ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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修学旅行編、ラストです!


京都大戦終幕!

「モードチェンジ!『龍星の騎士(ウェルシュ・ソニックブースト・ナイト)』ッ!」

 

一誠はドラゴンの翼を羽ばたかせて曹操に向かう

 

背中のブーストの数が増え、魔力の火を噴出させながら飛んでいく

 

「―――装甲パージッ!」

 

一誠がそう叫んだ途端、鎧各所の厚い装甲が外れて流線型のフォルムへと化した

 

全身に掛かるGに吐きそうになるが―――

 

「てめえに体当たりするぐらいなら問題ねぇよなァァァァッ!」

 

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曹操を視界に捉えた一誠は正面から神速で突っ込んでいく

 

曹操が槍を前方に構えて迎え撃つ体勢を取った

 

一誠はそのまま神速の体当たりを曹操にかまし、衝撃で曹操は軽く吐瀉(としゃ)した

 

曹操を捕まえた状態で飛び続ける一誠

 

「―――やっと捕まえたぜ。これなら文句ねぇだろ?」

 

「―――全く、キミは正面から本当に突っ込んでくるんだなッ!だが、その装甲の薄さで俺の槍は耐えられないだろうッ!?パワーアップ早々悪いが、これで終わりだッ!」

 

確かに今の装甲では聖槍に耐えられない、触れただけで消滅しかねないだろう

 

一誠は再び内で『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』のシステムを変更させた

 

「モードチェンジッ!『龍剛の戦車(ウェルシュ・ドラゴニック・ルーク)』ッ!」

 

赤いオーラが一誠を包み込み、外した分の装甲を修復させていく

 

だが、それだけに留まらず―――更に鎧を分厚い仕様にしていく

 

両腕も通常形態の5、6倍はあろうかと言う極太の様相となった

 

モードチェンジした事で神速が止まり、一誠と曹操は空中に投げ出された

 

曹操の槍が一誠を捉え、光の刃が向かっていく

 

一誠は分厚くなった右籠手を盾代わりにして聖槍の一撃を受け止めた

 

籠手に突き刺さったものの、貫く事は出来なかった

 

「―――もっと出力を上げないと、この鎧は壊しきれないと言うのかッ!上級悪魔なら瞬殺出来る出力なんだぞッ!」

 

そう叫ぶ曹操に一誠は分厚くなった左の拳を構えた

 

「おっぱいドラゴン舐めんな、このクソ野郎ォォォォォォォッッ!」

 

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一誠は極大な左拳を曹操に打ち込み、曹操は瞬時に槍を籠手から抜き放って盾の様にするが―――

 

ドンッッ!

 

拳が衝突した瞬間、籠手の肘部分に新しく生まれた撃鉄が打ち込まれる

 

膨大なオーラを噴出させながら、拳打の勢いが増して曹操を地面へ吹き飛ばす

 

曹操は地面へ勢い良く叩き付けられ、その衝撃で地割れが起き、土煙と粉塵が舞い上がる

 

空中での接近戦を終えた一誠が地に降り立つと―――分厚くなった装甲が霧散していく

 

一誠は息切れを起こし、その場で膝をついた

 

『相棒。力の解放によって禁手(バランス・ブレイカー)になるまでに掛かる時間が更に短縮され、禁手(バランス・ブレイカー)状態での制限時間も増えている。だが、それ以上にエネルギーの消費が激し過ぎるのだ。特に連続で形態を変えたせいか、拍車が掛かった。慣れれば消耗も軽減されていくとは思うが』

 

「そうかよ、ドライグ。まだまだ修行の余地があるって事か」

 

「一誠、随分と疲れてるみたいじゃねぇか。―――ま、俺も他人事じゃないか」

 

一誠の隣に降りてきたのは新

 

6枚の翼を収納し、曹操が落ちた場所を見据える

 

地面に叩き付けられた衝撃で出来たクレーターの中から曹操が上がってくる

 

鼻と口から出血しているが、それを拭って首を鳴らす

 

「これは赤龍帝(せきりゅうてい)殿。先程は失礼した。驚くべき変化を遂げたようだ。充分な強さを土壇場で得るなんてね。槍で守らなければ死んでいたよ」

 

「クソッ!死んどけよっ!」

 

