ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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今回は少し長めです


中盤戦突入!ギャスパーの覚悟!

『第2試合を終えて、バアル側は眷属が3名、グレモリーは1名リタイヤ。グレモリー優勢ですが、まだ分かりません!ゲームは始まったばかりだからです!』

 

「2人とも冷静だね。小猫ちゃんがやられても感情をあまり表に出さなかった」

 

「……悔しいさ。だけど、溜めようかなって思ってよ。こう言うのは後で爆発した方が良いだろう?」

 

「俺も一誠と同じ意見だ。今(わめ)いた所で勝てる訳じゃない。小猫のツケは纏めて払わせてやる」

 

新と一誠の一言を聞いて祐斗は小さく笑った

 

「怖いね。でも、僕もその意見に賛成だ」

 

第3試合のメンバーを決める為、両『(キング)』がダイスを振る

 

今度の合計数字は5

 

作戦タイムに移行しようとした時、サイラオーグが審判(アービター)に告げてきた

 

「こちらは『僧侶(ビショップ)』のコリアナ・アンドレアルフスと『兵士(ポーン)』のミリーバ・アンドレアルフス、この姉妹を出そう」

 

サイラオーグが即座にバトルフィールドに出す選手を宣言してきた

 

その事に観客もどよめき、モニターに相手の『僧侶(ビショップ)』と『兵士(ポーン)』が映し出された

 

ウェーブの掛かったロングの金髪にOLの様なビジネススーツを着込んだグラマーな女性が『僧侶(ビショップ)』―――姉のコリアナ・アンドレアルフス

 

金髪のショートヘアにフリルを施したミニスカドレスを着た美少女が『兵士(ポーン)』―――妹のミリーバ・アンドレアルフス

 

サイラオーグが選抜したアンドレアルフス姉妹に一誠は即座に反応する

 

「おぉっ、美人のお姉さんと可愛い女の子だッ!」

 

『これは出場宣言でしょうか!サイラオーグ選手、その理由は?』

 

実況がそう訊くと、サイラオーグが新と一誠の方に視線を向けた

 

「兵藤一誠と竜崎新のスケベな技に対抗する術を彼女達姉妹が持っているとしたら、どう応えるだろうか?まあ、この場合は合計数字が5だから竜崎新に限定されてしまうが」

 

サイラオーグの言葉に観客がざわめき、アザゼルが食いついてくる

 

『ほお!面白い宣言じゃねぇか!イッセー選手と新選手は女に対して無類の強さを発揮する。その理由は「洋服崩壊(ドレス・ブレイク)」と「乳語翻訳(パイリンガル)」、「暗黒捕食者(ダーク・グリード)」に集約されるのだが……』

 

『特に兵藤一誠選手は面白いですね。聞いた話では、毎回新しい技を(ひらめ)いてくるとか』

 

皇帝(エンペラー)べリアルも興味津々の様子だった

 

『あれは頭がスポンジなので吸収率がとても良いんだ。元がカラカラに乾いたスポンジなせいか、教えた分すぐに吸い取ってな。頭の中にエロ以外余計な知識が入ってなくて空っぽってのがここまで恐ろしいものかと思ったよ』

 

「「「「「アハハハハッ!」」」」」

 

アザゼルの解説に会場内の観客が爆笑した

 

公開処刑同然の羞恥プレイを食らわされた一誠は恥ずかしさのあまり顔を赤くし、新も観客と同じく大爆笑していた……

 

『スポンジドラゴン!』

 

観客の誰かが珍妙なニックネームを叫ぶ

 

「うるさーい!誰っスか!?今スポンジドラゴンって言っただろう!何でもかんでも○○ドラゴンって付けるんじゃなーいッ!」

 

一誠が異を唱えても観客席は爆笑に包まれるだけだった……

 

そこへ新が―――

 

「そうだ!スポンジと言ったらスポンジポブだろ!」

 

「そう言う問題じゃねえぇぇぇぇっ!」

 

『じゃあ間を取ってスポンジポブゴンはどうかな?』

 

「親子揃ってイジるなぁぁぁぁぁっ!」

 

新と総司の冷やかしに一誠が涙目で抗議するが、2人は聞き流す

 

その後、新が椅子から立ち上がって襟元を整える

 

「良いぜ。その挑戦、受けてやるよ」

 

サイラオーグの挑戦を受諾する新にリアスは額に手を当てて困り顔をしていた

 

「……まったく。罠だろうけれど、どうなの?実力的にはあなたの方が圧倒的に上でしょうけれど、恐らく相手は何かを企んでいるわ」

 

「例えそうだとしても、俺は行くぜ。サイラオーグと戦う前の前哨戦だ。それに興味もある。俺に対抗出来る女がどれ程の者なのかってな」

 

「……分かったわ、行ってきなさい。私もあなたの技を破ると言う相手の術が気になるわ。でも、決して気を抜かないでね」

 

「あぁ、行ってくるぜ」

 

新は笑みを見せてから転移魔方陣に向かう

 

新の出陣に子連れの観客席が今まで以上に沸き上がり、新はバトルフィールドに転送されていった

 

