ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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原作の最新刊とポケモン新作を買って、金欠気味です!


二者択一、偽りと本物

『……これが君の出生の全てだ』

 

総司の口から明かされた新の出生と経緯

 

一誠達はその話に衝撃を受け、言葉を失う

 

その中でも最もショックが大きいのは―――新だった

 

自分が本当にリュオーガ族である事

 

リュオーガ族を創ったドラゴンの欠片より生み出された事

 

何より……自分のせいで総司が闇人化(やみびとか)してしまった事に自責の念が重くのし掛かってくる

 

「……俺が……俺のせいで親父が……?親父があんな姿になったのは……俺のせい……っ」

 

呪詛の如く呟いて自分を責める新

 

膝からくず折れ、顔を俯かせる

 

そんな新を見てラースは更なる追い打ちを掛けた

 

『そうだよ、ゼノン。君のお陰で竜崎総司は自らの首を絞める事になったのさ。“人間”の心の弱さを利用して、君を赤ん坊のままけしかけた。人間とは無垢で弱い生物を前にすると―――何故か情を注いでしまうと言う心理を持っているからね。そこに突け込めば、後は復活の時が来るのを待つだけ。そして竜崎総司は僕の予想通り……赤ん坊だった君を殺さず、育てると言う行動を取った。それが自らを破滅へ追い込むとも知らずにね……』

 

不気味な冷笑を浮かべるラースは更に続ける

 

『ゼノン、君は最初から騙されていたのさ。そこにいる男は君と何の繋がりも無い。ただの他人、偽善行為を働いて善人ぶってるだけの男なんだよ。表向きは君の父親と言っているが、本心では君を育てた事を後悔しているだろう。君のせいで四大魔王の1人が僕達の手中に落ち、お友達も危険に晒されているのだから』

 

『おい!てめぇ、ふざけんな―――』

 

激怒したアザゼルが何かを言う前にリアス達の映像を消し、ラースは新を自分達の側に(おとし)めようとする

 

『きっとお友達も同じ事を思っているよ。“こんな奴を入れたのが間違いだった”ってね』

 

「あ……アァァ……っ!アァァァアァァアァァ……ッ!」

 

グサグサと突き刺さる罵倒に耐えきれず、新は悲鳴を吐き出す

 

次第に目の陰りが強くなり、崩壊寸前となっていた……

 

ラースは新を引き込む役目をアノンに託し、自ら映像を消す

 

アノンは早速新の洗脳に取り掛かった

 

「ゼノン、ツラいの分かるニャ。今まであいつらに騙されてきたんだからニャ~。でも、もう大丈夫だニャ。あんな偽物の家族や下等生物なんて見限って戻ってくるニャ。僕達リュオーガ族―――本当の家族の所に」

 

「…………ホントウノ……カゾク……っ」

 

「そうだニャ♪君も僕達もリュオーガ族。同じ種族だから家族だニャ。嘘偽りの無い本当の家族、君の居場所はここだニャ」

 

甘言で誘惑してくるアノン

 

心のバランスを崩した新はアノンに手を伸ばそうとした……

 

その時――――「新!そいつらの誘いに乗るんじゃねぇッ!」と叱咤を飛ばしてくる者がいた

 

一誠は兜を解除して新に訴えかける

 

「新!お前は親父さんが本当にそんな事を考えてると思ってんのか!?お前をここまで育ててくれた親だろ!?そいつらの話を真に受けるな!」

 

「………………」

 

「何が偽物だ!何が本当の家族だ!新の親父さんはなぁっ、自分を汚れ役にしてまで新を守ろうとしてたんだよ!たとえ血が繋がってなくても、新を想う気持ちだけは本物なんだよ!それに比べてお前らはどうだ!?何も知らない新を利用して、弱味を作って、それに突け込んだ最低のクソ野郎じゃねぇかッ!」

 

ザシュッ!

 

一誠の右足に肉を貫く感触と激痛が走る

 

アノンは手持ちのステッキの先端を伸ばし、槍の如く一誠の足を貫いた

 

一誠は膝をつき、傷口から血が流れていく

 

「たかが悪魔ごときに何が分かるのかニャ?君達悪魔だって嘘偽りの塊だニャ。人間を騙して命を喰らい、自分達の肥やしにしてきてるくせに。聖人君子になったつもりで説教垂れるなんて虫酸が走るニャ」

 

「ぐ……っ!新ァッ!お前このままで良いのかっ!?そいつらに言われっぱなしで!お前、俺に言ったよな!“過去は戻れない、やり直す事も出来ない”って!」

 

それはサイラオーグとの決戦前、新が過去のトラウマに怯える一誠に放った言葉だった

 

「過去を悔やんで怯えた所で何も変わらない!そう教えてくれたのは新じゃないか!俺が過去に(つまず)いた時、立ち上がらせてくれたんだろ!そのお前が躓いてどうすんだよ!?」

 

「…………っ」

 

「過去がどうだろうと俺も!部長達も新を見捨てる訳が無いだろ!」

 

