ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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新の隠された秘密が明らかに……っ


獅子王豪誕!変貌する新!

膝をつく血染めのリアス

 

獅子(レグルス)はダメージを負いながらもリアスの前に立ち塞がる

 

『リアス・グレモリーはこのままいけば失血でリタイヤとなるだろう』

 

「……テメェ、対話も出来るのか」

 

『助けたければ、フェニックスの涙を使用するしかない』

 

やろうと思えばやれる筈なのに追撃をしない獅子

 

恐らくフェニックスの涙を使わせる為に“敢えて”トドメを刺さないつもりなのだろう

 

バアル側は既に使用している

 

どうやら新と一誠、サイラオーグの対決を見守る一方で憂いを絶とうとしているようだ

 

「……『余計な事を』と言えば、俺の『(キング)』としての資質に疑問が生まれるな。良いだろう、それは認める。だが、この2人との一戦はやらせてもらうぞ、レグルス」

 

『分かっております。申し訳ございません、主を思ってこその行動でございます』

 

攻撃を再開しないレグルスとサイラオーグ

 

新と一誠は警戒しながらもリアスに近付き、ポケットからフェニックスの涙が入った小瓶を取り出した

 

「……情けないわ。私が……あなた達の枷になるなんて……」

 

リアスは悔しそうにしていた

 

(キング)』として獅子に抵抗出来なかった自分が心底許せないのだろう

 

新はフェニックスの涙をリアスに振り掛け、リアスの怪我が消失していく

 

リアスの感じる悔しさと同様に、新も(いきどお)りを感じざるを得なかった

 

フザケヤガッテ……ッ!

 

ドコマデ オレ ヲ オコラセル キダ コイツラハ……ッ!

 

ドス黒いオーラが滲み始めたその時、獅子(レグルス)が叫ぶ

 

『サイラオーグ様!私を!私を身に纏ってください!あの禁手(バランス・ブレイカー)ならば、あなたは赤龍帝(せきりゅうてい)闇皇(やみおう)を遥かに超越する!勝てる試合をみすみす本気も出さずに―――』

 

そう叫ぶレグルスに対し、サイラオーグは怒号を飛ばした

 

「黙れッ!あれは……あの力は冥界の危機に関しての時のみに使うと決めたものだ!この男達の前であれを使って何になる!?俺はこの体のみでこの男達と戦うのだ!」

 

……どうやらサイラオーグはまだ強くなれるらしい

 

現状でも充分過ぎる程の強さを有するこの男が禁手(バランス・ブレイカー)―――(すなわ)ち“本気”を出したらいったいどうなるのか……?

 

新は余計な強さを与えてしまっては勝利が遠退いてしまうと察し、早急に攻撃に移ろうとするが……一誠に肩を掴まれる

 

「……一誠?」

 

怪訝に睨む新を出し抜き、一誠はサイラオーグに向かって言い放った

 

「―――獅子の力を使ってください」

 

その発言に新どころかリアスも驚いていた

 

“ふざけるなッ!”

 

新がそう言い出すのを遮るかの如く一誠は続ける

 

「新、お前の言いたい事は分かる。皆がせっかく作ってくれた勝利へのチャンスを捨てる事になっちまう。けど……俺は……俺達はそれを使ったサイラオーグさんを超えなければ意味が無い!今日、この日まで(つちか)ってきた意味が無いんだ!」

 

「……ッ」

 

「―――今日、俺は最高の状態のサイラオーグさんを倒して勝利を掴むッ!掴みたいッ!俺達は夢の為に戦ってんだッ!本気の相手を倒さないで何になるんだよッ!?」

 

一誠の心からの叫びに新は何も返せなかった……

 

昔の新なら散々毒づいて一蹴していたに違いない

 

しかし、一誠の叫びに確かな核心を突かれた以上―――拒む理由は無い……

 

サイラオーグは2人の反則的な力を許可してくれたのだ

 

ならば、こちらにもサイラオーグの本気を拒否する権利など無い……

 

自嘲する様な舌打ちをした後、新も腹を(くく)った

 

「……分かったよ、バカ野郎。こうなりゃ、とことん付き合ってやる。あの獅子にも殴り飛ばす理由がたった今出来たからな」

 

