「スゲーよな、本当に空に島が浮いてんだから」
ゲーム当日、新達は空中都市に続いているゴンドラの中から上空に浮かぶ島を眺めていた
空に浮かぶ島、そこにある都市アグレアス
島を浮かばせている動力は旧魔王の時代に作られた物らしい
今回
「実はな、今回のゲーム会場設定は上の連中がモメたらしくてな」
空を眺めながら言ってくるアザゼルに全員が視線を集中させる
「モメた?会場の……決定にですか?」
一誠の問いにアザゼルは
「現魔王派の上役はグレモリー領か魔王領での開催を望んだ。ところが、ここに血筋を重んじるバアル派がバアル領での開催を訴えてな。なかなかの泥仕合になったそうだ。現魔王は世襲じゃないからな。家柄、血筋重視の上級悪魔にとっちゃ、大王バアル家ってのは魔王以上に名のある重要なファクターなんだよ。元72柱の1位だからな」
「旧魔王に荷担してた悪魔達も過去にそんな事を言って悪魔内部でモメてたんですよね?なんで同じような事をするんだろう……」
一誠がそう訊くとアザゼルは手でジェスチャーを入れながら嘆息する
「あれはあれ、これはこれ、ってな。大人ってのは人間界でも冥界でも難しい生き物なんだよ。体裁、
「チッ、これだから貴族社会ってのは嫌なんだよ」
「……それで結局アガレス領……」
新が毒づき、小猫がボソリと呟く
「ああ、大公アガレスは魔王と大王の間を取り持ったって話だ。中間管理職、魔王の代行、大公アガレス。時代は変われど、毎度苦労する家だぜ」
しかも、今回のレーティングゲームは魔王ルシファーと大王バアルの代理戦争と言っても過言ではない
表向きは“おっぱいドラゴン&ダークカイザー&スイッチ姫VS若手最強サイラオーグ”と一般大衆を注目させる煽り文句を立てており、裏では多くの政治家が絡んでいるらしい
「めんどくさいっスね。俺らは俺らの野望があって臨んでいるのに……」
「お前達はそれで良い。それで充分だ。仮にお前達が負けたとしても政治的にサーゼクスが不利になるなんて事は無いさ。ただ、大王家の連中が少し甘い汁を吸うだけの事。それとサイラオーグの後ろについた奴らも良い思いするかな」
「サイラオーグの後ろに政治家か」
「体1つでここまでのし上がってきたあの男が今更政治家の意見に左右されはしないだろうがな。ただあいつ自身、上を目指す為のパイプ作りとして関係を持っているんだろう」
夢、野望を叶える為には
だが、納得出来ない物もある……
「頭ごなしにしか物事を考えられない貴族、1度捨てた男に今更群がる政治家。俺の1番嫌いなタイプだ」
「だよな。捨てた挙げ句に散々
新は怒りを孕ませて吐き捨て、一誠も顔をしかめた
「複雑だろうが、それで良いんだよ。苦労した分、やっと注目されたと思ってやれば良いじゃないか。どんな理由があろうと名のある者に認められる事は1つの成果だ。後は結果次第だが……。お前達はあいつの事を気にせず全力で行け。自分の目的を果たす為にがむしゃらに行かないと奴には勝てん」
アザゼルの言う通り、これは自分達の夢を繋げる為の試合
相手はサイラオーグ、余計な感情や考えを入れて勝てる相手ではない
「でも、大王派はサイラオーグ・バアルの夢を容認するのでしょうか?彼は能力さえあれば身分を超えて、どんな夢でも叶えられる冥界を望んでいるんですよね?」
「……元1位とか家柄にこだわる大王派が容認すると思うか?あくまで表向きに協力すると言って、裏じゃ蔑んでいるんだろうさ。奴らが欲しいのは現魔王に一矢報いる為の駒。奴らにとって見ればサイラオーグの夢はそれに心酔する者を集め、それを後押しする自分達を支持してもらう政治道具だ。サイラオーグもそれは認識しているんだろう。それでも1つでも上へ向かえるならとパイプを繋げたんだろうな。純粋で我慢強い男だ」