曹操自身は生身なので、直撃を受けていたら勝っていただろう

 

「『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』のルールを逸脱したキミだけの新たな特性か……。まるでイリーガル・ムーブだな」

 

聞き覚えの無い単語に一誠は首を(かし)げた

 

「イリーガル・ムーブ?って、何だ?」

 

一誠が疑問を口にすると新が答える

 

「チェス用語で“不正な手”と言う意味だ。お前の攻撃は明らかに『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』のシステムに不正する様な手に見えたからな。その点は俺も同じか。『(キング)』の承認無しで昇格してるんだからよ」

 

『俺としてはトリアイナだと感じたが』

 

「トリアイナ?どういう意味だ?」

 

『トリアイナ、ギリシャの海神ポセイドンが持つ三又(みつまた)(ほこ)の事だ。トライデントと言う名の方が知られているかもしれんな。先程の3種の駒による連続攻撃が三又の矛の様な鋭さを感じた』

 

「イリーガル・ムーブにトリアイナ、か……。良いね。じゃあ、こいつは『赤龍帝の三又成駒(イリーガル・ムーブ・トリアイナ)』とでも名付けようかな」

 

先程の単語2つを掛け合わせた名称を作り出した一誠

 

まだまだ伸びしろもありそうだ

 

「怖いな。直接的な攻撃力は『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』無しのヴァーリにそろそろ匹敵するかな?いや、彼も日々成長しているから、現在は分からないが……。それと予想以上にスタミナとオーラを消耗する。使いこなすにはまだまだと言う事かな。いや、使いこなせたとしてもその消耗は尋常ではないか……。あと10分も禁手(バランス・ブレイカー)状態が保たないと見た」

 

曹操は冷静に一誠の新形態による攻撃方法を分析

 

一誠は息を吐いてから曹操に言った

 

「あんた、やりにく過ぎるんだよ。ちょっと俺達の事を舐めたかと思うと、今度は冷静に見てくるしさ」

 

「いや、キミを少しでも軽んじた俺が愚かだった。本当に済まなかった。強大な力に溺れず赤龍帝の深奥を知ろうと動いているキミはやはり強敵だ。反省をしなければならない。それに闇皇(やみおう)もトンでもない力を発揮している。まさか、暴走していた九尾を容易く止めるなんてね。―――楽しい。ヴァーリと個人的に一戦して以来の戦闘高揚かもしれない。やはり、伝説のドラゴンや魔物と戦うのは最高だな。俺が心底英雄の子孫だと言う証拠か」

 

「楽しい、か……。俺の知り合いにもそんな奴がいたよ。俺が1番嫌ってる野郎と同じ台詞を言いやがって。曹操、お前はこのまま全勢力と激戦をするつもりか?」

 

新の問いに曹操は首を横に振った

 

「冗談。この戦力では長期戦に向かない。1人の力が強くても、流石に各勢力が協力した兵力には勝てないさ。そちらに大損害は出せるだろうが、こちらは全滅だ。不意打ちを狙った一点突破の方が効率が良い。だからこの組織にいるのは割が良いわけさ」

 

「『禍の団(カオス・ブリゲード)』に身を置いているのはそう言う理由かよ。ったく、食えない奴だぜ」

 

バジッ!バジッ!

 

突然空間を震わせる音が鳴り響く

 

見上げてみると―――空間に穴が生まれつつあった

 

空間に現れた裂け目を見て、曹操が嬉しそうに笑む

 

「どうやら始まったようだ。あの魔方陣、そしてキミ達や闇人(やみびと)の膨大なパワーが真龍(しんりゅう)を呼び寄せたのかもしれないな」

 

曹操が皮肉げにそう言ってくる

 

不覚にも新と一誠のパワーアップ現象がこの裂け目を生み出してしまったのだろうか……?

