ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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この回で総司がまさかの……っ


さあ、お前の嘘を数えろ!

「着いたわ。ここがモシキューハイランドね」

 

時刻は午後13時30分

 

リアス達(新を除く)オカルト研究部一行は駒王町(くおうちょう)から15駅離れた町にある遊園地―――モシキューハイランドにやって来た

 

その目的は勿論、竜崎総司の捜索及び捕獲の為である

 

今回は長期戦が予測されるので、シトリー眷属+αも捜索に加わる事に……

 

その+αがまた問題だった……

 

「……アザゼル。1つ聞いておきたいのだけれど」

 

「何だ?」

 

「ソーナ達はまだ分かるとして―――どうしてセラフォルー様まで呼ぶ必要があったのかしら?」

 

そう、リアスの言う通り……ソーナ達シトリー眷属の(かたわ)らにはあの魔王少女―――セラフォルー・レヴィアタンがいる

 

苦々しい顔をするソーナの隣で「モシキューハイランドに魔法少女☆レヴィアたん降臨♪」とポーズを決めているセラフォルー

 

アザゼルはフフンと悪人顔で告げる

 

「魔王少女さまに手伝ってもらえば面倒事も手っ取り早く片付くと思ってな」

 

「下手したら別の意味でこの遊園地その物が片付いちゃいますよ!?」

 

「心配すんな、イッセー。あくまでそれは最後の手段にしとくから」

 

「……その最終手段が下される前に終わらせないと大変な事になるぞ……」

 

一誠はセラフォルーの出番が来ない事を祈りつつ、竜崎総司の捕獲に尽力を注ぐ事を固く決意

 

早速、何組かに分かれて竜崎総司の捜索に取り掛かった

 

しかし、捜査は思った以上に難航

 

至る所を探しても聞き込みをしても有力な手掛かりを掴めず、時間だけが虚しく過ぎていく……

 

「……全然見つからないな」

 

「“木を隠すなら森の中”とはよく言うけど、ここまで探して見つからないのもおかしいよね」

 

1時間程捜索を続けていた一誠、祐斗、渉の3人はベンチに座ってジュースを飲んでいた

 

他の皆も思った様に成果を上げられず、未だ捜索を続けている

 

「人混みの中は絶好の隠れ場所だと思うんだけどな」

 

「ここに来た人達も“そんな人は見てない”って言ってましたよね。後、話を聞く必要があるとすれば……ここのスタッフさんとか、ですかね?僕、ちょっと聞いてきます」

 

ジュースを飲み終えた渉は近くで風船を配っている着ぐるみのマスコットキャラ達に聞き込みを開始

 

ただし、着ぐるみキャラは人前で喋ってはならないのでジェスチャーを駆使していた

 

まずはモシキューハイランドの定番キャラ、黄色いネズミを模した“モシチュー”に話を(うかが)ってみる

 

渉が「この写真の人、知りませんか?」と訊くと、モシチューはポンッと手を叩いて“向こうでそれらしい人を見掛けたよ”とジェスチャーで伝える

 

渉は軽く会釈してから一誠と祐斗の所に戻る

 

「どうやら向こうで見掛けたらしいですよ」

 

「本当か?」

 

「えーっと、案内図で言うとこの辺りですね。アイスクリームの所です」

 

渉が指を差した場所はモシキューハイランドの中でも人気があるアイスクリームの売店

 

モシチューはそこで竜崎総司らしき人物を見たらしい

 

考えるよりまず行動、一誠達はそのアイスクリームの売店に行ってみた

 

歩いて数分、目的のアイスクリーム屋付近に着いた3人は列の中に潜む不審人物を発見

 

分かりやすい変装と言わんばかりの帽子と付けひげメガネを装着した男……

 

「……あれがそうか?」

 

「……だろうね。誰がどう見ても“変装してます”ってオーラを出してるよ」

 

暫く様子見していると、アイスを買って列から出てきた男は近くのベンチに座り、アイスを食べる為に変装グッズを取り外した

 

その男の素顔は―――紛れも無く竜崎総司本人だった……

 

間違いない事を(一応)確認した3人は直ぐに総司の所へ駆け寄り、取り囲む様に位置付く

 

「やっと見つけたぞ、新の親父さん」

 

「ん?…………っ」

 

総司の手が止まり、見つかった事に気付いた彼は急いで変装グッズを身に付ける

 