到着したのは広大な花畑だった

 

色彩の鮮やかな花が一面に咲き誇る場所

 

前方に相手の『僧侶(ビショップ)』と『兵士(ポーン)』―――例のアンドレアルフス姉妹を確認した

 

『第3試合、開始してください!』

 

試合が始まると同時にミリーバ・アンドレアルフスが『女王(クイーン)』にプロモーションして魔力を底上げする

 

新は両手両足に鎧を展開し、その場を駆け出した

 

それに応じてアンドレアルフス姉妹も走り出し、魔力での攻撃を放ってくる

 

投げ槍の様な氷の魔力が幾重にも撃ち放たれ、新は全て弾き飛ばしていった

 

ミリーバが魔力を纏わせた打撃や蹴りを見舞うが、新はそれも難無く防ぐ

 

隙を見て反撃を繰り出すも、コリアナの魔力攻撃によって阻まれてしまう

 

一旦距離を取る両者、新は首や手をコキコキと鳴らす

 

「成る程、流石は姉妹ってところか。まさに阿吽の呼吸だな」

 

「そっちもやるわね、坊や」

 

「コリアナお姉様。このヒト、強いです。プロモーションしてないのに、『女王(クイーン)』にプロモーションした私を軽くあしらうなんて」

 

淡々と語るコリアナと気を引き締めるミリーバ

 

“そろそろ本気を出すか”と新は『闇皇(やみおう)の鎧』を全身に展開する

 

赤黒いオーラが体を包み込み、闇皇(やみおう)と化した

 

『出ました!おっぱいドラゴンと対になるヒーロー、ダークカイザーッ!会場では子供達が更に興奮の一途!』

 

実況が叫び、バトルフィールドの上空にも映像が現れて子供達の姿が映し出される

 

『ダークカイザーーーーーッ!頑張ってーーーーッ!』

 

子供達の声援に新は兜の中で笑みを浮かべていた

 

やる気も向上したところで籠手から闇皇剣(やみおうけん)を取り出し、早速『暗黒捕食者(ダーク・グリード)』の準備に取り掛かる

 

刀身に黒い魔力を流し、技を発動しようとしたその時―――突如コリアナが自身の服のボタンに手を掛け、脱衣し始めた

 

上着を1枚脱ぎ捨てるコリアナ

 

最初は本気を出す為に上着を脱いだのかと思っていたのだが―――それは違った

 

上着だけでなくスカートも脱いでいく

 

あまりの展開に新は攻撃の手を止めてしまった

 

「……どういうつもりだ?」

 

「ふふっ、見て分からない?脱いでるのよ」

 

「流石はお姉様、見事な脱ぎっぷりです。では私も!」

 

なんと妹のミリーバも腰のリボンを(ほど)き始めた

 

スルスルとリボンを落とし、衣装を脱いでいく

 

『おおっと!これは!バアルチームのコリアナ・アンドレアルフス選手とミリーバ・アンドレアルフス選手が、突然脱ぎ出した!男性のお客さんも無言でガン見している状態です!アザゼル総督、これはいったい!』

 

『…………』

 

アザゼルも他の男性客と同じくガン見状態だった……

 

「新、何をしているの!今の内に攻撃すれば決着は直ぐに―――」

 

イヤホンマイクからリアスの指示が届くが……新は取り出した剣を地面に突き立て、寄り掛かって待機する様な体勢を取った

 

完全に攻撃の意思を捨てている……

 

「ちょっと、新!?どうして攻撃の手を止めるの!?」

 

「悪いが俺には出来ないな。目の前で脱いでいく女を攻撃するなんて、男の尊厳を汚す大罪だ。それに……(みずか)ら脱衣してくれる女を裸にするって選択肢も存在しない。寧ろ―――それを見届けるのが男の義務だッ!」

 

目の前の神掛かった光景に新は力説し、断固として攻撃しない事を宣言する

 

この最高のシチュエーションは男にしか理解出来ない……

 

ここでアザゼルが力説を始めた

 

『これがサイラオーグ眷属の用意したイッセーと新の技封じか!なんて、恐ろしい術だ!目の前で美女美少女が1枚1枚脱いでいく。男にとっちゃ、目の前で1枚1枚服を脱いでいく女ってのは最高の状態だ。ストリップショーと言うジャンルが確立する程、男ってのは服を取り払っていく女性に夢中になっちまう生き物だ。ドレス・ブレイクやダーク・グリードで一気に裸にするなんて事は愚行に等しい!スケベの心理を捉えた的確で正確な攻め手!これ程のものか、バアル眷属!』

 

『会場と放送を見ている男性客は今頃股間を押さえて前屈(まえかが)みになってるだろうね♪』

 

総司の指摘通り、殆どの男性客が反応済みの股間を悟られまいと前屈みになっていたりする……

 

「イッセーさんっ、見ちゃダメですぅ!」

 

「お願いだ、アーシアッ!男として、男としてこの光景を目に焼き付けたいんだぁぁぁぁぁぁっ!」

 

どうやら陣営にいる一誠はアーシアに目を塞がれているようだ

 

