ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

161 / 263
今回の話でラースの真の力が明らかとなります!


ラース、究極の変身!

静まり返る城内

 

無慈悲に放たれた『火竜の咆哮(デリート・プロミネンス)』が同族である筈のニトロを跡形も無く消し飛ばしたのだ

 

信じ(がた)いラースの所業に新達は絶句、レモネードに至っては―――

 

「……い、いや……っ。いやぁ……っ。いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああっ!」

 

首を小刻みに震わせ絶叫した……

 

ニトロの死を目の前で見せられた彼女は大いに乱れる

 

先程まで精巧な人形の如く平静を維持してきた彼女の姿は無い

 

その場にへたり込んだレモネードはただ泣きじゃくった

 

そんな彼女にラースは更なる罵声を浴びせる

 

「フンッ、結局こいつもただの出来損ないか。たかだかクズが死んだぐらいで取り乱すとは」

 

何処まで怒りを逆撫ですれば気が済むのか、もはや普通に殴り飛ばすだけでも許せない領域を侵している

 

新と一誠は怒りのオーラを(たぎ)らせてラースに立ち向かう

 

「テメェ……ッ、いい加減にしろよ……ッ!好き勝手にしやがって……ッ!」

 

「俺もここまでムカついたのは初めてだ……ッ!何が竜の一族だ!てめぇはただの鬼畜野郎じゃねぇか!仲間を平気で殺しやがって!」

 

「ああ?さっきから何度も言ってるだろ?弱い奴はリュオーガ族には必要無い!そこで泣きべそかいてるクズも、俺に歯向かってきたクズもいらねぇんだよッ!」

 

泣き崩れ放心しているレモネードを(けな)し、既に消え去ったニトロをも侮辱するラース

 

もはや我慢の限界を超えた2人は鎧を形成し直す

 

「……何でリュオーガ族が嫌われてるのか分かった。お前がそうやって次々と何もかも消していったから、危険視されたんじゃねぇか!」

 

リュオーガ族の事情は全く分からない一誠だが、それだけはハッキリと告げる

 

身勝手に命を奪い続けてきた者を誰が迎え入れるだろうか―――否、迎え入れる訳が無い

 

頭から種族を否定し、気に召さないものを一切合切消していけば当然の結果だ

 

それを未だに理解しようとしない、改めようともしないのが1番の害悪である

 

「てめぇみたいな奴は絶対に許さないッ!許してたまるかッ!」

 

「黙れ!悪魔に身を堕としたゴミクズが俺に説教するなッ!許すも許さないも、弱っちいのが1番の罪だ!リュオーガ族に弱い奴はいらん!弱い奴は死ね!それがリュオーガ族の掟であり、この世界にも言える事だ!弱者が我が物顔で蔓延(はびこ)る世界など虫酸が走るッ!死にたくないなら―――常に強者でいろォッ!単純な事だろうがッ!」

 

もはや何を言っても聞く耳持たないラース

 

こんな危険な奴を野放しにしてはいけない

 

「一誠の言う通りだ……!テメェを野放しにしたら、それこそ終わりだ!ぶちのめして、ぶちのめして、もう一度砂漠に沈めてやるッ!2度と出られないぐらいになァッ!」

 

絶対に倒すと言う決意を更に固くした2人は攻撃態勢を取るが、ラースは無駄だと言わんばかりの哄笑を上げる

 

「本当に何処までもお気楽なゴミクズどもだな。“今の俺”にすら勝てない貴様らが、この先の圧倒的な絶望を目にしても同じ台詞が言えるか?」

 

―――“今の俺”―――

 

突然出てきた意味深なワードに新が「どういう事だ?」と訊ねると、ラースは右手の人差し指を立てて言う

 

「あと1回」

 

「「……っ?」」

 

「あと1回、俺は他のリュオーガ族よりも多く変身出来る」

 

「「な……っ⁉」」

 

そう、リアス達と戦った時でも彼は言っていた……っ

 

あと1回、変身出来る事を……

 

今の状態だけでも充分な脅威だと言うのに、この上まだ進化を隠し持っていた

 

驚愕する2人の前でラースは全身から今まで以上に濃密なオーラを漂わせる

 

「光栄に思えよ、クズども!俺が究極の姿を見せるのは―――四大魔王とやり合った時以来だからな!そして……貴様らの最期に相応(ふさわ)しいフィナーレを飾ってやるよォッッ!」

 

ドンッッ!

