ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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お待たせしました!蘇らない不死鳥編、開始です!


ライザー復活作戦!ドラゴンの庭園

某国のとある町

 

人気(ひとけ)の無い広場で睨み合う複数の人影があった

 

片方は三人一組の異形チーム

 

真ん中にいるのは―――狼の様な頭部に赤いマフラーを巻き付けた獣人らしき者

 

ダンダラ模様の羽織(はおり)を着込み、右肩には『闇』―――左肩には『誠』の文字が刻まれていた

 

更に背中には日本刀を背負っており、それを右手に持って鞘から抜き放つ

 

その者の右隣にいるのは(サイ)の様な異形だった

 

首には青いマフラー、西洋甲冑に酷似した外見に左肩から突き出した赤い角

 

重厚そうな外観の異形が拳同士を打ち付ける

 

3人めは金色の体躯に甲角(かぶとづの)を生やした異形だ

 

先程の2人と同じく首に黄色のマフラーを巻き付け、(たずさ)えた長い銃剣に弾丸を込めて銃口を相手に向ける

 

一方、その3人チームと対峙しているのは―――体重100㎏をオーバーしそうなデブの村長だった

 

「おいっ、おぉまえらっ。俺の許可無くこの町に入るんじゃないっ。入りたければ、俺の作ったラーメンを食えっ」

 

無駄にカッコつけて喋る村長

 

ラーメン屋でも(いとな)んでいるのか、(しき)りにラーメンを食べるよう推し進めてくる

 

しかし、3人の異形は全く意に介さない

 

「そんな物、誰が決めた。俺達の邪魔をするな」

 

「その通り、我々は崇高なる目的の為に日夜頑張っているのだ」

 

「貴様のような如何にもモブで殺られ要素満載のデブに用は無い。消え失せろ」

 

異形達の敵意を浴びたデブ村長は「あぁんっ!?」と言いながらキレた

 

許さんとばかりに袖を捲り、地を踏み鳴らして構える

 

「思い知らせてやるっ!俺の編み出した拳法をぉ、うぅけてみろっ!必殺!バク転しながら連続湯切り&大ジャンプ後に回転を加えながらチャーシューを刻み、盛り付けをしながら百烈ビンタの舞いぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいっ!」

 

デブ村長はまず3人の周囲をバク転で回りながらラーメンの湯切りを(おこな)い―――その場で大ジャンプ

 

空中で体を回転させながら隠し持っていたチャーシューを手で刻み、(どんぶり)に盛り付けながら誰もいない空間に物凄い速度の往復ビンタをかました

 

“アァァチョチョチョチョオオオオオオオオオッ!”と奇声を発して宙に舞い続け、完成したラーメンを片手に着地する

 

「―――ドヤッ♪」

 

デブ村長の気持ち悪いドヤ顔に異形3人はそれぞれオーラを(たぎ)らせ―――日本刀、銃剣、拳を構える

 

「……だから、どうした。ただ無駄な動きでラーメンを作ってただけじゃないか」

 

「……下には下がいるものだな」

 

「残念な事にこれ以上は付き合わないよ。モブくんの宿命だからね」

 

異形3人がそれぞれの武器から大質量のオーラを解き放ち、それらがカッコつけていたデブ村長に向かっていく

 

三位一体(さんみいったい)の波状攻撃が迫り来る中、デブ村長は―――

 

「マンマァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

……ただただ情けなく絶叫して消え逝くだけだった……

 

デブ村長を片付けた3人は武器を収め、肩を(すく)めて嘆息する

 

「この町はどうやらハズレのようだ」

 

「やれやれ、無駄足だったのかい?」

 

「用が無いなら、さっさと次の場所へ行くぞ」

 

「ああ、全ては我らの大願を成就させる為……」

 

異形達3人は意味深な台詞を残してその町を去っていった……

 

 

―――――――――――

 

 

修学旅行も終了し、季節は秋

 

とある休日の部室に珍しい客人が来訪してきた

 

「ご、ごきげんよう」

 

頭の両端にドリルの様な縦ロールをした美少女―――レイヴェル・フェニックス

 

上級悪魔フェニックス家の息女が訪れてきたのだ

 

「ごきげんよう、レイヴェル。突然ここに来るなんてどうかしたの?」

 

「はい、リアス様。突然の来訪、申し訳ございませんわ」

 

どうやら事前連絡も無しで来訪してきたらしい

 

