呪われた一族の影……
砂を撒き散らす風が目立つとある某国
そこに屋台を構える何処かで見た事あるような面影を持つキノコヘアーのデブとい○りや○介似のたらこ唇ジジイが無意味なパフォーマンスを練習していた
「いぃくぞぉっ!必殺!バク転とでんぐり返しを交互にしながら湯切りを
デジャヴかな、キノコヘアーのデブはバク転とでんぐり返しを交互に行いながら麺を湯切り、空中へ飛んで体を捻りながらチャーシューを適度な厚さにスライス
そこから味付け卵とメンマを乗せて着地し、最後に歌舞伎役者よろしく、伸びたアゴ肉とキノコヘアーを高速でぶん回した
器から飛び散るラーメンの汁を上手く器に戻し、最後にクルッと1回転
「はぁ……はぁ……はぁ……っ。―――決まったな。ドヤッ♪」
「エキセントリックなキレじゃ、流石は師匠!わしも負けてはおれん!ほぉぉぉぉっ!必殺!でんぐり返しするけど遅くて息切れが激しいが、それでも頑張ってリップクリームを塗りたくって自慢の下唇テッカテカにするぞストリィイィィィィィィィィムッ!」 」
たらこ唇ジジイはゆったりとした動きででんぐり返しをしながら指に挟んだリップクリームを唇に塗り、砂地に汚ならしいキスマークを付けていく
終わった後に砂粒だらけの唇を指で弾いて砂を落とし、リップクリームを袖にしまう
「はひぃ……ふへぇ……ほぉぉ……どうじゃっ?」
「流石はおぉれの弟子だっ。見事なたらこ唇、感服するぞっ。これで俺の弟―――村長がいれば我がラーメン真拳とお前のリップクリーム真拳をより広く伝授出来たのに……。死んでしまった弟のたぁめにもっ、この屋台とラーメン真拳、リップクリーム真拳を世界に広めようっ。そしてゆくゆくは世界の大企業に―――」
大いなる(?)野望を無駄に掲げようとした矢先、不穏な空気を察知したデブ村長の兄―――キノコデブ店長
辺りを見回してみると……いつの間にか5人の人影に囲まれていた
5人の内の1人―――誰かの面影を彷彿とさせる緑眼の青年が前に出る
「何だおぉまえらはっ。おぉれのラーメンを食いに来たのか?」
「師匠のラーメンを食いたいなら、わしのリップクリームとセットで買えぃ。今ならたったの30000円だ。安いじゃろぅ?」
悪質な押し売りを
緑眼の青年は鼻で笑い飛ばす
「やはり醜悪だな。この世界に
「あぁん?」
「人間だけじゃない。悪魔も天使も堕天使も―――いや、全ての生物が
「なぁにを言っとんじゃおぉまえはっ」
緑眼の青年が次第に全身からオーラを発生させていく
灼熱を帯びたオーラが
右手をゆっくりと前に突き出し……炎を発生させる
「この世に僕達―――リュオーガ族を崇めない生物など必要無い。醜き生物は
「ま、まてっ。値段が高いなら29999円にまけてやるっ。話し合え―――マンマァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
「リップクリィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!」
ゴオオオオオオォォォォォオオオオオオオオオッ!
