キリヒコの生み出した分身ゾンビによる
鎧も肉も
目の色も死人と同じ物になろうとしていた
新の惨状にイリナは絶句、ミラナとガブリエルはあまりの凄惨さに目を
それでもキリヒコの凶行は止まらない……
『
再び
両手を広げ、前傾姿勢を取り―――その場を駆け出した
紫色の粒子に染まった右足を前蹴りで叩き込み、新の体が極端な“くの字”に折れ曲がる
蹴りの衝撃が全身に行き渡り、墓標を複数巻き込んで吹き飛ばされた
口から大量の血が吐き出され、鎧も大破
地に倒れ伏した新の元にイリナが駆け寄る
必死で呼び掛けるが新はまともな反応な出来ず、焦点が定まってない視線でイリナを見つけた
「………………イリ、ナ……?」
「―――ッ!新くん……っ!しっかりして……っ」
「ワリィ……な……。俺の任務、だってのに……お前を、こんな事に巻き込んじまって……っ」
新の口からイリナへの謝罪の言葉が出てくる
本来ならこの任務は新に命じられたもので、悪く言ってしまえばイリナは無関係
以前の自分なら誰も巻き込まずに済んだのに、彼女の決意の固さに負けて同行を許可してしまった
その結果、イリナを危険な目に遭わせてしまった……
自責の念に駆られる新にキリヒコは更なる追い討ちを浴びせる
「実に
冷酷に言い回しながらキリヒコは墓標の上に腰掛ける
何処までも死人を侮辱する言動にイリナは腹を立てた
「あなた、最低よッ!新くんの仲間を利用して……人の傷を更に痛めつける真似をして……何とも思わないの⁉」
「古来より死体の活用法は肥料にするか、灰にして海へ流すか、或いは今の様に捨て駒として利用するか―――それだけです。逆に何故あなた方は心を痛める必要があるのですか?そうしなければ、死人が化けて出てくるとでも?死人に気を掛けた結果が今の彼の惨状です。死人に心を揺るがさなければ、そんな事にはならなかったでしょうに」
平然と死体への冒涜を言い放つキリヒコ
足を組み、意味不明と言わんばかりの
それに対してイリナは涙を浮かべて猛反論した
「新くんは今……
墓地にイリナの怒声が響き渡る……
昨日この国に訪れた時、イリナに話した自分の過去と今後の決意を―――今度は彼女が代弁
ミラナとガブリエルも思わず聞き入って一筋の涙を浮かべる
しかし、キリヒコは冷ややかな態度しか出さなかった
「あなた方の考えはとても理解出来ませんね。死人に感情移入したところで、何の糧になるのでしょうか?この状況を切り抜けられるとでも?」
「そ、そうよっ!新くんはあなたなんかに負ける人じゃない!今までだって、どんなピンチも切り抜けてきたんだもんっ!」
「では、それを証明してください。その間だけお待ち致しましょう」
キリヒコは腕組みの姿勢で待機
勢いで言ってしまったイリナは新の復帰法を模索し始めた
しかし、残った回復のポーションを使用しても完治には至らず
何より新の精神が弱りきっていた
彼の精神が落ち着きを取り戻さない限り、勝機は無いだろう……
何か新の精神を落ち着かせ、活気を取り戻す方法が無いかと考えるイリナ
『も、もう……これしか無いわ……っ。死ぬ程恥ずかしいけど、新くんの意識を呼び覚ますには……っ!』
覚悟を決めた表情でイリナは意識混濁状態の新を抱き寄せ―――自身の胸へと押し当てた
イリナの突然の行動にミラナは唖然、ガブリエルは「あらまぁ」と顔を紅潮させ、キリヒコに至っては呆然としていた
「……
首を
顔から火が噴き上がりそうな羞恥に耐え、更に強く押し付ける
「ほ、ほらっ、新くん!いつまでも寝てないで、早く立ち上がって!リアスさん程じゃないけど……わ、私のおっぱいで目を覚まして!」
「あぅあぅあぅぅ……っ。そ、そんな卑猥な事を……っ?大胆過ぎます……っ」
「でも、何だかとても愛に満ちてる様な気がしますぅ。蝙蝠さんを助ける為にご自分の身を捧げる―――愛無しでは出来ませんよぉ」
ミラナは目元を手で覆いながらも指の隙間からチラチラと
一方、キリヒコは事態を全く理解出来ず……その様子をただ眺めているだけだった
「……
まるで可哀想な人を見る様な哀れみの視線を向けるキリヒコ
チクチクと刺さるその視線をイリナは耐え忍び、新の意識が目覚めるのを待つ
だが、当の新は小声を漏らすだけでまだハッキリとした意識が戻らない
「お願いよ、新くん……っ。目を覚まして……!新くんも―――新くんの仲間も侮辱されたままで良いの……?私達と一緒に生きていくって決めたんでしょ……?その決意を壊されちゃダメ……ッ!」
より強く新を抱き締めるイリナ
見かねたキリヒコは
「茶番ですね。想いだの気持ちだの、曖昧なモノでは何1つ
唸り声を上げて回転する刃を掲げ、イリナの頭上目掛けて振り下ろした
その刹那―――チェーンソーの刃が止められた
ガリガリと削る音がけたたましく鳴り響く
「……最近の俺は、女を泣かせてばかりでダメだな」
ハッキリと聞こえてきたのはイリナが抱き寄せている新の声
目に強い輝きを取り戻し、チェーンソーの凶刃を掴んで止めていた
竜の力を解放し、変貌した左手で……っ
