「ねえ、新くん。今更思った事なんだけど……新くんって死者を甦らせる技を持ってたよね?それを使えば―――」
「あぁ、やってみたさ。ロキとの戦いの後で何度も。だが……出来なかったんだ」
実はロキ戦後、新は『
―――『
―――使用する際、対象者の魂が既に消滅してる場合は効果が適用されない―――
『初代キング』からそう言われたのだ
「つまり、あいつらの魂が完全に消えてしまった以上、復活させる事が出来ないって訳だ」
「……ゴメン、せっかく気持ちが切り替わったのに無神経な事言っちゃって……」
「気にするな。出来ない事をいくら嘆いても仕方無い。……ただ、何であいつらの魂が消えていたのかが引っ掛かる……」
未練を遺した魂はそう簡単に消滅したりしない
自然消滅と言う根拠が消去されたのなら、人為的に魂を消された事になる……
誰が何の為にそんな事をしたのか……
手掛かりが全く無いので今は保留しておき、目の前の任務に集中する
扉を開けて聖堂の中に踏み入れる新とイリナ
そこで待っていたのは老神父とシスター服を着た美少女だった
白と黒を基調としたコートを羽織り、口元に
「ようこそ、いらっしゃいました。私は当教会の神父を務めるユナイト・キリヒコと申します。日本からの御足労、ありがとうございます。
にこやかな笑みを浮かべる老神父
その目を見た途端、新は微かな違和感を覚えた
『……何だ、このまとわりつく様な違和感は……?』
「いえいえ、こちらこそメルシーです!」
「おい、イリナ。
「え、そうなの?……新くんってフランス語も話せるの?」
「少しだけな。ハンター時代は散々海外遠征してきたから、大体の外国語は話せる」
新の意外な才能に舌を巻くイリナ
老神父―――ユナイト・キリヒコに対する簡単な挨拶を終えたところで、新は隣のシスターに視線を向ける
黒いシスター服に包まれた美少女は新の視線に気付くとオドオドした様子で頭を下げる
灰色がかった青い瞳は非常に綺麗で、頭のベールからアッシュブロンドの髪が見えた
「こちらの方はロシアの正教会からお越しいただいたシストラさまです」
「……は、初めまして……。わ、私は……ミラナ・シャタロヴァです……。あの、ガブリエルさまの
『…………何だ、この可愛過ぎる生き物は……。容姿だけじゃなく声まで可愛い……っ。萌え要素の塊じゃねぇか……っ』
ロシアの正教会から派遣されたシストラ―――ミラナ・シャタロヴァの萌え要素ぶりに唖然と立ち尽くす新
声も外見もそうだが、何より新の視線を釘付けにしたのは―――シスター服に隠された彼女のおっぱいだった
『……シスター服は体型を隠すから分かりにくいと言われるが、俺の目は誤魔化せん。……あれはかなりの巨乳だ……!』
久々に女性のスリーサイズを解析する洞察力を発揮する新だが、ミラナは新の視線に気付き―――
「あぅっ」
恥ずかしがって胸元を手で隠した
可愛い悲鳴と仕草に内心ホッコリする新
しかし、横からイリナに耳を引っ張られてしまう
「痛たたたたっ!何するんだよ⁉」
「新くん、今エッチな目であの人を見てたでしょ⁉ダメダメ!ガブリエルさまの
「そんな御大層な天使の部下が来るとは……。しかも、その娘も転生天使―――依頼を受けてヨカッタッ!」
新は嬉しい情報を手に入れ、心の底から歓喜した
自分達も簡単に自己紹介を終わらせ、早速本題に入る
「んで、依頼内容は何なんだ、爺さん?」
「ちょっと新くん⁉神父さまにそんな―――」
「いえいえ、お気になさらず。風の便りで聞いた竜崎新さまにご依頼したのは他でもありません。ここ最近、数々の教会で神父やシスターが襲われる事件が多発しておりまして……。昨夜、この国の教会の信徒にもその牙が……」
「被害状況は?」
「……神父は見習いを含め57人が消息不明、シスターは49人が襲われ、計106人が被害に遭いました……」
「そこまでの被害が出てるなら、三大勢力の面々も放っておく筈が無いだろ。何でわざわざ俺に依頼を?」
「何ぶん、手掛かりが少なく相手も分からず、更には事態の鎮圧に来ていただいた三大勢力のエージェントも返り討ちに遭ってしまわれて……。そこで思いきってバウンティハンター協会にご依頼を……」
どうやら神父・シスターだけでなく、派遣された三大勢力のエージェントまでも被害に遭ったようだ
そう考えると被害総数は甚大とも言える……