命乞いするキノコデブ店長とたらこ唇ジジイは緑眼の青年が発した熱線によって跡形も無く消滅した……
その後、
逃げ惑う人々の悲鳴を
「久しぶりの地上だから、少し遊び回ってから本来の目的に入ろうか。君達の驚く顔が楽しみだよ。待っているが良い、竜崎総司。四大魔王」
―――――――――――――――
「…………?ここは何処……?どうしてこんな場所にいるのかしら……」
気付けばリアスはいつの間にか不可思議な世界にいた
景色から何まで紫色に帯びており、静寂な空気が不気味さを際立たせている
散策しているとリアスの視界に1人の男が映り込む
よく見てみると―――そこにいたのは新だった
「あら、新。どうしたの?」
リアスは声を掛けるが新は無反応、顔を
怪訝に思っていると……突如新の体が震え始め、ドス黒いオーラが滲み出てくる
メキ……メキメキ……ッ
新の体から発せられる不快な音と共に始まる異変
手から腕、足から膝、腰から背中、そして頭部も変化していく……
リアスの目の前に現れたのは変貌した新―――漆黒のドラゴン
サイラオーグとの戦いで見た……あのドラゴンだった
「あ、新……っ」
「ホ ロ ボ ス、ホ ロ ボ シ テ ヤ ル……ッ。ワ ガ ハ ド ウ ヲ ハ バ ム モ ノ ハ、ノ コ ラ ズ ホ ロ ボ シ テ ク レ ヨ ウ ッ!」
ドス黒いオーラが無数の巨腕を解き放ち、リアスを切り刻もうと飛来してくる
漆黒の巨腕が周囲の地を破壊していき、リアスを追い詰める
元々が新である為か、リアスは攻撃を
すると、足が何かにぶつかるような違和感が走る
後ろを振り向いてみると……リアスは絶句した
彼女の視界に映ったのは―――死屍累々に横たわる仲間達の
一誠、アーシア、朱乃、祐斗、小猫、ゼノヴィア、イリナ、ギャスパー、ロスヴァイセ、レイヴェル、渉、祐希那、アザゼル
リアスを除く全員が血まみれの
茫然自失のリアスを漆黒の巨腕が捕らえ、服を引き裂く
恐怖に怯える彼女に漆黒のドラゴンが
――――――――――――――
……と言った場面で急転して目を覚ましたリアス
背中を湿らせる嫌な汗、どうやら先程のは単なる夢だったようだ
しかし、新が漆黒のドラゴンに変貌したのは事実
事実も混ざった嫌な夢を見てしまった……
隣に視線を移すと―――そこにはスヤスヤと寝息を立てて眠っている新の姿があった
そして周りには朱乃やゼノヴィア、小猫、レイナーレ、カラワーナ、ミッテルトが新にすがり付く様に眠っている
因みに堕天使3人組は全裸で、リアスも寝る時は全裸である
イリナとロスヴァイセ、レイヴェルはまだ心の準備が整ってないせいか別の空き部屋を使っているらしい
「……はぁ……嫌な夢を見ちゃったわね……」
リアスは新が漆黒のドラゴンに変貌した事を今でも信じられなかった
それもただのドラゴンではなく……あらゆる生物に対して怒り、憎しみ、恨み、妬みに満ちたオーラを孕んでいた
“新は普通の人間じゃなく、元から異形だった……?”
次第にそんな事まで考えてしまうリアス
とりあえず嫌な汗を流そうと1階の風呂場へ向かう
脱衣場の扉を開けると―――パジャマ代わりのジャージを脱ぎ終えたロスヴァイセが今まさに風呂に入ろうとしていた
「リアスさん?」
「あら、ロスヴァイセじゃない。どうしたの?」
「ええ、実は嫌な夢を見て汗をかいてしまったのでお風呂で洗い流そうと思いまして」
「嫌な夢?」
「はい。信じられない話なんですけど……新さんが突然ドラゴンの様な異形に変わって、私達に襲い掛かってくる夢を……」
なんとロスヴァイセもリアスと同じ様な夢を見たらしく、リアスは思わず「……あなたも?」と返してしまう
その言葉に疑問を感じたロスヴァイセにリアスは
“自分は夢だけじゃなく、現実に新が漆黒のドラゴンに変貌した様を目撃した”事も含めて……
その後、湯船に浸かるも重苦しい空気が場を支配する……
「リアスさんは目の前で見たのですね……」
「……ええ。あの時は新を止めたい一心で飛び出していったけど……。今思えば、新がいったい何者なのか疑念が尽きないの……」
「新さんには話したのですか?」