レイヴェルは暫し恥ずかしそうにモジモジした後、意を決したかのように口を開いた

 

「実は兄の事についてご相談がありまして……」

 

新、一誠、リアスはその言葉を聞いて顔を見合わせる

 

「ライザーについて?」

 

リアスがそう訊くと、対面に座るレイヴェルは頷いた

 

「はい。兄があの一件以来、塞ぎ込んでしまったのはお耳に届いているとは思うのですが……」

 

「あぁ、あれか」と端的に吐く新と気まずそうな顔をする一誠

 

あの一件とは―――1学期に起こしたリアスの婚約騒動である

 

親同士が決めた縁談により、リアスとレイヴェルの兄―――ライザー・フェニックスは許嫁の関係だった

 

しかし、リアスは自由な恋愛を求めてその関係を破談させる為にライザーとレーティングゲームで対決する事になった

 

色々な経緯があって婚約は破談となり、縁談の話は白紙に戻った

 

だが、問題はそのライザーだった

 

婚約パーティに殴り込んできた新と一誠に打倒されたばかりか、その後に乱入してきた闇人(やみびと)のビショップ―――現在は神風一派のリーダーを務める神風に再起不能寸前までボコボコにされた……

 

それからと言うもの……ライザーは新と一誠に負けた事、リアスを失った事、更に神風にボコボコにされた事で酷く塞ぎ込んでしまった

 

それは半年近く経った今でも変わらない

 

沈黙を破るようにリアスが口を開く

 

「ライザーは……あれから治っていないのね」

 

リアスの一言にレイヴェルは再び頷き、紅茶の入ったカップに口を付けてから言う

 

「……本来なら、ここへ来るのも筋違いかもしれません。けれど、兄の治療に何が良いか色々と参考意見を各所で尋ねたところ、リアス様に相談した方が良いと言う意見が少なくありませんでした。他の方法を試しても大して効果もありませんでしたし……」

 

「私の所?どういう事?」

 

「兄の心身……精神的な所を直すのなら、リアス様の眷属が持つ……所謂(いわゆる)『根性』を習った方が良いのでは?と、そのように意見をいただいたものですから」

 

“根性”と言う答えを聞いて一誠やリアス達は一瞬間の抜けた顔となり、新はクククッと笑った

 

確かに新と一誠はその点に関しては飛び抜けている

 

少し緩和した場の空気にレイヴェルの溜まっていたものが吐き出される

 

「と言うかですね、兄は情けないんです!1度ぐらいの負けで半年近くも塞ぎ込むだなんて……!ドラゴンと闇人(やみびと)が怖いそうなんですよ?あれからレーティングゲームにも参加してませんし、ゴシップ雑誌に好きな事を書かれ放題!新さまとイッセーさまにやられたトラウマでドラゴン関係に一切触れなくなりましたの。オマケに闇人(やみびと)に関しては名を聞いただけで震える始末……!恨むのならまだ話は分かります。怖がっているのですよ?男なら負けを(かて)にして前を向けば宜しいのに!本当に情けなくて情けなくて!」

 

息も尽かさぬマシンガントークに全員が目をパチクリさせる……

 

相当不満が溜まっているようで、ライザーの状況も酷いと見て取れる

 

「……でも、いちおう私の兄なものですから」

 

最後にそう締め括るレイヴェル

 

心根ではやはり心配している……

 

ここに来たのも純粋に兄が心配だからなのだろう

 

新と一誠は互いに顔を見合わせ、立ち上がってからレイヴェルに言う

 

「そう言う事なら俺達に任せろ。な、一誠?」

 

「ま、まあ、俺達がやっちまった事だから、立ち直らせるのもやらなきゃいけないと思うし。それに『根性』だろ?根性と言えば俺達だ。悪魔なのに山籠(やまごも)りしたり、常に四苦八苦三昧(ざんまい)だしさ。そう言うのは慣れてる」

 

「四苦八苦してるのはお前だけだろ」

 

新の指摘に一誠はウグッと唸る

 

「新、イッセー、これは私の―――」

 

リアスが「自分がやる」と言いそうだったので、新は手で制止した

 

「心配するな、俺に良い案がある。ドラゴンと闇人(やみびと)―――両方を克服させる良い案がな……」

 

「やべっ、新が悪い顔になってる……」

 

新の企み顔を察して戦慄する一誠

 

