敵わない脅威が降りかかってくるんじゃないかって……。不安に押し潰されそうなんだ……」
「随分とらしくない事を言うじゃない。以前のアラタはそんな弱気じゃなかったわよ?」
「上には上がいるって事を思い知らされてんだぞ。誰だって弱気に―――」
「その不利な状況を何度も
「…………」
「気負うのは分かるけど、今それに押し潰されたらどうする事も出来ないわ。クヨクヨ悩むのはアラタらしくない。―――自分を見失わないで」
いつも叱られてばかりのレイナーレに諭され、新は不覚にも自分の現状に
確かにここ最近は自分らしさを忘れていた
リュオーガ族の生まれである事に心を壊しそうになり、今も未知の組織―――
分からない事を放置するのも良くないが、1番大事なのは自分らしさを忘れない事
脅威に押し潰され、自分らしさが見えなくなれば一気に消されるかもしれない……
大前提を忘れかけていた新は我に返り、レイナーレに頭を下げる
「……すまない、またネガティブ思考に捕らわれちまった。お前の言葉で目が覚めた、助かったよ」
「な、何よ、急に改まって……。ただ弱々しいアラタを見たくなかっただけよ」
「そうそう♪アラタはエロエロに生きてこそ、でしょ?」
ミッテルトが新の膝に座り込み、上目遣いで顔を覗いてくる
柔らかな感触に浸りつつ、自分も酒盛りを再開させる
「よしっ、吹っ切れたところで飲み直しだ!今日はとことん飲んでやる!」
「ふふっ、そう来なくちゃ」
「うちも~!」
この後、夜通し酒盛りを続けた新は見事に二日酔いを
―――――――――――――――
とある場所のとある浮遊戦艦
船内を進むのは新と一誠を圧倒してきたシド・ヴァルディ
その隣にはユナイト・キリヒコもいた
「如何でした?彼らとのリターンマッチは」
「今回は僕の勝ちだったよ。でも、まだまだ面白くなりそう♪それが楽しみで待ち遠しいよ」
「それは良かったですね。ただ、そのお楽しみが続けば―――の話ですが」
「うん。召集されちゃうんだよね、僕達全員が」
「
歩みを進めるシドとキリヒコが足を踏み入れたのは―――巨大な広間だった
その広間にはシドとキリヒコを除く
「遅い到着ですね。あなた方でラストですよ。少しは時間を守ったらどうなんですか」
来て早々、白銀の長髪に眼鏡を掛けた男性がシドとキリヒコに時間厳守を忠告してくる
彼の名はシルバー・ゼーレイド
国ごと武装勢力を氷漬けにした張本人である
シドとキリヒコが簡単な詫びを入れ、シルバーは本題へ進もうとした直前―――下品な笑い声が飛んできた
「ヒーハハハハハハッ!んな
黒みがかった緑色の体躯、両の肩、肘、
胸の中央に埋め込まれた黄色い核が脈動し、血の様に赤い目を光らせ凶悪な口を開く
完全にバケモノの姿を持つのは―――ギルグレイ・ジャーグ
殺戮衝動を抑えようともせず、足踏みしまくる
「下品な言葉は
ギルグレイの言動に喝を入れたのは海賊の艦隊全てを単独で沈めた漆黒の鎧武者―――
彼の物言いに対し、ギルグレイは哄笑を上げた
「ハンッ!俺達ゃ悪党狩りの組織だぜ?そんな奴らに品格も四角も三角もあんのかよ?
「貴様ァ……ッ、我を愚弄するのか!」
「良いぜ、そんなに死にたきゃブッ殺してやるよ」
一触即発の雰囲気……剥き出しの敵意がその場を震撼させる
凄まじい殺気が両者から放たれる中、1人の女性が仲裁する
「お待ちください、ギルグレイ様、斬月様。わたくし達の物語が始まる前にご退場されてはいけません。まだ序章にすら至ってないのですから」
物静かに2人を諌めるのは頭に牛の様な角を生やし、肩口が大きく空いた東洋風の着物に身を包んだ巨乳の女性―――セイラ・ネイキッド
斬月は渋々敵意を沈め、ギルグレイは面白くないとばかりに唾を吐き捨てる
「止める必要はねぇだろ、セイラぁ。殺りてぇ奴には勝手に殺らしときゃ良いんだよ」
セイラに文句を飛ばすのはボサボサの茶髪に爬虫類の様な
ただでさえ危険な
「スナイドも煽るな。今日ここに召集されたのは
龍の仮面を着け、三國志に出てくる様な前掛けと鎧に包まれた異形―――スメラギ・リュウゲンが召集の意図を説明する
その隣でタバコを吹かせる異形がもう1人
「英雄を名乗る吹き溜まりが合戦の
骸骨と機械が混ざった様な外見で詩的な表現を繰り出すのは“死神”と呼ばれる男―――ブラッドマン・クルーガー
吹かしていたタバコを床に捨て、足で踏み潰す
「俺達は相手を“倒す”のではなく―――相手を“潰す”組織だ。今動くのはリーダーの本意に反する事となる。それは指揮官であるお前も同じだろう?ディザスター」
ブラッドマンが“ディザスター”と呼ぶ者に視線を移す
白を主体とした全身に風神・雷神の様な出で立ち
明らかに迫力が違うその異形はブラッドマンの意見に首を縦に振った
「その通りだ。『
幹部の中で指揮官に位置するディザスターの言葉を聞いて、より戦意を
人外だらけの迫力に少しばかりついていけない少女が2人もいた
「改めて思うんだけど……この
青色の髪にカチューシャを着けた小柄な少女―――レビィ・シャルティアは小動物の如く体を震わせる
特にディザスター、ブラッドマン、スナイドの3人にビビっていた
「しかし、今のあなたも同じ穴のムジナです。いつまでもビビってばかりいられませんよ」
長い黒髪に横一線に揃えた前髪、白一色のミニスカ軍服を着込んだ巨乳美女―――カグラ・イザヨイが嘆息しながらも、早く慣れるよう
カグラはキョロキョロと辺りを見渡す
「ディザスターさん、そう言えば“あの人”は何処に?」
「ん?ああ、“あいつ”か。“あいつ”ならまた何処かで迷子―――いや、放浪してると言った方が良いか」
「今“迷子”って言いかけなかった?」
「どちらにしろ、今はここに来れないそうだ。まあ、奴はやる時はやる男だから、あまり気にする事もあるまい」
「もうっ、組織のトップって自覚が無さ過ぎよっ」
レビィが頬を膨らませる中、指揮官ディザスターは幹部11人の前に移動する
「今は『
ドスの利いた
これが
造魔の幹部勢揃い!どいつもこいつもヤバそうな奴らばかり……((( ;゚Д゚)))
でも、更に上のリーダーがまだいるんですよ……っ。その人物の登場は少し先になります。
さあ、ようやく次回から11巻編に移れます!
タイトルは“進級試験のウロボロスとダブルクロス”です!