ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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VSキリヒコ戦、後半です!


罪を認める勇気

キリヒコの生み出した分身ゾンビによる爆殺刑(ばくさつけい)が執行され、新は瀕死寸前となっていた

 

鎧も肉も()ぜ、腕も言う事を聞かないのか垂れ下がったまま微動だにせず……

 

目の色も死人と同じ物になろうとしていた

 

新の惨状にイリナは絶句、ミラナとガブリエルはあまりの凄惨さに目を(そむ)けてしまう

 

それでもキリヒコの凶行は止まらない……

 

Infection(インフェクション) Crisis(クライシス) End(エンド)……‼‼』

 

再び装置(デバイス)から不気味な音声が鳴り、紫色の粒子がキリヒコにまとわりつく

 

薄皮(うすかわ)の鎧の如く全身を覆われ、より一層強いオーラが彼の右足に集まる

 

両手を広げ、前傾姿勢を取り―――その場を駆け出した

 

紫色の粒子に染まった右足を前蹴りで叩き込み、新の体が極端な“くの字”に折れ曲がる

 

蹴りの衝撃が全身に行き渡り、墓標を複数巻き込んで吹き飛ばされた

 

口から大量の血が吐き出され、鎧も大破

 

地に倒れ伏した新の元にイリナが駆け寄る

 

必死で呼び掛けるが新はまともな反応な出来ず、焦点が定まってない視線でイリナを見つけた

 

「………………イリ、ナ……?」

 

「―――ッ!新くん……っ!しっかりして……っ」

 

「ワリィ……な……。俺の任務、だってのに……お前を、こんな事に巻き込んじまって……っ」

 

新の口からイリナへの謝罪の言葉が出てくる

 

本来ならこの任務は新に命じられたもので、悪く言ってしまえばイリナは無関係

 

以前の自分なら誰も巻き込まずに済んだのに、彼女の決意の固さに負けて同行を許可してしまった

 

その結果、イリナを危険な目に遭わせてしまった……

 

自責の念に駆られる新にキリヒコは更なる追い討ちを浴びせる

 

「実に滑稽(こっけい)ですね。死人と化した者に対して感情的になったり、取り乱したりするのは愚行の極みです。所詮、死人は死人でしかない。死んだ者に対する謝罪、自責、罪の意識など(かか)える時点で弱々しい。口も聞けない死人に何を恐れ、何を遠慮する必要があるのでしょうか?」

 

冷酷に言い回しながらキリヒコは墓標の上に腰掛ける

 

何処までも死人を侮辱する言動にイリナは腹を立てた

 

「あなた、最低よッ!新くんの仲間を利用して……人の傷を更に痛めつける真似をして……何とも思わないの⁉」

 

「古来より死体の活用法は肥料にするか、灰にして海へ流すか、或いは今の様に捨て駒として利用するか―――それだけです。逆に何故あなた方は心を痛める必要があるのですか?そうしなければ、死人が化けて出てくるとでも?死人に気を掛けた結果が今の彼の惨状です。死人に心を揺るがさなければ、そんな事にはならなかったでしょうに」

 

平然と死体への冒涜を言い放つキリヒコ

 

足を組み、意味不明と言わんばかりの素振(そぶ)りで首を横に振る

 

それに対してイリナは涙を浮かべて猛反論した

 

「新くんは今……(つぐな)おうとしてるのよ……っ。仲間の人が死んだのは自分のせいだって、思い詰めて……責任を感じてるから……!2度と後悔したくないから償おうとしてるの!今までは目を背けていたけど、そのままじゃ重い十字架からは解放されない!だからっ、新くんは必死に立ち向かおうとしてるのよ!その為に私達と一緒に生きていくって言ったの!そんな新くんを……バカにしないでよッッ!」

 

墓地にイリナの怒声が響き渡る……

 

昨日この国に訪れた時、イリナに話した自分の過去と今後の決意を―――今度は彼女が代弁

 

ミラナとガブリエルも思わず聞き入って一筋の涙を浮かべる

 

しかし、キリヒコは冷ややかな態度しか出さなかった

 

「あなた方の考えはとても理解出来ませんね。死人に感情移入したところで、何の糧になるのでしょうか?この状況を切り抜けられるとでも?」

 

「そ、そうよっ!新くんはあなたなんかに負ける人じゃない!今までだって、どんなピンチも切り抜けてきたんだもんっ!」

 

「では、それを証明してください。その間だけお待ち致しましょう」

 

キリヒコは腕組みの姿勢で待機

 

勢いで言ってしまったイリナは新の復帰法を模索し始めた

 

しかし、残った回復のポーションを使用しても完治には至らず

 

何より新の精神が弱りきっていた

 

彼の精神が落ち着きを取り戻さない限り、勝機は無いだろう……

 

何か新の精神を落ち着かせ、活気を取り戻す方法が無いかと考えるイリナ

 

刻一刻(こくいっこく)と時間が過ぎる中、ある点に着目する

 

