遂に迎えた『
グレモリーとシトリー陣営のメンバーは新、一誠、祐斗、ゼノヴィア、イリナ、小猫、ギャスパー、ロスヴァイセ、由良、巡、仁村
皆の前にラースとレモネードが立ちはだかる
ラースとレモネードがそれぞれ離れた位置に移動し、ラースが口を開く
「さあ、始めようか。下等生物ども。貴様らの悲鳴と苦痛を枯れるまで発してもらうぞ。せっかくのゲストにも絶望を与えてやりたいからな」
そう言いながらラースが上を指差すと―――上空には球状の結界に捕らえられたセラフォルーとソーナがいた
彼女達を救う為にも絶対に負けられない
新は真っ先にラースの方へと歩みを進めていった
「新、俺もそっちに行くぜ」
声を掛けてきたのは一誠だった
一誠の意外な選択に新が訊ねる
「なんでこっちに来た?お前なら向こうに行きそうだと思ってたんだが」
「確かにあのレモネードって娘の方が俺も戦いやすいと思ったけど……部長や渉を酷い目に遭わせたあの野郎を放っておくのが嫌だったんだ。1発ぶん殴ってやらないと気が済まない」
決意を固めた表情で言い放つ一誠に新は口の端を少し吊り上げた
「分かった。なら、遠慮無くぶちのめしてやろうぜ」
「当たり前だ!って事で木場!そっちは皆に任せる!」
「分かったよ、無茶だけはしないでほしい―――と言っても、君達の場合じゃ難しいかもね」
祐斗は一誠の提案を了承した後、残ったメンバーと共にレモネードの方へと進む
ラースの眼前に並び立つ新と一誠
彼らの無謀とも言える思考にラースは嘲笑した
「やはり頭の中まで腐りきってる様だな、下等生物ども。アノン程度に苦戦してた奴らが僕を相手にするなど―――」
「粋がるのもそこまでだ。バカの一つ覚えみたいに下等生物下等生物言いやがって。その生意気な口を閉じねぇと舌噛むぞ?」
新は
2人が拳を突き出してラースに言い放った
「「俺達を舐めるなよッ!」」
「……良いだろう、お望み通り原型が無くなるまで
ゴオオオッッ!
遂に
ラースは熱風を放つと同時に両翼を広げて飛び出し、新と一誠も拳を固めて駆け出した
新と一誠、両者の拳がラースのボディに深々と突き刺さる
強烈な打突音と衝撃がラースの背中を突き抜けるが、ラースは両手で新と一誠の頭を掴み、そのまま冷たい床へ叩き付けた
更にお互いの体をぶつけさせてからフィールドの端へ投げ飛ばし、右手を開いて灼熱の炎を溜め込む
「―――『
右手から放たれた灼熱の火竜が2人を喰らおうと突き進んでくる
それを見て瞬時に新は剣に魔力を溜め、一誠もトリアイナ版『
「―――クロス・バーストォォッ!」
「ドラゴンブラスタァァァァアアアアアアアッ!」
赤い剣戟波と赤い砲撃が襲ってくる火竜と衝突、大規模な爆発を生み出した
爆煙の中を突っ切る2人、先に出てきたのは一誠だった
一誠は即座に『
「アスカロンッ!」
『
左の籠手から
それに対してラースは手に炎の爪を纏わせて防ぐ
『
一誠はありったけの力を込めるがラース本体には届かない
「こんな細い剣、貴様もろとも蒸発させてくれるッ!」
「これで終わる訳ねぇだろッ!新ァァァァッ!」
一誠が叫んだ直後、爆煙の中からラースの頭上に飛び出してきた新
濃密なオーラを纏わせた両足での蹴りをラースの顔面に入れる
更にそこから左右の蹴り、カカト落としなどを乱舞で繰り出し滅多打ち
「景気付けだァッ!『
『
一誠も負けじとトリアイナ版『
撃鉄を鳴らして巨大な拳でラースを上空にはね上げた
新はここから更に追い込みを掛ける
「―――我、目覚めるは闇と
呪文を唱え終えた新は『
ラースの眼前に素早く回り込み、左腕の盾から超高熱の火球を出現させ―――魔力を高めた剣と同時に解き放つ
「―――ブレイジング・シュートォォォォォォッ!」
魔力を高めた高熱の螺旋砲撃がラースを呑み込み、凍てつく床ごと爆散する
新と一誠によるオーバーキル染みた連携攻撃
こんなのをまともに食らってしまえば大抵の者は見事に戦闘不能に
大技の連続使用で疲弊し、呼吸を整える新と一誠
彼らの表情は険しいままだった
その理由は言うまでも無い……
あれだけの猛攻をまともに受けた筈のラースが平然とした様子で立ち上がったのだから……っ
自身に付着した汚れを取り払い、可笑しそうに嘲笑う
「やはり脆弱だな。これだけやっても僕の鱗に傷1つ付ける事が出来ない。所詮その程度が君達下等生物の限界だったと言う訳だ」
「……ッ⁉あれだけ打ち込んでもピンピンしてんのかよ……ッ」
「ムカつくが、認めるしかねぇな。こいつ―――強い。サイラオーグと互角……いや、もしかしたらそれ以上かもしれねぇ……ッ」
ラースの異常とも言える桁違いの強さに改めて戦慄させられる2人
「今度はこっちの番だ」とラースは熱を帯びたオーラを全身から排出し、巨大な何かを複数形成し始めた
やがてオーラは巨大な腕の形となり―――それが6本完成する
ユラユラと