「……ッ!新くん……っ!」
「イリナ……お前の声、しっかりと届いたぜ。ありがとう。後は―――俺に任せろッ!」
チェーンソーの刃ごとキリヒコをはね除け、新は立ち上がって全身から黒いオーラを解き放つ
膨大なオーラに身を包み、リュオーガ族との戦いで発現した真・『
―――『
忌まわしき竜の力を解放した姿で
キリヒコは再度紫色の粒子を足元へ流し込み、新の仲間達をゾンビとして強制的に
また新の精神を追い詰めた上で爆殺しようという魂胆だろう……
しかし、新は
「
「……あいつらはもう死人だ。これ以上、この世で悪用させたくないんだよ。―――先に地獄で待っててくれ。俺はお前達を利用したコイツをブッ倒すッッ!」
新は黒く燃え
右の拳打を打ち付け、左の拳打も叩き込む
拳、蹴り、拳、蹴り、また拳、蹴りとキリヒコにゴリ押しのラッシュを食らわせていく
連続で打ち込む乱舞がキリヒコの体を浮かせ、衝撃があちこちへ飛び交う
『……ッ?先程とは打って変わって、一撃一撃が重くなってる……?肉体は再生しても、その衝撃が内部にまで浸透していく……ッ。いったい何処にそんな力が……ッ?』
余裕から一転、復活した新の攻撃に予想外の反応を示すキリヒコ
新は間髪入れずキリヒコを上空に打ち上げ、自身も飛び上がる
背中から漆黒の巨腕を6本具現化、巨大な拳を形作って一斉に叩き込んだ
その後も急降下して強烈な膝蹴りを食らわせ、後方に跳んで着地する
漆黒の巨腕をオーラ状に分解し、自らの右腕に纏わせる
キリヒコは肉体を再生させて起き上がり、再び
『
紫色の粒子を全身に纏い、その場を走り出した
新も同じく駆け出し、キリヒコの蹴りに対して右腕を力の限り突き出した
黒い火竜と化した右腕が―――紫色に染まったキリヒコの蹴りと正面衝突
膨大な火花と爆音が飛び散り、爆発の余波が両者を吹き飛ばした
転がりながらも体勢を立て直す新とキリヒコ
損傷した肉体を再生させるキリヒコに身構える新だが……キリヒコはソッと構えを解いた
「……
含み笑いを見せるキリヒコが
そして、満足そうな様子でこう言ってきた
「今回はこの辺にしておきましょう。今ここであなたを滅ぼすのが惜しくなりました。これからも良いデータを取らせていただきますよ?では、またお会いしましょう。―――
キリヒコは紫色の粒子と化して、その場から姿を消していった
脅威が去った事で力が抜けたのか、新は元の姿に戻って座り込む
大きく息を切らしていると、イリナが駆け寄ってくる
「やったね、新くんっ!」
「やったとは言えないだろ……。まだ向こうは余裕がある感じだった。ただの気紛れで助かっただけだ……」
皮肉にもその通り、キリヒコの実力はまだまだこの程度ではない筈……
一時的に切り抜けただけにしても、何とか追い払う事は出来た
とりあえずキリヒコの襲撃を
そこへガブリエルとミラナも歩み寄ってきた
「凄かったですよぉ。まさしく愛の奇跡ですねぇ」
「は、はい……っ。イリナさんの……お、おっぱいがあなたを救ったんですね……」
ミラナの言葉にハッと我に返ったイリナは顔を赤くし、“忘れてたっ!”と言わんばかりに丸見えのおっぱいを隠す
すると、ミラナは自分のおっぱいを見つめて新に訊く
「あ、あの……私のおっぱいでも……あの様な奇跡を起こせるのですか……?」
「ちょっ、ミラナさんっ⁉」
「もし、出来るなら……必要なら申して構いません……っ。私も平和を守れるなら―――あなたにおっぱいを差し出します……っ」
「ぶふっ!マジでッ⁉」
トンでもない申し付けに新の口から何かが吹き出した
すると、今度はガブリエルが―――
「では、その時は私もご一緒によろしいですか~?」
「ええっ⁉ダ、ダメですよ!ガブリエルさまのおっぱいをそんな簡単に……!」
「でもぉ、イリナちゃんを守った時の蝙蝠さん、カッコ良かったですよぉ。私もお二人の愛の奇跡を応援しますぅ」
ブルンブルンと揺れるガブリエルのおっぱいとムギュ~っと寄せられるミラナのおっぱい
破壊力抜群のおっぱいに新は「おお……っ」と手を伸ばして籠絡されそうになっていた
危機感を察知したイリナは即座に新をグイッと引き寄せる
「ダメダメダメェッ!絶対にダメです!それより新くん!急いで私達の服を買ってきて!」
「俺、この中で1番の重傷なんだけど……?」
「あぅ……お願いします。買ってきてください……っ」
「お願いしま~す」
「トホホ……っ。最近の俺ってホント締まらねぇよな……」
新は痛む体に鞭を打ってイリナ達の服を買いに行った
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「今回は有意義なデータと共に、非常に興味深い物が見れました。普通の者なら死に絶えてもおかしくない傷を受けたと言うのに―――女性の裸体で復活するとは。今までに類を見なかったイレギュラーな現象……。実に
イッセー側と同じ様に見逃してもらった展開……まだまだ強敵が大勢います……っ。
一応、この章の終盤で敵幹部の事を少しばかり紹介する予定でいます。