“……最低です”

 

「―――ッ?今、小猫のツッコミが空耳で聞こえたような……」

 

そんな中、アンドレアルフス姉妹は下着姿となっていた

 

コリアナはエロス溢れる上下黒の下着

 

ミリーバは可愛さを強調する上下白の下着

 

対照的なエロスは男の性欲を更に加速させる……

 

『ちなみに、このストリップショーですが、お子様も見ているのでそろそろ特殊な加工を施して放送しますのでご了承ください』

 

小さなお子様には安心、大きなお友達は残念賞(笑)

 

新も期待の視線を向ける中、アンドレアルフス姉妹は遂に下着へ手を伸ばした

 

ミリーバはブラジャーのホックに手を掛け、それを外していく

 

一方、コリアナはパンツの方に手を掛けた

 

「姉妹と言えど性癖は違うのか……」

 

マジマジとアンドレアルフス姉妹の脱ぎ方、性癖の違いを吟味している時だった

 

「違うだろぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

突如響き渡り、新の耳をも(つんざ)く叫び

 

それは嘆きと同時に怒りに似た感情も孕んでいた

 

その叫び声の主は―――グレモリーの陣営にいる一誠だった……

 

アーシアに目を塞がれている筈だが、恐らく指の隙間から今の様子を見たのだろう

 

「違う!違うよ、お姉さんッ!ブラジャー外してからパンツでしょぉぉぉぉおおおおおおおッ!」

 

「空気読め、黙ってろカスが」

 

新は八つ当たりするかの如くイヤホンマイクを投げ捨てた

 

突然の出来事に呆気に取られ、手が止まるアンドレアルフス姉妹

 

「悪かったな、ウチの一誠(バカ)が余計な事を言って。あまり気にするな」

 

「そ、そう?じゃあ続けるわね」

 

気を取り直してコリアナは脱ぎかけたパンツを下ろし、ブラジャーも完全に脱ぎ捨てた

 

ミリーバもブラジャーを外して地面に落とし、パンツを素早く脱いでいく

 

最後の1枚も脱ぎ捨てたアンドレアルフス姉妹は文字通り丸裸となった

 

しかし、それでも隠そうと言う仕草を一切見せない

 

堂々とした立ち振舞いに会場中の男性客が沸き上がり、新もパチパチと賞賛の拍手を贈る

 

「お見事。……で、ここからどうするつもりなんだ?」

 

「ふふっ、ここからはオトナの時間よ。―――ミリーバ」

 

「はい、コリアナお姉様」

 

アンドレアルフス姉妹は手を前に出して魔方陣を展開する

 

その瞬間、魔方陣が強い輝きを生み出し―――その場にいる3人を覆い隠す様に黒い結界が形成されていく

 

ドーム状の黒い結界が完全に新、コリアナ、ミリーバの3人を包み込んだ

 

『おおっと!コリアナ選手とミリーバ選手の作り出した結界が自分達もろとも竜崎選手を閉じ込めたぞ!?いったい何が始まると言うのでしょうか!このレーティングゲームの場でまさかの床勝負に発展かーっ!?』

 

 

―――――――――――

 

 

「私達姉妹が形成した特製の結界よ。これで外からの通信と視界を遮断したし、私達姉妹を倒さない限り出られないわ」

 

自信満々にそう言ってくるコリアナに対し、新は不思議そうに結界の中を見渡す

 

「つまり、アンタら2人を倒せば良いだけだろ?だったら簡単だ」

 

「あら、つれない坊やね。こ~んなに美味しそうなものが目の前にあるのに」

 

コリアナは(なまめ)かしい仕草をしながら自身の胸を寄せて上げる

 

ムニュムニュと形を歪める果実(おっぱい)に視線は釘付け

 

更にコリアナは新の方に歩み寄っていく

 

「ねえ、坊や。そんな暑苦しい鎧を脱いで、お姉さん達とイイコトしましょ?」

 

その誘惑の言葉に新は当然―――鎧を解除した……

 

男の本能には(あらが)えない……

 

「で、イイコトってのは何だ?」

 

「それはね……手を貸して」

 

コリアナの甘言に新は右手を伸ばす

 

すると……コリアナが新の右手を掴み、そのまま胸元へ寄せて―――挟んだ

 

おっぱいに埋もれる新の右手……

 

これはまさしく―――疑似パ○○リである

 

「おぉっ」

 

「ふふっ……、どう?坊やの手とお姉さんの身体が1つになった感触は?夢心地でしょ?」

 

「す、凄いです……コリアナお姉様。なんて大胆な攻め……っ」

 

「ミリーバ、あなたもやってみたら?」

 

「は、はい!お姉様に負けないよう頑張りますっ!」

 

姉に促されたミリーバは新の左腕を掴み、袖を捲り上げる

 

素肌を出した左腕に―――(みずか)らの胸を擦り付け始めた……

 

コリアナとは違って小振りなおっぱいでインパクトに欠けるが……プニプニと小振りならではの威力を発揮する

 

これこそがアンドレアルフス姉妹の切り札―――“おっぱいホールド”である

 

