ラースを下し、見事『
ラースが倒れた事によってセラフォルーとソーナを捕らえていた結界が消え去り、新は早速セラフォルーからお礼のキスを受けたりしていた
「お姉さま、はしたない事はやめてください」
「え~っ、どうして?新くんが頑張ったから出られたのにぃ☆ソーナちゃんもチューしたいの?」
「ち、違いますっ!」
ソーナは顔を真っ赤にしてセラフォルーを連れていき、リアス達と共に負傷者の治療に移った
新は最後の一撃によって空いた穴から飛び降り、雪の上で仰向けに倒れているラースの元へ向かう
余力が残っていないせいか、ラースは元の姿に戻っていた
体から流れたであろう血が雪を赤く染めている
新を視認したラースは無理にでも体を起こそうとする
「まさか、この俺が……貴様のような半端者に、打ち負けるだと……っ。竜の血を受け継いできた俺が……汚れた雑種ごときにぃぃぃ……っ。何故だ、何故なんだ……っ!何故ここまでの力を出せる……っ⁉あんな、あんな下等生物との馴れ合いが……貴様にそこまでの力を……っ⁉」
ラースは自分の敗北が認められず、ひたすら疑問を繰り返した
“何故、ゼノンが自分に勝てたのか?”
“何故、自分がゼノンに負けたのか?”
“何故、自分達と違ってゼノンが計り知れない力の加護を受けたのか?”
ラースにはどうしても理解出来なかった
もがき続けるラースに新は言う
「ラース、俺がお前に勝てたのは―――
「…………ッッ!認めたくなかった……っ?この俺が……下等生物や、雑種を……?」
ラースの中で様々な過去が脳裏を
“何故、自分達だけが忌み嫌われたのか?”
“何故、他の生物どもは因果を捨てて馴れ合っているのか?”
“何故、他の種族と共存が出来るのか?”
“何故、馴れ合っている奴らがこんなにも憎らしいのか?”
ラースは気付かぬ内に共存を果たしている他の種族達に嫉妬していたのかもしれない
その嫉妬がいつしか心身共に染み付き、己の価値観を生み出した
彼は拭い去れぬ嫉妬に取り憑かれ、周りを見失っていたのだ……
その事を新に教えられたラースは屈辱にまみれた涙を流す
「アアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァアアアアアアアアアアアアッ!」
吹雪の中で屈辱の咆哮を発し、八つ当りするかの如く何度も雪を殴った
「屈辱だ……ッッ!こんな奴が、この俺を哀れむだなんて……ッ!こんなクソみたいな奴に……クソみたいな奴にぃぃぃ……ッ!」
ラースはこの屈辱に耐えられず、自らの手で喉を刺し貫こうとした
新が止めに入る寸前、ラースの手を止める者がいた
「…………ラース……ッ、ダメ…………ッ」
ラースの手を止めたのは―――レモネード
彼女が必死にラースの手を抑えている
「何故だ……ッ、何故止める……ッ?お前まで、俺に生き恥を晒すつもりか……ッ。こんなクソみたいな恥を受けて、惨めに生きるぐらいなら死んだ方がマシだ……ッ!離せ……ッッ!」
「ダメッッ!イヤッッ!絶対に離さないッッ!」
「…………もう、嫌……ッ。ラースまで死んじゃったら、私、独りになっちゃう……ッ。アノンも、ニトロも、ジュウゾウもいなくなって……ラースまでいなくなるなんて嫌……ッ。私達、家族でしょ……っ?これ以上、家族が壊れるなんて、見たくないよぉ……っ」
レモネードの目から溢れんばかりの涙が落ち、寒さでそれらが氷の粒と化す
呆然とするラースに再び新が言う
「ラース、分かっただろ?この
「あ、アァァァ……ッ。アァァァ……ッッ」
もはや認めるしかなかった……完全なる敗北
ラースは目元に手を当て、嗚咽を漏らしながら泣いた
喉を刺し貫こうとしていた手も下ろし、自害を中断する
「レモネード……許してくれるのか……?この俺を……?」
「……許すも何も、家族でしょ……っ」
「だが、俺はニトロを殺した……ッ。今更俺に何が―――」
「その事なら任せろ」
ラースの言葉を遮った新は体の痛みを無視して鎧を展開
魔力を振り絞りながら手を前に
久々に使用する
「
球体に魔力が吹き込まれ、ラースとレモネードの前に降りると人型を形成していく
閃光が徐々に止むと―――そこにはアノン、ニトロ、ジュウゾウの姿が……