 

「ゲオルク、『龍喰者(ドラゴン・イーター)』を召喚する準備に取り掛かって―――」

 

そこまで言いかけた曹操が言葉を止める

 

その目が細くなり、空に出来た次元の裂け目を見て疑問の生じた表情となる

 

「……違う。グレートレッドではない?……あれは、それにこの闘気……ッ!―――西海龍童(ミスチバス・ドラゴン)玉龍(ウーロン)かッ!」

 

空間の裂け目から姿を現したのは―――十数メートル程ある、体が細長い東洋タイプのドラゴンだった

 

曹操は五大龍王の一角の登場に驚いていたが、直ぐにその視線はドラゴンの背に向けられる

 

新と一誠もそれに釣られてドラゴンの背に視線を移した

 

そこには小さな人影らしきものが1つあり、人影がドラゴンの背中から降りてくる

 

何事も無かったかの如く地上に降り立った人影が言う

 

「大きな『妖』の気流に『覇』の気流、それに禍々(まがまが)しく残っていたであろう『闇』の気流。それらによってこの都に(ただよ)妖美(ようび)な気質がうねっておったわ」

 

小さな人影は年老いた男性の声音でこちらへゆっくりと近付いてくる

 

現れたのは金色の体毛にサングラス、法衣を纏った猿の様な人物だった

 

手には長い棍の様な得物を持っており、首には大きい数珠がぶら下がっていた

 

煙管(キセル)を吹かしながら不敵な笑みを浮かべる

 

「おー、久しい限りじゃい。聖槍の。あのクソ坊主がデカくなったじゃねーの」

 

猿の老人がそう言うと、曹操は目を細めて笑んだ

 

「これはこれは。闘戦勝仏殿(とうせんしょうぶつどの)。まさか、あなたがここに来られるとは。各地で我々の邪魔をしてくれているそうですな」

 

「坊主、イタズラが過ぎたぜぃ。(わし)がせっかく天帝(てんてい)からの使者として九尾の姫さんと会談しようと思っていたのによぉ。拉致たぁ、やってくれたもんだぜぃ。ったく、関帝(かんてい)となり神格化した英雄もいれば、子孫が異形の業界の毒なんぞになる英雄もいる。『覇業(はぎょう)は一代のみ』とよく言ったもんじゃ。のぅ、曹操」

 

「毒、ですか。あなたに称されるのなら大手を振って自慢出来るものだ」

 

曹操が畏敬の念を持って接しているように思えるやり取りを見て、一誠は疑問の声を出す

 

「……誰だ、あの猿の様な……じいさん?」

 

「一誠、闘戦勝仏(とうせんしょうぶつ)の名で気が付かないのか?あのじいさんは恐らく……孫悟空。しかも、初代のだ」

 

「しょ、しょ、しょ、初代の孫悟空ぅぅぅぅうううっ!?あ、あの猿のじいさんが西遊記で有名な……ッ!」

 

一誠は新の発言に心底仰天する

 

アザゼルが言ってた強力な助っ人とはこの初代孫悟空の事だったのだ

 

初代孫悟空が新と一誠の視線に気付いたのか、シワクチャな口元を笑ませる

 

赤龍帝(せきりゅうてい)闇皇(やみおう)の坊や。よー頑張ったのぉ。良い塩梅(あんばい)の波動だ。だが、もう無理はしなくて良いぜぃ?儂が助っ人じゃい。後はこのお爺ちゃんに任せておきな」

 

初代孫悟空が曹操達に歩み寄ろうとする

 

そこへ霧使いの魔法使い―――ゲオルクが初代孫悟空に向かって手を突き出した

 

「―――捕縛する。霧よッ!」

 

初代孫悟空を包み込む様に『絶霧(ディメンション・ロスト)』の霧が集まるが―――

 

「―――天道(てんどう)、雷鳴をもって龍のあぎとへと(くく)り通す。地へ這え」

 

呪文を呟き、棒で地面を1度叩くと―――霧があっという間に消え去る

 

僅かな挙動だけで神滅具(ロンギヌス)の霧を消してしまった……

 

「まだ神器(セイクリッド・ギア)の練り方が弱いの。そこの赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)の様に対話したらどうじゃい?」

 

「―――ッ!あの挙動だけで我が霧を……ッ!神滅具(ロンギヌス)の力を散らすか!」

 

「槍よッ!」

 

ゲオルクが仰天していると、隙を突いたかの様に曹操が聖槍の切っ先を伸ばして奇襲を図ったが―――初代孫悟空は指先1つで聖槍を止めた

 

「……良い鋭さじゃわい。が、それだけだ。まだ若いの。儂の指に留まる程では他の神仏も(めっ)せられんよ。―――貴様も霧使いも本気にならんで儂にかかろうなどと、舐めるでないわ」