中でも特に気になるのは神父の失踪
同じ被害に遭ったシスターは襲撃を受けただけに対し、神父は被害人数全てが消息不明となっている
「とりあえず、まずは被害に遭ったシスターから話を聞いてみるか。嫌な思いを呼び起こすが、話を聞かない事には手の打ちようが無い。爺さん、シスター達は何処に?」
「はい、この近くの病院に入院しております」
「よし、ちょっと行ってくる。イリナはここで待ってろ」
「待って!私もついていった方が―――」
「いや、相手の正体がまだ分からん以上、大所帯で動くのは危険だ。イリナはシストラ―――ミラナだっけ?彼女と一緒にここで待機しといてくれ。こう言った場面では単独の方がリスクが少なくて済む」
「むぅ……っ、分かったわよぉ……」
頬を膨らませて不機嫌顔になるイリナ
新は直ぐに機嫌直しに取り掛かる
「そう機嫌を悪くしないでくれ。さっきも言っただろ?頼りにしてるって。ミカエルさんの
「も、勿論よ!ミカエルさまの
「その意気だ、スーパーエンジェル」
イリナの機嫌が直ったところで新は病院に向かうべく外へ出た
1歩踏み出したその時、目の前がまばゆい光に包み込まれる
「な、何だっ、この輝きは……!?それに……この心まで安らぐ様な優しいオーラは……!?」
突然の閃光とオーラに新は思わず怯んでしまう
イリナとミラナもその気配に気付いて外へ飛び出してきた
彼らの前に現れたのは―――複数の翼を背に持つ美女だった……
ウェーブの掛かったブロンドヘアーにおっとりした雰囲気を纏った美女
更にグラマーな肢体、至宝とも言える爆乳の持ち主……
まさしく絶世の美女……否、それだけでは片付けられない程の美しさと母性を醸し出していた
目の前に現れた美女を見てイリナがワナワナと震える
「う、嘘でしょ……!?あ、あああああなたは―――ガブリエルさまっ⁉」
ガブリエル―――先程イリナが話していた天界一の美女にして天界最強の女性天使
超VIP級の来訪に新も驚く
「……ガ、ガブリエルさま……っ?あの……どうしてこちらに……?」
「私もミラナちゃんのお手伝いをと思いましてぇ。来ちゃいましたぁ」
間延びした声音で来訪の理由を言うガブリエル
イリナはガッチガチに緊張した様子でガブリエルに挨拶する
「は、はははははハジメマシテっ、ガブリエルさま!」
「あら~、あなたはミカエルさまの
ガブリエルは柔和な笑みを浮かべて頭を下げる
その時、ガブリエルの爆乳が大きく揺れ、新の視線は釘付けに……
「…………デケェェェェェェェェ……っ」
「あら?そちらの殿方はどちら様ですかぁ?」
「……わ、私と一緒にお仕事をしてくださる……協会の人です……」
「まあ、そうなんですかぁ。初めまして~。四大セラフのガブリエルと申しますぅ」
新は「え?あ、あ、どうも……」と緊張気味で挨拶を返す
落ち着かないのも無理はない
新の視線はガブリエルの爆乳おっぱいに集中しきっていた……
ガブリエルは一瞬キョトンとした表情で見ていたが、暫くして新の視線に気付く
嫌がる素振りを見せないどころか、優しげな微笑みを浮かべて―――
「あらあら、お仕事の前にエッチな事を考えてはいけませんよ~?めっ♪」
人差し指で新の鼻を小突く
その瞬間、新の心の中の何かがブレイクされ……ガクンと膝から崩れ落ちた
「あ、新くん⁉どうしたの⁉」
「…………は、初めてだ……っ。この俺が……女を前に崩れ落ちるなんて……っ。これが……天界一の美女の力なのか……っ。まるで魂まで洗われるかのように―――」
「新くんっ!頭から魂みたいな物が抜けかけてるんだけど!?ダメダメ!逝っちゃダメェッ!戻ってきてぇっ!」
――――――――――――――――
『
――――――――――――――――
「とりあえず、シスター達から話を聞けたが……それでもまだ手掛かりは少ない方か」
何とか自力で魂を戻した新は被害に遭ったシスターから話を聞く事に成功し、裏路地で今回の事件について推察してみた
彼女達に共通した点は―――胸に銃口の様な傷痕が2つ付いていた事である
何かの武器か牙状の物で刺された傷に見えるが、傷自体は浅く致命傷に至ってない
その点からシスターの殺人が目的じゃない事が
“単純な殺人事件なら、黒い依頼書で来る筈が無い”
そう考えると……本件の黒幕は何が目的なのだろうか……?
