ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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新と一誠、奇跡の復活回です!


甦る赤龍帝と闇皇

サイラオーグとのレーティングゲーム最終戦

 

その最中に起きた突然の暴走―――謎の黒竜と化してしまった新にリアスは未だに呆然としていた

 

一誠も倒れ、新も暴走してしまった現状で自分はただ震えている事しか出来ないのか……?

 

分からない事が多過ぎる……

 

目の前にいる黒竜は怨恨(えんこん)めいた視線をサイラオーグに浴びせ、全身からドス黒いオーラを揺らめかせている

 

再び攻撃に移ろうとしたその時―――黒竜の体が膝から崩れ落ちる……ッ

 

足に裂傷が生じて血が噴き出し、口からも血の塊を吐き出す

 

恐らく、先程―――暴走前に受けた攻撃によって出来た傷が開いてきたのだろう

 

治ってもいない状態でこんな事になれば、傷の悪化など必然

 

下手をすれば死んでもおかしくないレベルだ……

 

しかし、黒竜は不気味な笑い声を発しながらドス黒いオーラの質を緩めない

 

“あの状態でまだ暴れるつもりでいる”

 

“このままにしてたら、新は死んでしまう……ッ”

 

そんな考えが(よぎ)った瞬間、リアスは飛び出し、黒竜の前に両手を広げて立ちはだかる

 

自身の前に立つリアスに黒竜は口を開いた

 

「ナ ン ダ、キ サ マ ハ?ワ シ ノ ジ ャ マ ヲ ス ル ノ カ?」

 

「私は……私はあなたの主、リアス・グレモリーよ。そして、あなたは新。私の眷属『兵士(ポーン)』で……私の大事な―――」

 

「シ ラ ヌ ワ。キ サ マ ノ コ ト ナ ド、ミ ジ ン モ キ ョ ウ ミ ガ ワ カ ン。ワ ガ リ ュ ウ ノ イ チ ゾ ク ノ ハ ド ウ ヲ ジ ャ マ ス ル モ ノ ハ、ス ベ テ ホ ロ ボ ス……ッ。ホ ロ ビ ル モ ノ ノ ナ マ エ ナ ド、オ ボ エ ル カ チ モ ナ イ……ッ」

 

黒竜はリアスなど眼中に無いとばかりに冷徹に吐き捨てる

 

黒竜の声、気迫、目付きに畏怖するリアスだが……引き下がりはしない

 

「いいえ、どんな姿になろうと……あなたは私の大事な『兵士(ポーン)』―――新なのよ」

 

(かたく)なに主張を変えないリアスに黒竜はドス黒いオーラを強め、リアスを威嚇する

 

「ワ シ ハ キ サ マ ノ ヨ ウ ナ コ ム ス メ ゴ ト キ ノ ゲ ボ ク ニ ア ラ ズ。ク ダ ラ ヌ ヨ マ イ ゴ ト ヲ マ キ チ ラ ス ナ。ソ ノ ク チ ヲ ト ジ ヌ ト イ ウ ナ ラ―――キ サ マ ヲ ナ ブ ッ タ ノ チ ニ、ソ ノ キ ャ シ ャ ナ ゴ タ イ ヲ カ ミ チ ギ ル ゾ……?」

 

威圧してくる黒竜

 

ドス黒いオーラも更に強まり、危険性も格段に上がる……

 

「イ マ ソ コ ヲ ド ケ バ、キ サ マ ノ ホ ロ ビ ヲ ア ト マ ワ シ ニ シ テ ヤ ル。ド ケ」

 

「……退かない。退く訳が無いでしょう?私は……私の大事な眷属を見捨てたりしない……ッ!」

 

「マ ダ ワ カ ラ ヌ カ ッ、コ ノ ウ ツ ケ ガ ァ ッ!」

 

ゴオォォォオオオッ!