どうやら直ぐにプランが練り上げられたようだ……

 

レイヴェルはパァッと明るい表情になっていたが、ハッと気付いたように咳払いした

 

「し、し、仕方ありませんわね。それでは新さまとイッセーさまに頼んで差し上げてよ?せいぜい上級悪魔の為に励んでくださいな。……い、一応お礼を言ってあげますわ」

 

「あぁ、更生させてやる」

 

未だに悪い顔を続ける新

 

リアスは息を吐いてから1度頷いた

 

「分かったわ。新とイッセーを中心にして、ライザー立ち直り作戦ね」

 

こうして新達によるライザー復活作戦が幕を開けた

 

 

―――――――――――

 

 

「はぁ……でっけぇぇぇぇぇぇっ」

 

一誠は眼前に(そび)え立つ大きな城に圧倒されていた

 

冥界のフェニックス家を訪れた新達グレモリー眷属+イリナ

 

人間界からグレモリー領へ転移した後、魔方陣を介して何度もジャンプして到着したのだ

 

『フェニックスの涙』でだいぶ稼ぎを得ているようで、城の大きさからもその様子が(うかが)える

 

城門が重い音を立てながら開いていき、新達は中へ進んだ

 

城内の庭園を抜けると、家の者が住んでいる居住区に出る

 

豪華な造りの扉の前にドレス姿のレイヴェルと使用人数人が待っていた

 

「ごきげんよう、ようこそフェニックス家へ」

 

「ごきげんよう、レイヴェル。確かライザーはこの区画に住んでいたわよね?」

 

「はい、ここから入ってそちらまで行けますわ」

 

レイヴェル先導のもと、扉を抜けて中を進む

 

高い天井(てんじょう)に豪華なシャンデリア、値が張りそうな絵画に像が辺りに見える

 

「これはリアス様。お久しゅうございます。それと久しいな、竜崎新」

 

第3者の声に視線を向けると、階段の前に見知った女性が立っていた

 

顔の半分だけに仮面をした女性―――ライザー眷属の『戦車(ルーク)』イザベラだ

 

「久し振りだな、イザベラ」

 

「噂は色々と聞いている。もうまともにやっても私では勝てないだろう」

 

「「あーっ!お兄さ~んっ!」」

 

更に2人分の声が聞こえ、新の背中に抱きついてくる

 

イザベラと同じライザー眷属の『兵士(ポーン)』で、お揃いの体操服とスパッツ姿のチェーンソー姉妹―――イルとネルだった

 

「お兄さん、来てくれたの?」

 

「嬉しい~っ!」

 

「ハハッ、お前らも久し振りだな。よしよし」

 

新はイルとネルの頭を優しく撫でる

 

一誠は新のハーレム状態に嫉妬し、悔し涙を1滴流す……

 

イザベラの案内で新達は階段を上り、広い内部を進んでいく

 

「イザベラ、ライザーはあれから普段何をしているんだ?」

 

歩きながら問うと、イザベラは嘆息しながら答えた

 

「部屋にこもり、1日中レーティングゲームの仮想ゲームをしているか、チェスの強い領民をわざわざ家に呼び寄せての一局だ」

 

中を進んで10分、レイヴェルとイザベラが火の鳥らしきレリーフが刻まれた扉の前で止まる

 

レイヴェルが扉をノックする

 

「お兄さま、お客さまですわよ」

 

一瞬反応が無かったが、直ぐに中から声が聞こえてくる

 

『……レイヴェルか。今日は誰とも会いたくない。嫌な夢を見たんだ……。とてもそう言う気分じゃない』

 

それを聞いてレイヴェルは溜め息を吐くが、気を取り直して告げる

 

「―――リアスさまですわ」

 

一拍開けてガシャーンと中から何かを落とす音が響いてきた

 

『―――っ!……リ、リアスだと……?』

 

予想外の客だったのか、ライザーの声は酷く狼狽していた

 

リアスが扉の前に立って言葉を投げ掛ける

 

「ライザー。私よ」

 

『……今更何をしに来た、リアス?俺を笑いに来たのか?』

 

声のトーンは低い―――否、それどころか恨めしい声音だった

 

「……少しお話をしましょう。顔を見せてちょうだい」

 

リアスがそう言った後、ドタドタとこちらに向かってくる足音が聞こえ―――扉が勢い良く開かれる

 