思いがけない事態にレモネードは言葉を失い、直ぐに歓喜の涙を流す
「……アノン……ッ。ニトロ……ッ。ジュウゾウ……ッ」
「こ、こんな事が……ッ?ゼノン、お前……ッ」
「俺は雑種だから、色んな力が混ざってるからな。こう言う事だって出来るんだよ……。それに……女の悲しい涙は見たくないしな……」
「…………ッ、スマない……ッ。スマないぃ……ッ。ゼノォォォン……ッ」
新は最後の最後で自分なりの気遣いを見せたが、無茶を働いてアノン達を
吹雪の音も耳に入らなくなり―――そこで完全に意識が消えていった……
――――――――――――――
「…………ッ。…………ッ?」
次に目を覚ましてみると、自分の視界には真っ白な天井が見えた
見知らぬ天井の下にあるベッドで横たわっており、痛む体を起こす
身体中に巻かれた包帯を見つめ、今自分がいる場所を見回してみる
“お気付きになりましたか”と声を掛けてきたのは―――グレイフィアだった
「グレイフィア…………さん(一応)。あの……リアス達は?」
「3日前に治療を終えました。皆さんご無事です。私から連絡を入れておきましたので、今こちらに向かっているところです。ここはシトリー領にある医療施設の特別病棟です」
「そうか、もう大丈夫なんだな―――って、3日前?」
「ええ、新さんはあの後、3日間意識不明だったんですよ」
自分が3日間も眠っていた事を知らされ驚く新
詳細を聞こうと身を乗り出した瞬間、体が悲鳴を上げる
「あまり無理をならさないでください。あれだけの戦闘で体を酷使した挙げ句、魔力を使い果たしていたのです。本来なら生きてる事でさえ奇跡に近いのですから」
「よく生きてたな、俺……」
「お聞きしたい事は私の方から説明させていただきます。まずはリュオーガ族の5人、彼らについてはサーゼクス様とセラフォルー様が冥界の上役に報告を済ませました。彼らの要望に応え、今後一切敵対及び干渉しない事を条件に、南極へ隔離される事になりました。2度と三大勢力と敵対する事はありません」
ラース達はどうやら南極に閉じ込められるものの、下手な干渉を受けなくなったらしい
向こうから条件を出してきたゆえ、ひとまずは安心だろう
「次にあなたのお父上―――
「親父はまた逃げたんですか?」
「―――彼はリュオーガ族の存在と新さんの正体を隠蔽していた件で冥界に投獄されました」
一瞬意味が分からなかったが、時間が経つに連れて自分の父親が捕まったと理解する
「……捕まった?親父が……?嘘だろ?なぁ、冗談だよな?冗談だって言ってくれよ……ッ!」
「お気持ちはお察し致しますが、事実です。ただ、こうしなければ新さんにも手が及んでいたかもしれなかったんです」
グレイフィアの話によると新が倒れてから1日目、今回の1件でリュオーガ族の存在と新の正体を隠蔽していた事が冥界政府に露呈
上役から総司に対する処分と新の身柄を拘束せよと言い渡され、冥界政府の役人達が押し寄せてきたらしい
一時その場にはグレイフィアだけでなく、サーゼクスやセラフォルー、総司、リアス達もいた
冥界政府が下した処分は―――竜崎総司の確保と処刑、並びに竜崎新の確保と隔離地域への幽閉と言う理不尽極まりないものだった……
勿論サーゼクスやセラフォルー、リアス達は異議を飛ばしたが『政府の判決は
その時、総司は役人達に対してこう言ったらしい
『もし、ここで息子を連れて行くと言うのなら―――君達も、そのお偉いさん方も殺しに行ってしまうよ?冥界政府全てを敵に回してでも、新を連れて行かせやしない』
「彼は本気でした。全世界の全てを敵に回す事も
「親父が……そんな事を……ッ」
空白の時間の中で起きた真意を知った新はガクリと
サーゼクスとセラフォルーのフォローもあって最悪の事態は免れたようだが、投獄されたショックはやはり大きい
そしてサーゼクスとセラフォルーによって最大限の譲歩がされたとはいえ、新自身にも冥界政府から処分が下された
内容は“退院後より2週間、リアス・グレモリー眷属としての活動を禁ずる”と言う謹慎処分
退院してから2週間は悪魔稼業への参加と介入が出来ない
隔離地域への幽閉が無くなったものの、処分から逃れられた訳ではなかった
「…………ッ」
「新さん、今あなたが抗議しても……下された処分は覆りません。敢えて心を鬼にして申し上げます。どうか