 

黒竜は(いきどお)りを見せ付ける様に吼え、ドス黒いオーラによる衝撃波をリアスに浴びせた

 

その風圧によってリアスの服は引き裂かれ、周囲の地面も削り取られる

 

リアスはその並々ならぬ気迫に震えるものの、決して引き下がろうとはしなかった

 

「ワ ガ ハ キ ヲ ア ビ タ ダ ケ デ フ ル エ ル コ ム ス メ フ ゼ イ ガ、マ ダ ヨ マ イ ゴ ト ヲ ホ ザ ク カ……ッ!ブ ザ マ ナ ス ガ タ ヲ サ ラ シ テ モ ナ オ、イ イ ハ ル ツ モ リ カ ッ!?キ サ マ ノ シ ル ヤ カ ラ ガ、ド コ ニ イ ル ト イ ウ ノ ダ!?」

 

「目の前にいるわ!私の目の前に……っ。……愛する男性(ひと)を見間違える筈が無いもの……っ」

 

「ア イ ダ ト……?タ ワ ケ タ コ ト ヲ。ワ ガ リ ュ ウ ノ ハ ド ウ ニ、ソ ン ナ ク ダ ラ ヌ モ ノ ハ ソ ン ザ イ セ ン。ク チ ヲ ト ザ サ ヌ ナ ラ―――ノ ゾ ミ ド オ リ、キ サ マ カ ラ ホ ロ ボ シ テ ク レ ル ワ ッ!」

 

黒竜がオーラから漆黒の巨腕を生み出し、6つ全てがリアスを取り囲む様に(うごめ)

 

流石にまずいと感じたサイラオーグは飛び出そうとするが、リアスが手を向けて制止させる

 

「リアス、お前1人で何とかするつもりか?無茶だ。今の奴は……竜崎新ではない“何か”なんだぞ」

 

「今はそんな事、考えてる暇は無いわ。それでも……この子は新なのよッ!例えどんな姿になっても!私の……私の愛する男性(ひと)に変わりないッ!主として、彼を愛する者として!今の彼を放っておくなんて出来ないッ!」

 

涙を流して訴えるリアスに黒竜は更なる怒りを見せた

 

「ク ダ ラ ヌ ッ!ク ダ ラ ヌ ワ ッ!コ ノ イ ミ キ ラ ワ レ タ ノ ロ ワ レ シ イ チ ゾ ク 二、ソ ノ ヨ ウ ナ ザ レ ゴ ト、ゲ ン ソ ウ ナ ド イ ラ ヌ ッ!」

 

「何度だって言うわ!私は彼を―――新を愛してるッ!だから……戻ってきなさい!あなたは……私の愛する男性(ひと)はそんな弱いヒトじゃないでしょッ!」

 

「キ、キ・サ・マ ァ ァ ァ ァ ア ア ア ァ ァ ァ ァ……ッ!」

 

怒りに震える黒竜が漆黒の巨腕でリアスを引き裂こうとした刹那、当たる寸前で巨腕が全て消え去り、黒竜の体から徐々にドス黒いオーラが弱まっていく

 

「グ ッ……!ヌ ウ ゥ ゥ ゥ ゥ……ッ!マ、マ ダ カ ン ゼ ン ニ メ ザ メ テ オ ラ ン ノ カ……ッ?ド ウ ヤ ラ、コ レ ハ イ チ ジ テ キ ナ ホ ッ サ ニ ス ギ ヌ ヨ ウ ダ……ッ」

 

黒竜の体が徐々に新本来の姿に戻っていく

 

両翼と尻尾が無くなり、頭部以外の部分が生身の肉体へと変貌

 

倒れ込む新を抱くように支えるリアス

 

血を流しつつ、黒竜の頭部が言う

 

「ダ ガ、イ ズ レ キ サ マ ラ ハ オ モ イ シ ル……ッ。ノ ロ ワ レ タ イ チ ゾ ク ノ モ ト ニ ウ マ レ タ、コ ノ オ ト コ ノ シ ュ ク メ イ ヲ……ッ!ソ シ テ、ホ ロ ビ テ カ ラ オ ノ レ ノ オ ロ カ サ ヲ、コ ウ カ イ ス ル ガ ヨ イ ワ……ッ!」