何処までも身勝手で不愉快きわまりない事情だが、サイラオーグは夢を叶える為に敢えてそれを呑んだ
その心中は計り知れないものだろう……
ここで一誠が1つの疑問を口にする
「今更ですが、このゲーム、テロリスト―――英雄派とか
「あるだろうな。これだけ注目されているし、会場には業界の上役が多数揃う。狙うならここだ。英雄派にとっちゃ、お祭り騒ぎに自慢の
襲撃があり得る事を平然と答えるアザゼルだったが、新達は“杞憂に終わるかもしれない”と言うワードに疑念を抱く
「どうしてそう言い切れますの?」と朱のが訊くと、アザゼルは頬を掻いた
「……ヴァーリと『2代目キング』から個人的な連絡が届いてな」
『―――っ!』
その場にいる全員が驚いた
「ヴァーリと
「ああ、短くこう伝えてきやがった。『あのバアル家のサイラオーグとグレモリー眷属の大事な試合だ。俺も注目している。お前達の邪魔はさせないさ』―――だとさ。愛されてんな、イッセー、新」
「や、やめてくださいよ!気持ち悪い!」
「そうだ!俺をイッセーのホモ事情に巻き込むな!」
「てめコラ!」
新の冗談に猛抗議する一誠を他所にアザゼルは話を続ける
「どちらにしてもあいつらがそう言ってきた以上、曹操と神風に牽制をしているのは確かかもしれない。あちらもヴァーリチームと『2代目キング』と相対してまでこの会場潰しなんてしやしないだろうからな。あの伝説級のバケモノが集まる
「……ヴァーリと大牙に守られてるって事かな」
「元々曹操はここを狙っていないって事も考えられるさ。隙を狙われる可能性もあるから他の勢力も自分の陣地を警戒してるってところだ」
腑に落ちないながらも安心して試合が出来ると言った具合で安堵する一誠
しかし、未だ真の平和は遠い道のりである
そうこうしている内にゴンドラは空中都市に辿り着いた
―――――――――
空中都市アグレアスに数多存在する娯楽施設
その中でも一際巨大な会場―――アグレアス・ドームがあった
現在新達はそのドーム会場の横にあるホテルに移動していた
通路を進んでいる途中、向こう側から不穏な空気と刺すような冷たいオーラを放ちながら歩いてくる集団が見えた
フードを深く被り、足元すら見えない程に長いローブを着込んだ不気味な集団
集団の中央に司祭服を着込んだ者がいるのだが……その者の顔を見て一誠は絶句した
「が、骸骨……?」
そう、集団の中央にいる者の顔は骸骨だった
骸骨の司祭は新達を眼前で足を止め、目玉の無い眼孔の奥を光らせる
≪これはこれは紅髪のグレモリーではないか。そして、堕天使の総督≫
「これは冥界下層―――地獄の底こと冥府に住まう、死を
ハーデスとはギリシャ神話に伝わる冥府の神、オリュンポス十二神の内の一柱である
≪ファファファ……、言うてくれるものだな、カラスめが。最近上で何かとうるさいのでな、視察をとな≫
「骸骨ジジイ、ギリシャ側の中であんただけが勢力間の協定に否定的なようだな」
≪だとしたらどうする?この年寄りもロキのように
ハーデスを囲むローブの集団が殺意を放ってくるが、アザゼルは頭を振って嘆息する
「オーディンのエロジジイのように寛容になれって話だ。黒い噂が絶えないんだよ、あんたの周囲は」
≪ファファファ……、カラスとコウモリの群れが上でピーチクと鳴いておるとな、私も防音対策をしたくもなる≫
明らかに敵視した蔑み……
ハーデスが視線を一誠に移す
≪
それだけ言い残してハーデスは新達の前を通り過ぎていく
一誠は額の汗を拭って息を吐き、新も張り詰めていた空気を解いた
「……北欧時代に先輩のヴァルキリーからハーデス様の話を聞いてはいましたが……魂を掴まれているような感覚は生きた心地がしませんね」
ロスヴァイセが恐々とした様子で呟く
「そりゃな。各勢力の主要陣の中でもトップクラスの実力者だからな」