『も、もう……これしか無いわ……っ。死ぬ程恥ずかしいけど、新くんの意識を呼び覚ますには……っ!』

 

覚悟を決めた表情でイリナは意識混濁状態の新を抱き寄せ―――自身の胸へと押し当てた

 

イリナの突然の行動にミラナは唖然、ガブリエルは「あらまぁ」と顔を紅潮させ、キリヒコに至っては呆然としていた

 

「……Pardon(パルドン)?」

 

首を(かし)げるキリヒコを尻目にイリナはグイグイと新の顔を自分の胸へ押し付ける

 

顔から火が噴き上がりそうな羞恥に耐え、更に強く押し付ける

 

「ほ、ほらっ、新くん!いつまでも寝てないで、早く立ち上がって!リアスさん程じゃないけど……わ、私のおっぱいで目を覚まして!」

 

「あぅあぅあぅぅ……っ。そ、そんな卑猥な事を……っ?大胆過ぎます……っ」

 

「でも、何だかとても愛に満ちてる様な気がしますぅ。蝙蝠さんを助ける為にご自分の身を捧げる―――愛無しでは出来ませんよぉ」

 

ミラナは目元を手で覆いながらも指の隙間からチラチラと(うかが)い、ガブリエルは興味津々に見つめる

 

一方、キリヒコは事態を全く理解出来ず……その様子をただ眺めているだけだった

 

「……Mon pauvre(モンプーヴァ)。窮地に追い込まれると理解不能な行動に走ると言う心理は聞いた事ありますが。まさか、ここまで酷い物とは……」

 

まるで可哀想な人を見る様な哀れみの視線を向けるキリヒコ

 

チクチクと刺さるその視線をイリナは耐え忍び、新の意識が目覚めるのを待つ

 

だが、当の新は小声を漏らすだけでまだハッキリとした意識が戻らない

 

「お願いよ、新くん……っ。目を覚まして……!新くんも―――新くんの仲間も侮辱されたままで良いの……?私達と一緒に生きていくって決めたんでしょ……?その決意を壊されちゃダメ……ッ!」

 

より強く新を抱き締めるイリナ

 

見かねたキリヒコは装置(デバイス)からチェーンソーの刃を出現させる

 

「茶番ですね。想いだの気持ちだの、曖昧なモノでは何1つ(くつがえ)せませんよ。Mademoiselle(マドモアゼル)

 

唸り声を上げて回転する刃を掲げ、イリナの頭上目掛けて振り下ろした

 

その刹那―――チェーンソーの刃が止められた

 

ガリガリと削る音がけたたましく鳴り響く

 

「……最近の俺は、女を泣かせてばかりでダメだな」

 

ハッキリと聞こえてきたのはイリナが抱き寄せている新の声

 

目に強い輝きを取り戻し、チェーンソーの凶刃を掴んで止めていた

 

竜の力を解放し、変貌した左手で……っ

 

「……ッ!新くん……っ!」

 

「イリナ……お前の声、しっかりと届いたぜ。ありがとう。後は―――俺に任せろッ!」

 

チェーンソーの刃ごとキリヒコをはね除け、新は立ち上がって全身から黒いオーラを解き放つ

 

膨大なオーラに身を包み、リュオーガ族との戦いで発現した真・『女王(クイーン)』形態となる

 

―――『超越の黒竜帝(インフェルニティ・オーバー・ドラグニル)』―――

 

忌まわしき竜の力を解放した姿で(たたず)む彼にもう迷いなど無かった

 

キリヒコは再度紫色の粒子を足元へ流し込み、新の仲間達をゾンビとして強制的に(よみがえ)らせた

 

また新の精神を追い詰めた上で爆殺しようという魂胆だろう……

 

しかし、新は躊躇(ためら)う事無くハンターゾンビを右手から放射する黒い火竜で焼き払った

 

Oh(オー) la() la()。今度はご友人を何の躊躇いも無く焼き殺しましたか」

 

「……あいつらはもう死人だ。これ以上、この世で悪用させたくないんだよ。―――先に地獄で待っててくれ。俺はお前達を利用したコイツをブッ倒すッッ!」

 

新は黒く燃え(たぎ)る炎を両手両足に纏わせ、キリヒコ目掛けて突き進んでいく

 

右の拳打を打ち付け、左の拳打も叩き込む

 

拳、蹴り、拳、蹴り、また拳、蹴りとキリヒコにゴリ押しのラッシュを食らわせていく

 

連続で打ち込む乱舞がキリヒコの体を浮かせ、衝撃があちこちへ飛び交う

 

『……ッ?先程とは打って変わって、一撃一撃が重くなってる……?肉体は再生しても、その衝撃が内部にまで浸透していく……ッ。いったい何処にそんな力が……ッ?』

 

余裕から一転、復活した新の攻撃に予想外の反応を示すキリヒコ

 

新は間髪入れずキリヒコを上空に打ち上げ、自身も飛び上がる

 

