ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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シドとのバトル、始まります!


ゲームスタート!――VSシド・ヴァルディ

「あれれ、どうしたのかなー?そんな引きつった顔しちゃって」

 

「……シド、お前いったい何者なんだよ……?どうしてユキノさん達を狙うんだ?」

 

「どうしてって言われてもねぇ、僕は上の人から『禍の団(カオス・ブリゲード)』の構成員と拠点を潰すように言われたから、それを実行してるだけ」

 

一誠の質問に対して茶を濁した様な答えを出すシド

 

祐斗はリアス達を呼ぶべく通信用の魔方陣を展開するが……また雑音しか流れない

 

奥地ならともかく、今いる場所は森の入り口付近

 

通信が使える筈なのに使えない……

 

祐斗の行動を見ていたシドが種明かしをする

 

「無理だよ、木場先輩?この辺り一帯には通信を遮断する結界が張ってあるんだ。通信機器も通信魔方陣も一切使えないよ♪」

 

「……いったい何が目的なんだい?」

 

「さ~、何だろうねー?とりあえず“今は”その人達の身柄かな?―――渡してよ、それ」

 

シドが人差し指をユキノ達に向けて、渡すよう(うなが)してくる

 

体を震わせるユキノ達を見た一誠は祐斗よりも先に答えを出す

 

「シド、お前なんかにこの人達は渡さねぇぞ!」

 

「―――?どうして、先輩?その人達は『禍の団(カオス・ブリゲード)』、“この世界を破壊する”なんて時代遅れな名目で動いてるロクデナシなんだよ?それに『禍の団(カオス・ブリゲード)』なんて所詮“はみ出し者の集まり”。いらない人達の寄せ集めみたいな物さ。そんな人達をどうこうした所で誰か怒る?寧ろ良い事じゃん。いらない物を処分する事の何が悪いのさ?」

 

無邪気なシドの口から無慈悲な言葉が次々と出てくる

 

彼の言う通り、元々『禍の団(カオス・ブリゲード)』は三大勢力を追われた危険因子が集まって出来た組織

 

平穏を願う一誠達や三大勢力にとっては目の上のたんこぶ

 

シドはそれを率先して除去しようとしている

 

普通ならば邪魔をしようとは思えない、寧ろ願ってもないチャンスだ

 

禍の団(カオス・ブリゲード)』の根絶が少しでも進展するなら、ここは彼の用件を呑むべきとも言える

 

無論、一誠とて頭の中では分かっていた……

 

だが、ユキノ達の苦に満ちた顔を見た途端―――目先のメリットを消し飛ばした

 

「お前が何処の誰かも分からないのに、“はい、そうですか”と簡単に渡せるかよ。それに―――泣いてる女の子に助けを求められたら、男として逃げる訳にはいかねぇんだよッ!」

 

一誠の放った一言にユキノ達は心を打たれ、一筋の涙を流す

 

祐斗は肩を(すく)めるものの、彼女達をシドに渡さないと言う一誠の意思に賛同する

 

シドの要求は見事に一蹴され、一誠はユキノを下ろして禁手(バランス・ブレイカー)となった

 

「……………………プッ。アハハハハハハハハハハハハハッ!イッセー先輩、面白いね!そんな理由でその人達を庇うんだ⁉ねえ、それってかなりの無理ゲーだと思うよ?」

 

「無理かどうかなんて分からねぇだろ!」

 

「ううん、分かるよ。だって―――僕と先輩達じゃレベルが違うんだもん。でも、良いよ。それならそれで―――遊んであげる」

 

低いトーンで最後の言葉を放った直後、シドは額のゴーグルを目元まで下ろして着用

 

その瞬間、口元がマスクで覆われ、駒王学園(くおうがくえん)の制服がプロテクター付きのアンダースーツへと変化する

 

次にシドが1本の木に手を向けると、手元に黒い魔方陣が展開される

 

そこから流れた黒い粒子が木を包み込み、サイズを縮小―――武器へと変化させた

 

現れたのは片手で持てるサイズのハンマー

 

シドの能力に一誠の目が点になった

 

「な、何だあれ⁉何で木が武器に⁉」

 

「樹木を武器に変えた……?おそらく錬金術の(たぐい)だろうけど、あんな短時間での錬成は初めて見るよ」

 

シドが木から錬成したハンマーをクルクルと回した直後、その場をダッシュして一気に距離を詰める

 

あまりの速度に反応が遅れた一誠

 

シドはハンマーでの一撃を一誠に見舞った

 

鈍く重い音が大きく鳴り、ハンマーの衝撃が骨まで伝わってくる

 

「ぐあ……っ!」

 

「反応遅いね、イッセー先輩」

 

シドは返しの振りでハンマーを一誠の腹に叩き込む

 

腹部の装甲を容易く砕き、力を込めて一誠を後方へと吹っ飛ばす

 

祐斗は聖魔剣(せいまけん)を一振り創って駆け出し、シドに剣戟(けんげき)を見舞う

 