「……先生よりも強いんですか?」
「俺より強いよ、あの骸骨ジジイは……。絶対に敵対するなよ、お前ら。ハーデス自身もそうだが、奴の周囲にいる
「ロキと同じ
新がそう呟くとアザゼルは首を横に振る
「いや、単に悪魔と堕天使……と言うよりも他の神話に属するものが嫌いなんだろうな。人間には平常通りに接する神だよ。冥府には必要な存在だ。俺は嫌いだがね」
どうやらアザゼルもハーデスをあまり良く思っていないようだ
すると……今度は豪快な笑い声が聞こえてくる
「デハハハハハ!来たぞ、アザゼルゥッ!」
「こちらも来たぞ、アザゼルめが!ガハハハハハ!」
体格が良くヒゲを生やした老人2人が駆け寄ってアザゼルにまとわりつき、アザゼルが半眼で嘆息する
「……来たな、ゼウスのオヤジにポセイドンのオヤジ……。こっちは相変わらずの暑苦しさ満開だな。ハーデスの野郎もこの2人ぐらい豪快で分かりやすかったら良いのによ」
やって来たのはギリシャ神話の
「嫁を取らんのか、アザ坊!いつまでも独り身は寂しかろう!」
「紹介してやらんでもないぞ!海の女は良いのがたくさんだぁぁぁぁっ!ガハハハハハハハハッ!」
「あー、余計な心配しなくて良いって……」
いつも人をからかっているアザゼルがこの2人相手に押され気味……何とも新鮮な光景である
そこへ「来たぞ、お前達」と聞き覚えのある声が
振り返ってみると小さなドラゴンが宙に浮いており、その
「その声、タンニーンのおっさんか!ちっちゃくなっちゃって!」
「ハハハ、元のままだと何かと不便でな。こう言う行事の時は大抵この格好だ」
「渉と高峰も来てたのか」
「はい。タンニーンさんに同行すると言う形ですけど、僕達も応援してます」
「渉がどうしてもってうるさくて」
「あれ?行こう行こうって誘ったの祐希那じゃ―――」
「だっ、バカ!うっさい!」
八代夫婦(笑)の夫婦漫才は今日も絶好調のようだ
「相手は若手最強と称される男だが、お前達が劣っているとは思っていない。存分にぶつかってこい」
「勿論さ!俺達の勝利を見届けてくれよ!」
タンニーンからの言葉に一誠は自信満々に返す
その時ロスヴァイセが「あっ!オーディン様!」と素っ頓狂な声を上げる
ロスヴァイセが指を向ける方向にはオーディンの姿があった
オーディンはロスヴァイセの姿を見た途端に「これはマズい!」と叫んでその場から走り去っていく
それを見てロスヴァイセが吼えた
「ここで会ったが100年目!待てぇぇぇぇぇっ、このクソジジイィィィィッ!その隣にいる新しいヴァルキリーは何なのよぉぉぉぉぉっ!」
ヴァルキリーの鎧姿と化したロスヴァイセは逃げ去るオーディンを追い掛けていってしまった……
「……新、お願い、ロスヴァイセを止めてきて」
「はぁ……分かった」
試合開始前だと言うのにホテルは予想以上の賑わいを見せた……
―――――――――
ゲーム開始時間目前、新達はドーム会場の入場ゲートに続く通路で待っていた
ゲートの向こうから会場の熱気と明かりが差し込んでくると同時に観客の入り乱れた声も聞こえてくる
戦闘服はお馴染みの
耐熱、耐寒、防弾、魔力防御など、あらゆる面で防御力を高めた作りである
新は普段着ているロックミュージシャン服、ゼノヴィアは自前の戦闘服、アーシアもシスター服だが作りは特別仕様の制服と同じ
ロスヴァイセはヴァルキリーの鎧姿で待機していた
リアスが重い口を開く
「……皆、これから始まるのは実戦ではないわ。レーティングゲームよ。けれど、実戦にも等しい重さと空気があるわ。ヒトが見ている中での戦いだけれど、臆しないように気を付けてちょうだいね」
『さあ、いよいよ世紀の一戦が始まります!東口ゲートからサイラオーグ・バアルチームの入場ですッ!』
「「「「「「「わぁぁぁぁぁああああああああああああああああぁぁぁっ!」」」」」」」