それを見た時、一誠の脳裏に“これとよく似た物”が
―――“サイラオーグとの戦いで新が出した漆黒の巨腕”―――
それと同じ技をラースが見せつけてきた……
「焼け滅びろ―――『
灼熱の巨腕が襲ってくると同時に炎が幾重にも放出される
とてつもない絨毯爆撃に新と一誠は避ける暇も無く、爆撃と巨腕による殴打を食らってしまう
爆撃で飛ばされた所を巨腕が薙ぎ払い、叩き落とし、殴り潰す
たとえ巨腕を回避したとしても無尽蔵に降り注いでくる炎が全身を焼き焦がす
僅か一手でボロボロに追い詰められた新と一誠
かろうじて瞬殺は免れたものの、受けたダメージは相当なものだろう……
2人とも鎧が大きく破損しており、口から血の塊を吐き出す
熱と痛みで意識が遠退きそうになるが、首を振り自ら頬を叩いて呼び覚ました
「ぐ……ッ!なんてパワーだ……ッ!少しでも防ぐのが遅れたら、死んでたぞ……ッ」
「さっきのアノンって奴もバカみたいに強かったけど……こいつはそれ以上の強さだ……ッ!」
「当たり前だろう?僕は四大魔王を死の淵まで追い詰めたんだ。君達など、あいつらに比べれば虫ケラ―――いや、微生物以下。見せしめにしても小さ過ぎるぐらいだ。もっとも、セラフォルー・レヴィアタンにとっては大きな絶望となるだろうけどね。君達を見るに堪えない程の死骸へと作り替えてやる。それまではこの凍てつく舞台で踊ってもらうぞ?僕達にとって君達も、他の奴らもそれ以上の価値を持たない―――人形でしかないんだよッ!」
ラースは両手を広げ、狂気に満ちた声音で叫ぶ
「踊り狂って、もがき苦しみながら最期に壊れ死ぬ!これこそっ、底辺で這いつくばる下等生物どもが輝く最高の見世物だ!フハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」
もはや狂ってるとしか言い様が無いラースの思考に新と一誠は歯を噛み締め、是が非でも止めなければならないと奮起する
鎧を形成し直し、いざ行かんとしたその時―――離れた位置から悲鳴が聞こえてくる
悲鳴の主は―――意外にもレモネードだった
右腕の傷を押さえ、疲弊した様子である
いくら力が強くても多勢に無勢では無理もない
祐斗達も傷が目立ってはいるが、状況的には祐斗達の方が有利だ
「……この人数相手に持ち堪えただけでも相当だよね」
「ああ。だが、後ひと息だ」
レモネードを取り囲む様に位置付く祐斗達
一方、レモネードは息を切らしながらラースに呼び掛ける
「……ラース、お願い。あなたの力を分けて。……このヒト達、ちょっと強い。だから、あなたの炎を呑めば勝てそう」
そう、彼女はリュオーガ族に伝わる“竜の呼吸法”を会得しているので、形無きものを吸収する事でより強い攻撃を生み出せる
実際『人形の間』でも匙の黒炎を喰らい、一瞬で匙達を圧倒した
彼女の要求にラースは―――舌打ちをした
「……そうか、そうか。レモネード、お前もあいつらと同じく腑抜けたか」
「……ラース?」
ラースは上空に飛び上がり、両手を広げた
そこから炎を噴き出し、何かを形成し始める
「だったら、今すぐ―――下等生物もろとも消してやるよ……ッ!」
『――――ッ⁉』
ラースから生み出された炎が巨大な十字架を作り、そこに禍々しく燃え盛る火竜も出現する
それはリアス達を一撃で沈めた凶悪極まりないものだった……っ
だが、それよりもラースの思惑に皆が絶句している
―――“レモネードごと新達を殺すつもりだ”―――
トンでもない行動に出たラースに一誠が叫ぶ
「ちょっ、ちょっと待てよ!おい!あの娘はお前の仲間なんだろ⁉そんな物を放ったら、あの娘まで―――」
「ああ、消し飛ぶ。だから何だ?そいつごと貴様らを殺すんだ、当然だろ」
ラースはレモネードに対して侮蔑の視線しか送らないばかりか、一誠の言葉を全否定する
「何が仲間だ。下等生物ごときに遅れを取り、あまつさえ助けを求めるなど、情けないを通り越して哀れそのものだ!そんな弱っちい奴など―――リュオーガ族には必要無いんだよッ!弱っちいから他の連中も貴様らゴミクズごときに呆気なく負けたんだッ!死んで当然!寧ろ死ねッ!弱々しい態度を見せる様な奴は一族の恥だッ!汚点だッ!存在自体が腹立たしいゴミクズ以下のクソ虫めッ!どいつもこいつも腑抜けやがって!せめて下等生物と共に
「テメェ……ッ、狂ってやがる……ッ!」
あまりにも身勝手過ぎるラースの言い分に新だけでなく、全員が怒りに顔を歪めた
レモネードは未だに信じられず言葉を失い、ただ立ち尽くすだけだった
ラースは醜悪な笑みを浮かべ―――セラフォルーにも言い放つ
「セラフォルー・レヴィアタンッ!そこから見ているが良いッ!何も出来ないまま、貴様の可愛がっている下僕どもが跡形も無く消し飛ぶサマをなァッ!」
「ダ、ダメェッ!やめてぇッ!」
「滅びろゴミクズどもォッ!
