ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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キリヒコ戦、前半です!


VSキリヒコ 死者への冒涜

死霊の化身とも言える姿に変貌したユナイト・キリヒコは右手の装置(デバイス)を構え、銃口から赤い光弾を発射

 

新とイリナは自前の剣で光弾を切り裂き、ミラナは光力で構成した防御壁で防ぐ

 

だが、これはほんの小手調べに過ぎない

 

キリヒコは銃撃を中断し、ゆっくりと歩みを進める

 

新は剣を握り締め、刀身に赤いオーラを流していく

 

その場を駆け出した新は赤く染まった剣を水平に構える

 

横一閃の剣戟が空を走り―――異形キリヒコの腹部を切り裂いた

 

紫色の血を噴き出し、仰け反るキリヒコ

 

しかし……

 

『……斬った手応えはあるのに、何だこの違和感は……?』

 

不審な予感を警戒する新

 

そして、その違和感は直ぐにやって来る

 

ズチュ……ッ!

 

肉が(うごめ)く音が不気味に響いたと思えば……切り裂かれたキリヒコの腹部がみるみる内に再生していく

 

離れた肉同士が元通りに接合され―――傷は跡形も無く消えた

 

「な……ッ⁉」

 

如何(いかが)ですか?今まで蓄えてきた死のデータによる再生能力。勿論、これらはまだ伸び代がありますので今後も集めさせていただきますよ」

 

悠々と歩みを進めるキリヒコに対し、新は連続で剣戟を見舞う

 

しかし、いくら斬ってもキリヒコの体は直ぐに再生していく

 

反則的な再生能力の前に成す術が無く、剣を左手で止められる始末……

 

キリヒコは空いた右手で新の顔や腹部を殴打しまくり―――装置(デバイス)の銃口を腹部に押し付けた

 

銃口が火を噴き、赤い光弾が新の腹を撃ち貫く

 

血反吐を吐く新

 

キリヒコは更に前蹴りで新を後方へと吹き飛ばした

 

墓標の1つに背中から激突し、壊れた墓標ごと地に倒れ込む

 

次にイリナが空中から攻めてくる

 

光力で構成した槍や光輪をキリヒコ目掛けて投げつける

 

キリヒコは装置(デバイス)の向きを反転させて、チェーンソーの刃で1つ残らず切り裂いていく

 

その隙に距離を詰めたイリナが光の剣を縦に振り下ろした

 

「アーメンッ!」

 

イリナの剣がキリヒコを真っ二つに分断する

 

だが、中央から分かれたキリヒコの体はそれでも効いておらず……何事も無かったかの如く閉じられ再生した

 

「無駄ですよ、Mademoiselle(マドモアゼル)。どんな攻撃を受けようとも、直ぐに再生を果たします」

 

「もうっ、そんなの反則よ!ズルいっ!」

 

規格外過ぎるキリヒコの能力に頬を膨らませるイリナ

 

キリヒコがイリナに斬りかかろうと1歩踏み出した瞬間―――地面から膨大な光のオーラが噴出してキリヒコを呑み込む

 

ミラナがサポートを入れてくれたようだ

 

サポートとは思えない程の強い光撃(こうげき)すら物ともしないキリヒコは光の中から飛び出す

 

光によって焼け焦げた体も修復され、首を横に振る

 

「……そんな……。これでも効かないんですか……?」

 

「ミラナちゃん、下がってください。私もお手伝いします~」

 

そう言ってきたのは天界最強の女性天使ガブリエル

 

彼女が両手を前に掲げると―――手元から極大の光の奔流が放たれた

 

ミラナの倍以上ある光撃はそのままキリヒコに直撃……上半身を完全に消し飛ばしてしまった

 

美麗な外見からは想像もつかない破壊力にイリナは勿論、新も言葉を失う

 

『……下手すりゃ消滅END(エンド)じゃねぇか……?』

 

心中でそんな風に考えていると……残存しているキリヒコの下半身から異変が起きる

 

禍々しい色の粒子が噴き上がり、消滅させられた上半身を元通りに形成していく

 

僅か数秒足らずで完全再生を果たしたキリヒコは両手を広げてアピールする

 

「どうです?天界最強の女性天使と名高いガブリエルの光撃ですら、私を滅ぼせない。ゾンビに不死身の能力は付き物てすからね」

 

「も~っ!ズル過ぎるっ!それじゃあ永遠に倒せないって事⁉」

 

Oui(ウィ)。少なくともあなたの様なじゃじゃ馬の自称天使では傷1つ負わせる事も出来ないでしょう」

 

「じ、自称天使⁉」

 