声援と歓声がこちらにまでビリビリと伝わってくる
バアル眷属の入場にドーム会場は大きく震えた
「……緊張しますぅぅぅぅっ!」
「……大丈夫、皆カボチャだと思えば良いってよく言うから」
緊張するギャスパーと落ち着いた小猫のやり取り
「ゼノヴィアさん、イリナさんがグレモリー側の応援席で応援団長をやっているって本当なのですか?」
「ああ、アーシア。そのようだぞ。なんでもおっぱいドラゴンとダークカイザーのファン専用の一画で応援のお姉さんをすると言っていた」
どうやらイリナは応援団長と言ったポジションで参加しているらしく、レイヴェルもファン専用の席にいるらしい
『そしていよいよ、西口ゲートからリアス・グレモリーチームの入場ですッ!』
「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」」」」」」
既に観客はヒートアップ
皆も気持ちを切り替えて表情を厳しくしていた
「ここまで私についてきてくれてありがとう。―――さあ、行きましょう、私の眷属達。勝ちましょう!」
「「「「「「「はいッ!」」」」」」」
ゲートを
フィールドに浮く岩の1つにバアル眷属が揃っている
『さあ、グレモリーチームの皆さんもあの陣地へお上がりください』
アナウンスに促され、階段を上がって自分達の陣地となる岩の上に辿り着く
陣地には人数分の椅子と謎の台が1つ、後は一段高い所に設けられた移動式の魔方陣
会場に設置された巨大モニターにはイヤホンマイクを耳に付けた派手な格好の男性が映り込んだ
『ごきげんよう、皆さま!今夜の実況は私、元72柱ガミジン家のナウド・ガミジンがお送り致します!』
実況の紹介に会場は大歓声に包まれる
『今夜のゲームを取り仕切る
宙に魔方陣が出現し、魔方陣から銀色の長髪に正装と言う出で立ちの若い男が現れた
こちらも女性を中心に凄まじい歓声が上がる
「……リュディガー・ローゼンクロイツ。元人間の転生悪魔にして、最上級悪魔。しかもランキング7位……」
小猫がボソリとそう呟く
元人間の転生悪魔でありながら最上級悪魔、更にはレーティングゲームのトップランカー
同じ元人間の転生悪魔である一誠から見れば憧れとも取れる
「グレイフィアさんじゃないのか。いつも俺達の参加するゲームで
「大王家が納得する訳ありませんわね。グレイフィア様はグレモリー側ですから」
新の呟きに朱乃が答える
そう、グレイフィアはサーゼクスの『
家柄重視の大王家にとっては目障りなのだろう
グレイフィアが不正を働くとは思えないが、大王側の上役はそう言う所をつついてきそうだ
『そして、特別ゲスト!解説として堕天使の総督アザゼルさま!更にはかつて
画面一杯に映し出される見知った男2人に新達は唖然としていた……
アザゼルと新の父親―――総司がニッコリと笑顔で挨拶をする
『いや、これはどうも初めまして。アザゼルです。今夜はよろしくお願い致します』
『どうも初めまして。世界のアイドル竜崎総司です。アザゼルくん同様、よろしくお願い致します♪』
「何してんの先生ぇぇぇぇぇっ!?」
「親父も何してんだぁぁぁっ!?」
実はアザゼルは事前に“特別な仕事が入ったのでVIPルームには行けない”と言っていたのだ
理由を一切聞いていなかった新達が驚いている間、実況者によるアザゼルの紹介が始まる
『アザゼル総督はサーゼクス・ルシファー様を始め、各勢力の首領の方々と友好な関係を持ち、
『そうですね。私としましては両チーム共に力を出し切れるのかと言う面で―――』
アザゼルの営業スマイル込みの紹介が終わり、カメラがその隣にいる端整な顔立ちに灰色の髪と瞳をした男性を映す
『更に、もう一方お呼びしております!レーティングゲームのランキング第1位!現王者!