 

意味深な捨て台詞を残し、黒竜の頭部が元の新へと戻っていった……

 

 

―――――――――――――――

 

 

一誠は今、白い世界―――神器(セイクリッド・ギア)の内部にいた

 

周囲を見渡すと歴代の所有者達の姿があったが……何やら黒いオーラを立ち上らせ、怨恨めいた顔付きとなっていた

 

覇龍(ジャガーノート・ドライブ)……』

 

『……覇龍(ジャガーノート・ドライブ)だ』

 

『あの男を倒すには覇龍(ジャガーノート・ドライブ)しかない』

 

白い世界の上空に映像が映し出される

 

そこにはリアスに抱きかかえられている血塗(ちまみ)れの新、その近くで倒れている一誠自身の姿が……

 

2人とも鎧を破壊され、口から大量の血を吐き出していた

 

本気を出したサイラオーグの一撃を食らい、一誠の意識は神器(セイクリッド・ギア)の内部にいる

 

覇龍(ジャガーノート・ドライブ)

 

覇龍(ジャガーノート・ドライブ)しかないだろう』

 

『そう、それしかない』

 

『あの男はそれを求めている』

 

歴代の所有者達が椅子から立ち上がり、黒いオーラを纏わせながら不気味な笑みを見せていく

 

すると、一誠の体にも黒いオーラが出現し―――全身を覆っていく

 

同時に内側からドス黒い感情が溢れてきた

 

恨み、(つら)み、憎しみが一誠の中で高まっていく……

 

心までも力に呑み込まれそうになったその時―――映像の奥から子供達の泣き声が聞こえてくる

 

『おっぱいドラゴンとおっぱいカイザーが死んじゃったーっ!』

 

『やだよーっ!』

 

『立ってよーっ!』

 

子供達の悲痛な叫び……新までもが倒れたと言う最悪の知らせ……

 

意識が黒いものに支配されそうな時、1人の声が白い世界に響き渡った

 

『泣いちゃダメーッ!』

 

映像が移り変わり、帽子を被った子供が映し出された

 

見覚えのある子供

 

それはヒーローショーでサイン会に参加出来なくて泣いていた男の子―――リレンクスだった

 

『おっぱいドラゴンとおっぱいカイザーが言ってたんだ!男は泣いちゃダメだって!転んでも何度でも立ち上がって女の子を守れるぐらい強くならなくちゃいけないんだよ!』

 

それは新と一誠が泣いているリレンクスに言い聞かせた言葉だった―――

 

その一声を聞いて他の子供達も立ち上がる

 

『おっぱいドラゴンが負けるもんかッ!おっぱい!おっぱい!』

 

『おっぱい!立ってよォ!おっぱいカイザーっ!』

 

『おっぱい!カイザーっ!』

 

『おっぱいドラゴン!』

 

『ちちりゅーてーっ!』

 

『かいざーっ!』

 

新と一誠を呼ぶ必死な声、そこへ聞き覚えのある声も入ってくる

 

子供達のいる観客席で応援団長をしていたイリナだった

 

『そうだよ!皆!2人は―――おっぱいドラゴンとおっぱいカイザーはどんな時でも立ち上がって強敵を倒してきたの!だから、応援しよう!信じよう!おっぱいドラゴンとおっぱいカイザーは皆のヒーローなんだからっ!』

 

涙で顔をクシャクシャにしながら、イリナは必死で子供達に訴える

 

『皆、おっぱいドラゴンとおっぱいカイザー好き?』

 

「「「「「「「「「「大好きーっ!」」」」」」」」」」

 

『私も大好きだよ!誰よりも熱くて、諦めなくて、努力して、大好きなヒト達の為に戦えるヒトだって、私は知ってる!皆も知ってるよね!』

 

「「「「「「「「「「知ってるーっ!」」」」」」」」」」

 

