ユナイト・キリヒコとの戦闘が終わった翌朝、新とイリナは帰りの飛行機が待つ空港へと
ミラナとガブリエルも見送りに来ており、フライトまでの時間を彼女達と過ごす事に
キリヒコが姿を消してからバウンティハンター協会からの連絡が届いた
任務は無事終了したものの、キリヒコを取り逃がした事により結果は失敗に終わった……
報奨金も出ず、完全に無駄骨だったが―――生きていただけでも不幸中の
売店でお土産を買い揃えた新がゲート前に戻ってくる
「じゃあ、俺達はここで。また何かあったら遠慮無く言ってくれ」
「は、はい。その時はまた……よろしくお願いします」
「お二人もお気をつけて~」
ミラナとガブリエルの見送りに新は手を振り、イリナは頭を下げて搭乗ゲートへと向かっていく
「今回の1件、まだまだ分からない事が多過ぎる。奴の引き際の良さといい、目的の曖昧さといい……まるで俺達を下調べするかの様な……」
「もしかして『
「分からん。とにかく今は1つでも多く情報が欲しい。向こうに戻ったら即情報収集だ。今回の任務は思った以上に出費が
「情報収集ってお金掛かるんだね……」
「業界の
―――――――――――――――――
これまで一誠がシド・ヴァルディ、新がユナイト・キリヒコと言う謎多き敵と対峙してきたが……その同時刻、実は世界各地で大規模な被害が出ていたのだ
否、事細かに言えば“被害”の一言で片付けられないのかもしれない……
彼らは『
1つ……とある国に攻め込んできた武装集団を殲滅する者がいた
「早くっ、早く撃て!増援を呼べぇ!」
「無理だ……!どの隊も全滅してる……!」
「何なんだよ、ありゃ……⁉人間じゃねぇ!バケモノだ!」
恐怖に駆られながら銃を乱射する武装集団
その視線の先にいるのは―――1人の異形染みた者だった
黒と銀を基調とした体躯に赤き眼を光らせ、右手をゆっくりと前に
その瞬間、視界が0になる程の冷気が周囲一帯を包囲し、武装集団を
絶望の顔で凍結された武装集団を見据え、今度は刃と一体化した弓の様な武器を取り出す
目の前の獲物に狙いを定めると風が集束していき、放たれた風は武装集団を粉微塵に砕いた
武装集団の殲滅を終えたであろう異形は体を光らせ、その姿を解除する
中から現れたのは―――
指で眼鏡を直す仕草をしながら口を開く
「虫ケラでも凍らせて砕くと綺麗ですね。皆さんへのお土産に持っていきましょうか。それとも……この国自体をお土産にしましょうか」
不敵な笑みを浮かべる男の周り……否、国その物が氷で覆われていた
―――――――――――――――――
1つ……とある国の領海に海賊の大艦隊が攻め込もうとしていた
その数は凡そ100以上
頭目らしき男が下卑た笑い声を上げる
「ヒャッヒャッヒャッヒャッ!良いか野郎共!あの国には億単位の金塊があるって噂だ!そいつを根刮ぎかっさらっちまえば、一生遊んで暮らせるぜ!気合い入れろや!」
「「「「「ヒャッホォォォォォオオオオオオオオオオオオオッ!」」」」」
大いに盛り上がる海賊だが、その歓喜もやがて悲鳴と絶望に変わる……
意気揚々と攻め込まんとしたその時、部下の1人が慌ててやって来る
「か、
「敵襲だぁ?この大艦隊に喧嘩を売るとは命知らずなバカだ!で、相手は何隻だ?」
「そ、それが……何て言ったら良いのか―――あぁ!もう近くまで来てる!」
部下の言葉に頭目が視線を向けると、激しい
その正体を見て頭目どころか部下達も驚愕した
「よ、鎧武者が走ってくる⁉バカな!海の上を走ってきてるだと⁉」
そう、頭目の言う通り―――敵の正体は海上を物凄い速度で激走してくる鎧武者だった
漆黒の甲冑に身を包んだ鎧武者は激走しながら大艦隊を片っ端から破壊していく
炎上し、沈んでいくのを目の当たりにした頭目は直ぐに迎撃を指示した
機関銃と大砲を漆黒の鎧武者に向けて一斉射撃
しかし、全弾命中してもお構い無し
漆黒の鎧武者は意にも介さず飛び上がり―――両腕を交差させる
「
交差させた両腕を振り抜くと
ここまでで
半分以上を数分で撃沈させ、残りの艦隊も―――
「
身の丈以上に伸びた腕で1隻残らず2枚に切り下ろし、頭目が乗っている船に降り立つ
圧倒的な破壊力になす術無く震える海賊
「そ、そんな……俺の艦隊が……たった1人の鎧武者に沈められた……⁉」
「