「…………それにしてもクセェなぁ。いくら裏路地だからって、この臭さはヒデェな……。まるで肉でも腐った様な……。――――ッ?」
肉が腐った様な匂い―――そう考えを至らせた瞬間、新は真っ先に匂いの元を捜索し始めた
自分がいる裏路地はただでさえ汚い上、人が通る事などまず無い
新はハンター時代、現場で事件を推察する時はなるべく目立たない場所、人が敬遠する場所でよく
裏路地などは相手に気取られない様にする為の隠れ蓑にもなる
裏路地の奥、そこで新は散乱したゴミの中で
匂いの元はこのゴミ箱から出てるようだ……
警戒しながら恐る恐る蓋を開けてみる
「――――ッ!……そう言う事かよ……ッ!」
ゴミ箱の中に入っていた“モノ”を見て、新の顔付きが変わる
――――――――――――――
急いでイリナ達の所へ戻ってきた新
扉を勢い良く開け、ズカズカと歩みを進める
「あ、新くん。話はどうだったの?」
イリナが声を掛けてくるが、新は構わず足を進める
目指す先は―――老神父ユナイト・キリヒコ
「……どうやらまだ動いてなかったようだな」
「……?どうされました?何か忘れ物でも―――」
ドガッッ!
なんと新は有無を言わさず老神父を殴り飛ばした!
突然の凶行にイリナ、ミラナが悲鳴を上げ、ガブリエルは呆然と立ち尽くす
「あ、新くんっ⁉いいいいきなり何をしてるの⁉神父さまを殴るなんて罰当たりだよぉ!」
「あぁ、罰当たりだろう。こいつが“本物の神父”だったらな」
「え……どういう事?」
事態が飲み込めない彼女達に対し、殴られた老神父は頬を
「……
「名前すら知らねぇよ。ただ……悪い奴はどう隠したって匂うんだよ。薄汚い詐欺師・ペテン師染みた血の匂いがな……っ」
睨む新と微かに笑う老神父にイリナ達は困惑しきっていた
「ね、ねぇ、新くん。いったい何がどういう事なの?分かるように説明してよ」
「手っ取り早く言ってやるよ。―――こいつは偽者だ」
「ええっ⁉に、偽者⁉」
「あぁ、本物はとっくに殺されてたよ。念のため証拠写真も撮ってきたんだが―――とても人に見せられる代物じゃねぇ。何せゴミ箱の中で腐ってたからな……。それにしても悪趣味な野郎だぜ……。
そう、新が裏路地で見つけたゴミ箱の中に入っていたモノとは―――今“目の前にいる老神父その人”だった……!
彼らの前にいる老神父は偽者、本物の神父は入国する前に殺されていたのだ
「もう既に
「ええ、良いですよ」
偽神父はあっさり承諾し、自ら正体を明かす
偽神父の体から幾重もの黒いモヤが帯状となって飛び出し、その中から本体が現れた
袖口が黒く染まった白いコートを着込み、回路図のごとき模様が刻まれた不気味なゴーグル
茶髪をオールバックに逆立てた青年がゴーグルを額の位置まで上げる
「
ようやくガブリエルさまを出せました!今回は少ししか出番がありませんでしたが、後々に活躍の場を増やします!