ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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初の敗北

新は今、新校舎の廊下を走っている

 

 

 

敵本陣に侵入した事で『プロモーション』の発動条件は揃ったが、まだ使わない

 

 

 

全てはライザーを倒す為に取っておく

 

 

 

「一誠、リアス、アーシア。今行くから待ってろよ!」

 

 

 

屋上へ続く階段を上っていき、少し開いた扉を蹴りで開け放つ

 

 

 

新の目の前にいたのは、余裕の顔を浮かべるライザー

 

 

 

身体中が血だらけで、目が虚ろになった一誠

 

 

 

その一誠を、涙を流しながら抱き止める『王』リアス・グレモリー

 

 

 

結界の中に閉じ込められたアーシア

 

 

 

一目で状況は最悪だと判断出来た

 

 

 

「ほう……もう一人の『兵士(ポーン)』か。俺の『女王(クイーン)』を倒したくらいでいい気に――――――」

 

 

 

ザシュッ!

 

 

 

新の爪がライザーを縦に切り裂いた

 

 

 

しかし、ライザーは不死鳥フェニックスの力を持っている

 

 

 

すぐに切り裂かれた部分から炎が広がり、ライザーは元の状態に復活した

 

 

 

「お前も頭が悪い奴だな。俺は不死鳥フェニックス。灰の中から甦るフェニックスは、何度でも肉体を再生出来る。何度俺を殺そうが俺は死な――――――」

 

 

 

ザシュッ!

 

 

 

新はライザーを横に切り裂く

 

 

 

また元の状態に戻るライザー

 

 

 

首をコキコキ鳴らしながら嘆息する

 

 

 

「だから何度も言ってるだろ?俺は――――――」

 

 

ドシュッ!

 

 

 

今度はライザーの顔面を貫くが、やっぱり再生してしまう

 

 

 

「少しは人の話を聞け!お前が何度俺を殺しても、俺は何度でも復活するんだ!最初からお前らに勝ち目なんて物は無いんだよ!」

 

 

 

「関係ねぇよ。何度でも復活するなら、何度でもブッ殺せば良い!『プロモーション』!『女王(クイーン)』!」

 

 

 

新の体に力がみなぎる

 

 

 

ドクンッ!

 

 

 

右腕が疼く……ユーベルーナに対抗していた時と同じ様な力の波動を感じる新

 

 

 

次第に右腕が形状を変えていく

 

 

 

右腕と右肩に爪の様な刃物が隆起し、新は初めて見る力に驚いてしまう

 

 

 

「な、何だこの腕……?初めて見た……」

 

 

 

「これが『闇皇(やみおう)の鎧』の力か!?その腕から伝わる禍々しい気迫と魔力……今の貴様の腕は、ただの化け物の腕だ!」

 

 

 

「化け物?そいつぁ結構!化け物にでもならなきゃ、不死身のテメェを殺せそうにねぇからな!」

 

 

 

新が右腕を振ると、赤い魔力で作られたカマイタチが発生し、ライザーを上下に分断する

 

 

 

二発目のカマイタチを放つ新

 

 

 

ライザーはそれを回避して肉体を再生させる

 

 

 

「す、スゲェ力だ……!腕が痺れる……!だが、この力を使いこなせば……フェニックスをブッ殺せる!」

 

 

 

新の右腕から先端が尖った触手が槍となって伸びる

 

 

 

ライザーは手のひらに炎を集め、新を焼き尽くそうと投げつける

 

 

 

だが―――――炎は槍に掻き消され、ライザーの翼を捕縛する

 

 

 

「おぉぉぉおおおおっ!」

 

 

 

新はライザーを引き寄せ、左爪で右翼を切り裂く

 

 

 

「ぐぅぅっ……!化け物め!このまま焼き尽くしてやる!至近距離から撃つ俺の炎に耐えられた奴はいない!不死鳥フェニックスの炎を受けて――――――燃え尽きろぉぉぉおおおおっ!」

 

 

 

ライザーの体から放出された特大の炎が新を包み込む

 

 

 

「ぐおぉぉぉおおおっ!あっちぃぃぃぃぃいいいっ!」

 

 

 