中から出てきたのは髪がボサボサでだらしない格好のライザーだった

 

顔には無精髭(ぶしょうひげ)も生えている

 

「振った男にキミは何を話すと言うんだ……!?」

 

据わった目に怒り口調のライザーだが、視線が新と一誠に移ると途端に顔色を変えた

 

「せ、せ、せ、赤龍帝(せきりゅうてぇ)ぇぇぇっ!や、や、闇皇(やみおう)までぇぇぇっ!」

 

ライザーは2人に指を突きつけて絶叫に近い声を発する

 

「よう、ライザー。随分と堕落したみたいだな」

 

「ど、どうも、こんにちは」

 

「ひぃぃぃいいいいいいいいぃぃぃっ!」

 

新と一誠は挨拶するが……ライザーは2人の顔を見るなり悲鳴を上げて部屋の中へ逃げていき、天蓋(てんがい)付きの豪華なベッドに潜り込むと叫びだした

 

「か、帰ってくれぇぇぇぇぇっ!あの時の事を思い出すのは嫌だ!もう嫌だ!あんなみすぼらしい思いを2度としたくない!」

 

全員がライザーの様子に驚いたのは勿論、酷く当惑してしまった

 

否、その様子を見てサディストの心に火を点けた者が約1名……

 

新は悪い顔をしながらライザーが潜り込んでいるベッドに近付き―――

 

闇人(やみびと)

 

「ひぃぃぃいいいいいいいいぃぃぃっ!」

 

「ドラゴン」

 

「ひぎゃぁぁぁあああああああっ!」

 

「神風」

 

「嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!やめてくれぇぇぇぇぇぇっ!」

 

「神風がドラゴンと闇人(やみびと)の軍勢を引き連れて襲来」

 

「うわぁぁぁぁああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

「……新、やめてあげてちょうだい。余計に傷が広がるから……」

 

リアスが嘆息しながら新を止め、新は「へいへい」と言って戻る

 

イルとネルが揃ってライザーを宥めるが、ライザーはベッドの中でプルプルと震えるだけだった

 

「ライザーは生まれた時からまともな勝負では負けた事が無かったから」

 

リアスがそう言うとレイヴェルも頷いた

 

「はい。新さまとイッセーさまに真っ正面からやられてしまったのが体にも心にも大きく爪痕を残してしまったようですわ」

 

「でも、ライザーさんも強かったですよ。今だと……どっちが強いかな?」

 

一誠の疑問に祐斗が口を開く

 

「今のイッセーくんなら、仮にライザー・フェニックス氏が万全でも引けを取らないよ。いや、恐らく勝てる。精神的な要素―――根性が勝っているし、天龍を相手にするプレッシャーで相手は精神を徐々に磨り減らして不死身の特性が揺らぐだろうね。フェニックスの力は不死身の特性が大きなファクターでもあるから、氏にとってそこが揺らぐのは大きな打撃だよ」

 

「……俺と戦うってそんなに怖いの?相手が新なら分からなくもないけど」

 

「伝説のドラゴンと言うのと、何を起こすか分からない点だけでだいぶ怖いよ。新くんの場合は……不死身の特性を逆手に取って容赦無く攻撃し続けるから、かな……?」

 

一誠と祐斗がチラリと新の方を見やると……新は2人の考えを察したのか、再び悪い顔で鼻を鳴らす

 

一方でレイヴェルはライザーをベッドから出す為、掛け布団を取り払おうと奮闘していた

 

「お兄さま。リアスさま達がせっかくいらっしゃったのですから、ベッドから出てください!」

 

「か、帰れ!帰ってくれぇぇぇっ!」

 

ライザーはそう叫ぶだけだった

 

「とりあえずライザーを無理矢理外に出すか」

 

新はそう言って闇皇(やみおう)に変異し、ズカズカとベッドまで歩いてライザーの頭を掴む

 

ベッドから強引に引きずり出し、扉から部屋の外へ連れ出していく

 

「い、嫌だ!助けてくれぇっ!殺されるぅぅぅっ!」

 

「心配するな、殺したりしねぇよ。―――たぶん」

 

「ひぃぃぃいいいいいいいいぃぃぃっ!」

 

「新の奴……絶対楽しんでますよね……?」

 

「ええ、彼の性格からすれば間違いないわね……」

 

 

―――――――――――

 

 

庭で荷物を纏める新と一誠

 