健気に頑張るミリーバを見て火が点いたのか、コリアナは新の右手の指を舐め始めた

 

妖艶な舌使いで丁寧に指先を舐め、奥までくわえ込む

 

“本番行為ではない”のにもかかわらず……結界の中でイヤらしい水音が響き渡る

 

「んちゅ……ぢゅるる……っ。くちゅちゅぱぁ……。んぱぁ……っ、坊やの指、美味しいわね。それに(たくま)しいわ」

 

「コリアナお姉様……このヒトの腕、凄いです……っ。擦ってるだけなのに、こちらが変になってしまいそう……」

 

「なるほど、色仕掛けか。一誠や他の男なら鼻血が大量噴出してゲームオーバーだろうな。だが―――」

 

新は素早くコリアナとミリーバのおっぱいホールドから抜け出し、コリアナの背後に回る

 

背後から右手でコリアナのおっぱいを鷲掴み、左手で彼女の恥部をロック

 

「ひゃんっ!……え?な、何……?」

 

「この俺に色仕掛けで挑んだのは大間違いだったな。久々に震えさせてやる」

 

そう言った直後、新の両手が魔力と強い振動を帯び始めた

 

久々に出てきた新の妙技―――『絶頂させる超振動(エクストリーム・シンドローム)

 

振動が始まった瞬間、コリアナの全身に快楽の電流が流れる

 

「ひぃぃっ!な、何これぇ……!?坊やの手っ、き、気持ち良すぎるぅ……っ!ダ、ダメぇ!壊れちゃうッ!お姉さんの胸がっ、アァッ!大事なトコも壊れちゃうぅぅっ!」

 

泣きが入っても新の攻め手は止まらない

 

新はトドメとばかりに右手の指を乳首に埋没させ、左手の指を恥部の入り口に侵入させていき―――両方同時に振動を放った

 

「―――ッ!ひぅぅぅぅぅっ!」

 

エロい叫びと共にコリアナの身体が強く跳ねる

 

ビクンビクンッと跳ねが治まった後、その場にへたり込み、背中から倒れた

 

その後も細かい痙攣を抑えられず、コリアナは(なまめ)かしい息遣いのまま行動不能となる……

 

「お、お姉様が……あんなにも乱れて……」

 

「さて、次は―――そっちの番だ」

 

新は素早くミリーバの背後に回り込み、抱擁する様な形で捕らえた

 

新の両手がミリーバの小振りなおっぱいを包み、ガッチリとロックする

 

「ひっ!?……あ、あの……せめて、せめて優しくシていただけないでしょうか……?」

 

「そいつはちょっと叶えられないな。俺、結構ドSなんでね。そうやって戸惑う女の顔を見ると……ついイジメたくなっちまうのさ」

 

新は両手から超振動を放ち、ミリーバにも容赦無く快楽の電流を流す

 

「んきゅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」

 

短時間で何度も身体を跳ねさせるミリーバ

 

新は倒れる彼女の身体を抱きかかえ、コリアナの元へ歩み寄っていく

 

未だハァハァと息を立てるコリアナの隣にミリーバを下ろし、こう告げた

 

「今回は勝負だからな。悪く思わないでくれ」

 

そう言った後、アンドレアルフス姉妹が行動不能になった為―――結界が崩壊していき、元のバトルフィールドへと戻る

 

新は勝利を表すかの様に腕を上げ、審判(アービター)が倒れているアンドレアルフス姉妹を見て告げた

 

『サイラオーグ・バアル選手の「僧侶(ビショップ)」1名、「兵士(ポーン)」1名、色んな意味でリタイヤです』

 

第3試合は酷い方向で新が勝利を収めた……

 

 

―――――――――――

 

 

「酷い勝負だったよ」

 

「俺は羨ましい限りだ、チクショウッ!」

 

陣地へ帰ってきてから祐斗の苦笑いと一誠の嘆きが新を出迎えた

 

そんなやり取りはさておき、次の合計数字が発表される

 

今度の数字は8

 

「8か。私が出よう」

 

ゼノヴィアが1歩前に出てきた

 

騎士(ナイト)』であるゼノヴィアは駒価値3なので、勿論出場する事が出来る

 

「ええ、そうね。そろそろゼノヴィアに任せようかしら。ゼノヴィアと共に行くのは祐斗か、ロスヴァイセが適任かしら」

 

リアスもゼノヴィアの申し出に応じ、祐斗とロスヴァイセに視線を向ける

 

どちらを出そうか決めようとした時、ギャスパーが恐る恐る挙手した

 

「……ぼ、僕が行きます。え、えっと、そろそろ中盤(ミドルゲーム)ですから……何が起こるか分かりませんし……、ゆ、祐斗先輩とロスヴァイセさんは強いですから、後半に向けて控えていただいた方が良いかなって……」

 

皆がギャスパーの意見に目を丸くしていた

 

あのギャスパーが自主的に意見してくるとは誰も思わなかったのだろう

 

確かにギャスパーの言う通り、強力な祐斗とロスヴァイセは後半の展開に取っておいた方が得策かと思える

 