 

ラースの体から放たれる衝撃波と熱を帯びた莫大なオーラが足元の氷を吹き飛ばし、その場にいる全員に多大な威圧感を与える

 

そして、異変が始まった……

 

まず胸部の肉が異様な形に盛り上がり、それがドラゴンの頭部へと変化していく

 

大口を開けて甲高(かんだか)い唸り声を発するドラゴンの頭部が赤い目を光らせる

 

次に背中の両翼が更に大きくなり、腕と足も一回り肥大化

 

肥大化した腕と足の先に鋭利な爪も生え揃う

 

臀部(でんぶ)から伸びる尻尾も更に重厚な様相となり、氷を叩き割る

 

胴体上にある頭もより攻撃的で凶悪なフォルムへと変化する……

 

変異していく度に衝撃波が巻き起こり、新と一誠はその気迫に()されてしまう

 

「なんてオーラだ……っ!さっきまでとは全然違う……っ!」

 

恐々とする新と一誠の前に真の力を発揮したラースが現れた

 

胴体上と胸にドラゴンの頭部、巨大化した両翼、全てを薙ぎ払い切り裂かんとする様な爪

 

これがサーゼクスやセラフォルーら四大魔王を追い詰めたラースの究極態……っ

 

「さあ、宴の始まりだ。貴様らがどんなに泣き叫んでも―――俺は決して容赦しないぞ」

 

余裕を孕んだ態度のラースだが、全身から滲み出てくるオーラには並々ならぬ殺意が混じっている

 

一誠も今の状態では勝てないと踏み、即座に真・女王(クイーン)への呪文を唱え始めた

 

「我、目覚めるは、王の真理を天に掲げし赤龍帝(せきりゅうてい)なり!無限の希望と不滅の夢を抱いて王道を()く!我、紅き龍の帝王と成りて!―――(なんじ)を真紅に光り輝く天道へ導こう―――ッッ!」

 

Cardinal(カーディナル) Crimson(クリムゾン) Full(フル) Drive(ドライブ)‼‼‼‼』

 

赤いオーラが(ほとばし)り、一誠はサイラオーグとの戦いで発現した真紅の鎧を展開した

 

真紅の赫龍帝(カーディナル・クリムゾン・プロモーション)

 

共に最強の形態と化した新と一誠だが、それでもラースは嘲笑の様子を見せていた

 

「聞いた事はあるぞ、確か『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』だったか?滅びたドラゴンをザコが宿した所で所詮ザコはザコ。使い手がクズでは話にならないな!」

 

「言ってろ!その生意気な(つら)をブッ飛ばしてやるッ!」

 

Star(スター) Sonic(ソニック) Booster(ブースター)‼‼』

 

一誠は背中のブースターから火を噴かして神速の勢いで飛び出す

 

拳を固め、力を込めた一撃をラースの顔面に見舞った―――その瞬間、なんとラースの顔面をすり抜けていった……!

 

何が起きたのか分からずラースの真後ろで止まり、振り返る一誠

 

よく見ればラースの姿が少し透けている……

 

「まさか、残像……ッ!」

 

新は瞬時に理解した

 

“ラースが残像を残して一誠の攻撃を回避したのだ”と……

 

一誠は急いでラースを探そうと辺りを見回そうとした矢先―――背中に強い衝撃が走る……ッ

 

死角からラースが一誠に豪腕の一撃を食らわせてきたのだ

 

そのまま目にも止まらぬ速度で新も巻き込み上昇

 

2人を上へ放り投げた後、素早く頭上に先回りし―――合致させた両手で殴り落とす

 

まるで隕石の如く落とした新と一誠に対してラースは追撃を止めない

 

両足を広げて一気に降下―――2人の腹を踏み潰す……ッ!