『だから、応援しよう!声を届けるの!おっぱいドラゴンとおっぱいカイザーは!どんな時でも立ち上がって!冥界や天界、いろんな世界の皆の為に戦ってくれるんだからーっ!』

 

『おっぱい!』

 

『おっぱい!おっぱい!』

 

『皆も一緒にぃぃっ!おっぱいッ‼』

 

『おっぱい!おっぱい!おっぱい!』

 

『おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!』

 

子供達の呼び声に一誠は(おの)ずと涙を流していた……

 

その時、また声が聞こえてくる

 

視界に映ったのは金髪の少女―――アーシアだ

 

『……イッセーさん……ッ。たくさんの子供達がイッセーさんを呼んでます……ッ。私も、イッセーさんが大好きです……ッ。だから、負けないでください……ッ』

 

涙を流し、一誠に祈りを捧げるアーシア

 

強い想いがヒシヒシと伝わってくる……

 

『さあ、現赤龍帝の兵藤一誠。暴れよう。「覇龍(ジャガーノート・ドライブ)」を発動しよう』

 

歴代の所有者の1人が黒いオーラを纏いながら言ってくると同時に子供達の呼び声も更に高まっていき、あの男―――サイラオーグの声も聞こえてくる

 

『どうした、兵藤一誠。竜崎新。―――終わりか?これで終わりなのか?そんなものではないだろう?―――立ち上がってみせろ。お前達の想いはそんなに軽いものではない筈だッ!』

 

歴代の所有者達は子供達やサイラオーグの声を聞いても邪悪なオーラを揺るがさない

 

『さあ、あの者を破壊しよう。覇道の力で―――』

 

「うるせーよ。聞こえないのか?俺を、俺達を呼ぶ声が―――。あんなに大勢の子供達の声が」

 

『いや、天龍は覇王となる事が本来の道程。あり得ない。そんな事はあり得ない』

 

「違う―――。俺は……覇王になんてならねぇ。俺は兵藤一誠!ただのスケベで、行くならやらしい王様になってやるッ!」

 

『否、覇王こそが、覇龍(ジャガーノート・ドライブ)こそが、この神器(セイクリッド・ギア)に組み込まれた本来の―――』

 

『―――良いじゃないか』

 

歴代所有者の言葉を遮ったのは白い光に包まれた男性

 

その者が一誠に向かって言う

 

『僕は歴代アルビオンの1人だ』

 

「アルビオンの……歴代の先輩?」

 

『そう、あなたはあの時、アルビオンの宝玉をブーステッド・ギアにはめ込んだ。あの宝玉に僕の残留思念が少しだけ乗っていたみたいなんだ。本来の僕はディバイン・ディバイディングの方にいるだろうけどね』

 

歴代アルビオンが一誠に手を差し伸べる

 

『―――赤龍帝、これも何かの(えん)だ。あなたを助けよう。僕が持つ半減の力で、ブーステッド・ギアに渦巻くものを抑えてみせるよ』

 

「良いのか?俺は赤龍帝で、ヴァーリじゃないのに……」

 

一誠の言葉に歴代アルビオンが笑む

 

『あなたは面白い。歴代最強の赤龍帝お二人が笑いながら消えていったのも頷けるんだ。呪いを吹き飛ばす程の熱意と可笑しさのあるあなたなら、天龍を、いや、二天龍自体を新しい可能性に導けるのかもしれない。―――だからこそ、あなたはヴァーリ・ルシファーと共に新たなドラゴンになるべきだ』

 

歴代アルビオンが手を天高く翳すと、淡い白銀の光が白い空間に広がり、歴代赤龍帝達の黒いオーラを取り払っていく

 

それだけじゃなく憎悪、恨み、怨恨も徐々に減っていった

 

『させるか!憎しみが!悲しみが!恨み(つら)みこそが赤龍帝の神器(セイクリッド・ギア)なのだッ!呪いを内に込め、怨嗟(えんさ)を吐きながら負を撒き散らす事が天龍の―――』