それにギャスパーの目は決意の色に満ちていた

 

「じゃあ、ギャスパー、ゼノヴィアをサポートしてくれるかしら?あなたの邪眼(じゃがん)やヴァンパイアの能力でゼノヴィアをサポートして欲しいの」

 

リアスにそう言われ、ギャスパーが呟く

 

「……ぼ、僕、男子だし、小猫ちゃんの仇を討たなきゃ!」

 

ギャスパーは全身を震わせながらも良い気迫と気合を放っていた

 

「うん、頼りにしているぞ、ギャスパー」

 

「は、はい、ゼノヴィア先輩!」

 

第4試合の出場メンバーはゼノヴィア&ギャスパーと言う異色のコンビで決定した

 

 

―――――――――――

 

 

2人が転移魔方陣から到着したバトルフィールドは岩だらけの荒れ地だった

 

足場があまり良くないフィールドだ

 

2人の眼前にバアルチームの相手が現れる

 

痩せ型のひょろ長い体格の男性と不気味なデザインの杖を(たずさ)えた美少年

 

ひょろ長い男性が『戦車(ルーク)』で、杖を持った少年が『僧侶(ビショップ)』である

 

『グレモリーチームは伝説の聖剣デュランダルを持つ「騎士(ナイト)」ゼノヴィア選手、一部で人気の「僧侶(ビショップ)」な男の()、ギャスパー選手です!』

 

「「「「うおおおおっ!ギャーくぅぅぅぅんっ!」」」」

 

実況の言うように観客席の一部からギャスパーに応援を送る男性ファンがいた

 

ちなみにゼノヴィアも同性からの支持が多いらしい

 

『対するバアルチームは、なんと!両者共に断絶した御家の末裔と言うから驚きです!「戦車(ルーク)」のラードラ・ブネ選手、「僧侶(ビショップ)」のミスティータ・サブノック選手。それぞれ断絶した元72柱のブネ家とサブノック家の末裔です!アザゼル総督、バアルチームには複数の断絶した家の末裔が所属しておりますが……』

 

『能力さえあれば、どんな身分の者でも引き入れる。それがサイラオーグ・バアルの考えだ。それに断絶した家の末裔が呼応したと言う事でしょうな。断絶した家の末裔は現悪魔政府から保護の対象でありながらも一部の上役に厄介払いと蔑まれているのが実情。他の血と交じってまで生き残る家を無かった事にしたい純血重視の悪魔なんて上に行けばたくさんいますからね』

 

『ハハハハ、全くその通りです』

 

アザゼルの皮肉げなコメントに実況は困り顔となっていた

 

皇帝(エンペラー)べリアルは笑っていたが……

 

「その通り、我が主サイラオーグ様は人間と交じってまで生き永らえた我らの一族を迎え入れてくれた」

 

「サイラオーグ様の夢は僕達の夢」

 

バアル眷属両者の瞳は使命感に燃えており、固い信念の様な物も感じられる

 

『第4試合、開始してください!』

 

審判(アービター)の宣言後、両チームが素早く構えて攻撃を開始させた

 

「ギャスパー、コウモリに変化して!ゼノヴィアはその後に攻撃!」

 

リアスが陣地からそう指示する

 

ギャスパーが無数のコウモリに化けてフィールド中に散らばり、ゼノヴィアが早々に幾重ものデュランダルの波動を相手の『戦車(ルーク)』と『僧侶(ビショップ)』に放った

 

その攻撃を両者が回避し、サブノックが杖から複数の炎の魔力を放つ

 

「させません!」

 

フィールド中に飛び回る無数のコウモリの眼が赤く輝き、炎の魔力を停止させる

 

その隙にゼノヴィアがデュランダルの波動で振り払い、相手の攻撃を打ち消した

 

「ラードラ!サイラオーグ様の指示が届いた!先に剣士だ!僕は準備する!」

 

「了解!」

 

サブノックが後方に下がり、全身に禍々(まがまが)しいオーラを(ほとばし)らせる

 

更にラードラがサブノックを守る様に立ち、衣服を破り捨てた

 

壁役にでもなるのかと思っていた、その矢先―――

 

ボゴッ!ドンッ!

 

ラードラのひょろ長い体が突然盛り上がり、異様な体格へと変貌していく

 

どんどん膨れ上がり、尻尾が生え、翼も背中から出現する

 

口元は牙がむき出しになり、手の爪が鋭利になっていく

 

ギャオオオオオオオオオオオオンッ!

