ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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やっと投稿です……


爆進帝王ッ!ニトロ・グリーゼェェェェェェェェッ!

ここまでのあらすじ

 

それは1つの平凡な日常から始まった

 

『ひぃぃぃ!新学期初日から遅刻だなんて最悪で すぅぅぅ!』

 

『……ギャーくんが着替えに時間掛けるから』

 

『もう、2人とも早く走って!時間ギリギリなんだから!』

 

通学路を激走する3人の女子高生がいた

 

無口なツンデレ娘―――塔城小猫(とうじょうこねこ)

 

弱気で泣き虫な留学娘―――ギャスパー・ヴラディ

 

ツインテールな活発娘―――仁村留流子(にむらるるこ)

 

授業開始のチャイムまで10分、自分達の学舎(まなびや)まであと僅かな距離

 

曲がり角を曲がった矢先、3人はドンと誰かにぶつかって尻餅をついてしまう

 

『いたた……っ。―――っ!いやぁ!パ、パンツが見えちゃうぅぅ!ふぇぇえんっ!』

 

3人はパンツを見られまいと直ぐにスカートでガードし、ぶつかった人物に謝る

 

『ったく、何処に目ぇ付けてんだ。お前らは』

 

ふてぶてしい声音を発してくるのは同じ学舎に通い、尚且つ1番の不良先輩―――ニトロ・グリーゼ

 

不器用な物言いしか出来ないが、決して根が悪い方では無い

 

ニトロは3人を起こして学舎とは真逆の方へ歩いていく

 

『先輩、今日もサボりですか?』

 

『勉強なんてダルくてやってらんねぇよ。単位だけ取ってりゃ文句ねぇだろ?ベイビー達は急げよ、遅刻すんぞ』

 

『……それはダメです。先輩も一緒に』

 

『そ、そうですよ!内申にも響いちゃいますから!一緒に行きましょう!』

 

3人はニトロの手を無理矢理引っ張って学舎まで連れていく

 

彼女達がここまで甲斐甲斐しく彼の世話を焼く理由―――それは3人とも彼に想いを寄せているからだ

 

しかし、ニトロには壮大な夢があった

 

“愛用のバイクで世界中の国々を回る”

 

世話を焼かれる内に彼もまんざらではなくなってきたのだが、全国制覇を目指している彼はその想いにまだ答えられない

 

―――とは言うものの、それを表に出すのも照れ臭いので黙ってばかりいた

 

そして、ニトロは卒業と同時に旅立ってしまい……彼女達はとうとう想いを告げられなかった

 

何年後に戻ってくるのかは分からない

 

いつか自分達の前に戻ってきてくれる事を信じて待ち続けた

 

だが……残酷な知らせが彼女達に襲い掛かる

 

『…………え……先輩が事故に……?』

 

そう、彼―――ニトロ・グリーゼは旅の途中で交通事故に巻き込まれてしまい、半死半生の状態になったと言う

 

知らせを聞いた彼女達は直ぐに彼が入院している病院へ飛び、病室で彼と再会

 

ベッドに横たわる彼の状態は実に酷く、面影すら感じられない程だった……

 

顔中に包帯を巻き、両腕両足もギプスに覆われ、呼吸器と点滴の管が彼の生命の灯火(ともしび)を維持している

 

あまりにも痛々しい姿に彼女達は泣き崩れた

 

“助かる可能性は五分五分”

 

医師からもそう伝えられ、絶望が増大する

 

ベッドで眠る彼の周りを死神が徘徊し、携えた鎌を首元に突きつけ―――今にもその命を刈り取ろうとしている幻影が見えてくる程に……

 

しかし、崩れかけた彼女達は諦めなかった

 

“想いを伝えられないままなんて嫌”

 

3人の想いが一丸となり、彼の見舞いを続けた

 

学業に就職活動と繁忙期の合間に病室を訪れ、彼に励ましの言葉を贈り続ける

 

彼が目を覚ますその時を信じて……

 

そして1年後の卒業式当日、彼が目を覚ましたと言う通知を受けた

 

卒業式を終えた彼女達は直ぐに病院へ向かい、生死の境目から無事に帰還してきた彼と対面する

 

“これでようやく彼に想いを伝える事が出来る”

 

3人とも高鳴る気持ちを胸に秘め、彼に駆け寄ったのだが―――

 

『…………君達は……誰……?』

 

再会したのも束の間、生死の境目から帰還してきた彼の口から出た言葉は彼女達に衝撃を与えた

 

なんと彼は事故の時、脳にダメージを負ってしまい、その後遺症で自分の名前を含めた全ての記憶を失ってしまったのだ……

 