「私の個人的な意見に過ぎないと思いますが、天使とは(しと)やかで清楚溢れる存在だと聞いております。しかし……あなたからはそう言った個性が微塵も出ておりません。()してや、ご自分を天使天使と公言してる時点で疑わしい物です」

 

キリヒコの物言いにイリナはプク~っとまた頬を膨らませる

 

確かにイリナは事ある毎に「私は天使なのよ!」と言いふらしている為、冥界関係者からは信用を得られていなかったりする

 

“何か反論の材料でもあれば良かったんだが……”と新もイリナに関して痛い所を突かれたので黙するしか無かった

 

「正直に言ってみたらどうです?“自称”天使さん」

 

「自称自称って言わないで!私は正真正銘本当の天使なのよっ!ほら、ちゃんと天使の翼だって生えてるもんっ!これこそ私が天使の証拠よ!」

 

「おや?このお酒、良い銘柄ですね。年代物ですか」

 

「無視しないでよ!もぉぉおおおおっ!このヒト本当に失礼過ぎ!」

 

『乗せられるなって、イリナ……。お前じゃ性格的に敵わん』

 

新は痛む傷を押さえつつ、墓標に手を掛けながらゆっくりと体を起こす

 

キリヒコの人を小馬鹿にする態度にイリナは腹を立て、光の剣で何度も斬りかかった

 

しかし、それは焼け石に水……

 

いくら斬ってもキリヒコの傷は直ぐに再生して元通りになる為、無駄打ちに終わってしまう

 

その内に息を切らすイリナ

 

キリヒコは“やれやれ”と言った様子で首を振り嘆息する

 

「少し大人しくしてもらいましょうか」

 

キリヒコの全身から紫色の禍々しいオーラが滲み出てくる

 

そのオーラはまず右手の装置(デバイス)に集まり、次に足下へと集束していく

 

Infection(インフェクション) Crisis(クライシス) Dead(デッド)……‼‼』

 

おどろおどろしい音声が発せられた刹那、足下に集まったオーラが隆起し―――キリヒコの分身を生み出す

 

1体、2体、3体とその数はどんどん増殖を繰り返していき……最終的には30を超える数となった

 

「ゾンビにはもう1つ特性がありましてね。再生能力と―――圧倒的な繁殖力。蓄積された死のデータによる力、とくとご覧あれ。―――Bon voyage(ボンヴォヤージュ)

 

キリヒコが右手を前に掲げた瞬間、分身ゾンビの群れがイリナ、ミラナ、ガブリエル目掛けて突き進んでいく

 

地面と同化した足で水平に移動し、掴みかかろうとする

 

イリナ達は光の剣や光撃でゾンビを消そうとするが……消しても消しても直ぐに復活されてしまう

 

無限とも言える再生能力と繁殖力の前に成す術が無かった

 

やがて分身ゾンビの1体がイリナの手を捕らえ、それを引き金に次々と分身ゾンビが群がって絡み付いてくる

 

「やっ!ちょっと……離して!離してったら―――やぁんっ!ど、何処触ってるのよ⁉いやぁぁぁぁ!ヌメヌメして気持ち悪いよぉぉぉ……!」

 

分身ゾンビに嫌悪感を示す中、ミラナが救出を(はか)るも―――死角からやって来た分身ゾンビに捕らわれ、遂にはガブリエルですらも分身ゾンビの群れに捕まってしまった

 

「テメェ……まさか人質を取ろうってのか?」

 

Non(ノン) Non(ノン) Non(ノン)。その様な無粋な真似は致しません。彼女達には大人しくしてもらうだけです」

 

新が怪訝に思っていると再びイリナ達の悲鳴が聞こえてくる

 

その方向に視線を移すと……或光景が視界に入った

 

―――“分身ゾンビがイリナ達の衣服を溶かしている”―――

 

再生能力、繁殖力と並ぶゾンビならではの能力……腐蝕

 

つまり、物質を腐敗・崩壊させる能力だ

 

分身ゾンビが触れている部分は煙を上げて溶け、イリナ達の肌が大きく見えてくる

 

「いやぁぁぁぁ!服が……服が溶けてるぅぅぅぅっ!」

 

「……いやぁ、こんなの卑猥(ひわい)だよぉ……」

 

「ゃん……っ。もう……ダメですぅ……っ」

 

やがて分身ゾンビに全ての衣服を溶かされた彼女達は全裸となり、羞恥にまみれてへたり込んだ

 

イリナは涙目でキリヒコを睨み、ミラナとガブリエルは恥じらって胸と下を手で隠す

 

キリヒコの手腕に新はワナワナと震える

 

「こいつ……天才か……っ⁉」

 

「お褒めいただきありがとうございます」

 

キリヒコが右手を上げると分身ゾンビの群れはイリナ達の元を離れ、キリヒコ本体の前に集合する

 

手を前にやった直後、先程と同じ様に水平移動しながら新の方へ向かっていく

 

新は魔力のオーラを流した剣で分身ゾンビを切り払っていくが……やはり効果は薄い

 

片っ端から消しても直ぐに復活してくる

 

その内、分身ゾンビの1体が新の剣を掴み―――体を妖しく光らせ始めた

 

「言い忘れてました。それ―――爆発しますよ?」

 

「なっ―――」

 

ドオオオォォォォォォォオオオオンッ!