背中から漆黒の巨腕を6本具現化、巨大な拳を形作って一斉に叩き込んだ

 

その後も急降下して強烈な膝蹴りを食らわせ、後方に跳んで着地する

 

漆黒の巨腕をオーラ状に分解し、自らの右腕に纏わせる

 

キリヒコは肉体を再生させて起き上がり、再び装置(デバイス)から不気味な音声を鳴らす

 

Infection(インフェクション) Crisis(クライシス) End(エンド)……‼‼』

 

紫色の粒子を全身に纏い、その場を走り出した

 

新も同じく駆け出し、キリヒコの蹴りに対して右腕を力の限り突き出した

 

黒い火竜と化した右腕が―――紫色に染まったキリヒコの蹴りと正面衝突

 

膨大な火花と爆音が飛び散り、爆発の余波が両者を吹き飛ばした

 

転がりながらも体勢を立て直す新とキリヒコ

 

損傷した肉体を再生させるキリヒコに身構える新だが……キリヒコはソッと構えを解いた

 

「……Je vois(ジュヴォヮ)。正直、驚きましたよ。あの状態からここまでの力を出せるとは。実にTrés bien(トレビアン)なデータが採取出来ました」

 

含み笑いを見せるキリヒコが装置(デバイス)の銃口を自分に挿し込み、受けたダメージをデータとして回収する

 

そして、満足そうな様子でこう言ってきた

 

「今回はこの辺にしておきましょう。今ここであなたを滅ぼすのが惜しくなりました。これからも良いデータを取らせていただきますよ?では、またお会いしましょう。―――Salut(サリュー)

 

キリヒコは紫色の粒子と化して、その場から姿を消していった

 

脅威が去った事で力が抜けたのか、新は元の姿に戻って座り込む

 

大きく息を切らしていると、イリナが駆け寄ってくる

 

「やったね、新くんっ!」

 

「やったとは言えないだろ……。まだ向こうは余裕がある感じだった。ただの気紛れで助かっただけだ……」

 

皮肉にもその通り、キリヒコの実力はまだまだこの程度ではない筈……

 

一時的に切り抜けただけにしても、何とか追い払う事は出来た

 

とりあえずキリヒコの襲撃を(くぐ)り抜けた新はホッと一息つく

 

そこへガブリエルとミラナも歩み寄ってきた

 

「凄かったですよぉ。まさしく愛の奇跡ですねぇ」

 

「は、はい……っ。イリナさんの……お、おっぱいがあなたを救ったんですね……」

 

ミラナの言葉にハッと我に返ったイリナは顔を赤くし、“忘れてたっ!”と言わんばかりに丸見えのおっぱいを隠す

 

すると、ミラナは自分のおっぱいを見つめて新に訊く

 

「あ、あの……私のおっぱいでも……あの様な奇跡を起こせるのですか……?」

 

「ちょっ、ミラナさんっ⁉」

 

「もし、出来るなら……必要なら申して構いません……っ。私も平和を守れるなら―――あなたにおっぱいを差し出します……っ」

 

「ぶふっ!マジでッ⁉」

 

トンでもない申し付けに新の口から何かが吹き出した

 

すると、今度はガブリエルが―――

 

「では、その時は私もご一緒によろしいですか~?」

 

「ええっ⁉ダ、ダメですよ!ガブリエルさまのおっぱいをそんな簡単に……!」

 

「でもぉ、イリナちゃんを守った時の蝙蝠さん、カッコ良かったですよぉ。私もお二人の愛の奇跡を応援しますぅ」

 

ブルンブルンと揺れるガブリエルのおっぱいとムギュ~っと寄せられるミラナのおっぱい

 

破壊力抜群のおっぱいに新は「おお……っ」と手を伸ばして籠絡されそうになっていた

 

危機感を察知したイリナは即座に新をグイッと引き寄せる

 

「ダメダメダメェッ!絶対にダメです!それより新くん!急いで私達の服を買ってきて!」

 

「俺、この中で1番の重傷なんだけど……?」

 

「あぅ……お願いします。買ってきてください……っ」

 

「お願いしま~す」

 

「トホホ……っ。最近の俺ってホント締まらねぇよな……」

 

新は痛む体に鞭を打ってイリナ達の服を買いに行った

 

 

―――――――――――――――――

 

 

「今回は有意義なデータと共に、非常に興味深い物が見れました。普通の者なら死に絶えてもおかしくない傷を受けたと言うのに―――女性の裸体で復活するとは。今までに類を見なかったイレギュラーな現象……。実にTrés bien(トレビアン)です。もしかしたら、我々―――『拾弐の魔凶(ツヴェルフ・テラーズ)』が集められる日もそう遠くないかもしれませんね」




イッセー側と同じ様に見逃してもらった展開……まだまだ強敵が大勢います……っ。

一応、この章の終盤で敵幹部の事を少しばかり紹介する予定でいます。

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