ようやく戻ってきたのかと思いきや、死神は往生際悪く爪痕を残していた

 

ツラい現実に再び打ちのめされる3人だが、それでも諦めなかった

 

“3人であの頃の様に甲斐甲斐しく世話を続けよう”

 

いつか必ず自分達の事を思い出してくれる……その日が来るのを信じて、彼の世話を焼き続けた

 

そして、遂にその日が訪れたのだった

 

『…………小猫…………ギャスパー…………留流子…………』

 

『―――ッ!…………先輩……っ!』

 

 

―――と言う物語がニトロの頭の中で展開しているらしい……

 

 

「思い出したぜベイベェェェェェェェェエエエエエエエエエエエエッ!記憶がぁっ、元にぃっ、戻ったぜベイベェェェェェェェェエエエエエエエエエエエエッ!」

 

「ひぃぃぃぃぃっ!何の話ですかぁぁぁぁっ⁉」

 

爆走ならぬ脳内暴走したニトロの言動にギャスパーは完全に怯え、小猫も相手にしたくないと言わんばかりのジト目を向けていた

 

グ○コのマラソンランナーばりの走り方でギャスパーを追い回し、ギャスパーも全速力で逃げているのが現状

 

小猫と仁村はロスヴァイセの後ろに避難し、ヴァルキリー姿のロスヴァイセも警戒を最大レベルに上げていた

 

命懸け(笑)の鬼ごっこでギャスパーは生き残れるのか……?

 

その時、ギャスパーがフィールドとなる荒野の出っ張りに(つまず)き転んでしまう

 

好機到来と見たニトロはジャンプし、クルクルと回転しながらギャスパーの真上へ飛んだ

 

「逃がさないぜベイベェェェェェェェェエエエエエエエエエエエエッ!」

 

両手両足を広げ、そのままギャスパーに突っ込んでいく

 

流石にヤバいと踏んだ小猫と仁村は急いで駆け出し、ロスヴァイセも後方支援の準備を整える

 

小猫と仁村は2人掛りの飛び蹴りをニトロに食らわせるが、異常なまでの頑丈さに蹴り足が悲鳴を上げた

 

それでも力を込めて何とか引き離す事に成功、ニトロが空中を不格好に舞う

 

そこへロスヴァイセの魔術砲撃が降り注ぎ、幾重もの爆発が起こる

 

爆煙の中から地に落ちるニトロだが、奴は直ぐに飛び起きて首をコキコキと鳴らす

 

蹴りも砲撃も効いてないようだ……

 

ギャスパーは涙目で3人のもとへ駆け寄り、小猫が慰めにギャスパーの頭を撫でる

 

「ひぃぃぃぃぃんっ!あのヒト怖すぎですぅぅぅぅぅぅっ!」

 

「完全にギャスパーくんを女の子と勘違いしてますね……。まあ、パッと見ただけで見抜けないのは否めませんが」

 

「……でも、このままじゃギャーくんが変態の毒牙に」

 

そこで小猫は思いきってギャスパーの性別の発表を試みた

 

一誠でさえ“ギャスパーは男”と言う事実に泣き崩れ、大いに(いきどお)りを吐き散らした

 

この暴走マシーンが知れば、もはや怒り爆発どころの騒ぎではなくなるだろう……

 

ただ、そのリスクと引き換えと言っては何だが……ショックに打ちのめされる事も僅かながら期待している

 

フゥッと呼吸を整え、小猫が1歩前に出た

 

「次はツンデレ猫が相手か?俺はお前らに順列なんか付けねぇ。来たけりゃ俺の胸に飛び込んで来な」

 

「……色々間違っていますが、あなたは1つだけ大きく間違っています」

 

「何だよ?」

 

「……あなたが追い回してるギャーくんは男の子です」

 

遂に打ち明けてしまったギャスパーの性別

 

鬼が出るか蛇が出るか分からない賭け……

 

ニトロの怒り大爆発―――と思いきや、ニトロは「へ~、そうなのか」と短絡的な返事をする

 

あっけらかんとした反応に誰もが耳を疑った

 

「……ギャーくんは、男の子ですよ……?」

 

「ふ~ん、だからどうしたってんだ?そこのベイビーが男だろうが女だろうが関係ねぇ。愛ってのは理屈じゃねぇ―――フィーリングなんだよ」

 

表情は分からないが、恐らく決め顔で自身の恋愛持論を語ったニトロ

 

彼の男気溢れる返答に小猫はギャスパーの肩に手を置く

 

「……あのヒト、性別を無視してギャーくんが好きみたい」

 