 

声にならない悲鳴と共に血の塊が吐き出され、氷の床を赤く染める

 

再び跳躍して2人の前に降り立つラース

 

「フンッ、やはり弱いな」

 

必死に体を起こそうとする新と一誠

 

ラースはそれを見下しながら尻尾で1度地面を叩く

 

新は一誠にアイコンタクトを送り、一誠もそれに頷く

 

Star(スター) Sonic(ソニック) Booster(ブースター)‼‼』

 

新と一誠は限界まで速度を上げ、ラースの前から消えるように高速移動を開始した

 

ラースはその場から1歩も動かず、ただ静止しているのみ……

 

空を切る音が幾重にも響き、一陣の風がラースの頬を通り過ぎた刹那―――

 

ドゴッッ!

 

鈍く重い打撃音が鳴った……

 

ただし、それは新と一誠がラースに一撃を与えた音ではなく―――“ラースが新と一誠に爪での一撃を与えた音”だった

 

「が……ッ、嘘、だろ……ッ⁉」

 

「これが俺と貴様らの実力差だ」

 

そんな事あってたまるかと新は蹴りを、一誠は拳打を繰り出す

 

しかし、その瞬間にラースの姿が消え、2人の攻撃は空振りに終わる

 

直後に一誠はラースの豪腕で薙ぎ払われ、城の壁に叩き付けられる

 

すかさずラースは新の腹に強烈な膝蹴りを叩き込み、肘を振り下ろす

 

重過ぎる二撃を入れられた新の骨は大きな悲鳴を上げ、肋骨も何本か折れた

 

太い尻尾が新の胴体に絡み付き、宙に浮かされる

 

後は豪腕の拳で滅多打ち、ラースは何度も何度も新を殴打していく

 

「フハハハハハハハハハハッ!ゼノンッ!どうやらお前は生き方を間違えたな!おとなしく俺の軍門に下っていれば、弟として迎え入れてやったものを!くだらない情に流され、こんなゴミクズどもの傷を舐め合った事を後悔するが良いッ!」

 

爪で引っ掻き、殴り、尻尾を振り回して冷たい地に叩き付ける

 

それはもはや戦いではなく、一方的な虐殺だった……

 

真の姿となったラースの強さ、恐ろしさに誰もが絶句するしかなかった

 

リアスも朱乃も、他の皆も、アザゼルでさえもプレッシャーに当てられて動く事が出来ない

 

「……コイツは……本物のバケモノかよ……っ」

 

恐々と口に出すアザゼル

 

一頻り虐殺を終え、意識が消えかけているズタボロの新にラースは更なる凶行を重ねる

 

胸から生えたドラゴンの頭部が大きく口を開け―――新の左腕を噛み千切った……っ!

 

「アアァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

堪らず絶叫を吐き出す新、喰い千切られた左腕がドラゴンの頭部に補食される

 

それだけでは終わらず、今度は右掌を向けた

 

『―――火竜の咆哮(デリート・プロミネンス)ッ!』

 

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

ラースの右手から放たれた火竜が至近距離で新を呑み込み、彼の全身を焼き払う

 

炎が止み、全身を焼かれた新は微動だにしなくなった……

 

「消滅はしなかったが、もうゼノンに意識は無い。―――終わったな」

 

ゴミの様に放り捨てられた新がリアスの傍に落ち、変わり果てた姿の男を見たリアスは―――

 

「あ、ああ……っ、イヤァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

大粒の涙を流し発狂

 

朱乃も膝から崩れ落ち、焼け焦げた新に這い寄る

 

何度も何度もか細く震えた声で呼び掛けるも、反応は一切無い……

 

その様子を見て嘲笑うラースの後ろから破砕音が聞こえてくる

 

瓦礫を払い除けた一誠が両翼から砲身を出し、赤いオーラをチャージしていく

 

「よくも……よくもやりやがったなァァァァァァァアアアアッ!」

 

Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)‼‼』

 

各宝玉から倍増の音声が鳴り響き、砲身の鳴動が徐々に強くなる

 

ラースに狙いを定め、一誠はチャージした全魔力を解き放った

 

「吹き飛べェェェッ!クリムゾン・ブラスタァァァァァァァアアアアッ!」

 

Fang(ファング) Blast(ブラスト) Booster(ブースター)‼‼‼‼』

 

両翼の砲身から莫大な質量の赤いオーラが放射された

 

サイラオーグにも大ダメージを与えた砲撃がラースを呑み込もうと―――否、ラースは自ら極大の赤いオーラに飛び込み、その中を猛然と突き進んでいく……ッ!