 

初代孫悟空の言葉を聞き、曹操は笑みを引きつらせていた

 

「……なるほど、バケモノぶりは健在のご様子ですな……。周囲に広く認知されているのは若い頃の強さだと聞く。今は如何程(いかほど)ですかな?」

 

曹操の問い掛けに初代孫悟空は不敵に肩を(すく)めるだけだった

 

そこへようやく意識を取り戻した英雄派のメンバー達、ジークフリートが曹操に告げる

 

「曹操、ここまでにしよう。初代孫悟空は『禍の団(カオス・ブリゲード)』のテロを何度も防いでいる有名人だ。これ以上の下手な攻撃はせっかくの人材が傷付くよ」

 

「退却時か。見誤ると深手になるな」

 

曹操は槍を下ろし、英雄派メンバーが素早く1ヶ所に集結

 

ゲオルクが足下に巨大な転移魔方陣を展開し始めた

 

曹操が捨て台詞を吐く

 

「ここまでにしておくよ。初代、グレモリー眷属、赤龍帝(せきりゅうてい)闇皇(やみおう)、再び(まみ)えよう」

 

逃げようとする曹操

 

だが、新と一誠はこのまま逃すつもりは更々無かった

 

新は剣の刀身に魔力を流し、一誠はオーラを集めて左籠手にキャノンを生み出し、残った魔力を装填する

 

2人の様子を見て初代孫悟空が笑う

 

「儂の役目、坊や達がやるかぃ?まあ、ええ。あの坊主にお仕置きしてみぃ?一時だけ力が出るよう、お爺ちゃんが手伝ってやるわい」

 

そう言って初代孫悟空が棒の先で新と一誠の鎧を軽く叩く

 

その直後―――2人の全身からオーラが噴き出してきた

 

一誠が曹操にキャノンの照準を合わせる

 

「―――お咎め無しで帰れると思うのか?こいつは京都での土産(みやげ)だッ!」

 

バシュゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!

 

籠手のキャノンから濃縮された魔力の一撃が撃ち出され―――

 

「俺からも土産をくれてやる。景気付けに貰っておけッ!」

 

剣から放たれた魔力の斬撃が一誠の撃ち出した砲撃と螺旋状に交わり、より強力な一撃と化す

 

曹操の盾になろうとヘラクレスやジャンヌが前に出るが―――

 

「曲がれェェェェェッ!」

 

一誠の叫びに応じたのか、撃ち出された魔力の一撃が軌道を変えて曹操の顔面を捉える

 

完全に油断していたのか、顔を撃たれた曹操が負傷した部分を手で覆う

 

右目から鮮血を散らし、右目を手で押さえながら狂喜に顔を歪ませた

 

「……目が……。赤龍帝ェェェェェッ!闇皇ォォォォォッ!」

 

曹操は槍を構えると、力強い言葉―――呪文の様なものを唱え出した

 

「―――槍よッ!神を射貫(いぬ)く真なる聖槍よッ!我が内に眠る覇王の理想を吸い上げ、祝福と滅びの―――」

 

呪文を唱える途中でジークフリートが曹操の口と体を手で押さえる

 

「曹操っ!唱えてはダメだッ!『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』の禁手(バランス・ブレイカー)―――いや、『覇輝(トゥルース・イデア)』を見せるのはまだ早いッ!」

 

ジークフリートの声に曹操は激情を収めて深く息を吐いた

 

「―――退却だよ。『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』―――レオナルドも限界の時間だろう。流石にこれ以上の時間稼ぎは外のメンバーでも出来ないだろうしね。各種調整についてもこれで充分データを得られるし、良い勉強になったよ」

 

曹操が負傷していない左目で新と一誠を捉える

 

その視線は鋭いものだった……

 

「分かっているさ。初代殿、そして赤龍帝(せきりゅうてい)闇皇(やみおう)―――否、兵藤一誠。竜崎新。ここいらで俺達は撤退させてもらおう。全く、ヴァーリの事を笑えないな。彼と同じ状況だ。キミ達は何故か土壇場でこちらを熱くさせてくれる」

 

転移魔方陣が一層輝きを増し、曹操が消える間際に言う

 