「た……助けて……っ!何でもするから……助けてくれぇ……っ」
「見苦しきもまた罪。海賊ならば、海で果てる事を
100以上の艦隊を率いる海賊は1人の鎧武者によって僅か10分で壊滅し、海の藻屑となった……
―――――――――――――――
「帰ってきて早々、色んな事が起こり過ぎて追い付かねぇな。そのシドって転入生にも……」
「新も新で大変だったんだな」
新とイリナが帰国した直後の夜、オカルト研究部部室にてお互いに起こった経緯を話し合っていた
一誠は転入生シドの正体、新は突如出現したユナイト・キリヒコについて
彼らに関する情報は少しでも欲しいのだが、多くの情報屋を回っても入手出来なかった
「オマケにこんな騒ぎは俺が行った国や、ここだけじゃないみたいだ。これも情報屋でゲットしたんだが、相当酷い被害でな。“人間のテロ組織”を壊滅させる為とはいえ、国ごと凍り漬けにされたって話だ」
「く、国ごと⁉しかも、人間のテロ組織相手に⁉」
一誠は勿論、リアス達も驚愕せざるを得なかった
悪魔だけでなく三大勢力とて、人間社会の事柄にはあまり干渉しないのが暗黙のルール
だが、異能を持たない人間界のテロ組織相手に堂々と姿を現し、壊滅させると言う所業を平然と
「これだけじゃない。他にも100隻以上の海賊船をたった1人で沈めたとか、町や村に潜伏したはぐれ悪魔を住民ごと殲滅したとか、もうメチャクチャな被害だらけだ。世間では“悪党狩り”なんて言われてるが……」
沈黙が続く中、最も
机を叩き、苦虫を噛み潰した様な表情をしていた
「ふざけやがって……!相手は“普通の人間”だぞ?異能者や異形が人間社会で表立つのはタブー行為だってのに……平然と巻き込むなんざ、正気の沙汰じゃねぇ……!」
人間社会をなるべく自分達の事情に巻き込まないよう日々務めているアザゼルにとって、この被害は許せないものがあるのだろう
最低限のルールすら守ろうとしない輩のやり方にアザゼルは怒り心頭だった
新は一誠にシドについて話を振る
「一誠、そのシドってのはどんな奴なんだ?」
「……油断ならねぇくらい強かったよ。錬金術の使い手だったかな。えーっと、確か―――」
「『
「そうそう、それそれ。………………………………ハイ?」
横から聞こえてきた覚えのある声に一瞬止まり、恐る恐る隣を見てみる一誠
そこにはいつの間にか部室内に入り込んだ問題の転入生―――シド・ヴァルディがいた
一誠は「わぁぁぁあっ!」と素っ頓狂な悲鳴を上げて飛び退き、シドは軽く手を振って挨拶する
シドの登場に全員が驚き、警戒態勢を取った
「アレアレ~?先輩達、そんなおっかない顔してどうしたの?」
「随分と余裕ぶってられるな、敵陣のど真ん中で。どういう神経してんだ、お前は」
アザゼルは平静を
「そう言う神経だと思うよ」
「まさか生徒に化けて来るとは恐れ入ったぜ……。誰の差し金だ?大人しく吐いた方が身の為だと思うが……あっさり吐く訳無いか」
「教えて欲しい、先生?交渉するには材料が必要だよ」
「教えなきゃお前に退学処分をプレゼントするぞ。転校して数日で退学になれば、お前さんの目論見もパァだろ」
「先生~、それって職権乱用なんじゃないの?いけないなぁ、仮にも教師が生徒に脅しを掛けるなんて。……まあ、別に良いんだけどね。
アザゼルの職権乱用に一切動じないどころか、シドは深い目的も無しに駒王学園に潜入していた事を自ら明かす
丸っきり腹の底が見えないシド
「……でも、流石にそれは面白くないからね~。そっちがそう来るなら、僕も遠慮無くやっちゃうよ?この町の人達を巻き込んで―――先輩達と思いっきり遊んじゃおっかな~♪」
シドは無邪気な笑みを浮かべつつ、邪気に満ちた発言をする
アザゼルの脅しに対する抑止力か……シドは宣戦布告とも取れる脅しを浴びせてきた
シドの強さは一誠から皆に伝わっており、そんな輩が町中で暴れれば被害は甚大なモノとなる
リアスはジッとシドを睨み付けるが、下手に手を出せば即戦闘開始となってしまう
それだけは何としても避けたい
「……………………用件は何だ」
アザゼルは沸々と煮える感情を抑え、相手の話を聞く事に
すると、予想外の答えがシドの口から飛び出す
「うん。先輩達に僕達の事を少し教えてあげようかな~っと思って、ここに来たんだよ」
なんと自ら情報を売りに来たらしい……!