 

「―――ッ⁉嘘だろ……ッ⁉クリムゾン・ブラスターの中を……ッ⁉」

 

ラースの規格外とも言える行為と強さに驚愕せざるを得ない一誠

 

尚も放射し続けるが、ラースは意にも介さず爆進

 

赤いオーラの中から飛び出したラースが巨大な爪での一撃を見舞う

 

強烈な打突を食らった一誠は砲撃を中断させられ、更に脇腹に鋭い蹴りを打ち込まれる

 

凶悪なまでに鋭利な爪先が一誠の脇腹を砕き、左の膝蹴りが腹部に突き刺さる

 

衝撃で口から血と共に内容物を吐き出し、間髪入れず豪腕で叩き伏せられた

 

跳躍したラースは容赦無く巨大な足で一誠を踏み潰す

 

1発、2発、3発と念入りに踏み潰した……ッ

 

鎧は粉々に砕かれ、身体中の穴と言う穴から血が噴き出し、遂に一誠の目から光が消えてしまった

 

ピクリとも動かなくなった一誠を見て、ラースは冷酷に吐き捨てる

 

「フンッ、つまらん。やはり(まが)い物のドラゴンなど、この程度でしかなかったな」

 

完膚無きまでに2人を圧倒したラース

 

アザゼルは歯をギリギリと鳴らし、手元に巨大な光の槍を生み出す

 

「よくも……よくも俺の教え子をやりやがったなァァァァァァァアアアアッ!」

 

幾重もの翼を羽ばたかせて突貫するアザゼルだが、ラースの振るった爪により―――光の槍は呆気なく砕かれた

 

そのまま横薙ぎの豪腕で殴り飛ばされ、壁に激突する……

 

一矢報いる事すら出来ない……

 

そんな自分をアザゼルは激しく呪った……ッ

 

「チクショウ……ッ!チクショォォオオオオオオオオ……ッ!」

 

「腐れ堕天使、貴様にはその無様な泣きっ面がお似合いだ。残った奴らも無様に、そして惨めに泣いてろ。リュオーガ族に歯向かった事を―――この俺に歯向かった事を悔やみ、呪い、地獄の奥底で懺悔しろ!それが貴様らの最期の生き方だッ!」

 

哄笑と嫌味を放ち続けるラースに対し、もはやリアス達には成す(すべ)が無い……っ

 

天地を引っくり返しても、この規格外のバケモノには(かな)わない

 

そんな念がリアス達の精神を(むしば)

 

「今の内に思い付く限りの懺悔をしておけよ!貴様らは一片たりとも姿形が残らなくなるからなァ!この世で俺に勝てる奴などいないッ!凍てつく城内で飾られる下等生物どもの懺悔、叫び、嗚咽、断末魔ッ!グランドフィナーレに相応しい最高の協奏曲だッ!フハハハハハハハハハハッ!」

 

凍える城内で忌々しき竜人(ラース)が愉悦に浸り、高笑いを上げる……っ

 

徹底的に(なぶ)られ、(しかばね)の如く動かなくなった赤龍帝(イッセー)

 

左腕を喰い千切られ、火竜に全身を焼かれた闇皇(アラタ)

 

もう彼らに奇跡が起こる事は無いのか……?

 

リアス達はこのまま悪しき竜人に滅ぼされてしまうのか……?

 

だが、この時―――意識の消えた新には異変の予兆が現れていた

 

左腕を喰われた傷痕が静かに微弱な鳴動を起こし、そこから“黒い何か”が(うごめ)いている事を―――リアス達はおろか、ラースさえも気付いていなかった……っ




真の力を発揮したラース、強すぎてゲス過ぎる……っ

イメージはsic版仮面ライダーウィザードのオールドラゴンです。

次回は新の究極変身をお見せしましょう!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。