流石に不死鳥の炎は効いている新

 

 

 

新は右手を伸ばしてライザーの頭部を掴む

 

 

 

「はっ!悪あがきもいい加減にしろよ!そんな事したところで、状況は何も――――――っ!?な、何だ!?魔力が、吸い取られていく……!?」

 

 

 

ライザーの炎の左翼が次第に小さくなっていく

 

 

 

そればかりか……新を焼き尽くそうとしていた炎も一緒に、新の右手に吸い込まれていく

 

 

 

黒い魔力は吸収と反発の象徴

 

 

 

新はソレを使ってライザーの炎を吸収する

 

 

 

「ぐあぁぁぁあああっ!さ、流石に不死鳥の炎はキツいな……!安心しろ、すぐに返してやるぜぇぇぇぇえええっ!」

 

 

 

新は右手をライザーの腹にめり込ませ―――――――内部から爆発させた

 

 

 

跡形もなく散った頭部以外のライザーのパーツ

 

 

 

頭部がゴトッと地面に落ちる

 

 

 

「ぜぇ……ぜぇ……疲れるわ……!腕も元に戻っちまった……もう少しだ……!もう少しで、ライザーを倒せる……!ゲームに勝てる!」

 

 

 

頭部だけのライザーは時間を掛けながらも再生し、新の前に立つ

 

 

 

「な、何なんだお前は!俺の炎を吸収しただけでなく、それを自らの力に転換させやがった!それが闇人の力なのか!?お前はいったい何者なんだ!?」

 

 

 

明らかに狼狽しているライザーに、新は答える

 

 

 

「俺は元人間のバウンティハンター兼悪魔だ。それ以上でも、それ以下でもねぇ!」

 

 

 

新がゆっくりと足を出すと、ライザーは一歩後退する

 

 

 

いくら肉体が不死身でも、心が折れてしまっては敗北

 

 

 

今のライザーは完全に新を恐れていた

 

 

 

「奴の顔が一変した。勝てる、勝てるぞ……!一誠、リアス、アーシア、もう少し待っててくれや。今からこいつに負けを――――――」

 

 

 

『リアス・グレモリーさまの投了(リザイン)を確認。ライザー・フェニックスさまの勝利です』

 

 

 

「――――っ!?」

 

 

 

突如鳴ったアナウンスは新の主、リアス・グレモリーの敗北を知らせる物だった

 

 

 

新は振り向いて、俯いてるリアスを見た

 

 

 

鎧を解除し、ズカズカとリアスに歩み寄る

 

 

 

「なんでだよ?なんで投了(リザイン)なんかしたんだ?」

 

 

 

「………………」

 

 

 

「なんで『(キング)』のお前が諦めてんだ?ライザーを倒すって、自分で言ってたんじゃなかったのかよ?」

 

 

 

「………………」

 

 

 

終始沈黙するリアスに新は我慢出来ず、胸ぐらを掴んで強引に立たせる

 

 

 

「黙ってないで何とか言えや!なに真っ先に降参してんだよ!もう少しで俺はライザーに勝てたんだぞ!」

 

 

 

「もう……良いのよ。私はこれ以上、あなた達に傷付いて欲しくない……」

 

 

 

涙を流すリアス

 

 

 

新は血まみれの一誠を見て確信した

 

 

 

「一誠がボロボロになったから、投了したのか?」

 

 

 

リアスは黙って一誠の方を見る

 

 

 

新はその動きを肯定と受け取った

 

 

 

「……そうかい。お前は、たった1人の仲間がボロボロになったからって理由で降参する様な弱い女なのかよ?小猫や朱乃さん、祐斗がどんな思いでリタイヤしていったか分かってんのか!?そいつらの無念を無駄にしない為にも、勝ちを持って帰る事がせめてもの手向けなんじゃねぇのか!?『(キング)』としての責務なんじゃねぇのか!?」

 

 

 

新の言葉にリアスは何も言い返さない

 

 

 

ただ黙っているだけだった

 

 

 

新は掴んでいる手を離し、フラフラと屋上の扉に歩いていく

 

 

 

扉を開けて校舎の中に入る

 

 

 

「……チクショウが」


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