「すまない、新。宣言した以上、責任を持って勝つさ!」

 

「よし、じゃあ負けたらお前が隠してる秘蔵のエロ本とDVDを校内にばら蒔いた上で処分してやる」

 

「ちょっ!?そんなッ!リスク高過ぎッ!」

 

「うるせぇッ!それが嫌なら死んでも勝つぞッ!」

 

新に秘蔵のエロ本とDVDを人質に取られた一誠は“絶対負けられないッ!”と気合いを入れ直した……

 

一拍後、サイラオーグが不気味な笑みを見せた

 

「……すまなかった。心の何処かでゲームなのだと、2度めがあるのだと、そんな甘い考えを頭に思い描いていたようだ。なんて愚かな考えだろうか……ッ!」

 

ドンッ!

 

サイラオーグの体に気迫がみなぎっていく

 

「この様な戦いを終生一度あるかないかと想像すら出来なかった自分があまりに腹立たしいッ!レグルスゥゥゥゥッ!」

 

『ハッ!』

 

主の呼び声に応える獅子が全身を金色に輝かせ、光の奔流と化してサイラオーグに向かう

 

「よし、では行こうか。俺は今日この場を死戦と断定するッ!殺しても恨むなよ、兵藤一誠ッ!竜崎新ッ!」

 

サイラオーグが黄金の光を浴びながら高らかに叫んだ

 

「我が獅子よッ!ネメアの王よッ!獅子王と呼ばれた(なんじ)よッ!我が(たけ)りに応じて、(ころも)と化せェェェェッ!」

 

禁手化(バランス・ブレイク)ッ!』

 

禁手化(バランス・ブレイク)ゥゥゥゥゥゥッ!」

 

フィールド全体を震わせる程の衝撃が走り、まばゆい閃光が辺り一面に広がっていく

 

神々(こうごう)しい閃光が止んだ時、前方に現れたのは金色の姿をした獅子の全身鎧(プレート・アーマー)だった

 

頭部の兜には(たてがみ)を思わせる金色の毛がたなびく

 

胸に獅子の顔と思われるレリーフがあり、意志を持っているかの様に目を輝かせた

 

「―――獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)禁手(バランス・ブレイカー)、『獅子王の剛皮(レグルス・レイ・レザー・レックス)』!兵藤一誠、俺に本気を出させてくれた事に関して心から礼を言おう。だからこそ、お前に一撃をくれてやる。―――あの強力な『戦車(ルーク)』で攻めてみろ」

 

そう言いながら1歩1歩近付いてくるサイラオーグ

 

鎧に闘気を纏わせて近付く姿は圧倒的な存在感を出していた

 

『ある意味であれが直接攻撃重視の使い手にとって究極に近い形だからだろう。力の権化である鎧を着込み、それで直接殴る。だから、どうしても果てがあの様な形になる』

 

ドライグがそう言ってくる

 

打撃がメインならば、鎧で身を固めた方が攻守共にバランスが良いのだろう

 

肉薄する距離でサイラオーグが一誠に言う

 

「さあ、1発打ってみろ」

 

「……後悔しないでくださいよ。MAXで打ち込むんで!龍剛の戦車(ウェルシュ・ドラゴニック・ルーク)ゥゥッ!」

 

Change(チェンジ) Solid(ソリッド) Impact(インパクト)!!!!』

 

一誠の鎧が分厚くなり、巨大な拳を振り上げ―――サイラオーグに向かって打ち抜く

 

肘の撃鉄も撃ち鳴らし、インパクトの威力を上げる―――だが、一誠の巨大な拳はサイラオーグの左手に軽々と止められてしまった……

 

その光景に衝撃を受ける一誠

 

「いや、まだだ!ここからだ!」

 

一誠はもう一度撃鉄を撃って拳の威力を上げるが……サイラオーグの掌底(しょうてい)によって無惨に破壊されていく

 

「……これで限界か」

 

サイラオーグがそう呟いた刹那―――

 

ガギャァァァァンッ!

