ングングング……
「っぷはぁ!あ〜……マスター、カシオレもう一杯」
「新、もうやめときなよ。これで何杯めだ?流石に飲み過ぎだぞ」
レーティングゲームが終わった翌日
新はレイナーレ達がバイトしている行き付けの酒場で飲んだくれていた
リアスの不甲斐ない心境と態度が、未だに納得いかない新は頬杖をつく
「一誠が……たった1人の仲間が傷付いただけで降参とかよ〜……だったら、マジの戦いでも敵に命乞いをすんのかよ……俺達バウンティハンターだって、時には共同で仕事したりする時もあるから、一時的な仲間はいるんだよ。その仲間が殺られた時は……苦しくても目の前の賞金首を捕まえなきゃならねぇんだよ……なのにリアスときたら」
新にもレイナーレ達の他、仕事仲間のバウンティハンターはいる
一緒に賞金首を捕まえたり、酒を飲み交わしたり、ギャンブルしたり、バカ笑いしたりと……数多くの仕事仲間がいた
だが職業上、その仲間が死んでしまう事も少なくないし、死んでしまっても悔いている暇などない
賞金首を討伐しなければ一般市民の生活は脅かされ、自分達も生きていけないからだ
「仕方無いんじゃないか?グレモリー家は寵愛に深い一族らしいから」
「寵愛に深いって言われてもなぁ……戦いはそんなに甘いモンじゃねぇんだよ。特に戦闘の指揮を執る奴は情に流されちゃいけねぇのに……情けねぇの一言だ」
「じゃあ、新はリアス・グレモリーを見限るのか?」
酒場のマスターの言葉に新はゆっくりと起き上がり、グラスに注がれたカシスオレンジを一気に飲み干す
「ぷはぁっ。正直……分からねぇ」
「分からない?普通それだけ愚痴るなら見限るでしょう?」
バニー姿のレイナーレが割り込んでくる
「あん時は俺も本気で見限ろうかって思ったよ。けどよ……一誠に向けた目を思い出しちまったんだ。あれは一誠を失いたくない色の他にも、俺達に対して申し訳ないって色が混じってた気がする……そう思うと、何だかなぁ……」
「……らしくないわね」
レイナーレの言葉に理解出来なかった新は「どういう意味だ?」と聞く
「アラタはどうして私達を居候させてるの?」
「は?そりゃあ、仕事に役立ちそうだし……良い女を殺すなんて勿体無いから」
「リアス・グレモリーの第一印象は?」
「揉み応えありそうな胸してて、紅髪の綺麗な良い女」
「だったら、それで良いんじゃないの?」
レイナーレが隣に座って言った
「アラタは天敵である私達堕天使の命を拾った。良い女だからと言うあまりにもバカげた理由でね。だったら……それと同じ様に、リアス・グレモリーも助けたら良いんじゃないの?」
確かにレイナーレ達堕天使は村上に裏切られた時、新が拾ってくれなかったらリアスに殺されていた
だが、彼女達をどうするかは新に任せられ、結果―――――新の仕事仲間兼居候になった
良い女だからと言う理由で……
新はその事を思い出した
「そうだったな……」
「そうそう♪アラタはドスケベなんだから、それだけで助けに行けば良いの〜♪」
「悩んでいる姿など、お前らしくない」
レイナーレと同じバニー姿のカラワーナとミッテルトが新を励ます
新は少し沈黙するが、すぐに立ち上がる
「……そうだよな。ふっ、何悩んでたんだ俺は。リアスは良い女なんだ。そんな良い女の涙を見て、黙ってる訳にもいかねぇよな!」
「ふふっ。やっとあなたらしくなったわね」
「サンキュー3人とも。お陰で次にやるべき事が決まったぜ」
―――――――――
結婚式当日、新に届いた一通の手紙
それには結婚式の会場に転移する魔方陣があった
差出人はサーゼクス・ルシファー……リアスの兄だった
『妹を取り戻したいなら殴り込んで来なさい』と言う文面と、一誠は既に会場に転移したと言う文面が書かれていた
無論、新の答えは決まっていた
「行きますか。その結婚式とやらに」
「待ちなさいアラタ」
後ろからの声、振り向くとレイナーレ、カラワーナ、ミッテルトがいた
レイナーレが新に近づき―――――キスをした
「――――っ!?」
「んっ……ちゅむ、ちゅぱぁ……はむっ。……ふふっ、景気付けよ。ありがたく思いなさい」
妖艶な笑みを浮かべるレイナーレ
彼女の頬が少し紅潮していた
「レイナーレ様だけじゃないよアラタっ。うちも〜♪んちゅ〜♪」
ミッテルトも負けじと新にキスをする
大人顔負けの舌使いで新にエールを贈る
「うちらのファーストキスあげたんだから、絶対戻ってきてよね♪」
「……あぁ。当たり前だ」
「待てアラタ。私を忘れているぞ?んむっ……ちゅう……ちゅぱっ」
カラワーナも新の唇に自らの唇をくっ付ける
舌を使い交わす濃厚なキスの3コンボに新は大満足
「お前の唇、なかなか美味しいな。クセになりそうだ」
「ははっ。今まで味わってきたキスの中じゃ、お前ら3人が一番かもしれねぇや。ありがとよ……じゃあ、行ってくるぜ。主を取り戻しに」
魔方陣が強く光り、新の姿が消える
自分らしさを取り戻した新には、もう迷いの文字など微塵もなかった
「レイナーレ様。アラタが帰ってきたらどうします?うちとしては、そろそろ……アラタと交わりたい♪」
「ミッテルト、あなたねぇ……でも、アラタなら良いかしら」
「帰ってきたとしても、まだ言わないでおきましょう。押し掛けたら、向こうから来てくれるかもしれません」
「そうね。じゃあ私が1番で」
「ん〜。じゃあうちはお風呂で襲っちゃお〜っと♪」
「私も風呂でしようか」
3人の堕天使は新の帰りを楽しみにしながら部屋に戻っていった
―――――――――
「会場前か。随分とデケェ扉だな」
新は結婚式会場に繋がる扉の前にいた
扉に耳を近づけ、微かに聞こえてくる話し声に耳を集中させる
誰が言ってるかは分からないが、ドラゴンVSフェニックス
一誠が勝てばリアスを連れて帰っても良いと言う話を聞いた
「やっぱ一誠も来てたか。んじゃ、俺も会場に入るか」
新は闇皇の姿に変異して、手に魔力を溜める
そして――――――豪快に扉を破壊して会場に足を踏み入れた
「どうもこんばんわ〜。結婚式に乱入しに来ました〜」
「あ、新!」
一誠が新に駆け寄る
「お前どうしてここに!?てっきり、部長を見限ったかと……」
「本当に見限ったなら、ここには来ねぇよ。お前だってリアス部長を取り返したいんだろ?俺も付き合うぜ」
「――――っ。良いのか?新」
「そいつはこっちの台詞だ。お前ゲームの時はあれだけボロボロにされたんだ。次は―――――死ぬかもしれねぇぞ?」
新と同じく、一誠の目には迷いが無かった
それを確認した新は一誠の隣に並ぶ
「……良い面構えじゃねぇか。一誠、やるぞ。本気で守りたい物は死んでも守りきれ!それが男って奴だ!」
「当たり前だ!部長をあんな奴に渡してたまるかよっ!」
拳をぶつけ合い、新と一誠は再び宿敵ライザー・フェニックスと対峙する