「―――2人とも、もっと強くなれ。ヴァーリよりも。そうしたら、この槍の真の力を見せてあげるよ」

 

それだけ言い残し、英雄派はこの空間から消えていった

 

英雄派と神風一派が去った事で疲弊が一気に押し寄せてくる

 

一誠はその場に腰を下ろした

 

「はぁ……はぁ……何とかなったけど……。色々あり過ぎて大変だ」

 

「あぁ。神風に『初代キング』……曹操率いる英雄派―――厄介な奴らだぜ」

 

「特に曹操は強い以上に―――不気味だよな……」

 

「ま、今はこの戦いが終わっただけマシだろ?あれを見てみな、母と娘の感動の再会だ」

 

新が指差す方向に視線を移す一誠

 

新の力により元の姿に戻った八坂は九重に抱きつかれていた

 

「母上ぇぇぇっ!母上ぇぇぇっ!」

 

「よしよし、九重。もう泣かんでも良い。終わったと言うのに、お前はいつまで経っても泣き虫じゃな」

 

八坂は優しく九重を抱き締め頭を撫でる

 

感動の場面を見た一誠は思わず涙を溢れさせた

 

「うぅ……九重ちゃん、良かった……」

 

皆の治療を終えたアーシアも涙を流し、初代孫悟空が締めの言葉を言う

 

「ま、何はともあれ、解決じゃい」

 

こうして九尾の御大将救出作戦は色々な波乱を巻き起こしながら幕を閉じた……

 

 

―――――――――――

 

 

修学旅行最終日、前夜に大激戦をしたせいか、治療を終えた後で寝ても全く疲れが取れなかった新達は、疲弊しきった体を引きずって最終日の土産屋巡りを敢行した

 

息を切らしながら京都タワーも見て土産も買い、遂に京都を離れる時が来た

 

ちなみにダイアンは最終日の朝に一足早く戻っていったとか

 

京都駅の新幹線ホームで九重と八坂が見送りに来ていた

 

九重が八坂と手を繋ぎながら笑顔で一誠を呼ぶ

 

「赤龍帝」

 

「イッセーで良いよ」

 

一誠がそう言うと、九重は顔を真っ赤にしてモジモジしながら訊いてくる

 

「……イッセー。ま、また京都に来てくれるか?」

 

「ああ、また来るよ」

 

発車の音がホームに鳴り響き、九重が一誠に叫ぶ

 

「必ずじゃぞ!九重はいつだってお前を待つ!」

 

闇皇(やみおう)殿、お主も来てくれるか?今度は九重と共に裏京都も案内しよう」

 

「あぁ、楽しみにしてるぜ。京都の地酒でも飲み交わそう」

 

それを聞いて八坂はクイクイと手招きし、新にコッソリ耳打ちした

 

「……その時に夜伽(よとぎ)の相手もしてくれんか?お主の優しさと強さに、わらわは(とりこ)になってしもうたのじゃ……」

 

「―――ッ。勿論、お相手願うぜ」

 

八坂から嬉しい誘いを受けた新

 

八坂はこれから初代孫悟空と会談をするつもりであり、セラフォルーも京都に残って妖怪側と改めて交渉するようだ

 

新達は新幹線に乗り込み、ホームで九重が叫んだ

 

「ありがとう、イッセー!皆!また会おう!」

 

手を振る九重に新達も手を振り、新幹線の扉が閉じる

 

発車しても九重は笑顔で手を振り続けた

 

新は戻るまでの時間を寝て過ごそうとシートへ行こうとした

 

「しまったぁぁぁぁぁああああっ!」

 

「あ?どうした一誠?」

 

「八坂さんにお願いして……お礼のおっぱいを見せてもらうの忘れてたぁぁぁぁあっ!」

 

「……アホか。寝る」

 

新はもう諦めモードで吐き捨て、自分のシートへ足を運んだ

 

「うわぁぁぁんっ!九尾のおっぱいぃぃぃぃぃっ!」

 

未練がましく一誠は扉にかじりつき、無念の叫びを発したのだった……

 

 

―――――――――――

 

 

京都から帰還した新達は兵藤家に呼び出され、その一室でリアスに怒られていた

 

正座をする新と一誠にアーシア、ゼノヴィア、祐斗、イリナも反省状態だった

 