 

咆哮を上げる黒く巨大な怪物―――ドラゴンがゼノヴィアとギャスパーの前に立ち塞がった

 

「……ブネは悪魔でありながら、ドラゴンを(つかさど)る一族……。けれど、変化出来るのは家の血を引く者でも限られた者……。よりによって……っ!」

 

リアスが苦虫を噛み潰した様な表情をしていた

 

以前のグラシャラボラス戦でも見せなかった能力に度肝を抜かれた

 

『ドラゴン変化は情報にも無かった!サイラオーグめ……、その眷属を鍛え上げて覚醒させたか!』

 

『凄いね。人間との混血児は純血と比べて能力差があるのに、その壁を超えた。「戦車(ルーク)」もそうだが、彼にここまで力を引き出させたサイラオーグも見事だね』

 

アザゼルと総司も感嘆のコメントをする

 

巨大なドラゴンとの攻防が始まり、ゼノヴィアは聖剣の波動と共に直接攻撃もドラゴンに放つが、堅牢な防御力に阻まれて決定打を作れない

 

「ギャスパー!あれを撃つ!時間を稼いでくれないか!」

 

ゼノヴィアがギャスパーにサポートを促して後方に下がり、無数のコウモリがドラゴンを包み込む

 

ドラゴンは口から大質量の火炎を吐くが、ギャスパーは上手く散って回避した

 

ゼノヴィアがデュランダルを天高く掲げ、パワーをチャージし始めた時―――サブノックが叫んだ

 

「ここだッ!聖剣よッ!その力を閉じよッ!」

 

サブノックの手にした杖が怪しく光り、不気味な光がゼノヴィアを包み込む

 

体に気味の悪い模様が浮かび上がり―――ゼノヴィアの手元が震え、遂にはデュランダルを下に降ろしてしまった

 

「……これは何だ……。デュランダルが反応しない……!」

 

ゼノヴィアの体に起こった現象に驚く新と一誠

 

すかさず相手の『僧侶(ビショップ)』に視線を向けると、サブノックが(やつ)れた表情で言う

 

「……僕は人間の血も引いていてね。―――神器(セイクリッド・ギア)、『異能の棺(トリック・バニッシュ)』。最近になってようやく使えるようになった呪いの能力だよ……」

 

『「異能の棺(トリック・バニッシュ)」、自分の体力、精神力などを極限まで費やす事で特定の相手の能力を一定時間完全に封じる神器(セイクリッド・ギア)だな。―――バアルの「僧侶(ビショップ)」は自分の力と引き替えにゼノヴィア選手の聖剣を使う力を封じたようだ』

 

アザゼルから説明が入る

 

サブノックの急激な窶れ具合はゼノヴィアの聖剣を使う能力を封じた代償のようだ

 

「……本当なら聖剣を封じた余波で、彼女自身にも聖剣のダメージを与えさせようと思ったんだが……。聖剣使いとしての才能は思った以上に濃かったようだ……」

 

ふらつきながらも苦笑するサブノック

 

ダメージを与えられなかったとは言え、デュランダルを封じられたのは痛恨である

 

何も出来なくなってしまったゼノヴィアにドラゴンが容赦無く襲い掛かる

 

無数のコウモリがゼノヴィアを包み込み、誰もいなくなった地面にドラゴンの踏みつけが炸裂

 

どうやらギャスパーのナイスアシストでゼノヴィアを何処かの岩陰に避難させたようだ

 

「……すまない、ギャスパー。だが、どうやら私は役立たずになりそうだ」

 

「そ、そんな事無いです!ゼノヴィア先輩の方が僕よりもずっと部長のお役に立ちますよ!」

 

ギャスパーはゼノヴィアを励まし、腰の小さなポシェットから小瓶やチョークなどの道具を取り出した

 

「ぼ、僕、この手の呪いを解く方法をいくつか知ってます!」

 

ギャスパーは手元に小さな魔方陣を展開させ、ゼノヴィアの体に当てる

 

魔方陣を通してゼノヴィアにかかった神器(セイクリッド・ギア)の呪いを調べているようだ

 

「逃がさん!何処だ!」

 

ドラゴンが地響きを立てながらゼノヴィアとギャスパーを捜し回る

 

見つかるのは時間の問題だ……

 

「ギャスパー、ゼノヴィアの呪いは解けそう?」

 

「……分かりました。はい、僕流の解呪方法なら手持ちの道具で何とかなりそうです」

 

ギャスパーはそう言ってゼノヴィアを中心にチョークで魔方陣を描いていく

 

見慣れない紋様を描き、最後に小瓶を持った

 

だが、それは一誠の血が入った小瓶で、ギャスパーの力を底上げするアイテム

 

「今描いた魔方陣にこのイッセー先輩の血を馴染ませる事で、呪いは解けると思います。ただ、解呪(かいじゅ)出来るまで少し時間が掛かりそうですけど……」

 

「ま、待て、ギャスパー。その血を使えばお前は―――」

 

困惑するゼノヴィアにギャスパーは満面の笑みを見せた

 

「ゼノヴィア先輩、僕、役目を見つけました」

 

「ギャスパー……?」

 

魔方陣を完成させたギャスパーは岩陰から飛び出していった

 

単身で囮になるつもりだ……しかも、一誠の血を飲まずに……!