「……こんな事、言える訳が無いわ。サイラオーグとの試合の事を聞いても“1度倒れて、イッセーに起こされるまでの記憶は無い”って言ってたわ……。自分がドラゴンに変貌した時の記憶は丸っきり無いみたい……」
仮に言ったとしても新がショックを受けるだけ……
自分の正体が化け物じみたドラゴンである事を打ち明けられれば、恐らく新は自暴自棄になってしまうだろう
見かけによらず、新は繊細なハートの持ち主なのだから……
この事はなるべく新には伝えず、尚且つ有力な情報を入手するしかない
分からない事が多過ぎるゆえ、まずは情報を集める事が先決だ
汗を流し終えたリアスとロスヴァイセは湯船から上がり、風呂場を出ようとした
風呂場の扉を開けると……洗面台で顔や頭を洗い流す新がいた
突然の新の登場にビクッと反応するリアスとロスヴァイセ
蛇口から出てくる水を止め、タオルで頭と顔を拭いた新が2人に気付く
「ん?リアス、ロスヴァイセ。どうした、朝風呂か?」
「え、ええ。たまにはと思って。珍しいわね、新がこんなに朝早く起きるなんて」
リアスは何とか平静を
「いや、何か変な夢を見ちまってさ。……俺がリアスや一誠達を殺すって言うおかしな夢を……」
「「―――っ」」
まさかのシンクロ……新までもがリアス、ロスヴァイセと同じ夢を見て目が覚めた……
もはや不吉の前兆としか言えないぐらいの事象にリアスとロスヴァイセは言葉を出せなかった
「―――まあ、所詮夢は夢でしかないけどな。あり得ねぇよ、俺がリアス達を殺すなんて。今の俺がいるのもリアスや一誠達のお陰だ。そんな薄情者になる訳―――どうした、2人とも?顔色悪いぞ」
新はリアスとロスヴァイセの様子がおかしい事に気付き、手を差し伸べようとするが……
彼女達の目に映ったのは―――夢で見た漆黒のドラゴンの幻影
新と重なったドラゴンの幻影が色濃く映り、伸びてきた手を思わず振り払ってしまう
手を振り払われた事に新も一瞬呆然としてしまい、リアスがハッと我に返る
「ごめんなさい……新」
「…………いや、こっちこそ悪かった。多分サイラオーグとの戦いの疲れが残ってんだ。今日明日は休日だから、ゆっくり体を休めようぜ。たまにはリフレッシュも必要だし。さーて、久し振りにカジノや競馬を楽しむか」
“違う、新が悪いんじゃない……”
リアスがそう言う前に新はイソイソと脱衣室から出ていく
玄関を開ける音、エンジンを掛ける音が順番に聞こえ、バイクを走らせる音が徐々に遠ざかっていく……
その時の音はいつもより悲しさを孕んでいる様だった……
―――――――――――――
「……さっきのリアスの目、明らかに俺を怖がっていたな。サイラオーグとの戦いが終わってから感じていた違和感はこれだったのか……。あの時、サイラオーグと戦ってる時に、何が遭ったんだ……?記憶が途切れていた間……俺が何かやらかしたのか……?」
ピリリリリリリッ!ピリリリリリリッ!
「―――っ。……もしもし」
『新ちゃぁぁぁあんっ……。聞いてよぉぉぉぉっ……。総ちゃんがぁ、総ちゃんがいないのぉぉぉぉおおっ!』
「何だ、母さんか。親父がいない?いつもの様に遊びに行ってるんじゃないのか?」
『いつもはそうだけど、違うのぉぉぉぉ……っ。さっきから電話してるのに全然繋がらなくてぇぇぇ……っ』
「電話に出ない?……確かに妙だな、母さんからの電話には出てた筈……。で、いつからいなくなった?」
『ぐすん……っ。新ちゃんが出てた“れぇてぃんぐげぇむ”が終わってから……』
「レーティングゲームの後……サイラオーグとの試合が終わってから、か……」
『お願いぃぃ、新ちゃぁぁぁあんっ!総ちゃんを探してぇぇぇ……っ。このままじゃ総ちゃん不足でママ死んじゃうゥゥゥゥぅっ!』
「あー……分かった分かった。俺が探しておくから、泣くな。いい歳こいてみっともない」
『ふえぇぇぇぇんっ……。お願いぃぃぃぃっ……』
「はいはい、じゃあな。―――ったく、せっかくの休日がパァかよ。何処に行きやがったんだ、あのクソ親父は」
―――――――――――
時刻は午前10時、新が単独で父親―――
今日は休日なので
