『それでは、両「
『第１試合を執り行います。出場させる選手をこれより決めます。両者共にダイスを手に取ってください』
リアスがダイスを手に取り、
台の上で転がり、その動きが止まる
２つのダイスが表した数字は―――
『リアス・グレモリー選手が出した目は―――２！対するサイラオーグ・バアル選手が出した目は１！合計３となり、その数の分だけ眷属を送り出す事が出来ます！さあ、両陣営最初に出す眷属は誰なのか!?』
『作戦タイムは５分。その間に出場選手を選出してください。なお、「
その結界は防音対策として作戦が外に漏れないようにする為のものであり、更に外部に口元を読心術で読まれないよう、各選手の顔には特殊なマークが付くように加工されている
表情からも作戦が詠まれないように配慮され、まさに本場のゲーム仕様
リアスが皆を見渡すように言う
「あちらはこちらが祐斗を出すと既に読んでいるでしょうね」
「ど、どうしてですか？」
一誠が疑問の声を上げると新が説明に入る
「ダイスの合計数字が３である以上、こっちが出せる選手は５人と限定される。『
新の言葉にリアスが続く
「ゼノヴィアはパワータイプの『
「そう言う事。俺が出るってのも有りだがダイスの合計数字が３だから、どの道単独で戦うしかない。俺としても今後の展開の為に体力は残しておきたいし、何よりゼノヴィアは後先考えずに力任せで突っ走る
「おい、それはどういう意味だ新！まるで私が何も考えずに戦っているみたいな言い方じゃないか！」
「実際そうだろ？今までのお前の戦い方を見ても、そうとしか思えん。頭を使って戦った事があるか？」
ゼノヴィアの異を軽く一蹴した新が視線を配らせると……他の皆はゆっくりとゼノヴィアから視線を逸らした
どうやら皆も新と同じ事を考えていたらしい
その事実にゼノヴィアは“ガーンッ！”とショックを受けて涙目になり、遂には拗ねてしまった……
「……酷いぞ、新」
「悪いとは思ってるが、言える事は言わせて貰う」
「読まれていても行かなきゃね。―――行くよ」
祐斗が襟元を直しながら１歩前に出る
「初戦から負けるんじゃねぇぞ？」
一誠の煽りに祐斗は「当然勝つよ」と笑顔で答える
そして制限時間終了間際、祐斗が魔方陣の上に立つ
それと同時に魔方陣が光りだし、祐斗の姿が消えていった
１番大きな映像に広大な緑の平原が映し出され、そこには祐斗と青白い炎を全身から放つ馬に乗った甲冑騎士がいた
『おおっと！第１試合の出場選手がバトルフィールドに登場です！フィールドは見渡す限りの広大な平原！この緑広がる原っぱが第１試合の舞台となります！合計数字３によって両陣営から選ばれたのは―――グレモリー眷属の神速の貴公子！木場祐斗選手です！リアス姫のナイトが登場です！』
「「「「「「「キャァァァァァァァァッ！木場きゅぅぅぅぅぅんっ！」」」」」」」
実況に煽られて観客の女性達が黄色い歓声を上げる
対するバアル眷属の甲冑騎士は馬を歩かせ、兜のマスクを上げて顔を見せた
「私は主君サイラオーグ・バアル様に仕える『
「フールカスは馬を
「馬か、如何にもって感じがするな」
「僕はリアス・グレモリー様の『
フールカスが手元のランスを天に
「……名高き
「こちらこそ、貴殿との一戦を楽しみだと思えます」
お互いの名乗りが終わったところでアザゼルはバアル眷属の馬について説明を始める
「―――『