「ソコォノセイショォネン達、ワッタァシニ何か用デスカ?」

 

「急に外国人みたいな喋り方しても意味ないだろ!?しかも、物凄く似非(えせ)っぽい!」

 

「総司さん、大人しく捕まった方が身の為ですよ」

 

「ソォジィ?ノーNO(ノー)ノ~!ワッタァシはタダノカンコウキャク、アメェリカから来まァしたフランソワーズ・花子・ピピオロイ3世(35歳)、通称ジョナサンでぇす。竜崎ナントカさんではアァリマセェン」

 

「異議ありぃ!国籍性別名前年齢全部に堂々と嘘をつくな!どう考えてもフランソワーズ・花子で通称ジョナサンはおかしいだろ!」

 

「ウォーカー・シーン・ダ・トローン?」

 

「木場、渉、こいつ今すぐブッ飛ばして良いか!?」

 

一誠はもう我慢の限界なのか握り拳を震わせ、流石に祐斗も限界だったのか手元に短剣を創り出していた

 

ヤバい空気を察知した総司は変装グッズを取り外す

 

「わ、分かった。分かったよ。ふざけるのはやめるよ。もうふざけないし逃げない―――と言うのは嘘でした食らえ癇癪玉(かんしゃくだま)ァァァッ!」

 

派手な炸裂音が鳴り響き、煙が一誠達の視界を(さえぎ)

 

一誠達が怯んだ一瞬の隙を突いて総司はその場から猛ダッシュで逃げた

 

「あっ、逃げやがった!待てコラァ!」

 

「部長!総司さんを見つけました!」

 

『良いわ。プールエリアに追い込みましょう。今の季節、そこは使われていないから退路を絶つのよ。見失わない様に追い掛けてちょうだい!』

 

リアスからの指示を受けた3人は急いで総司を追い掛けていった

 

他の皆も連絡を取り合いながら総司をプールエリアに追い詰めるべく逃走経路を(せば)めていく

 

発見から数十分、遂に総司をプールエリアにまで追い込んだ

 

プールエリアに入った瞬間、アザゼルとセラフォルーが2人がかりで結界を張り、プールエリアから脱走出来ない様にする

 

結界に阻まれた総司はあっという間にオカルト研究部とシトリー眷属に囲まれてしまった

 

「ア、アハハ……いやー、私ってモテモテだなー。こんな大勢の女の子達に迫られるなんて」

 

「ふざけていられるのも今の内よ。あなたには色々と聞きたい事があるわ」

 

「な、何かな聞きたい事って?私の趣味?好きなお酒の銘柄?それともスリーサイズ?」

 

「ふざけるのもいい加減にしろよ!だいたい男のスリーサイズなんか知りたくもねぇっ!気色悪いっ!」

 

相変わらずふざけた態度の総司にイライラを(つの)らせる一誠

 

リアスは手っ取り早く核心を突く事にした

 

「あなた、新の正体を知ってるんでしょ?」

 

「―――っ」

 

リアスの言葉に総司の顔から剽軽(ひょうきん)の色が消え、額を手で押さえる

 

「あっちゃ~、やっぱりソコを突いてきましたか……。アザゼルくんがチクったのかな?言っておくけど、人のプライベートはあまり詮索しない方が良い。アザゼルくんみたいに土足で踏み荒らしていると友達無くすよ?」

 

「そうね。でも……嘘で固めているあなたよりはマシだと思うわ」

 

リアスに一蹴された総司は「おっと、こりゃ1本取られたね」と苦笑する

 

リアスは更に問いただす

 

「教えなさい。新はいったい何者で、あの力は何なの?どうしてあなたはソレを隠そうとしてたの?知ってる事を全て話してもらうわ」

 

「でもさ、リアスちゃん。それを知った所でどうするの?」

 

リアスの質問に対して総司は質問で聞き返してきた

 

声のトーンも低く、剽軽とした態度は完全に失せていた

 

「私はね、君達になら“新を任せても良い”って思ってるんだ。良いお友達に巡り会えた。そう思ってるんだよ。だから―――だからこそ、この問題に君達を巻き込みたくないのさ」

 

「それが新の正体を隠す事と関係があると言うの?」

 

「世の中には知らない方が良い事情だってある。それが自分の子供に関する事情なら尚更だ。親と言う生き物はね、子供を守る為なら何処までも汚れる事が出来るんだよ」

 

あくまでも(みずか)ら話すつもりは無いと言った態度を維持し続ける総司

 

そこまでして話したくない事情とは如何なるものなのか……?