「えぇええええええええええっ!?嘘だと言ってよぉぉぉぉぉぉっ!」

 

「……無理」

 

ギャスパーにとって残酷な現実が襲い掛かり、ツッコミ担当の小猫ですら諦めてしまう程の暴走―――もとい爆進帝王ニトロ・グリーゼ

 

ギャスパーの恐怖度が更に上昇する

 

「ぼ、ぼ、僕はちゃんとした男の子ですぅ!女の子じゃありません!お……お○ん○んだって付いてるんですからぁ!」

 

「構わないぜベイビー。愛は理屈も倫理も乗り越えてこそ輝くもんだぜ?それによく言うじゃねぇか。“嫌よ嫌よもすき焼きの内”ってな(キラリ)」

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんっ!このヒト打つ手がありませぇぇぇぇぇぇんっ!」

 

「それに言葉の使い方も間違っています」

 

教員免許を持っているロスヴァイセがそこを指摘すると、ニトロは“やれやれ、分かってねぇな”と言わんばかりに両肩を竦める

 

「こう言うのは気持ちが大事なんだよ。熱い気持ちでぶつかりゃ相手に伝わる。それにケチ付けるなんざ“年寄りの冷奴(ひややっこ)”ってヤツだぜ、オバサン」

 

「と、年寄り……っ?オバサン……っ!?」

 

恐らくニトロは“年寄りの冷や水”と言いたかったのだろうか……

 

しかし、ロスヴァイセはその間違いよりも“年寄り”と“オバサン”発言に反応し、プルプルと体を震わせる

 

“ヤバい”と直感した小猫はギャスパーと仁村を連れて遠くへ避難

 

そしてロスヴァイセは数百単位の魔方陣を展開し―――

 

「私は……っ、オバサンじゃなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!」

 

―――涙にまみれながら魔術砲撃のフルバーストを盛大に解き放った

 

触れてはいけない所に触れるどころか抉ってしまったニトロは縦横無尽に飛び交う魔術砲撃の爆発に巻き込まれ、周囲の大地も岩も木っ端微塵に砕けていく

 

凄まじい勢いの砲撃と爆音、そして哀しみを撒き散らすロスヴァイセ……

 

「どうして誰も彼も私をオバサンって言うのよぉぉぉぉぉぉおっ!?私だってまだ18です!年頃の女性と変わりません!どうせ私は彼氏いませんよ!処女ですよ!彼氏いない歴=年齢のヴァルキリーですよ!でもぉ!少なくとも私はオバサンなんかじゃないんだからぁ!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!」

 

いつも以上に荒れまくるロスヴァイセの砲撃に小猫、ギャスパー、仁村は萎縮気味になり、砲撃が終わるまで待つしかなかった

 

15分程経過した辺りで砲撃が止み、辺り一帯は完全に焦土と化していた……

 

大地から焼け焦げた臭いが漂い、爆煙と砂塵が宙を泳いでいる

 

ロスヴァイセはまだ泣いており、今にもフルバーストの第二波を撃たんとする状態だった

 

そこで小猫はこれ以上の暴走を止めるべく彼女の所へ歩み寄り、慰めの言葉を掛ける

 

「……落ち着いてください。ロスヴァイセさんは若いです。ピチピチです。何より新先輩もイチオシだと言ってました」

 

「ぐじゅっ…………本当ですか?」

 

「……本当です」

 

小猫の機転によりロスヴァイセは機嫌の良さを取り戻した

 

これで奴が倒れてくれれば万事解決するのだが、そうもいかないのが悲しい現実である

 

爆煙と砂塵が薙ぎ払われ、その中からニトロが姿を現す

 

目立った外傷は特に無く、ポンポンと砂埃を払っていた

 

「ヘッ、ヒステリックはみっともないぜ?」

 

「……っ!あれだけ撃ち込んでも倒れない……っ。最近の私達はこの手の輩に遭遇してばかりですね……」

 

ニトロの尋常ならざる防御力にロスヴァイセは悔しそうに歯噛みし、小猫達も警戒する

 

ニトロは余裕を持った様子で拳を鳴らす

 

「さ~て、そろそろこっちも本気を出してやるか。アノンが殺られちまった以上―――その仇を取らねぇとなぁ」

 

そう言いながらニトロはボタンを外し、革製の上着を脱ぎ捨てる

 

何をするつもりなのかと警戒を高める中、ニトロは自分達リュオーガ族について語り始めた

 