即座に察知したシドはハンマーの持ち手部分にある引き金(トリガー)を押す

 

すると、ハンマーの天辺(てっぺん)から刃が飛び出して剣状の武器へと変貌

 

祐斗が振った聖魔剣の一撃をその刃で止める

 

「……その武器は自在に変化出来るようだね」

 

「木場先輩、この程度で驚いてもらったら困るよ」

 

そう言ってシドは空いた左手を地面に向け、先程と同じ黒い魔方陣を展開する

 

黒い粒子が足元の地面の一部を覆い、シドの手元に集束

 

次に出現したのは―――1丁の銃だった

 

左手で銃を掴んだと同時に、銃口を祐斗に向けて撃ち抜こうとする

 

祐斗は刀身が大きめの聖魔剣を自身の足元から出現させ、盾の様に構える

 

引き金を引いた刹那、銃口が火を噴き―――銃弾が雨霰(あめあられ)の如く掃射される

 

激しい弾幕射撃で盾代わりの聖魔剣に亀裂が入り―――バラバラの破片と化した

 

聖魔剣は破壊されたが、祐斗はいち早くその場から離脱しており銃弾を食らわずに済んだ

 

「へー、やるねぇ先輩」

 

シドは相変わらず無邪気な口調で声を掛けてくる

 

祐斗もこれまで以上に苦戦を強いられ、苦々しい表情となる

 

「うおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおっ!」

 

シドの背後からブースターを噴かして飛んでくる一誠

 

拳を握り締め、力を倍増させた拳打を打ち込もうとするが―――シドは軽々と飛んで回避

 

本当なら一誠もドラゴンショットやドラゴンブラスター等の大技を使いたいところなのだが、周囲にはユキノ達、森の中には未だ捜索中のリアス達もいる

 

技の余波による二次被害、巻き添えを避ける為にも砲撃系の大技を使う事が出来ないのだ

 

それに対してシドはお構い無し、一切遠慮せずに使用してくるだろう……

 

彼自身の強さだけじゃなく状況的にも形勢不利に(おちい)っていた

 

空中でシドは再度黒い魔方陣を展開し、最初に出したハンマー型の武器を別の武器へと錬成

 

現れたのは―――1対の鎌の様な武器

 

それらが背中合わせで合体し―――弓の様な武器となる

 

右手で弓を、左手で銃を構えて着地と同時に一斉掃射

 

黒い矢と銃弾による弾幕射撃が一誠と祐斗に襲い掛かる

 

一誠は直ぐにトリアイナ版『戦車(ルーク)』の両腕を形成し、弾幕射撃を防ぐ

 

苛烈な一斉掃射を防いでる隙にシドが再び仕掛ける

 

左手に(たずさ)えた銃の銃身が伸びてライフルの様な形となり、銃口にパワーが集束する

 

右手の弓を上に構えて撃つと―――1本の黒い矢が無数の矢に分裂し、一誠の頭上から降り注ぐ

 

祐斗はもう一振り聖魔剣を創り、二刀流で切り払うおうと試みるが……数が多過ぎる為に防ぎ切れない

 

勿論、一誠も頭上から降り注がれる矢の雨を対処出来ない

 

そればかりか、シドの構えたライフルから強烈なパワーショットが放たれ―――両腕の鎧がいとも簡単に破壊される

 

両腕から血を流す一誠は鎧を形成し直す

 

「くそ……っ!こいつ、俺達の攻撃を簡単に(かわ)しやがる……っ!」

 

「それだけじゃないよ。……別の攻撃への転じ方、武器の錬成速度も早い……っ。ここまでの強さを持っていながら、今まで三大勢力にマークされてなかったのが疑わしく思えるよ……」

 

険しい表情の2人、シドは武器をクルクル回して余裕を見せ続ける

 

「アハハッ♪ほらほら、もっと頑張ってよぉ。そんなんじゃ全然楽しめないじゃん?」

 

「楽しむだと?何言ってやがる!」

 

「何で怒ってるの?これは僕と先輩達との勝負(ゲーム)だよ。ゲームは真剣にやって楽しんでこそ面白い物でしょ?」

 

「てめぇは遊びでこんな事するのかよ!遊びで人を殺したりすんのかッ!」

 

「固い事は考えずに楽しんだ方が人生って楽なんだよ?先輩さぁ、もっともっと心に余裕を持って生きた方が良いと思うよ。余裕を持たない人に限って、あっさりと死んじゃったりするからさ♪」

 

「ふざけるなァァァァァァァッ!」

 

怒り心頭で飛び出す一誠

 

シドはまたもや黒い魔方陣を展開、黒い粒子で銃を包み込んだ

 

また他の武器に錬成―――かと思いきや、今度は武器ではなく1枚の黒いメダルに錬成した

 

そして錬成後、自身のマスク部分に投入口が現れ……黒いメダルが吸収される

 

Hansha(反射) Energy(エナジー)‼』

 

まるでゲームアナウンスの様な音声がシド自身から発され、彼の前に1枚の透明な壁が出現する

 

一誠は構う事無く、力を増大させた拳を叩き込もうとしたが―――隔てられた透明の壁によって阻まれる

 

硬い感触を感じた瞬間、打ち込んだ衝撃が自分にはね返り、一誠は大きく吹っ飛ばされた

 

いったい何が起きたのか……?