 

「アザゼルの言う通り、腕ずくで話してもらうしか無いみたいね」

 

「あ~らら、思い通りにいかないからって無理矢理聞いちゃうの?それも人に嫌われる要素だよ?」

 

「俺達だけじゃなく、新にまで嘘をつく様なアンタに言われたくねぇよ!」

 

怒りを飛ばす一誠に総司は首を横に振る

 

「大人には大人の事情ってものがあるのさ。それに首を突っ込みたがるのは子供の悪い癖だよ。そして言葉だけで分かってくれないのもね……」

 

そう言いながら上着を脱ぎ捨て、首を回したり手首の柔軟体操を始める

 

「出来るだけ君達を傷付けたくなかったんだけど……君達が腕ずくで来るなら、こっちもそれ相応の対処をしないとね」

 

使用されていないプールエリアに緊張の空気が流れる……

 

普段は剽軽で掴み所の無さそうな人物なのだが、この日だけは違っていた

 

仮にも相手は三つ巴の大戦時に闇人(やみびと)の封印に協力した唯一の人間

 

しかも、全盛期は『闇皇(やみおう)の鎧』を奪い、それを使っていた……

 

ゆえにその実力は未知数

 

「……始める前に1つだけ言っておきたい事がある」

 

『……?』

 

「私の肉体(からだ)―――結構引き締まってるでしょ?」

 

「んな事どうでもいいわっ!」

 

思わず突っ込んでしまう一誠に総司が続ける

 

「兵藤くん、リアスちゃん。以前ゼクスくんの前で言った事、覚えてる?」

 

「覚えてるって何を?」

 

「ほら、私は昔、闇人(やみびと)の力に呑まれかけた酷い親だって話さ」

 

恐らく授業参観の時の話だろう

 

確かに総司はあの時、新に『闇皇(やみおう)の鎧』を宿させた事も、その際“闇人(やみびと)の力に呑まれかけた”と自嘲するように話していた

 

「あれね、実は嘘」

 

「また嘘かよ!アンタ嘘ばっかりだな!」

 

「そう、嘘。私の肉体(からだ)は―――とっくの昔に人間をやめちゃったんだ」

 

総司の放った意味深な台詞にリアスは少し考えた後、ハッと気付く

 

「あなた、まさか……」

 

「この姿は新だけじゃなく、君達にも見せたくなかったよ……。でも、仕方無いよね。君達がそうさせちゃったんだから……」

 

不気味な声音と共に総司の体からユラユラとオーラが滲み出てくる

 

血の様に赤く、闇の様に黒いオーラが総司の全身を包み込んでいく……

 

ゆっくりと螺旋を描き、霧散するオーラの中から現れたのは―――紛れも無い1人の闇人(やみびと)だった

 

鬼と蝙蝠が合わさった様な形相、背中からは骨を模した両翼が広がり、両腕には爪の様な刃物が生え揃っている

 

何処かの皇帝とも思える程の出で立ちをしているが、全身の禍々(まがまが)しさがプラスイメージを打ち消していた

 

目の前に竜崎総司だった異形が現れた瞬間、張り巡らされた結界内も夜が明ける前の(ほの)かに暗い風景――――(あかつき)に染まっていく……

 

「私の肉体(からだ)はね、『闇皇(やみおう)の鎧』を宿したお陰で力に(むしば)まれちゃったのさ。そりゃそうだよね。“何の免疫も無い普通の人間”が異形の力を使えば、感染してこんな事になってしまう。でも、運良く自我だけ失わなかったのがせめてもの救いかな」

 

「じゃ、じゃあ……俺達と初めて会った時、既に……?」

 

「正確には―――“ゼクスくん達と一緒に『初代キング』を封印した後から”だよ。」

 

想像だにしていなかった衝撃の事実にざわめきが止まらない……

 

闇人(やみびと)と化した総司はオーラを揺らめかせながら1歩1歩近付いてくる

 

「君達には悪いけど……これ以上先へ踏み込ませる訳にはいかない。これは新の為であり、君達の為でも―――」

 

ズオオオオオオオオッ!