 

恨み言を未だ止めない歴代赤龍帝に一誠は言った

 

「―――おっぱい。俺はこれに救われた。そして、これからもそれを求めていくぜ」

 

歴代の赤龍帝達は最後の抵抗とばかりに覇龍(ジャガーノート・ドライブ)の呪文を唱え始めた

 

『我、目覚めるは覇の(ことわり)を神より奪いし、二天龍なり―――』

 

しかし、一誠はその呪文に応えず、独自に考えた呪文を唱え始めた

 

「我、目覚めるは覇の理を捨て去りし、赤龍帝なり!」

 

『無限を(わら)い、夢幻(むげん)(うれ)う―――』

 

「無限の希望と夢を胸に(かか)え、王道を()く!」

 

『我、赤き龍の覇王と成りて―――』

 

「我、紅き龍の王者と成りて―――」

 

(なんじ)紅蓮(ぐれん)煉獄(れんごく)に沈めよう―――ッ!』

 

「汝らに誓おうッ!真紅(しんく)の光り輝く未来を見せると!」

 

一誠が最後に唱えた一節に歴代の赤龍帝達は晴れたような表情となった

 

『―――未来。未来を見せる……だと』

 

「そうだ!俺が見せてやる!いや、俺と見よう!俺と共に見せてやろうぜ!仲間に!友に!俺を好きといってくれた()に!子供達に!俺達が未来を見せてやるんだよッ!」

 

『未来……。僕達が……未来を……!破壊ではなく、未来を……!』

 

「行こうぜ、先輩達!―――俺は赤龍帝でおっぱいドラゴン!兵藤一誠だぁぁぁぁぁあああああああああああッ!」

 

一誠の体が紅色のオーラに包まれていった……

 

 

―――――――――――――

 

 

「イッセー……その姿は……」

 

目が覚めると、一誠は紅いオーラに包まれていた

 

その様子を見て驚いている様子のリアス

 

一誠も気になって全身を見てみた

 

鎧の色が赤から鮮やかな紅と化し、形状も少し違っていた

 

『おおっと!赤龍帝が紅いオーラに包まれたと思ったら、鎧を変質させて立ち上がったーーーっ!』

 

復活した一誠の傷は消えており、破損した部分も復活

 

黒い感情に飲まれそうになりながらも子供達の声援、アーシアの声、そして何より歴代アルビオンの助けを経て戻ってきたのだ

 

『相棒!』

 

「おおっ、ドライグ。どうした?」

 

『お前の意識が神器(セイクリッド・ギア)の深奥に吹き飛ばされ、俺もそちらに向かおうとしたのだが、歴代の所有者の意識が濃くなって侵入出来なくなっていたのだ。そして、目が覚めたと思ったら、こんな事になっている!内部で何が起きた?所有者が抱いていた呪いの殆どが消失しているのだぞ?』

 

「―――っ。そうか、アルビオンの先輩のお陰だ」

 

『アルビオンの宝玉を奪った時に微かに残っていた残留思念か。あれが神器(セイクリッド・ギア)の深奥で動いた……』

 

「そうみたいだな。よく分からないけど、アルビオンの先輩が俺に協力してくれたんだ」

 

『それで、お前は赤龍帝の力が解放されている状態で「女王(クイーン)」に昇格出来たのか』

 

ドライグの言葉に一誠は内の駒を探ってみた

 

無理だと言われていた真『女王(クイーン)』にいつの間にかなっている

 

驚く一誠にアザゼルの声が届く

 

『赤いオーラ……。いや、赤ではない。もっと鮮やかで気高い色。あれは―――。―――真紅のオーラ。そう紅だ。「紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)」と称される男の髪と同じ色―――。あいつにだけ許された奇跡か……ッ!』

 

一誠の変貌ぶりを見てサイラオーグが言う

 

「―――『真紅の赫龍帝(カーディナル・クリムゾン・プロモーション)』と言ったところか。その色は紅と称された魔王様と全く同じもの。―――リアスの髪の色と同じだ」

 