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」」」」」
アザゼルと総司が登場した時よりも遥かに大きい大歓声、その震動は陣地にまで届きそうな勢いだった
『ごきげんよう、皆さん。ディハウザー・ベリアルです。今日はグレモリーとバアルの一戦を解説する事になりました。どうぞ、よろしくお願い致します』
『早速ですが、グレモリーチームのアドバイザーをしておられたアザゼル総督とバアルチームのアドバイザーをしておられた王者にそれぞれ見所を教えていただけると助かります』
『そうですね、グレモリーチームと言えば、まずはおっぱいドラゴンとダークカイザー、そしてスイッチ姫!なわけですが―――』
『はい、サイラオーグ選手は「
実況の質問に両者が答える最中、リアスは画面越しにディハウザー・ベリアルを真剣な表情で見る
ディハウザー・ベリアルはリアスの将来の目標であり、彼女自身の夢を叶える為に必ず超えなければならない大きな壁……
リアスは決意に満ちた表情をする
「いつか必ず―――。けれど、今は目の前の強敵を倒さなければ、私は夢を叶える為の場所に立つ事すら出来ないわ」
「……良い面構えになったな、リアス」
リアスを称賛する新も気持ちを切り替え、サイラオーグとの戦いに精神を集中させた
その間にも実況による解説が進む
『まずはフェニックスの涙についてです。皆さまもご存じの通り、現在テロリスト集団「
実況が巨大モニターに指を突きつける
そこに映し出されたのは高価そうな箱に入った2つの瓶
『涙を製造販売されているフェニックス家現当主のご厚意とバアル、グレモリー、両陣営を支持されるたくさんの皆さんの声が届きまして、今回のゲームで各チームに1つずつ支給される事になりました!』
「「「ワーーーーーーッ!」」」
その報せに会場が再び沸き上がる
嬉しい報せだが、逆に考えればバアルチームも1度だけ1名の復活が可能となる
恐らく、使うのはあちらの『
「……サイラオーグ・バアルを2度倒す覚悟を持たないといけないみたいだね」
祐斗が険しい面持ちでそう呟いていた
バアルチームの最大戦力は何と言ってもサイラオーグ
『
こちらも『
ここで気になっていた話題が展開する
『このゲームには特殊ルールがございます!特殊ルールをご説明する前にまずはゲームの流れからご説明致します!ゲームはチーム全員がフィールドを駆け回るタイプの内容ではなく、試合方式で執り行われます!これは今回のゲームが
促されたリアスとあちらの陣地にいるサイラオーグがそれぞれの設置台前に移動し、設置台から何かが機械仕掛けで現れた
巨大モニターに映し出されたのは―――サイコロだ
『そこにダイスがございます!それが特殊ルールの
「「ダイス・フィギュア?」」
聞き慣れない単語に新と一誠は
「本格的なレーティングゲームには幾つも特殊なルールがあるからね。僕達のやってきたのは比較的プレーンなルールのゲームだ。その他に今回みたいなダイスを使ったり、フィールド中に設置された数多くの旗を奪い合う―――『スクランブル・フラッグ』と言うルールもあるよ。ダイス・フィギュアはダイスを使った代表的なゲームなんだ」
『ご存じではない方の為に改めてダイス・フィギュアのルールをご説明致します!使用されるダイスは通常のダイス同様6面、1から6までの目が振られております!それを振る事によって試合に出せる手持ちが決まるのです!人間界のチェスには駒の価値と言うものがございます!これは基準として「