「私も聞いた事があるよ。あれを乗りこなすのは簡単じゃない。気性が荒く、気に入らない者は主でさえ蹴り殺すと言われてるからね」
総司もフムフムと顎に指を当てて説明に参加する
「私の愛馬―――アルトブラウの脚は神速。木場殿、いざ尋常に勝負願いたい」
『第１試合、開始してください！』
祐斗も気配を感じるような姿勢で聖魔剣を構え、更に距離を取ってから神速で動き出した
両者の姿は既に高速で何かがぶつかっている程度のものしか認識出来ない状態で、フィールドに現れるのは得物同士がぶつかった時に生じる火花と金属音のみ
無数の剣の波動とランスの突撃で平原が抉られ、遂に両者が
「我がアルトブラウの脚を持ってさえも互角が良いところとは……恐るべし、リアス姫のナイト！」
「そちらこそ、馬とのコンビネーションが抜群ですね。馬を斬ろうにもランスが届き、あなたを
そう言った祐斗は体にオーラを纏わせ、周囲の地面から聖魔剣の刃を幾重にも発生させた
だが、フールカスの馬が空中高く飛び出して聖魔剣の刃を回避する
どうやら空中も自在に駆け回れるようだ
間髪入れずに祐斗が次なる聖魔剣を振りかざす
「雷の聖魔剣よッ！」
天が光り、雷がフールカス目掛けて降り注ぐ
しかし、フールカスはランスを上空に投げつけ、避雷針代わりにして雷をやり過ごす
ランスを手放したフールカスは馬の炎の
「貴殿の聖魔剣がどれだけ悪魔にとって必殺の効果を持っていようと―――当たらなければ意味は無いッ！」
飛び出していくと同時にフールカスと馬が幾重にも姿を増やした
複数のフールカスを前に祐斗は剣先を鈍らせていた
顔色も険しいのを察するに……恐らくどれが本物か見極められていないのだろう
複数のフールカスが縦横無尽に高速で動き回り、祐斗に攻撃を加えていく
最初は剣で受け流すものの、四方八方から飛んでくる攻撃に流石の祐斗も次第にダメージを受けていく
祐斗は二振りめの聖魔剣を創り出し、二刀で大きくオーラを弾けさせた
その勢いで周囲の平原が吹き飛ぶが、フールカスは上手く避けて距離を取っていた
幻影を消して再び一騎になるフールカス
「……初手からあまり勢い良く手の内を見せるのは嫌だったんだけどね……。どうやら、出し惜しみしていたら必要以上の体力を失いそうだ。ゼノヴィアの事を言えないな」
自嘲するように息を吐く祐斗
そして聖魔剣を消して聖剣だけを創り出し、堂々と宣言する
「僕はあなたよりも強い。この勝負、いずれは僕があなたの動きを捉えるだろう。けど、その為にはスタミナをかなり消耗する。今後の戦いを考えると
「自信満々のようですな。確かに貴殿の才能は私とアルトブラウをいずれ上回る。だが！ただではやられませんぞ！後続の為、手足の１本でも切り落とし、体力を奪う！」
一方、フールカスも後続の為に少しでも戦力を削ぎ落とす腹積もりだ
我が身を犠牲にしてでも……
「そう、だからこそ、あなたが怖い。覚悟が完了した使い手ほど怖いものはありませんから。僕は―――もう１つの可能性を見せようと思います。―――
聖剣を携え、静かに呟いた刹那―――祐斗は聖なるオーラに包まれ、地面から聖剣の刃が幾重にも出現
まるでドラゴンをモチーフにしたかの様な甲冑騎士達が地面に生えた聖剣を手に取り、祐斗の周囲に集まっていった
甲冑騎士達に囲まれた祐斗は
それを見たフールカスは驚愕の声音を発する
「……ッ！バ、バカな!?