 

サイラオーグの拳が分厚い鎧を砕き、一誠の腹部に突き刺さる

 

肉体を隅々まで破壊するような一撃……

 

一誠は口から大量の血を吐き出し―――倒れた

 

「……ッ!一誠ェェェェッ!」

 

倒れた相方の名を叫び、また腹の中を掻き回される様な感覚が新の怒りを触発させる

 

ゴオオオオォォォォオオオオオオッ!

 

新の全身から膨大なオーラが噴き出し、炎の翼を展開して飛び出す

 

「サイラオーグゥゥゥゥゥゥッ!」

 

「今度はお前か、竜崎新!さあ、闇皇(やみおう)としての本気を見せてみろッ!」

 

新は両手両足に炎を纏わせ、サイラオーグに拳打(ヘル・クラッシュ)蹴り(バースト・エンド)の乱舞を見舞う

 

息も尽かさぬ体術コンボを繰り出すが……その全ての攻撃はサイラオーグの拳によって弾かれていく

 

一撃一撃与える度に鎧が削られ、衝撃が骨を貫く

 

痛みのせいで攻撃が鈍りそうになるが(こら)えつつ、炎の翼を広げてサイラオーグに向ける

 

6枚の翼が刃物の如く鋭利な形と化し、サイラオーグに降り注ぐ

 

サイラオーグは両腕をクロスして炎の翼による刺突を防ぎ、それらを払い除けた

 

「どうした、こんなものか?」

 

淡々と告げてくるサイラオーグ

 

新は歯を喰い縛って次なる攻撃へ移行する

 

足元に翼を広げた生物の紋章―――『闇皇紋章(エンブレム)』を展開し、地面を滑らせてサイラオーグの背後に放つ

 

闇皇紋章(エンブレム)』はサイラオーグを捕らえ、バチバチと追撃の電流を流す

 

勿論、これだけではサイラオーグを倒せないし……終わらせるつもりも無い

 

新は更に上下左右にも『闇皇紋章(エンブレム)』を作り、全方向からサイラオーグを押し潰しに掛かる

 

しかし……

 

「ムンッ!」

 

バリィィィンッ!

 

サイラオーグを捕らえていた紋章は気合いのみで破壊され、上下左右から襲い掛かってくる紋章をサイラオーグは拳で破壊する

 

(ことごと)く破壊され続ける自分の技を目の前に……新は焦りを感じざるを得なかった

 

「……ウオオオオオオォォォォォオオオオオオオオオオオオオオッ!」

 

全身から莫大なオーラを(ほとばし)らせ、爆発的な勢いで飛び出す新

 

両足に全てのオーラを集束させ、巨大な翼型のオーラを形成する

 

更に回転も加えてサイラオーグに突っ込んでいく

 

「面白い、受けて立ってやるぞッ!」

 

サイラオーグは嬉々として受け入れ、闘気を纏わせた右拳を繰り出した

 

巨大なドリルと化した新の蹴りとサイラオーグの拳が正面から激突

 

衝撃が周りの地面を吹き飛ばし、闘気とオーラの渦が暴れ回る

 

拮抗状態―――かと思いきや、新の蹴りの勢いが徐々に死んでいき、遂には血飛沫(ちしぶき)が飛び交う

 

サイラオーグの拳に鎧と自分の足が耐えきれなかった……

 

サイラオーグは一旦手を引き、再度闘気を纏わせた右拳を繰り出し―――新の両足を破壊した

 

不規則な動きで地面を跳ね回る新

 

リアスのいる場所でようやく止まったものの、状態は極めて(かんば)しくない……

 

足はグシャグシャで骨も飛び出しており、全身からも血が噴き出している

 

鎧も無惨に破壊され、今にも目から光が消えそうだった

 

「新……ッ?新……ッ!……いや……イヤァァァァ……ッ!」

 

嗚咽を漏らしながら死に体寸前の新を抱き寄せるリアス

 

サイラオーグは右手の指を開閉させて言う

 

「リアスの為、仲間の為によく戦ったが……ここまでだったか」

 

意識が朦朧とする中、新の中に再び黒い感情が蔓延(はびこ)

 

 

―――――――――――

 

 

オレハ コイツ二 カテナイ ノカ……?

 

ココマデ キタノニ オワッテ シマウ……?

 

イヤダ

 

イヤダ

 

マケタクナイ

 

カチタイ

 

カチタイ

 

コイツヲ タオシタイ……ッ!