 

喋ってる最中に噴き出る光の柱

 

その正体は―――ゼノヴィアが掲げているデュランダルから放出された聖なるオーラだった

 

ゼノヴィアがデュランダルを降り下ろすと、聖なるオーラが巨大な奔流となって闇人(やみびと)と化した総司を飲み込み、爆発を引き起こす

 

「またかよっ、ゼノヴィア!いつも開始前にデュランダルをかますな!空気読めないにも程があるぞ!」

 

「イッセー、相手が話し合いに応じないと分かった以上、実力行使しかないと思うが?」

 

ゼノヴィアは一誠の忠告を逆に論破する

 

グゥの音も出ない反論だが、確かにこれは空気を読めないにも程があるフライング……

 

しかし、そんなフライングスタートを切ったゼノヴィアのデュランダル攻撃も徒労に終わる

 

モクモクと立ち込める爆煙の中から異形の輪郭が映り―――闇人(やみびと)総司が姿を現した

 

「イケナイ()だね。年上の話は最後まで聞くものだよ」

 

「―――っ。無傷か……。最近、私の開幕デュランダルは無傷で終わってばかりだから流石(さすが)にヘコむな……」

 

皮肉げに言うゼノヴィア

 

総司は全身に付着した土埃を払い落とす

 

「じゃあ次は私の番だ。―――最初から本気で行くよ?」

 

そう口走った刹那、総司の姿がブレてリアス達の視界から消える

 

視認出来ない程のスピードで総司はゼノヴィアの死角に回り込み、右の掌底(しょうてい)を食らわせた

 

鈍く重い音と共にゼノヴィアの体が宙に浮き、飛び上がった総司が強烈な蹴りで彼女を後方へ吹き飛ばす

 

一瞬で空中から地面へ叩き付けられたゼノヴィアは地にめり込み、口から血ヘドを吐く

 

「ゼノヴィアっ!?」

 

「余所見はいけないなぁっ!」

 

全員が度肝を抜かれた中、総司は次の標的をリアスに定めて再び高速移動を開始

 

またも掌底で吹き飛ばそうとするが、禁手化(バランス・ブレイク)した一誠と祐斗、そして光帝(こうてい)に変異した渉の三重防御によって防がれた

 

ただ、予想以上に総司の力が強かったのか……掌底の威力が3人の肉体をジリジリと痛めつける

 

「健気だね、でも言った筈だよ?最初から本気で行くってさぁ!」

 

「―――っ!?部長!離れ―――」

 

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

祐斗がリアスに逃げるよう(うなが)す刹那、総司は全身から莫大なオーラを放出した

 

凶悪なオーラが一誠、祐斗、渉を呑み込み、リアスもろともプールの壁に叩き付けた

 

一気にエース陣3人を退(しりぞ)ける程の破壊力……

 

総司の猛攻は止まる事を知らない

 

朱乃の雷光、ロスヴァイセの魔術フルバースト、シトリー眷属の一斉攻撃を回避及び体術で打ち砕いていく

 

その後、総司は両腕の爪の様な刃物にオーラを集中させ―――ブーメランの如く赤い刃を幾重にも放った

 

縦横無尽に舞う刃物が結界内にいる全員を切り刻み、グレモリーとシトリーの両眷属を蹴散らした総司は肩を回す

 

「確かに君達の強さは破格だ。感心するものがある。けどね……全盛期だった『初代キング』の軍勢に比べたら、まだまだかな」

 

「あの野郎……ッ!なんて強さだ……ッ!本当に50代のオッサンの強さかよ!?」

 

「ソーたぁんっ!もうっ、総司くんっ!」

 

(ソーナ)に危害を加えられた事にプンプンと怒りを見せるセラフォルー

 

直ぐに加勢しようとするが、アザゼルに止められる

 

「落ち着け、セラフォルー!今結界を解けば、奴は確実に逃亡を(はか)るぞ!」

 

「でもでも!このままじゃソーたんが!リアスちゃん達が!」

 

「俺だって助けてやりてぇよ……!あの野郎、どちらか1人でも欠けるようにワザとやってやがる!性質(タチ)の悪いオヤジだな!」

 

総司の作為を見抜いただけにアザゼルは(こら)えるよう歯を食い縛る

 

それでも総司は逃亡の為、自身が(かか)えている“新の正体”を厳守する為に非情の鬼と化す

 

3度(おこな)われる高速移動でグレモリー、シトリーの両眷属を1人ずつ痛めつけていく

 

殴る、蹴る、地面に叩きつける等の凶行をひたすら繰り返す総司

 

セラフォルーどころかアザゼルも我慢の限界を迎えようとしていた……

 