ロスヴァイセは帰還して早々、新の家の部屋で寝込んでいるので不在

 

リアスが半眼で問い詰める

 

「なんで知らせてくれなかったの?―――と言いたい所だけれど、こちらもグレモリー領で事件が起こっていたものね。でも、ソーナは知っていたのよ?」

 

「そ、それはスマないと思ってる……」

 

説明は京都での戦いが終わった直後に全て済んだのだが、朱乃も小猫も少々ご立腹の様子だった

 

「こちらから電話をした時に、少しでも相談が欲しかったですわ……」

 

「……そうです。水臭いです」

 

「で、でも、皆さん無事で帰ってきたのですから……」

 

ギャスパーのフォローに一誠は思わず泣いてしまう

 

「まあ、イッセーは現地で新しい女を作ってたからな。しかも九尾の娘だ」

 

椅子に座るアザゼルが場を混乱させるような事を口走る

 

「そ、そんなのじゃありませんよ!ったく、人聞きが悪いな、先生は!」

 

「でもよ、あの八坂を見た限りじゃ、将来相当な美人で巨乳に育ちそうだぞ?」

 

「……そ、そうかもしれません。けど!俺はちっこい子への趣味はありませんって!」

 

一誠とアザゼルのやり取りを見て笑う新

 

そこでアザゼルが「あ」と何かを思い出したようだった

 

「そういや、学園祭前にフェニックス家の娘と光帝(こうてい)駒王学園(くおうがくえん)に転校してくるそうだぜ?」

 

「フェニックス家の娘って―――レイヴェルか。それに渉もか?」

 

新の問いにアザゼルが話を続ける

 

「ああ、リアスやソーナの刺激を受けて日本で学びたいと申し出てきたらしい。学年は1年だったか。もう手続きは済みそうだって話だったな。小猫と同学年か。猫と鳥でウマが合わなさそうだが……それを見るのも一興か」

 

「……どうでも良いです」

 

アザゼルの一言に小猫は不機嫌な様子だった

 

リアスも嘆息し、苦笑していた

 

「まあ、良いわ。皆、無事に帰ってきたと言う事でここまでにしておきましょう。詳しくは後でグレイフィアを通じてお兄さまに訊いてみるわ。さて、もうすぐ学園祭よ。あなた達がいない間、準備も進めてきたけれど―――ここからが本番よ。それに―――サイラオーグ戦もあるわ。レーティングゲーム、若手交流戦では最後の戦いと噂もされているけれど、絶対に気は抜けないわ。改めてそちらの準備にも取り掛かりましょう」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

リアスの言葉に皆が大きく返事をした

 

学園祭も大事だが、サイラオーグとの一戦も間近に控えている

 

「イッセーくん、体力が復調したら手合わせしてくれないかい?京都で自分の不甲斐無さを痛感したからね。キミの力を借りたい」

 

「ああ、木場。ゲームの日まで模擬戦の繰り返しだな。新も参加するよな?」

 

「あぁ。ただ―――明日、明後日はダメだ。用事があるからな」

 

新の言葉に一誠が「用事って何だよ?」と訊くと、新は財布から“ある物”を取り出して皆に見せた

 

取り出しのは銀色に輝く免許証の様な物

 

リアスがそれを見て訊く

 

「新、それは何なの?」

 

「こいつはバウンティハンターのライセンス、そろそろ更新しないといけないんだ。その為に協会本部まで行ってくる」

 

新は簡単にバウンティハンターのライセンスについて説明を始めた

 

バウンティハンターのライセンスはランクを証明する為や、情報を集める為に必要不可欠なもので―――ランクが高ければ高い程知り得る情報が多くなったり、報奨金の額も上がったりする

 

ランクは下からF、E、D、C、B、A、AA(ダブルエー)、S、SS(ダブルエス)SSS(トリプルエス)と10段階に分かれており―――新は上から3番目のSランクに位置している

 

一誠が新のライセンスを見ながら感嘆の声を上げる

 

「へー、新ってやっぱ凄いんだな」

 

「しかも、S級からはライセンスが豪華になっていくんだ。S級はシルバー、SS(ダブルエス)級はゴールド、1番上のSSS(トリプルエス)級はプラチナカラーって具合にな」

 