 

「ぼ、僕が時間を稼ぎます!呪いが解けたら、そのままデュランダルをチャージしてください!」

 

「無謀よ!ギャスパー!隠れなさい!」

 

リアスが叫ぶが、ギャスパーは決意に満ちた表情で走り出した

 

「ダメですぅっ!ぼ、僕が時間を稼がないとダメなんですぅっ!部長が勝つにはゼノヴィア先輩の力が必要なんですぅっ!」

 

「いいから、早く逃げてッ!」

 

リアスの叫びは届かず、ギャスパーの眼前にドラゴンとサブノックが迫っていた

 

「見つけた、ヴァンパイアめ。あの剣士は隠したか。だが、この周辺にいるのだろう?火炎を撒き散らせば出てくるだろうか」

 

巨大なドラゴンに迫られ、ギャスパーは全身を震わせたが―――逃げる素振りも見せず、手を前に出して魔力を撃つ格好となった

 

「あ、暴れさせるわけにはいきませんっ!」

 

「単独で臨むか。その勇気、敬意を払うべきもの。たとえ震えていようと勇気が無ければドラゴンの前に立つ事すら出来ないものな」

 

ドラゴンが口から巨大な火炎を吐き出した

 

ギャスパーは防御魔方陣でそれを防ごうとするが……

 

「うわああぁぁぁぁぁああがあっ!」

 

防御魔方陣が破られ、火炎に吹き飛ばされていく

 

火炎の一撃で火傷を負いながらも、ギャスパーはよろよろと立ち上がった

 

「……まだ、まだ大丈夫です!」

 

「ギャスパー!無理はよせ!」

 

ゼノヴィアが堪らず叫んだ

 

「剣士の声か?この辺にいるのか?剣士め、何処だ?」

 

ドラゴンがゼノヴィアの声を聞いて、辺りを見渡し始めた

 

「あああああああっ!」

 

ギャスパーが悪魔の翼を展開して飛び出し、ドラゴンの腕に食らいつく

 

「―――ッ!離せ!いつでも倒せるお前と違い、デュランダル使いは直ぐにやらねばならん!あの呪いは有限だからな!」

 

ドラゴンは空いている手でギャスパーを捕まえ、力一杯握り潰す

 

メキメキと嫌な音が辺りに響き渡る……

 

「うわぁっぁぁああああぁぁぁっぁっ!」

 

ギャスパーが激痛に絶叫し、あまりに凄惨な光景にリアスは目を(そむ)けてしまう

 

「……もうやめて!」

 

アーシアも顔を手で覆う

 

ドラゴンは握り潰したギャスパーを地面に投げ捨てた

 

激痛で息も出来ない状態にされても……ギャスパーはドラゴンに食い下がる

 

「……痛い……痛いけど……。まだ……僕は……グレモリー眷属の……男の子だから……。……ゼノヴィア先輩、待っていてください……」

 

ギャスパーの覚悟に、映像のゼノヴィアは声と気配を完全に押し殺すが……その目には涙が込み上げていた

 

「邪魔だ!」

 

ドラゴンに蹴られていくギャスパー

 

それでもまだ這いつくばる……

 

「……グレモリー眷属男子……訓戒……その1……男は女の子を守るべし……ッ!」

 

その言葉は部室で一誠がギャスパーに教えたものだった

 

「……グ、グレモリー眷属男子……訓戒……その2、男はどんな時でも……立ち上がること……ッ!」

 

手元に魔方陣を展開させようとするが、サブノックはフラフラになりながらもギャスパーを杖で横殴りにする

 

「諦めろ、キミでは我々には勝てない」

 

無情の一声を聞いても、ギャスパーは岩につかまり立ち上がろうとしていた

 

「……グレモリー……眷属……男子……訓戒……その3……何が起きても……決して諦めるな……。……ゼノヴィア先輩は……僕が守らないと―――」

 

ズンッ!

 

非情な一撃……ドラゴンの踏みつけが容赦無くギャスパーを潰した

 

足を退けてみると、ギャスパーはボロボロになっていた……

 

とても戦える状態ではない、リタイヤも近いだろう……

 

あまりの光景にリアスは映像からも目を背けるが―――新が肩に手を置く

 

「……リアス、目を背けるな。背けずに見てやってくれ。ギャスパーはお前を勝たせる為に……死ぬ覚悟であの場にいるんだ。その覚悟を見届けるのが『(キング)』の責務だ……」

 

一誠も溢れる気持ちを抑えられずに言った

 

「引きこもりで、誰よりも怖がりなあいつが、今誰よりも一生懸命頑張ってるんです……!見てやってください……!」

 

新と一誠の訴えにリアスは涙を溢れさせようとしたが―――それを我慢して映像に視線を送った

 

「分かったわ。ゴメンなさい、新、イッセー、ギャスパー……」

 

アーシアと朱乃は嗚咽を漏らし、ロスヴァイセも目にうっすらと涙を浮かべる

 

祐斗は唇を噛み、そこから血が滲んでいた

 

「まだ動くか。その勝利への執念、恐れ入る。これ以上の攻撃はあまりに残酷と言える。良いだろう、一気に楽にしてやろう」

 

ドラゴンが口から火炎を吐こうとしたその時……

 

「―――そうはさせない」

 

極大かつ異様なオーラを放ちながらゼノヴィアが岩陰から姿を現した

 