 

分身ゾンビの自爆に巻き込まれた新

 

まともに爆発を食らってしまい、宙を舞ってから地に叩き付けられる

 

破損した鎧と共に血肉も飛び散り、口から血反吐を吐く

 

キリヒコ本人だけでも厄介極まりないのに分身ゾンビの多様性に舌打ちをした

 

「せっかくですので、少し趣向を凝らしてみましょう」

 

Infection(インフェクション) Crisis(クライシス) Dead(デッド)……‼‼』

 

再び不気味な音声が発せられ、足元の禍々しいオーラから分身ゾンビを形成し始める

 

身構える新だが……浮き上がってくるゾンビを見て絶句した

 

キリヒコが形成したのは―――新の(かつ)ての仲間達

 

墓標に名を刻まれた5人のハンターだった……っ

 

「……嘘、だろ……っ?何でそいつらが……?」

 

「この技は死人を作り、操る事も出来るのですよ。“その者の名前”を知っていれば簡単に作れます」

 

腐敗した肉、飛び出た骨の体躯でこの世に具現化された5人のハンター

 

彼らはキリヒコの指示により新の方へ一斉に向かっていく

 

愕然としていた新はハッと我に返り、5人の襲撃を回避する

 

何度も襲ってくる攻撃を(ことごと)(かわ)

 

ただ、それだけ……彼らに攻撃の刃を一切向けない

 

『やめろ……!やめてくれ……っ!こいつらはもう死んでるんだ……!眠らせてやれよ……っ!何で……何で死んだこいつらと戦わなきゃいけないんだ、俺は……っ⁉』

 

彼らへの攻撃を拒絶する新

 

それでもゾンビと化したハンター達は攻撃の手を休めない

 

キリヒコの指示通りに動く操り人形として動くのみ……

 

キリヒコの手腕、策略、精神攻撃を目の当たりにしたイリナは―――涙を浮かべて(いきどお)

 

「酷い……!酷いよ、こんなの……!死んだ人を無理矢理戦わせるなんて……!」

 

キリヒコはその場で新が右往左往するのを高みの見物

 

当然、新はそんな彼に激昂した

 

「貴様ァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

両翼を広げ、爆発する様に飛び出していく

 

魔力を流した切り払おうとした刹那―――キリヒコは左手から黒い触手を伸ばしてハンターゾンビの1体を捕獲

 

自分の元へと引き寄せ―――新の剣戟を防ぐ盾にした

 

「ア、アァァァァアアア……ッ!グラさん……ッ!グラさん……ッ!」

 

死人とはいえ、嘗ての仲間を斬ってしまった新は途端に錯乱

 

上下に分断された仲間は地に崩れ落ちる

 

Je suis désolé(ジュスィディゾレ)。あなたのご友人を盾にさせてもらいましたよ」

 

悪びれる様子も無く簡単な謝罪で済ませるキリヒコ

 

それだけでは留まらず、装置(デバイス)の銃口を残りのハンターゾンビ達に向けた

 

そして……赤い帯状の光線が新の嘗ての仲間を撃ち抜いた

 

それも、わざわざ新の目の前で……っ

 

口から腐敗した血が吐かれ、新の顔に飛び散る

 

キリヒコの攻撃を受けたハンター達は再び死に、その惨状を見せられた新は絶叫した

 

「ウアアアァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!アァァァァアアア……ッ!アァァァァアアアアァァァァアアアアァァァァアアアアァァァァアアアッ!」

 

頭を抱えて大いに取り乱し、発狂する新

 

完全に恐慌・錯乱状態に(おちい)ってしまった……

 

しかし、キリヒコは全く容赦せず分身ゾンビの群れをけしかける

 

「逃げてっ、新くんッ!」

 

イリナが必死で叫ぶも、今の新には届かない……

 

既に死んだ身とはいえ、自らの手で仲間を殺してしまい、更に目の前で再び仲間を殺された……

 

そのショックで今まさに新の精神は崩壊を迎えようとしている

 

未だ発狂を続ける新にはまとわりつく分身ゾンビの群れ

 

全ての分身が新の所へ集結し―――

 

Au revoir(オルボアール)

 

冷淡な一言が発せられた直後、全ての分身ゾンビが爆発四散した

 

 


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