「部長のイメージカラーと言っても過言では無いっすよ。さて、後は―――」

 

復活を果たした一誠はリアスに抱き寄せられている新に視線を移し、そこから周辺にも視線を向ける

 

神器(セイクリッド・ギア)の深奥でも見た光景に疑念を抱き、現状についてリアスに訊ねようとした

 

「部長、まず言わせてください」

 

「な、何?イッセー」

 

「復活早々、丸見えのおっぱいをありがとうございますッ!」

 

一誠は深々と頭を下げてアホ丸出しな台詞を吐く

 

そう、今のリアスは服が破れ、殆ど全裸に近い格好をしていた

 

勿論、おっぱいも丸見えである……

 

一誠のブレなさにリアスも流石に苦笑する

 

「ところで部長、このフィールドの荒れ具合は……」

 

「え、ええ。あなたが倒れた直後に新がサイラオーグとね……。激しかったわ」

 

リアスは新が謎の黒竜と化した事は伏せ、サイラオーグと激闘があった事実のみを一誠に伝えた

 

未だに意識が目覚めない新に対し、一誠は何とか起こす方法が無いものかと思索する

 

(しばら)くしてから何かを思い付いた

 

「……よしっ!今こそサイラオーグさんがくれた制限解除を活用する時だ!部長、新をもっと強く抱き寄せてください!それもおっぱいに顔を埋める様な感じで!」

 

「え?こ、これで良いの……?」

 

リアスは一誠の言う通り、新の顔を自分のおっぱいに埋める様に強く抱き寄せた

 

一誠は心中で“くっ!自分で言っておきながら、羨ましいぞ新!”と悔しさを表すが、今は堪え忍ぶ

 

そして、サイラオーグの方を向いてこう言った

 

「サイラオーグさん、少しだけ時間を貰いますよ?あなたを倒したいのは俺だけじゃないんでね。―――ヒーローが2人揃わないと盛り上がらないでしょう?」

 

そんな台詞にサイラオーグは不敵な笑みを浮かべた

 

「言ってくれるじゃないか、兵藤一誠。その申し出を受け入れよう。そうじゃなければ、俺自身も納得せん」

 

「ありがとうございます。それじゃあ行きますよ、部長ッ!」

 

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一誠は倍加の力で魔力を増幅させていき、リアスのおっぱいに狙いを定めた

 

「部長のおっぱいの声を―――いや、部長の声を新に届ける!脳と心にまで響き渡れ!―――『乳語翻訳(パイリンガル)』ッ!禁手(バランス・ブレイカー)ブーストバージョンッ!」

 

一誠お得意の乳技―――『乳語翻訳(パイリンガル)』の空間がリアスを包み込んでいった

 

どうやら『乳語翻訳(パイリンガル)』の力でリアスの声を新に直接届けて目覚めさせる魂胆なのだろう

 

能力を解放しながら一誠も新に呼び掛ける

 

「さあ、新!部長の声を聞け!そして起きろ!お前もこんな所で終わる男じゃないだろ⁉いつまでも寝てんじゃねぇぇぇぇぇぇえええええッ!」

 

 

――――――――――――

 

 

“ここは何処なんだ……?”

 

“俺は何故こんな所にいる……?”

 

新の意識は真っ暗な世界に覆われていた

 

何も見えず、何も聞こえない無明無音(むみょうむおん)の暗闇……

 

死んだのか、生きているのかさえ分からない

 

暗闇を彷徨(さまよ)う新

 

“何も見えない……何も見えない……”

 

暗闇によって不安が増していく中、小さな赤い輝きが視界に映り込んだ

 

コ チ ラ ニ コ イ

 

オ マ エ ノ イ バ シ ョ ハ コ コ ダ

 

イ マ イ チ ド、ノ ロ ワ レ タ チ カ ラ ヲ ト キ ハ ナ テ

 