グレイフィアから厳しく諭される新は言葉無く頷いた
確かに今動いたところでどうする事も出来ない
最悪の処分を免れただけでも幸運と考える他無い
納得いかないが、今は決定された処分の内容に従うしかなかった……
「……グレイフィアさん、ありがとうございます。あなたがそうやって言ってくれなかったら、俺……飛び出してた」
「今回の1件、私だって納得いかない点はあります。お力になれず申し訳ありません」
グレイフィアが謝罪した直後、病室の扉が開かれてリアスが入室してきた
特別病棟は狭いので大所帯は入れず、一誠達はひとまず外で待機する事に
新の姿を確認したリアスは直ぐ様彼に抱き着いた
「良かった……ッ。新……ッ。新ァ……ッ」
「おぉ、リアス。見舞いに来てくれてサンキュー。と言っても、そんなに泣く事はないだろ」
「だって!この3日間、面会謝絶であなたに会えなかったのよ⁉なのに、グレイフィアだけ新の病室に入れるなんて不公平だわ!」
「は?そんな事あったのか?」
「はい、今の新さんは魔力を使い果たしたせいで身体機能が著しく低下しています。それゆえ、あなたの中に眠る竜の血が再び暴走しないとも限りません。私はストッパー役としてここにいたのです」
「ストッパー役って……また物騒な―――」
ズオ……ッ!
突如、新の背中から漆黒の巨腕が2本飛び出し、リアスとグレイフィアに襲い掛かる
いきなりの事態に新とリアスは仰天
グレイフィアは巨腕の1本を特殊な術式を施した包帯で縛り上げるが、もう1本の巨腕はリアスに当たる寸前だった
グレイフィアは直ぐ様、巨腕とリアスの間に割って入ったが……巨腕の爪がリアスとグレイフィアの服を切り裂く
リアスのおっぱいだけでなく、グレイフィアのおっぱいまでもが公開された
「グレイフィアっ⁉」
「ご心配無く、もう慣れましたので」
グレイフィアは慌てる様子も見せずにもう1本の巨腕も同じ包帯で拘束
包帯に掛けられた術式が光ると漆黒の巨腕が苦しむ様に
面会謝絶だったのは漆黒の巨腕が不意に発動し、周りの者達を傷付けてしまう恐れがあったからだ
事態を収拾させたグレイフィアが咳払いする
クールに振る舞っているものの、やはり裸にされたのは恥ずかしいようだ……
「面会謝絶だったのはこれが原因です。さっきのように新さんの竜の血が暴走して―――女性の衣服を切り刻んでしまうからです」
「あ、新!あなた……グレイフィアにまでなんて事を!」
「ゑッ⁉俺のせいなの⁉」
「あなたの力でしょ!私になら何をしても許せるけど……グレイフィアにまで……ッ」
「落ち着いてください、リアス。あくまで不可抗力ですので、大きく咎めはしません」
「な、なら!私も今から新の看護をするわ!こんな状態でグレイフィアと2人っきりだなんてダメよっ!」
リアスはグレイフィアを警戒しながら新を胸元に抱き寄せる
乙女チックな反応を見せるリアスにグレイフィアはくすりと微笑む
「リアスは本当に新さんの事が好きですね。少しからかい過ぎたかしら」
「グレイフィアさん、からかってたのか⁉心臓に悪いぞ……」
「ちなみに言っておきますと、今までに私の裸を見た殿方はサーゼクスと新さんだけですよ?」
「な……ッ」
「もうっ、グレイフィアッ!いい加減に服を着てちょうだい!」
処分と言う重い罰が下されたにもかかわらず、最後はいつものノリがやって来た事に拍子抜けした新だった……
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シャカリキ・シャカリキィ!
バッド・ゲーマーッ!
シャカット・リキット・シャカリキスポーツ♪
「はいは~い、もしも~し。たった今拠点の制圧に成功したよ?んで、次は?……
ガッチャーンっ♪
「最近はヌルゲーみたいな任務ばっかりで退屈してたから、丁度良いや。難易度高いゲーム程、攻略し甲斐があるってもんだし♪さーて、“例の件”と合わせて―――何日でクリアしてやろっかな?」
ようやくリュオーガ族編を終えましたが、次回もオリジナル章を展開していきます!
最後の方でやっとオリキャラの1人を出せましたよ~。
次章のタイトルは“謹慎休暇のメモリアルとバッドゲーマー”です