一誠は新が来ていない事を指摘するが、アザゼルが「まずはこいつを見てほしい」と言い、“ある映像”を映し出す
―――それはサイラオーグとの試合で起きた新の暴走を記録したものだった……
一誠が倒れ、果敢に挑んでいった新もサイラオーグに打ちのめされた直後……フラフラと起き上がり―――漆黒のドラゴンへと変貌
怨恨、怨嗟を撒き散らすかの如く苛烈な攻撃がバトルフィールドを支配し、リアスにも食って掛かろうとしていた……
一誠だけでなく、他の者も映像を見て愕然とする
リアスの必死の働きによって暴走は治まったものの、新が漆黒のドラゴンに変貌したのは事実
この事象から“新はドラゴン系統の
仮にドラゴン系統の
一誠の『
しかし、新はそう言った物を具現せずに漆黒のドラゴンに変貌した……
つまり、
映像が消え、困惑する一誠達にアザゼルが告げる
「新の正体が何なのか知る為にも、捕まえておかなきゃならない奴がいる。―――新の父親だ。奴は新がドラゴンに変貌した時、何かを得心した様な顔付きをしてやがった。明らかに何かを知っている」
「じゃあ……新の親父さんは、新の正体を知ってて俺達に預けたって事すか!?」
「その可能性は高い。理由は分からないが、恐らく俺達を隠れ蓑にしようとしてたんだろうな。だが、サイラオーグとの試合で新の正体が露見、追求されるのを恐れて行方を眩ましたって所だ。とにかく、竜崎総司を捕まえなきゃ話が進まん」
「なら、話は早い。要は新の父親を捕まえれば良いのだろう?」
いの一番に重要事項を切り出してきたのは―――ゼノヴィアだった
先程の映像を見ても、まるで関係ないと言わんばかりの様子だ
「ゼ、ゼノヴィア?何とも思わないの?新くんのあんな姿を見て……」
イリナが恐る恐る訊いてみると、ゼノヴィアは堂々と返した
「確かに最初は驚いたが、例え新の正体が人間でなかろうとドラゴンであろうと―――私の好きな男には違いない。こんな事で私の新に対する気持ちが揺らぐわけ無いだろう」
ゼノヴィアの
沈黙していた朱乃もゼノヴィアに続くように言う
「そうですわね。新さんは新さんですもの。私だって彼を愛していますわ。正体が何であろうと、その気持ちに偽りなんてありませんわ」
朱乃も自分の嘘偽り無い気持ちを吐き出し、リアスが1歩前に出る
「そう、あの子は私の『
リアスの一言にオカルト研究部の全員が頷き合い、まずは竜崎総司の捜索に専念する事を決めた
その時、アザゼルの耳に連絡用の魔方陣が展開される
「俺だ。…………で、場所は?…………そうか、分かった」
連絡用の魔方陣が消えると、アザゼルが見回しながら皆に言う
「喜べ。部下から竜崎総司らしき人物の目撃情報が入った」
「えっ、マジすか!?で、場所は?」
「ここから15駅離れた町にある遊園地―――モシキューハイランドだ」
―――――――――――――
「オッサン、その情報は確かなのか?」
「ああ、本当だよ。ホームレス仲間の何人かがアンタの親父さんを見掛けたって。電車の乗り継ぎ方を考えると……行き先はモシキューハイランドだな」
「……モシキューハイランド。前に母さんが話してたな。親父と何度もデートした場所……。助かったよ。
「毎度ありっ」
「さて、行き先は決まったな。飛ばして行くか」
―――――――――――――
「相変わらず汚い生物ばかりだ。こうして見ていると、今すぐにでも一瞬で滅ぼしてやりたくなるよ」
「おいおい、ラース。まずは俺達を砂ん中に閉じ込めやがったクソッタレどもを見つけるのが先だぜ?
「僕もニトロの意見に賛成だニャ♪弱っちい生き物は後で纏めて殺すのが1番爽快だニャ♪」
「そう、殲滅遊びはそれからの方が良い。逃げ惑う弱者達の叫びは何よりも楽しいからね」
「せやったら、
「……見つけた」
「何や、見つけてたんかい。何処や?」
「……ここから少し先、人が多く集まってる場所。乗り物、食べ物、いっぱいある」
「ふぅん、良い所に逃げてくれたものだね。これから楽しみだよ。竜崎総司、四大魔王と共に滅ぼしてあげよう」
動き出す5人の影……。
次回から急展開になりそうな予感……!
因みに出てきた遊園地名の由来は「富士急ハイランド」です(笑)