予想の斜め上を行く発言に全員が眼を丸くする
これも余裕が成せるジョークだろうか……?
「そこの先輩―――竜崎先輩が見てた記事あるでしょ?それ、全部僕のお友達がやった事なんだ」
「はあ⁉こ、これ全部がお前の仲間の仕業なのか⁉」
「言ったでしょ、イッセー先輩?“うちには僕程度の幹部が12人いる”って。竜崎先輩も外国で会った筈だよ」
その言葉に新は1つ思い当たる節を脳裏に
それはイリナと共に出くわした―――あの男……
「……ユナイト・キリヒコか……ッ!」
「正解♪僕とキリヒコ、その記事の主犯3人も同じ幹部さ。どう、驚いたでしょ?」
驚くどころか言葉も出ない……そう言った雰囲気が部室内を支配し、沈黙させる
シドは話を続けた
「でさ、先輩達も僕達の情報は欲しいよね?だからさぁ……“ある条件”を飲んでくれるなら、もう少し教えてあげても良いよ♪」
「ある条件?」
「もう一度、僕と遊ぼうよ。今度はイッセー先輩と竜崎先輩の2人がかりで♪」
シドが提示してきた条件とは―――新と一誠との手合わせ、つまりは勝負だ
ますます彼の狙いが分からなくなる……
だが、逆に言えばこれはまたとないチャンスかもしれない
未だ正体を把握してない状態でシドの属する組織とぶつかるのは極めて危険
ならば、敢えて彼の誘いに乗り……彼の口から情報を引き出す事が出来れば、僅かながらも事前対策が講じれる
新は一誠にそう耳打ちして共闘を提案
一誠も新の進言を了承した
「……良いぜ、相手になってやるよ」
「ちょっと、新⁉あなたは戻ってきたばかりなのよ⁉これ以上、体を酷使するのは―――」
「リアス、今は少しでも情報が欲しいんだ。目の前に情報の欠片が転がっているなら、俺は迷わず拾いに行く。ましてや相手から差し出してくれるなら尚更だ。……頼む、ここは俺と一誠に任せてくれ」
新が頭を下げ、一誠も同じくリアスに頭を下げる
リアスは少し考えた後、ここまで強く言う新を信じる事に……
「……分かったわ。ここはあなた達に任せてみましょう」
「スマねぇ、リアス。―――と言う訳だ」
「うんうん♪楽しみだな~♪それじゃあ……まずは握手しよっ」
そう言ってシドは自分勝手に新と握手を交わし、窓から外へ出ようとする
「じゃあ、イッセー先輩。今度は本気でしても大丈夫だよ?3人だけの
先に窓から外へ出ていくシド
シドのペースの早さに呆れつつ、新と一誠も外へ出る準備を始めた
「新、あいつはマジで強い。俺が戦った時も本気を出していなかったんだ……」
「そうか。……それでも今はやるしかない。奴の口から少しでも情報を引きずり出してやろうぜ」
「当たり前だ!今度は本気でやってやる!」
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『さ~てとっ、竜崎先輩のデータもある程度は採取出来たかな?この「
今回はシドと同じ幹部を少しばかり出せました。詳しい事は今章の終盤で明らかにさせます。
次回は新と一誠のシド戦です!