 

コイツラ ヲ タオシタイ……ッ!

 

チカラ ガ ホシイ……ッ!

 

コイツラ ヲ タオセル チカラガ……ッ!

 

ホシイ……ッ!ホシイ……ッ!

 

コイツラ ヲ タオス チカラガ……ッ!

 

タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ タオスチカラガ

 

 

コ ロ セ ル チ カ ラ ガ……ッ!

 

 

コロス コロス コイツラ ヲ コロス……ッ!

 

コロシテ コロシテ コロシテ コロシテ

 

コロシ キル……ッ!

 

コロシツクシテヤル……ッ!

 

その瞬間、新の意識はドス黒い“何か”に喰われていった……

 

 

――――――――――――

 

 

カシャッ……カシャッ……

 

「……ッ!あ、新……?」

 

「ほう、あれを受けてもまだ立とうと言うのか。流石だな」

 

驚くリアスに口の端を吊り上げるサイラオーグ

 

その理由は―――ボロボロになっている筈の新がまだ立ち上がってくるからだ……

 

しかし、覚束無(おぼつかな)い足取りの上に血を(したた)らせ、兜の割れた部分から覗かせる目は光を失っている

 

そんな状態であるにもかかわらず立ち上がる新だが……様子がおかしい

 

全身から徐々に黒いオーラが滲み出てきており、新自身を包み込もうとしていた

 

その様子を怪訝に思っていた刹那―――

 

グオオオオォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

天を貫く様な咆哮を上げ、新の全身が黒いオーラに包まれていく

 

僅かな光をも逃さぬ様に包み込まれた新に次なる異変が起こる……

 

グキグキと不快な音を発しながら、腕や足―――否、肉体そのものを変貌させていく

 

伸びた腕と足に鋭利な爪が生え、背中からも両翼がせり上がってくる

 

腰から尻尾が不気味な動きを加えて出現し、首元も前に突き出る

 

頭部の形も流線形を描く様に変化、口元から鋭い牙を覗かせ、血の如く赤い眼孔が見開かれる

 

変貌を遂げた新は―――漆黒のドラゴンとなっていた……

 

口から生暖かい吐息が漏れ、獣に近い唸り声を発する

 

天を(あお)いでいた(こうべ)を降ろし、サイラオーグを睨み付ける

 

『な、な、な、なんとぉぉぉぉぉっ!?大ピンチに陥ったおっぱいカイザーが漆黒のドラゴンに変身したーっ!?もしかして、これは新しい必殺技か何かなのでしょうか!?』

 

驚く実況だが、勿論必殺技などではない

 

それに解説のアザゼルも知る由も無く、我が目を疑っていた

 

リアスも新の身に何が起きたのか全く理解出来ず、ただ呆然としているだけだった

 

『サイラオーグ様、これはいったい……?』

 

「分からん。分からんが……闇皇(やみおう)はここで終わるつもりは無いらしいな」

 

サイラオーグは眼前の黒竜(ドラゴン)に対して構えを取る

 

黒竜は赤い目を妖しく輝かせ、右腕を引くような動作をする

 

打撃でも繰り出すのかと思慮した刹那―――右腕を足元の地面に突き刺した

 

一見意味不明の行動に思った矢先、サイラオーグの足元の地面から震動が伝わってくる

 

「―――ッ!下かッ!」

 

ボゴォッ!

 

気付いた時には既に遅し、地面から漆黒の右腕が伸びてサイラオーグの首を掴む

 

そう、地面に突き刺した右腕が地中を突き進み、地面を突き破って来たのだ

 

伸びた右腕が土を巻き上げて地上に現れ、黒竜は次の行動に移る

 

右腕を急激に縮め、その勢いを利用して飛び掛かり―――サイラオーグの顔面に強烈な膝蹴りを食らわせた

 

サイラオーグの鼻から血が噴き出すも、右腕と足を掴んで引き剥がしに掛かる

 

首から右腕が離れようとした時―――黒竜が大口を開けてサイラオーグの右肩に噛みつく

 

牙を深々と食い込ませ、鎧ごと肉を喰い千切ろうと頻りに頭を振り動かす

 