確かに祐斗の
実は祐斗には後天的に得たもう１つの能力がある
得心したかの様にフールカスが口から漏らした
「……ッ！まさか、『
「―――『
そう、祐斗はコカビエル襲来事件の際に元同胞の魂から聖剣使いの因子を譲り受け、聖剣を生み出す
その結果―――『
そこで祐斗は『
聖魔剣より劣る聖剣で一誠と本気の組み手を繰り返し続け―――遂に至った
この新能力は使い手と同じ速度と技量を龍騎士団に付与出来ると言うもの
現状では速度のみだが、まだまだ伸びしろはある
「これに至る為に自前の聖剣のみで
別の映像では実況席のアザゼルが面白そうに顎に手をやっていた
『本来、「
『腐女子の皆さんも鼻血を出すくらい喜びそうだねぇ。２人を題材にしたＢＬ本が高く売れるんじゃないかな？』
「やめてくださいよ！気持ち悪いッ！」
アザゼルと総司の解説に抗議する一誠
そうこうしてる内に祐斗が龍騎士団を従えてフールカスの前に立つ
「フールカス殿！いざ参ります！」
「くっ！まだここで終わる訳にはいかん！」
祐斗が龍騎士団と共にその場を駆け出し、フールカスも複数の幻影を作って飛び出した
祐斗の龍騎士団とフールカスの幻影がぶつかり―――
ギィィィィンッ！
一振りの金属音が鳴り響く
お互いが生み出した龍騎士団と幻影は消失……
一拍後、フールカスの体が光に包まれていく
甲冑が肩口から腹部に掛けて砕けており、傷口から聖剣のダメージをであろう煙を上げていた
「……見事だ」
それだけ言い残すとフールカスは光と共にフィールドから消え、
『サイラオーグ・バアル選手の「
第１試合はグレモリーチームが制した
――――――――――
『初戦を制したのはグレモリーチーム！さあ、次の試合はどうなるのでしょうか！』
祐斗が魔方陣から帰還したところで再び両『
出た目はリアスが６でサイラオーグが４、合計数字は10となった
『おおっと！今度の合計数字は10！両陣営、10までの選手を出せる事になります！勿論、複数での選出もOKな数字です！』
作戦タイムを利用してリアスが第２試合のメンバーを選出する
「手堅くいきましょう。ロスヴァイセ。それとサポートに小猫。２人にお願いするわ」
「分かりました」
「……了解」
選ばれたのは『
２人が魔方陣で転送され、映像に映し出されたフィールドは巨大な柱が林立する薄暗い神殿内らしき場所だった
対するバアル眷属は
「俺はサイラオーグ様の『
「…………」
無言で
因みにバラムは怪力が特色の悪魔で、まさに長所を特化させた『
更に『
現政府は様々な理由で断絶してしまった御家の末裔がいないかどうか捜索しており、人間界に住む上級悪魔には断絶した家の末裔を保護する役目も
新が通信機を介して小猫とロスヴァイセにエールを贈る
「小猫、ロスヴァイセ、油断するなよ」
「はい、任せてください」
「……新先輩、この試合に勝ったらナデナデしてもらえますか？」
「あぁ、良いぜ」
「……全力で勝ちに行きます」
それを聞いて小猫のやる気が最高潮に達した
これは小猫の新技―――『猫又モードレベル２』
仙術によって全身に闘気を纏わせる事で一時的に身体能力を上昇させる
小猫が素早く飛び出し、ガンドマ・バラムの顔面に一撃を加えた
豪快な音が鳴り響くが―――バラムは全く怯まない
「…………ぬんっ！」
バラムが豪快に腕を横殴りに薙ぎ払う
小猫は素早く攻撃を避け、後衛からロスヴァイセの魔法攻撃がバラムに突き刺さる
炎、雷、氷、風など様々な属性の魔法攻撃が全弾命中するが―――目立ったダメージは無し
どうやら防御力もかなりの物だ
「……魔法に対する防御も高い。何だか最近この手の相手に出くわしてばかりですね！」
ズゥゥゥゥッ！