「どうした、アザゼルくん!早く助けに来たまえ!このままだと大事な教え子達が病院送りになってしまうよ!それでも良いのかい!?」

 

「ぐ……ッ!」

 

「まだだ……!まだ終わっちゃいねぇッ!」

 

アザゼルに呼び掛ける総司の背後から轟音を噴かして来たのは―――トリアイナ版『騎士(ナイト)』の一誠だった

 

瞬時に距離を詰めてトリアイナ版『戦車(ルーク)』に昇格しようとするが―――その前に拳を掴まれてしまう

 

総司は一誠の右腕関節に打撃を入れて機能を鈍らせ、更に捻り上げて動きを封じる

 

そこからオーラを溜めたパンチや蹴りの連打を浴びせ、再び絶大な威力を誇る赤い波動を放出した

 

その破壊力ある波動をまともに食らった一誠は吹き飛ばされ、禁手(バランス・ブレイカー)の鎧も粉々に砕けてしまう

 

全身傷だらけで地を転がり滑る一誠

 

総司はアザゼルに警告を入れた

 

「アザゼルくん!これでも君は助けないつもりかい!?だったら強硬手段を取るまでだ!そこを退かないなら、ここでリアスちゃん達を殺すよっ!」

 

「なっ、てめぇっ!」

 

総司の卑劣な要求にアザゼルが怒りを(あらわ)にする

 

今ここで総司を逃がせば次は確実に対策を打ってくる

 

しかし、要求に呑まなければ総司は本気でリアス達を殺すだろう……

 

“八方塞がり”―――まさにこの状況に相応(ふさわ)しい表現だ……

 

「さあ選べっ、アザゼルくん!私を逃がして全員を助けるか!それとも私を逃がさずに全員を殺すか!決めろッ!」

 

苦渋の選択を強いられたアザゼル……

 

“総司の要求を呑まざるを得ない”

 

そう判断し、やむ無く結界を解こうとした……その時―――空から何かが降ってきた

 

降ってきた“何か”の正体に気付いたアザゼルはよしと言った表情で結界を解いた

 

アザゼルの表情を不審に感じた総司は空から降ってきた“何か”に視線を移す

 

それは―――出来る事なら今自分が最も会いたくない人物(むすこ)だった……

 

「遠くの方で嫌な気配がするから飛んで来てみれば……何なんだよ、こいつは」

 

既に鎧を纏った(むすこ)が自分の前に立ちはだかる

 

新に出くわさず逃げたかったのだが、それは叶わず(じま)い……

 

その一点だけ観念したのか、総司は(みずか)魔人態(まじんたい)を解除して元の姿に戻る

 

「―――ッ!?お、親父……っ?親父が……何で……」

 

「……結局……こうなっちゃうんだね……」

 

総司はもはや弁明の気力すら沸かない……

 

新は目の前にいる父親と周りで倒れているリアス達を見て現状を解析

 

“何が遭ってこうなったのか”は分からないが―――1つだけハッキリしている

 

“自分の父親がリアス達を傷付けた”

 

この一点を理解した新に怒りが煮え(たぎ)ってくる

 

「……親父、テメェがやったのか?テメェがリアスを……一誠を……皆を……ッ!」

 

「…………そうだよ、私がやった。しつこく追ってくるからね。我慢出来なかったんだ」

 

子供じみた理由を吐き捨てる総司

 

勿論、それは本当の理由を隠す為の虚偽である

 

しかし、その虚偽(ことば)は新の怒りに拍車を掛けてしまった……

 

「細かい事は取り敢えず後回しにしてやる。まずは……リアス達をこんな風にしやがったテメェをぶちのめすッ!五体満足で帰れると思うなよッ!」

 

怒りのオーラを解き放つ(むすこ)を前に、総司も覚悟を決めて再び魔人態(まじんたい)へ変貌する

 

『新、こんなにも敵意を……殺意を私に向けてくるなんてね……。それだけリアスちゃん達を大事に想っているって事かな……。安心したよ。今は余計な事を考えず、存分に私を殴ってくれ。君がどれだけの強さになったか、父親として確かめさせてもらうよ。願わくば……そのまま私を殺しても構わない。それで君の正体を守れるなら―――』




新だけでなく、総司の隠された秘密が明らかに……っ!

リメイク版なのでまた違った形に修正致しました。

ちなみに闇人総司のイメージはバットファンガイアです

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