燃え盛る十字架の火竜が吼えながらフィールド上の全員に襲い掛かっていき―――極大の爆発を引き起こした
氷城内にも衝撃と爆風が行き交うだけでなく、崩壊したフィールドは瓦礫と化し、下で待機していたアザゼル達に降り注ぐ
フィールド上だけでなく、下にいるアザゼル達をも巻き込んだラースの卑劣極まりない攻撃
ラースはゆっくりと降下しながら爆煙を翼の羽ばたきで掻き消す
“消し飛んだか”と言わんばかりの醜悪な笑みで降り立ち、新達の消滅を確認しようとしたが―――ラースは己の目を疑った
―――“奴らが消滅していない……ッ?”―――
瓦礫の山々の中からボロボロの新達が出てくる
思わぬ結果にラースは不快さと苛立ちを
「カハ……ッ、危なかった……ッ!防御に全力をつぎ込んでなかったら……ッ!」
どうやら寸前の所で皆は防御魔方陣を展開して消滅を
だが、それよりもラースの機嫌を損ねた事態が起こっていた
「……ッ!貴様ァ……ッ、何のつもりだァ……ッ?―――ニトロォォッ!」
ラースの視線の先を見てみると―――そこには庇う様にレモネードを
『
ニトロはレモネードをゆっくりと下ろし、ラースを睨み付ける
「何となく嫌な予感がしたんで来てみりゃ、どうやら正解みてぇだな……!それより何のつもりだァッ!ラース、何でレモネード嬢まで殺そうとしやがったァッ⁉」
「負け犬と弱者などリュオーガ族には必要無いッ!下等生物ごとき相手に弱音を吐いた時点でクズ!役立たず!ゴミ!負け犬だッ!ニトロ、お前も本来なら自害してる身だ。それを敵に情けを掛けられて生きてやがる。目障りなんだよ、クズが!」
ラースの言葉にニトロは拳を震わせ―――遂にキレた
「テメェ……
「ああ?」
「“誰かの為に戦った”からベイビーちゃん達は強くて、俺達が相手でも諦めなかった!心配してくれる奴がいるから、そいつの為に戦い、そいつを守るって想いがベイビーちゃん達を強くしたんだ!ラースッ!テメェにはそれが分からねぇのかァッ⁉」
「ゴミクズごときの言葉に毒された貴様が何を言う!負けた奴は死ね!それがリュオーガ族の掟だッ!」
「その掟に縛られて何人もの同胞が死んでいった!そんな掟―――もうゴメンだ!これ以上減らしたら、俺達は本当の意味で滅びる!いい加減変わらなきゃ、変わらなきゃいけねぇんだよォォォォォォォォオオオオオオオッ!」
ニトロは大きく叫びながらラースに向かって突っ込んでいく
固めた拳を突き出そうとした刹那―――ラースの右手がニトロの胸を貫いた
堅牢だった鱗を容易く貫き、背中から突き出た手から血が
手を引き抜くラース、風穴を開けられたニトロは血を吐きながらヨロヨロと後ろに下がる
「もう良い、見るに堪えない。今の貴様は目障りだ。―――消えろォッ!」
ゴオオオッ!
ラースの手から容赦無く放たれる『
火竜はニトロを呑み込み、体を端々から崩壊させていく……っ
この時、ニトロは不思議と満足感に満ちていた
“今までは自分の為だけに戦ってきた”
“誰かを守る事がこんなにも勇気と力をくれたのか”
畏怖していたラースに立ち向かえたのもギャスパーの言葉があったから
そして、それを教えてくれたのはギャスパーが守りたいと……一緒にいたいと言う仲間……
仲間がいる事の素晴らしさにニトロは感謝の念を
『……もし、俺達がリュオーガ族じゃなかったら……ベイビーちゃんも、ベイビーちゃんの仲間も、俺達と仲良くしてくれたかな……。ヘヘッ、こうやって誰かの為に戦って、誰かを守って死んじまうのも……悪くねぇ……っ』
最期に安らかな気分を味わう事が出来た