「ぐ……ッ!何と言う凶暴性……!それに……このビシビシと伝わる敵意は何だ……?まるで、目の前の敵を全て滅ぼさんとするような気迫だ……っ!」

 

「グルルルルル……ッ!グルルルルル……ッ!」

 

唸り声を上げつつ肉を喰い千切ろうとする黒竜

 

サイラオーグは掴んでいた手を離し、黒竜の腹部に拳を打ち込んだ

 

衝撃が背中を突き抜け、黒竜は後方に吹き飛ばされる

 

その際、鎧ごとサイラオーグの肩の肉を喰い千切り、起き上がった直後に口から吐き出す

 

「グガァァァア……ッ!グルルルルルァァァァアアアアアッ!」

 

怒りを見せたのか、黒竜の体にドス黒いオーラがまとわり付く

 

ドス黒いオーラを纏った黒竜は地を蹴って飛び出し、サイラオーグ周辺の宙を高速で飛び回る

 

サイラオーグは構えを崩さず、黒竜から溢れ出ている殺気を読み取った

 

背後から黒竜が鋭い爪を突き出してくるが、サイラオーグは殺気を頼りに攻撃を回避する

 

ところが……またも信じられない現象が―――

 

「……ッ!?」

 

流石のサイラオーグも驚くであろう……

 

―――黒竜の体を覆っているドス黒いオーラが腕の様な形となってサイラオーグに襲い掛かってきたのだから―――

 

不意を突かれたサイラオーグは黒い爪の一撃を受け、後方に吹き飛ぶ

 

何とか足を踏ん張らせて地面を滑り、体勢を立て直した

 

腹に刻み込まれた裂傷から血が(したた)り落ちる

 

『サイラオーグ様!』

 

「心配するな、レグルス。傷は深くない。……それにしても、何だ今のは?攻撃を(かわ)したと思ったら―――ドス黒いオーラだけが全く別の動きをしてきた……っ。まるで、あのオーラに意思でも宿っているかの様に……」

 

漆黒のオーラの危険性を察知するサイラオーグ

 

黒竜は漆黒のオーラを揺らめかせながらサイラオーグを睨み付け、オーラの質を高める

 

すると……全身を薄皮の様に覆っているオーラから6本の巨大な腕が生えてくる

 

オーラで形成された巨腕(きょわん)

 

その姿はまさに異形の阿修羅の如く……

 

黒竜が吼えた瞬間、漆黒の巨腕が波動を撒き散らしながら一斉にサイラオーグへと向かっていく

 

波動による爆撃がサイラオーグの逃走経路を遮断し、6本の巨腕が薙ぎ払おうと猛威を振るってくる

 

サイラオーグは拳と蹴り、体術を駆使して防いでいこうとするが―――巨腕の1つがサイラオーグの後頭部を襲撃

 

不意を突かれたサイラオーグの体がよろめいた刹那、6本の巨腕が群がってサイラオーグをなぶり殺しに掛かる

 

四方八方から殴られ、切り裂かれ、叩き潰され、追い討ちとばかりに波動も食らわされるサイラオーグ

 

公開処刑同然の凄惨な光景だった

 

あまりにも先程の新とは掛け離れ過ぎた攻撃に実況及び解説、果ては観客席までもが静まり返る……

 

リアスもどうして良いのか分からず、ただ体を震わせる

 

そんな状況でもサイラオーグは戦意を消していなかった

 

「しつこい腕だな!」

 

ガシッ!

 

サイラオーグは巨腕の1つを受け止めると―――闘気を纏わせた拳を振り下ろし、漆黒の巨腕を霧散させた

 

襲い掛かってくる残り5つの巨腕も闘気を纏わせた拳打と蹴りで打ち砕く

 

漆黒の巨腕を全て消し去ったサイラオーグはダッシュで駆け抜け、黒竜の腹部に闘気を纏った強烈な拳を打ち込んだ

 

捻り込み、内部も破壊する一撃

 

その衝撃は後方の地面をも抉り、黒竜の口から吐き出された血がサイラオーグに降り掛かる

 

頭から吐血を浴びたサイラオーグが視線を黒竜の頭部に向けると―――黒竜は怒り、憎しみ、恨み、殺意を孕んだかの様に赤い双眸(そうぼう)を輝かせた

 