 

「イッセーくん⁉」

 

「が……っ!いってぇぇ……っ!何だ、今のは……⁉攻撃を跳ね返した……⁉」

 

「まさかとは思うけど……今のが彼の神器(セイクリッド・ギア)……?」

 

神器(セイクリッド・ギア)?何それ?僕の力をそんな物と一緒にしないで欲しいな」

 

神器(セイクリッド・ギア)を“そんな物”と一蹴するシド

 

どうやらシドが今まで使用してきた力は神器(セイクリッド・ギア)(たぐい)ではないようだ

 

神器(セイクリッド・ギア)じゃないなら、その力はいったい……?」

 

「フフン♪それじゃあネタバレしてあげちゃおうかなー?僕の力の正体を」

 

シドは得意気に自分の能力について話し始めた

 

「かつて人間達が卑金属を貴金属に変成、不老不死の薬や万能薬の製造を夢見て解明しようとしたけど、現代科学では計り知れず未だ深奥の解明に至れてない奇跡の学問―――錬金術。僕が今使ってるのは、その錬金術を独自に進化させた錬金術の究極態。その名も―――『深淵の闇錬成術(パーフェクト・アルケマイズ)』」

 

「「パーフェクト・アルケマイズ……っ?」」

 

「そっ♪自分の強化装備、強化アイテムをあらゆる無機物から錬成出来る何でも有りの錬金術さ♪」

 

つまり、シドは“どんな場面・戦況に於いても自分専用のアイテムを作り出せる”と言う事だ

 

シドのチート染みた能力に一誠と祐斗の顔が険しさを増す

 

だが、2人にとって嫌な報せはこれだけではなかった……

 

「それともう1つ、先輩達に良い事を教えてあげるよ。僕は今“とある組織”に所属していてね、そこで幹部として働いてるんだけどぉ。この程度の力を持った奴は僕を含めて―――後12人いるんだよ」

 

「「―――っ⁉」」

 

「しかも、その内の1人がさっき言った“上の人”で、僕達に指示を送る司令官的な感じかな?んで、その上に組織のトップがいる。その人の強さは君達で言う所の魔王クラス、もしくは神クラスかな。ちなみに僕は5番目か6番目ぐらいの強さだよ」

 

シドの口から出てきた組織の構成図

 

幹部だけで12人(その内の1人が指示役)、その上に君臨するトップ

 

総計13人の猛者……想像を遥かに超えた戦慄が2人の全身を駆け巡る……っ

 

「まあ、滅多に会う事は無いだろうけど。僕に苦戦してるようじゃ全員を相手にするなんて無理だね。あまり深く首を突っ込まない事をオススメするよ?じゃないと―――本当に死んじゃうからね?」

 

警告とも言える台詞を冷淡に吐き捨てるシド

 

スケールのデカさ、脅威を体現するかの様に木々のざわつきが増していく

 

「……イッセーくん、今の話を聞いてどう思う?」

 

「どうもこうも……震えっぱなしだよ……!こいつみたいに強い奴らが13人もいるって普通に反則だろっ⁉」

 

「だよね……。彼女達がそんな大規模な組織の標的にされてるなんて。僕もさっきから手汗が出続けているよ……っ」

 

「ねっ?無理ゲーでしょ?だからさ、今の内に諦めて―――その人達を渡してよ。それだけで僕は帰るからさ」

 

シドは再度ユキノ達を渡すよう2人に促すが……一誠と祐斗はお互いに顔を見合わせ―――答えを出す

 

「でも、今まで僕達が対峙してきた相手も大概ヤバかったよね。闇人(やみびと)、悪神ロキ、英雄派にリュオーガ族……どれも規格外だった」

 

「ああ、バカみたいに強い奴らと出くわすのは―――もう慣れた!それがまた1つ増えただけだ!」

 

「「たとえ相手が誰であろうと逃げるつもりは無いッ!」」

 

一誠は拳、祐斗は聖魔剣をシドに向けて力強く言い放った

 

その言葉を受けてシドは―――より一層歓喜に打ち震えているようだった

 

「先輩……っ。僕をここまで楽しませてくれるなんて嬉しいよ……っ。そんな風に答えてくれたのは初めてさ。やっぱり勝負(ゲーム)は―――楽しまなくちゃ(たぎ)らないよッ!」

 

 




今回の話でガシャコンウェポンモデルの武器及びエナジーアイテム召喚の能力を出しましたが、錬金術の最上位みたいな感じですかね。

シドとキリヒコは現在、今回出てきたとある組織の幹部と言う立場にいます。組織の全体図はまた後々書いていきますのでご容赦ください。

次回もシドとのバトル、後編を書いていきますよー!

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