一誠の檄を鬱陶しいと感じたアノンはステッキを伸ばして負傷した足を横殴り

 

一誠を転がした上でステッキから球体型の波動を放つ

 

一誠は両腕をクロスして受け止めようとするが力負けしてしまい、腕の鎧が大きく砕け散る

 

「ま~だそんなまやかしの言葉を言うつもりかニャ?醜い醜いっ、見苦しく足掻く生き物ほど醜い物は無いニャ」

 

「あ、新ァ……ッ!お前はお前だろ……!リュオーガ族だろうと何だろうと―――お前は俺達の仲間……ッ!部長の『兵士(ポーン)』で、俺達の仲間なんだ……ッ!自分を信じろよ……!過去の呪縛なんか―――振り払えェェェェッ!」

 

腹の底から声を出して新に呼び掛ける一誠

 

アノンは聞くに堪えないとばかりに耳を掻き、一誠の言葉を否定する

 

「無理無理、君達には何にも出来ないニャ。ゼノン、あんな暑苦しい奴の話を聞く必要は無いニャ。所詮、偽物は偽物。本物の家族には勝てないんだニャ。これ以上、君に変な知恵を吹き込もうとするあいつを殺してあげるニャ」

 

アノンはステッキにオーラを集め始めた

 

鋭い刃物と化したステッキを一誠に向ける

 

「ゼノン、今から僕があの男を殺してあげるニャ。嘘偽りの言葉を連ねて君を騙し、引き込もうとする汚らわしい悪魔をね」

 

「………………」

 

「新ァッ!お前はもう独りじゃないッ!親父さんが!俺が!部長が!皆がいる!誰も―――誰もお前を見捨てたりしないッ!お前を信じて、ここにいるッ!だから……信じるのをやめんなッ!」

 

「もうウザいニャ。偽物だらけの下等生物は―――ここで消えるニャッ!」

 

アノンはその場を蹴って飛び出し、刃と化したステッキを構える

 

一誠は足を負傷しているので動く事が出来ない

 

迫り来る一撃に思わず瞑目してしまい―――肉を貫く音が走った……

 

だが、不可解な事に……一誠の体に痛みは走らなかった

 

疑問に満ちたまま目を開けてみると、刃と化したステッキは寸前の所で止まっていた

 

それだけじゃなく、一誠は更に驚くべき事態を視界に捉えた

 

―――“アノンの腹から刀身が突き出ている”―――

 

突き出た刀身から血が(したた)り落ち、アノンも一誠と同じく何が起きたのか理解出来ずにいた

 

引きつった顔で視点を自分の腹に移し、突き出た刀身に驚愕する

 

「な……な……っ、なん、で……ッ!?」

 

アノンは震えながら背後に視線を移した

 

そこには自分を剣で刺し貫く新の姿が……っ

 

「ゼ、ゼノン……っ?どうして……僕を……!?」

 

「……一誠、お前の説教―――心に響いたぜ。また俺の言った言葉が俺自身に返ってくるとはな……」

 

先程まで染まっていた目の陰りは消え、口調も徐々に自分らしさを取り戻していく

 

「さっきはマジで心が壊れそうになった……。親父だけじゃなく自分の事まで信じられなくなっちまったからな……。でも、一誠の言葉で目が覚めた。過去なんて関係ねぇ。俺は俺だ。俺を信じてくれる奴がいるなら……信じきれる仲間がいてくれるから、俺も―――俺の信じる道を行くだけだッ!」

 

完全復活を果たした新に一誠は涙ながらに笑みを浮かべ、アノンは予想外の展開に激昂した

 

「ゼ、ノン……ッ!貴様ァァァァァァァァァ……ッ!リュオーガ族をっ、家族を裏切るのかァァァァァァァァッ!」

 

「俺はゼノンなんて名前じゃねぇッ!俺は竜崎新ッ!リアス・グレモリーの『兵士(ポーン)』!そして―――竜崎総司の息子だッ!」

 

新は剣を力強く振るい、アノンを泉の方へ投げ飛ばす

 

泉に落ちたアノンは水飛沫を上げて沈み、落水地点が血に染まっていく

 

リュオーガ族と決別した新は憑き物が取れた様に凛々しい表情となる

 

暫く天を見上げた後、改めて一誠の方を向いた

 

「一誠、すまなかった。俺が1番しっかりしなきゃいけねぇってのに……」

 

「何言ってんだよ。新には散々借りを作りっぱなしだったからさ、これでおあいこだ!」

 

グッドサインを向ける一誠

 

新は軽く笑って照れ隠しに頭を掻く

 

とにもかくにも―――『泉の間』の主アノンを倒した2人は部屋の扉へ向かおうとした

 

その刹那、後方より大きな音が発せられて泉から水柱が噴き上がる

 

音に反応した2人が視線を向けると―――泉の中から倒した筈のアノンが出てきた……!