準備が整った所で一誠が新に訊く

 

「で、具体的にはどうするんだ?」

 

「あぁ、さっき連絡したら直ぐに来るって言ってたからな。もうすぐだ」

 

新が答えてから少し経つと、遠くの空から大きな影が1つ襲来してきた

 

大きな地響きを立てながら着地する巨大なドラゴン―――それには見覚えがあった

 

「あれ?これって―――ワイバーンじゃないか。まさか、呼んだのって……」

 

「そう、あいつだ」

 

新と一誠が話している最中、横でライザーが叫んだ

 

「ひぃぃぃいいいいいいいいぃぃぃっ!ド、ド、ドラゴン……ッ!」

 

怯えるライザーを他所に、着地したワイバーンが体の一部に扉を出現させる

 

ドラゴンのレリーフが刻まれたドアからワイバーンの主が姿を現す

 

「新さん、一誠さん、お久し振りです」

 

「おう、元気そうじゃねぇか」

 

ワイバーンの扉(新(いわ)くど○でもドア)から出てきたのは『光帝(こうてい)の鎧』を体内に宿すハーフ闇人(やみびと)―――八代渉(やしろわたる)

 

直ぐ後に渉の保護者を自称する白髪の美少女―――高峰祐希那(たかみねゆきな)も降りてくる

 

「いきなり呼び出して、いったい何の用?」

 

「今日は2人に是非手伝ってもらいたいと思ってな。とあるヘタレ坊っちゃんの更生だ」

 

「お手伝いですか。良いですよ」

 

渉は(こころよ)く了承してくれた

 

新はライザーを渉達の前まで引っ張ってくる

 

「紹介してやる。今回お前の更生を手伝う2人だ」

 

「ライザーさん、でしたよね?新さんからお話は聞いてます。初めまして、僕はハーフ闇人(やみびと)の八代渉と言います」

 

「……ッ!?や、や、ややややややや闇人(やみびと)……ッ!?ひぃぃぃいいいいいいいいぃぃぃっ!嫌だぁぁぁぁぁぁあああああっ!」

 

ライザーは渉の正体を知った途端に悲鳴を上げて逃げようとするが、そうはさせんとばかりに新がライザーの頭を掴む

 

ライザーの現状を改めて目撃した渉は苦笑し、祐希那はポカーンと口を開けていた

 

「これは……思ったより酷いですね」

 

「どんな目に遭えばここまでヘタレになるのよ?」

 

新はまずライザーがヘタレに至った顛末(てんまつ)を軽く説明

 

祐希那は「情けないわね」と一蹴する

 

祐希那も昔は闇人(やみびと)のストレイグ・ギガロプスに精神を壊されトラウマを(かか)えていたが、渉の看病と手助けのお陰ですっかり回復しきった経験もある

 

2人はこれ以上無いうってつけの助っ人だろう

 

「一誠さんもお手伝いを?」

 

「まあ、そんな所。根性を身に付けさせたいと家の人が言っているからさ」

 

「そうですね。修行するには人が多い方が便利ですもんね」

 

「うん。俺としては山籠りするのかなぁと思ってるんだけど、新がとっておきの修行スポットに連れていくって言うから任せっきりだ」

 

つまり、細かい事は一切放棄して強引に修行させると言うのが今回のライザー更生プランである

 

「い、嫌だぁぁぁああああっ!」

 

捕まってたライザーが新の手を振り払い、炎の翼を広げて逃亡を図るが―――渉の指示で動いたワイバーンに素早く捕獲されてしまった

 

一見すれば補食されそうな鳥である(笑)

 

「逃げちゃダメですよ」

 

「ひぃぃぃいいいいいいいいぃぃぃっ!」

 

「それじゃ、俺達も行ってくるぜ」

 

「部長、アーシア、行ってきます!」

 

新と一誠も荷物を纏めてワイバーンに乗り込み、リアス達に暫しの別れを告げる

 

「新、何か困ったら必ず連絡して」

 

「おう、分かってる」

 

「イッセーさんも無茶だけはしないでください!」

 

「おう、アーシア!」

 

「私も付いていきますわ!兄を……一緒に立ち直らせたいのです!」

 

新と一誠がリアス達に暫しの別れを告げる中、レイヴェルが1歩前に出て決意の一言を発する

 

レイヴェルの決意が灯った眼差しを見た新は愉快そうに口元を笑ませた

 