「つまり、出た数字に応じて出せるメンバーも決まってくるって事か」
『試合が進めば手持ちも減りますので、出せる選手の数字にも変化があると思いますので、それはその都度お互いの手持ちと合致するまで振り直しとなります!また「
「数字次第ではサイラオーグが出張ってくる事もあると言う事か」
「てか、『
一誠が疑問を口にしていると、朱乃が補足説明をしてくれる
「説明の通りですわ。事前にゲームの審査委員会が部長とサイラオーグ・バアルがダイス・フィギュアで、どのぐらいの駒価値があるか評価を出しているのです。それによって両者が試合に出場出来る数字が決まりますわ。これは『
『それでは、審査委員会が決めた両「
実況が叫ぶと巨大モニターにリアスとサイラオーグの名前が悪魔文字で表示され、駒価値となる数字も表示される
『サイラオーグ・バアル選手が12!リアス・グレモリー選手が8と表示されました!おおっと、サイラオーグ・バアル選手の方が高評価ですが、逆に言いますとMAXの合計が出ない限りは出場出来ない事になります!』
「……内容で巻き返すだけだわ」
このゲームではサイラオーグの方がリアスよりも評価が高いようだ
逆に言い換えれば、大きな数字が出たら誰かと組み合わせて出場出来るので単独でしか出場出来ないサイラオーグよりも優位になるかもしれない
「12が出たら確実にサイラオーグさんが来るのかな?」
一誠がそう言うと、祐斗は難しそうな顔をした
「サイラオーグさんが必ずしも出るとは限らないかも。特に
「何でだ?」
「それで勝利出来たとしても場合によっては評判が少し落ちる。ワンマンチームはあまり評価されないからね。ゲームでは眷属の力をフルに活用してこそ評価されるもの。しかも『
勝つだけじゃなく見せ方も重要、世間の評判も視野に入れないと将来が暗転してしまう……
プロの世界は頭で考える以上にシビアだと思い知らされる一誠だった
『それともう1つルールを。同じ選手を連続で出す事は出来ません!これは「
「最初の数字が12だとしても、サイラオーグ自身が
リアスがアーシアに視線を向ける
「このルールだとアーシアを単独で出すのも、組んで出すのも悪手ね。どちらも回復役のアーシアを集中的に狙うでしょうから。ここに残ってもらって勝って帰ってきた者を回復する役に回した方が得策だわ。これはこちらの利点の1つね、フェニックスの涙を使わずに回復出来るなんて。ゴメンなさい、アーシア。試合には出せないわ。ここで帰ってきた者を回復してあげてちょうだいね。それも立派なゲームでの役目よ」
リアスにそう言われたアーシアだが、嫌な顔せずに笑顔を見せていた
「はい、お姉さま。私、ここで皆さんのケガを癒します!だから、皆さん、無事に戻ってきてくださいね」
「「「「「「「勿論」」」」」」」
アーシアの激励に皆が声を合わせた
「逆にアーシアが出てこない事は向こうにも読まれるだろうな。そうだろ、リアス?」
「ええ、こちらは実質戦闘要員が9名となるわ」
『さあ、そろそろ運命のゲームがスタートとなります!両陣営、準備は宜しいでしょうか?』
実況者が煽り、
『これより、サイラオーグ・バアルチームとリアス・グレモリーチームのレーティングゲームを開始致します!ゲームスタート!』
開始を告げると共に観客の声援が会場中に響き渡る
遂にサイラオーグとのレーティングゲームが始まった……
次回から試合展開がスタートします!