 

腹の傷から血を流しながらも戦意は消えておらず、それどころか目が血走っていた

 

ギリギリと歯を食い縛り、怨恨を孕んだ顔付きはまさに鬼の形相

 

全身から激しい怒りを(ともな)ったオーラを噴かし、ステッキを新と一誠に向けた

 

「まだだ……ッ!まだだニャッ!この僕がッ!貴様らごときに負ける筈が無いんだニャアァァァァァァァァァァァァァアアアアッ!」

 

アノンはステッキを頭上に掲げ、先端に激しいオーラを集束させていく

 

莫大な質量のオーラがステッキに集まり、圧縮され、周りの風景を揺らす

 

一目でヤバいと踏んだ新と一誠は二手に分かれて逃げようとするが、アノンが先手を打つ

 

「逃げるのは無しだニャッ!逃げれば―――こいつを外にいる奴らにぶちかましてやるニャッ!」

 

「なっ!?きたねぇぞ、この野郎!」

 

「チッ、あいつ強硬手段を取りやがった……!」

 

もし、ここで回避行動を取ればアノンは外で待機しているアーシア達にオーラの塊を放つだろう

 

卑劣な手段で新と一誠の行動を封じるアノン

 

2人は腹を括って迎撃を試みた

 

まず、新は『闇皇(やみおう)の鎧』を形成し直して剣を握り、一誠はトリアイナ版『僧侶(ビショップ)』に昇格

 

それぞれ剣戟波(クロス・バースト)砲撃(ドラゴン・ブラスター)の構えを取った

 

魔力のチャージが完了し、準備を整えた2人は泉の中のアノンを見据える

 

「一誠、俺達の技を合わせるぞ」

 

「おう!派手にぶっ放してやるぜ!」

 

「くたばれぇっ!裏切者がァアァァアァァァアァァアァァァアァァアァァッ!」

 

アノンが怨嗟の叫びを吐きながら莫大な規模の波動を解き放った

 

周りの木々や草花を消滅させ、食い殺さんとばかりに新と一誠の方へ向かっていく

 

恐ろしい形相の竜と化した波動が大口を開けて突っ込んでくる

 

新と一誠もそれぞれの技を解き放った

 

「クロス・バーストォォォォッ!」

 

「ドラゴンブラスタァァァァァァァァァアァァアァァッ!」

 

剣戟波と砲撃が同時に放射され、アノンが放った竜の波動へと向かっていく

 

その道中、地を這う剣戟波が一誠のドラゴンブラスターと螺旋状に合わさり―――更に強力な波状攻撃と化す

 

激突した瞬間、強化版ドラゴンブラスターは竜の波動ごとアノンへ突き進んでいった

 

「……ッ!?そ、そんな……ッ!僕の波動がっ、押し戻されて……っ!?」

 

信じられない事態に愕然とするアノン

 

それでも強化された砲撃の勢いは止まらず、遂には竜の波動を粉微塵に粉砕

 

「僕が……っ、僕がこんな奴らに……っ!負ける……!?嘘だ―――嘘だァァァァァァァァァアァァアァァァアァァアァァァアァァアァァッ!」

 

絶叫するアノンは赤い螺旋砲撃に飲み込まれ……消え去った……

 

 

――――――――――――

 

 

「―――っ。アノンの気配が消えた?まさか、殺られたのか?」

 

場面変わって『竜星(りゅうせい)の間』

 

ラースは予想だにしてなかった展開を察知して動きを止めていた

 

先程までは新の正体と出生の経緯を聞かされ茫然、更に途中で映像を切られた為に新がどうなったのか気が気でなかった

 

しかし、ラースの台詞から新が持ち直した事を知る

 

思わず出た朗報にリアス達の活気が甦る

 

「どうやら、あなたの企みは失敗したようね」

 

リアスは皮肉めいた台詞で様子を窺うが……ラースは深く溜め息を吐いて首を振り―――冷酷な台詞を吐き捨てる

 

「アノン……フンッ、あの役立たずめ。死んで当然だな」

 

「……ッ!あなた、自分の仲間に対して言う言葉がそれなの!?」

 

ラースの冷酷な素振りに異を唱えるリアスだが、ラースは冷淡に言い放つだけだった

 

「役立たずの間抜けなど仲間じゃない。価値を見出だせない者は死ぬ。それがリュオーガ族の掟だ」

 

「……酷いですわね」

 

「あんた、腐ってるわ……!」

 

「今のは流石に腹が立ちましたよ」

 

朱乃、祐希那、渉もラースの言動に嫌悪感を表す

 

しかし、ラースは当然意にも介さなかった

 

「アノンが死んだのは奴自身が弱かったからだ。弱い奴は死ぬ。ただそれだけの事さ。それに―――リュオーガ族の真価に辿り着けたのは僕とジュウゾウ、ニトロの3人だけ。僕達に比べれば後の2人など単なるお飾りに過ぎないんだよ」

 

 




ポケモン新作にハマりつつ、更新も頑張っていきます。

最近仕事疲れで痩せました……

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