「良い目をしてるな。良いぜ、一緒に来いよ。この際だ、他の眷属も一緒に鍛えてやる!」

 

新の一言にレイヴェルは嬉しそうに「はい!」と元気良く応じてくれた

 

レイヴェルは素早く魔力で自分のドレスを動きやすい服装にチェンジさせていく

 

探検家の服装に着替えたレイヴェルは他のライザー眷属達も呼び寄せ、ワイバーンに乗り込んだ

 

一方でライザーは往生際悪くワイバーンの手の中で暴れている

 

「い、嫌だぞ!なんで俺が修行なんて泥臭い真似をしないといけないんだ!?」

 

「これもお兄さまの為なのですよ。我慢なさって下さい」

 

「俺の眷属達!俺を助けろ!命令だぞ!」

 

ライザーは同じくワイバーンに乗り込んだ眷属達に助けを求めるが……

 

「ライザー様、今回は我慢なさって下さい。私達もお手伝いしますから」

 

「「ファイト、オー!」」

 

―――手を振って応援してくれるだけだった

 

それを見てライザーは目玉が飛び出す程のショックを受ける

 

「お、お前ら!薄情者ぉぉぉぉぉっ!助けてぇぇぇぇぇっ!」

 

遂にワイバーンが庭から飛び立ち、冥界の空へ

 

ここで一誠は新にこれから何処へ向かうのか尋ねる

 

すると、新は少し楽しそうな顔でこう答えた

 

「俺達バウンティハンターの世界でも有名な修行場―――“ドラゴンの庭園(ていえん)”だ」

 

「ドラゴンの庭園?」

 

 

―――――――――――

 

 

冥界のフェニックス家から飛び立って約40分

 

ワイバーンは新が提案した修行場―――ドラゴンの庭園へと降り立った

 

「うわー、すっげー!」

 

一誠は眼前の光景を目にして呆気に取られていた

 

目の前で怪獣サイズのドラゴンの他、中型サイズ、二足歩行サイズ、小動物サイズと多種多様なドラゴン達が飛び回ったり走り回ったりしている

 

「ここは正式な名前こそ無いが、様々なドラゴン達が住んでいる事から―――通称“ドラゴンの庭園”と呼ばれている。今のライザーを鍛えるには持ってこいの修行スポットだ」

 

「凄いですね。いろんな形のドラゴンが飛び交ってますよ」

 

「こんな場所があったなんてね」

 

渉も目の前の景色に心を打たれ、祐希那も興味津々

 

すると、レイヴェルの肩に1匹の小さなドラゴンが停まる

 

蝶の如く綺麗な羽を畳み、レイヴェルに柔和な笑顔を送る

 

「新さま、このドラゴンは何ですの?」

 

「そいつは『妖精龍(フェアリー・ドラゴン)』。人懐(ひとなつ)っこくて人気があるドラゴンだ。歓迎してくれてるんだよ」

 

「なあ、新。あのフワフワ浮かんでるヤツは何だ?」

 

一誠がそのドラゴンに指を差して訊く

 

まるで風船の様に膨らんだ体で宙を(ただよ)い、お茶目に舌を出しているドラゴンがいた

 

「あれは『風船龍(バルーン・ドラゴン)』。文字通り風船の様に膨らんだドラゴン、無害でおとなしい奴だ」

 

「新さん、ドラゴンの種類に詳しいんですね」

 

「俺も昔、ここで鍛えまくってたからな。その時に種類を覚えた。他にも尻尾が珍味として扱われる『怠け龍(スロース・ドラゴン)』、霧を(あやつ)る『濃霧龍(ミスト・ドラゴン)』、果物の実を作る『作物龍(フルーツ・ドラゴン)』と―――ざっと数えて100種類のドラゴンが集まってるんだ」

 

「ド、ド、ドラゴンが……っ。ドラゴンがこんなにたくさん……っ」

 

説明している新の隣でライザーは顔を真っ青にしていた

 

そんなライザーの頭を掴み、新は一言告げた

 

「ライザー、このドラゴンの庭園でお前を1から鍛え直してやる。なーに、不死身なんだから死にそうになっても大丈夫だろ?まずは走り込みだ」

 

「……うぅ、なんてこった」

 

ライザーは首を横に振りながら顔を両手で覆っていた

 

一誠はこれから始まる新の修行(イジメ)に苦笑するしかなかった……


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