無明無音の暗闇で唯一届いた聞き覚えの無い声

 

「誰なんだ……?誰が俺を呼んでるんだ……?分からない……分からない……。けど、行けば何か分かるのか……?」

 

ソ ウ ダ

 

コ チ ラ ニ ク レ バ、ナ ヤ マ ズ ニ ス ム

 

サ ア、コ チ ラ ニ コ イ

 

何も分からず、ゆっくりと声のする方向に導かれる新

 

近付くにつれて赤い輝きが強くなっていく

 

ウ ケ イ レ ロ

 

オ マ エ ノ シ ュ ク メ イ ヲ

 

ノ ロ イ ニ ミ チ タ シ ュ ク メ イ ヲ……ッ

 

謎の声に(いざな)われ、赤い輝きに吸い込まれそうになった刹那―――今度は聞き覚えのある声が届いてくる

 

『…………新……ッ!新……ッ!』

 

必死に呼び掛けてくる女性の声

 

それは謎の声には無い心地よさを孕んでいた……

 

「……誰だ……?他に俺を呼んでるのは……。この声……何処かで聞いた事がある……」

 

新は聞き覚えのある声がする方向へ視線を変える

 

すると、前方に映像が映し出された

 

紅い髪の女性―――リアスに抱かれている自分自身の姿……

 

それを見て徐々に記憶が鮮明となっていく

 

「……そうだ……。俺はサイラオーグと戦ってたんだ……。けど、サイラオーグに叩きのめされて……意識を失って……」

 

ソ ン ナ モ ノ ニ ミ ミ ヲ カ タ ム ケ ル ナ

 

謎の声が阻害しようとするものの、リアスの声もハッキリと聞こえてきた

 

『新、イッセーが目覚めたのよ?だから、あなたも早く起きて……ッ』

 

「―――ッ。そうか、一誠は起きたのか……。また何か奇跡でも起こしたのか?」

 

ミ ミ ヲ カ タ ム ケ ル ナ ッ!

 

ク ダ ラ ヌ コ エ ニ マ ド ワ サ レ ル ナ ッ!

 

激昂する声を他所に新はリアスの声を聞き続ける

 

『皆、あなたを求めてるのよ?勿論、私も……っ。だって、私はあなたの事が……っ』

 

リアスの声だけ聞こえていたのが、徐々に周りの声もハッキリと聞き取れるようになってくる

 

子供達の呼び声……一誠の呼び声……

 

自分を求めてくれる声が心地良い

 

虚ろだった意識が生気を取り戻し、紅い光が新を包み込む

 

ソ ノ ヒ カ リ ヲ ウ ケ イ レ ル ナ ッ!

 

キ サ マ ハ ノ ロ ワ レ タ シ ュ ク メ イ ニ サ カ ラ ウ ノ カ ッ⁉

 

しつこく言ってくる謎の声に新は「うるせぇ」と吐き捨てる

 

「誰だか知らねぇが、俺は戻らなきゃならねぇんだ。子供達が、一誠が、何より―――リアスが待ってるんだよ。惚れた女をいつまでも待たせるなんざ、男として失格だ」

 

マ タ ア ノ コ ム ス メ カ ッ!

 

イ マ イ マ シ イ ッ!イ マ イ マ シ イ ゾ ッ!

 

ダガ、キ サ マ ハ ノ ガ レ ラ レ ヌ

 

イ ズ レ、ノ ロ ワ レ タ シ ュ ク メ イ ニ

 

オ シ ツ ブ サ レ ル ガ ヨ イ ワ ッ!

 

血の如く赤い輝きが消失していくと同時に、紅い光が新を導くように照らしていく

 

「待っててくれ、リアス。何があったか知らねぇが、今お前の所に戻るぜ。俺はリアス・グレモリーの『兵士(ポーン)』―――竜崎新だッ!」

 

紅い光が強く輝き、暗闇の世界が強く紅く照らされていった……




さあ、次がいよいよ最終局面ですよおおおおおっ!

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