デュランダルから(ほとばし)る聖なるオーラは、映像越しでも寒気がする程の質量……

 

呪いの紋様が体から消えており、ゼノヴィアは既に意識を失っているであろうギャスパーを抱き寄せた

 

「―――よくやったぞ、ギャスパー。男だな。―――すまなかった、私が不甲斐ないばかりにお前にこんな―――」

 

ゼノヴィアは涙を流してギャスパーに謝る

 

呪いが解かれた事を知ったサブノックが杖の先端を向け、ドラゴンも両翼を広げて構えた

 

ゼノヴィアが静かに立ち上がり、ボソリと呟く

 

「……足りなかった」

 

エクス・デュランダルの鞘がスライドしていき、攻撃形態へと姿を変えていく

 

「私には覚悟が足りなかったようだ。だから、あんなものに捕らわれた。仲間の為に、部長の―――主の為に持つべきだった死ぬ覚悟がギャスパーよりも足りなかった。こいつの方が私なんかよりもずっと覚悟を決めてこの場に立っていた!自分があまりにも情けない……ッ!私は自分が許せなくて仕方がないんだ……ッ!」

 

ゼノヴィアの言葉はグレモリー眷属全員に突き刺さった

 

覚悟を決めてきた筈なのに、まだ足りなかったのかもしれない……

 

ギャスパーの奮闘がそれを教えてくれた

 

「なら、どうすれば良い?どうすればこいつの思いに応えられる?」

 

呪詛のように呟きながら涙を拭うゼノヴィア

 

「そうだな。それしか無いだろう。すまない、ギャスパー。―――せめてお前の為にこいつらを完全に吹き飛ばしてやろう!それがお前への応えだと思うからなッ!」

 

エクス・デュランダルから生み出された極大のオーラが天高く立ち上る

 

「そうはさせるかッ!今度はこの命を代償にもう一度あの『騎士(ナイト)』の能力を封じる!」

 

サブノックが杖を構えて神器(セイクリッド・ギア)を発動しようとしたが―――その体が意識ごと停止する

 

不測の事態にドラゴンがギャスパーに視線を向ける

 

ギャスパーはリタイヤの光に包まれながらも、双眸(そうぼう)を赤く輝かせていた……

 

「停止の邪眼(じゃがん)かッ!バカな!」

 

「お前達はギャスパーに負けたんだッ!」

 

ゼノヴィアはデュランダルをドラゴンと停止したサブノック目掛けて解き放ち、大質量の聖なるオーラの波動が相手2人を飲み込んでいった

 

『サイラオーグ・バアル選手の「戦車(ルーク)」1名、「僧侶(ビショップ)」1名、リアス・グレモリー選手の「僧侶(ビショップ)」1名、リタイヤです』

 

第4試合の終わりを告げるアナウンス

 

ここまでに新達は後輩2人を失った……

 

 

――――――――――

 

 

何が「勝ちましょう」だろうか

 

私―――リアス・グレモリーは自分の甘さを痛感した

 

1番覚悟を決めていたのはこの子達だった

 

この子達は、最初から死ぬつもりでここに立っていたんだ

 

仲間の為に……私の為に……

 

そして、勝つ為に……

 

私は……なんて最低な『(キング)』だろうか

 

貧弱で、貧相で、あまりに酷い主

 

―――私も覚悟を決めよう

 

泥にまみれようと、地べたを這いずろうと、このゲームを制する事を―――

 

 

――――――――――

 

 

ダメだ……これ以上、耐えられない……耐えたくない……

 

新はその念に駆られていた……

 

ここまでの激戦で後輩2人を失い、“次にまた誰かを失うんじゃないか”と言う重圧が彼の心を押し潰す

 

“助けたいのに助けられない”と言う無念が、腹立たしさが胃の中を掻き回す

 

新は元々、ルールの無い世界を生きてきた……

 

自分の好きな様に生き、好きな様に戦う

 

バウンティハンターは自堕落的な要素が強い反面、自由な方向性に見舞われていた

 

だが、悪魔の世界に足を踏み入れた事を初めて後悔したかもしれない……

 

レーティングゲームと言う名の戦場には……ルールが、縛りが存在する

 

(ルール)に縛られ、動けないせいで大事な後輩2人を失った……

 

それも目の前で……

 

いつもなら助けられる距離なのに、手を伸ばす事すら出来ない……

 

イヤダ

 

ハナセ

 

オレヲ コノ イマワシイ クサリ カラ

 

カイホウ シロ

 

ナゼダ

 

ナゼ カイホウ サレナイ

 

ナゼ タスケラレナイ

 

アア ニクイ

 

メノマエデ ウバッタ ヤツラガ ニクイ

 

オレヲ トメテイル コノ クサリガ ニクイ

 

コンナ クサリデ トメラレテイル オレ ジシンモ ニクイ

 

コワシタイ クサリヲ コワシタイ

 

ワガママな呪詛が彼の頭の中を駆け巡る……

 

その怒りと憎しみが呼応するかの様に―――新の影が色濃く(いろど)られ、口を開け始めた

 

今以上に誰かを失えば、爆発しそうな程に……


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