「コ ロ ス……ッ。コ ロ シ キ ル……ッ。ワ ガ ハ ド ウ ヲ ハ バ ム モ ノ ハ……ダ レ デ ア ロ ウ ト ホ ロ ボ ス……ッ!」

 

新の声とは違う“何者かの声”が黒竜の口から吐き出され、黒竜は再びオーラで漆黒の巨腕を形成

 

6本の巨腕がサイラオーグを薙ぎ払おうと猛威を振るってきた

 

サイラオーグは咄嗟にガードして直撃を(まぬが)れるものの、滑る様に後方へ吹き飛ばされる

 

その隙に黒竜が口を開き、そこへ漆黒のオーラを集束させていく

 

螺旋を描く様に集まるドス黒いオーラ

 

どうやら砲撃めいた物を繰り出すつもりだろう

 

予備動作を見たサイラオーグはその威力を察知したのか、闘気をより一層強く高めた

 

気に入らんとばかりに黒竜は漆黒の巨腕を無数の波動と共に解き放ち、サイラオーグを急襲

 

巨腕と波動の爆撃を打ち返していくサイラオーグに向けて―――黒竜が砲撃を繰り出した

 

ゴバアアアアァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアッ!

 

ドス黒く膨大な質量のオーラが黒竜の口から解放され、前方のサイラオーグを飲み込んだ……ッ!

 

砲撃の余波が辺り一帯を破壊し、凄まじい爆風が巻き起こる

 

黒竜の口から煙が漏れ、目が妖しく輝く

 

爆煙(ばくえん)が晴れると―――先の砲撃を耐えきったサイラオーグの姿が見えた……

 

鎧の所々が破損しており、全身から血を流してはいるが……サイラオーグは無事だった

 

ペッと口から血の塊を出したサイラオーグが深く息を吐く

 

「……なんと凶悪な威力だろうか……っ。飛び道具に抵抗があるとはいえ、何度も貰っては鎧が()たんぞ」

 

『奴が範囲を狭めなかったのが不幸中の(さいわ)いだったようですね』

 

「まあな。……それにしても、あの力はいったい何なのだ?悪魔でも闇人(やみびと)でもない異質な力……。その上、この突き刺さる様な悪意、敵意、殺意、とても先程までの竜崎新(りゅうざきあらた)とは思えん。何か得体の知れない存在が奴の中に巣食っているのか……?」

 

「ホ ロ ビ ロ……ッ。ホ ロ ビ ル ガ イ イ……ッ!コ ノ リ ュ ウ ノ ハ ド ウ ヲ ハ バ ム モ ノ ハ、ア ト カ タ モ ナ ク ホ ロ ビ ロ……ッ!ソ レ ガ リ ュ ウ ノ イ チ ゾ ク ニ ハ ム カ イ シ、オ ロ カ モ ノ ノ シ ュ ク メ イ ダ……ッ!」

 

 

――――――――アザゼルside

 

 

『竜の一族……?何の事だ?新の奴にいったい何が起こってんだ……?あの姿と力は、悪魔どころか闇人(やみびと)さえも生易しいと思える程の凶悪さを感じやがる……っ。何が遭ったのかは知らんが、こいつは横で汗垂れ流してる親父さんを問い詰めた方が良いかも知れねぇな』

 

 

――――――――総司side

 

 

『なんて事だ……ッ!まさか、まさかこんな時に“あの力”が目覚めてしまうなんて……ッ!これじゃあ、私のした事が全部無駄になってしまったじゃないか……ッ!アザゼル君は既に私が怪しいと感付いている……。いずれゼクス君達にもバレる……ッ!だが、この問題にだけはゼクス君達を、リアスちゃん達を巻き込む訳にはいかない……ッ!もしもの時は、私が止めるしか無い……。せっかく友達を持ってくれたあの子に―――新に修羅の道を歩ませはしない……ッ!』




遂に明かされた新の秘密……ッ!

一誠も倒れ、新も暴走……どうなるのか?

尚、黒竜(暴走新)のイメージは遊戯王のレッドアイズ・ブラックドラゴンです。

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