「俺達リュオーガ族は古来よりドラゴンの血と力を受け継いできた一族だ。そして、ごく稀にドラゴンの力を具現化出来る奴もいる。ただ、その力はあまりにも強過ぎて危険な為、耐えきれず自壊した奴らが大勢いた。それが俺達リュオーガ族の数が少ない原因とも言える。その力をコントロール出来たのは……たった3人だけだった」

 

語るに連れてニトロの全身から不気味なオーラが漂い始め、大地も細かく振動していく

 

「見せてやるぜ……っ。俺達リュオーガ族の真価をよぉ……っ!」

 

ニトロは両腕を前で交差させて力を溜め込み、開くと同時に雄叫びを上げた

 

「本・能・覚・醒ェッ!竜・人・解・放ォォォォォォオオオオオオオオオオッ!」

 

咆哮するニトロの体が不快な音と共に別の性質へと変貌していく

 

鎧の様な鱗に覆われ、禍々しいトゲが隆起

 

顔を覆うマスクをぶち破って出てきた頭部は口元が尖り、鋭い牙と眼孔を明らかにする

 

まるで蜥蜴とドラゴンを合わせた様な竜人が小猫達の前に現れた……

 

やがて変貌を終えた竜人ニトロは小猫達を睨み付け、ズシズシと重厚な足音を立てながら歩いていく

 

ロスヴァイセはもう一度無数の魔方陣を展開し、あらゆる属性の砲撃を放った

 

ニトロ目掛けて一斉に向かっていく砲撃の嵐

 

だが……直撃を受けてもニトロはその歩みを止めなかった

 

まるで無人の道を我が物顔で歩くが如し

 

ロスヴァイセの砲撃など全く意に介してなかった……

 

この結果にロスヴァイセも驚愕せざるを得ない

 

「そんな……全く効いてない!?」

 

「当たり前だ。この姿になった俺の体はどんな攻撃も寄せ付けねぇんだよ。炎だろうが氷だろうが、雷だろうが魔力だろうが一切効かねぇ」

 

「……なら、体の内部から効くようにします」

 

「塔城さん、私も手伝います!」

 

小猫と仁村が同時に飛び出していく

 

小猫は仙術の気を、仁村は魔力を自らの両手両足に纏わせた打撃を繰り出す

 

これに対してニトロは仁王立ちのまま微動だにせず、2人がかりの打撃を全て受けた

 

いくら打撃を入れても効果は得られないどころか、逆に彼女達の体がダメージを受ける

 

先程とは比べ物にならない硬さに圧倒されていた

 

「おイタはその辺にしときな、ベイビー」

 

ニトロはトゲの生えた太い右腕を豪快に振るって、小猫と仁村を纏めて吹っ飛ばす

 

鈍い衝撃と共に殴り飛ばされた2人は宙を舞い、地面に叩きつけられる

 

急いで駆け寄るギャスパーとロスヴァイセ

 

2人の体を起こすと―――腕や腹部に痛々しいぐらいの傷穴が開けられていた

 

傷穴からドクドクと血が流れ、大地に(したた)り落ちる

 

「一撃で酷い傷……っ」

 

「そう言えば教えてなかったな?何故この部屋が『血溜りの間』と呼ばれているのか」

 

ニトロは右腕に付着した彼女達の血を舐め取り、この部屋―――『血溜りの間』の由来について語る

 

「この部屋で俺と戦い、俺の攻撃をくらった奴らは身体中の血液を1滴残らず外へ排出しちまうんだよ。そして穴だらけの体から流れ出た血は―――やがて大地を真っ赤に染めていく。これが俺の守護する部屋―――『血溜りの間』の正体って訳だ」

 

そう……実はこの部屋の大地は所々赤い部分が目立っており、それはこの部屋で敗れた者達の血によって出来たもの

 

まさしく血の墓場……

 

吐血を繰り返す小猫と仁村の傷穴を塞ぐべく、ロスヴァイセは緊急用に持っていたフェニックスの涙を振り掛けた

 

少量ではあるものの、2人の傷穴はみるみる内に塞がっていく

 

何とか助かった2人だが、形勢は圧倒的に不利……

 

どんな攻撃も寄せ付けないブッ飛んだ暴走竜人ニトロ

 

今まで以上の恐怖が彼女達を押し潰そうとしていた……

 

「さあ、ベイビー。この腕で抱き締めてやるから、俺の胸に飛び込んできな(キラリ)」

 

「いいいい嫌ですぅ!そ、そんなゴツゴツした腕で抱き締められたら死んじゃいますぅぅぅぅ!」




今回の話は書いてて笑っちゃいましたよ(笑)

こんな壊れたキャラをいっぱい出したいな~。

ちなみに竜人化したニトロのイメージはサンゲイザーファンガイアです

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