突然ロスヴァイセごと周囲がブレ出し、ロスヴァイセがその場で膝をついた
まるで上から何かに押し潰されているかの如く……
「隙アリだ、お姉さん」
バアル眷属の『
「……重力の能力……っ！」
ロスヴァイセは重くなった体でも足下に魔方陣を展開しようとした
だが、クロセルがそうはさせんと手元に魔方陣を展開させ、氷がロスヴァイセの足を包み込む
「……そう言えば、魔法剣士でしたね！」
「俺はクロセルと魔法使い、人間の血も宿す混血でね！ついでに剣術も得意だ！もう１つ、重力の方は
「彼の
リアスがイヤホンマイクを通してロスヴァイセに告げる
ギャスパーの時間停止程ではないにしろ、相手の動きを止めるには充分なものだ
その横では小猫がバラムの大振りな攻撃を
「……分かってますよ。クロセルの
ロスヴァイセが重力に苦しみながらも震える手元に魔方陣を展開させようとしたが―――
「甘いぜ、お姉さん！鏡よ！」
クロセルも手元の魔方陣から瞬時に鏡を出現させ、ロスヴァイセが放った閃光を防ごうとする
「自分の能力の性質上、弱点を補う力ぐらいは持ち合わせている。鏡を召喚させてもらったよ」
そう口元を笑ませるクロセルだったが……ロスヴァイセの足下にある魔方陣がより強く輝き出す
鏡で反射された閃光はバラムに命中
その瞬間、ロスヴァイセとバラムが光に包まれていく
光が収まると―――ロスヴァイセとバラムの位置が入れ替わっており、バラムはクロセルの重力に捕らわれていた
「上手い！お互いの位置を交換する魔法！鏡に反射させたのはその魔法の発動条件！最初から反射されるのを読んでの転移だ！」
「なるほど、相手の講じた対策を逆に利用した一手か。流石だ、ロスヴァイセ！」
新と祐斗がロスヴァイセの見事な攻撃に賛辞を贈る
「小猫ちゃん！攻撃は通ってますか!?」
「……はい。もう魔法に対する防御力が展開出来ない程、あの大きなヒトのオーラと内部を乱しました」
「了解です！フルバースト、２人とも食らいなさい！」
ロスヴァイセが前方に幾重もの魔方陣を展開し、あらゆる属性魔法のフルバーストをクロセルとバラムに撃ち放った
フィールドを壊さんばかりの攻撃が止み、
それも静まると、そこに横たわっていたのは―――クロセルだけだった
―――“バラムがいない？”―――
そう疑念が生じた刹那……
「……隙があるって……さっきも言ったろ……？倒したと……思っている時が１番隙を生む……」
倒れている瀕死のクロセルの目が怪しく光り、ロスヴァイセと小猫が重力に捕らわれる
そこに現れたのは血だらけで満身創痍のバラム……ッ！
「……ぬぅぅぅぅぅんっ！」
最後の一撃とも言える巨大な拳が小猫に突き刺さった
その光景に新の瞳孔が開かれる……
「小猫ッ！」
リタイヤの光に包まれるクロセル、バラム
そして小猫も……
ロスヴァイセは横たわる小猫を抱きかかえた
「……良かった。ロスヴァイセさんが残っていればグレモリーはまだ戦えます……」
「……ゴメンなさい、小猫ちゃん」
「……謝らないでください、ロスヴァイセさん。嬉しいです……。私、役に立てました……２人も倒せたんですから……。ただ、後で新先輩にナデナデしてもらえないのが……残念です……」
それだけ言い残し、小猫はクロセル、バラムと共に転送の光に包まれ消えていった
新は唇を噛み締め、怒りと悔しさを内に押し殺す
「小猫……よく頑張った。後は任せろ。この試合が終わったら……好きなだけ撫でてやるからな」
『サイラオーグ・バアル選手の「
第２試合を制したものの、グレモリー側にも遂に犠牲が出てしまった……
そしてこの時、怒りと悔しさに震える新は気付いていなかった
後方に映る自身の影が