「でも、今の強さならもっと早い段階で上がっててもおかしくね?」

 

「バウンティハンターのランクアップは強さじゃなく、任務成功率の高さによって決められるんだ。いくら強くても、任務を失敗し続ければランクは上がらないんだよ。それにライセンスを更新する際はメディカルチェックも受けなきゃならねぇんだ。健康状態と共に個人データの入力も済ませた後、協会本部の役員から承認を受けて―――初めてライセンスを発行・授与出来る」

 

「ふ~ん、意外とめんどくさいんだな」

 

「あぁ。そんな訳でリアス、帰還したばかりで悪いな。明後日の夜には戻る」

 

「そう、分かったわ。気を付けてね」

 

「新さん、美味しい料理を用意してお待ちしてますわ」

 

 

――――――――――――

 

 

「京都での計画は失敗だったけれど、もう1つの計画の方は調整がまた進んだよ。近い内にお披露目出来そうだね、曹操」

 

「そうか、それは何よりだ。ジークフリート」

 

「予定通り、1つは僕が貰うよ。―――曹操も使うかい?」

 

「俺はこの槍で充分だよ」

 

「―――で、赤龍帝と闇皇にやられた目はどうだい?」

 

「……ダメだな、もう使い物にならない。ふふっ、やられたもんだ」

 

「フェニックスの涙をわざと使わないなんてね……。では代わりの眼を用意しよう。いずれ眼の代償でも彼らに支払ってもらうのかい?」

 

「まさか、三流の敵役でもあるまいし。良い勉強になっただけさ。この眼のキズは記念だ。―――兵藤一誠とヴァーリは俺にとって最高の二天龍だ。楽しいなぁ、全く」

 

 

――――――――――

 

 

「―――って訳DE()、神風は『初代キング』と共に行っちまったんDA()

 

「そうか……。遂に父さんが復活してしまったのか……。神風の奴、このまま父さんに取り入るつもりか?いや……ここまで事を隠してきたんだ。俺の首を取る気でいるのか……それとも―――」

 

「どうします?もう『チェス』はあなたを含めて私達3人しか残ってませんよ」

 

「3人?神代剣護(かみしろけんご)はどうした?」

 

「彼も……その神風くんの方についたみたいです」

 

「……どうやら俺の方針は(ことごと)く気に入られなかったと見える……。こうなると『2代目キング』の名折れだ」

 

「そんな事はありません。あなたは自分で決めた道を貫こうと言ったじゃないですか。私もダイアンくんも、それに共感したから―――あなたについていくと決めたのです。王に必要なのは力だけではありません。―――誰かを動かす強い(ちから)も必要なのです」

 

「……そうだな。その点に関しては赤龍帝(せきりゅうてい)闇皇(やみおう)を見習わないといけないな」

 

 

―――――――――

 

 

「チッキショウ……ッ。せっかく良い所までいったのに……!グレモリー眷属ホント邪魔!あ~もうっ!カプリンチョ無くなったァッ!買ってくる!」

 

「荒れておるな、神風。貴様がそこまで怒り狂うのを見るのは久し振りよのう」

 

「キング、何で撤退なんかしたのさ?あのまま全員ブッ殺しちゃえば良かったのに!」

 

「ああ、その事なんだが―――どうも余の力が上手く発揮出来ておらん」

 

「力が発揮出来てない?あれだけ強い闇を発してたのに?」

 

「あれではまだ軽い方じゃ。本来ならばあの疑似空間全てを飲み込む程、深く濃い闇を生み出す事が出来る筈なのに―――あの程度しか出せんかった。恐らく……奴か、あの女狐(めぎつね)め。まだ余に(あらが)うか。―――神風、ブラックウィドウとやらは量産出来るか?」

 

「今回の戦闘でデータは粗方(あらかた)揃ったよ。後はまた改良を加えるだけさ」

 

「よしよし、今後はその蜘蛛が我々の切り札になり得るだろう。頼むぞ?」

 

「任せといてよ」

 




やっと修学旅行編を終えました……。

次章は原作の短編でもあった蘇らない不死鳥をメインにやっていきます!……の前に、Mr.エメトさんのリクエストにお応えするべく、エメトさんとの短編コラボを1話載せていきたいと思っております。承認を得ましたので、エメトさんの話をそのままベースに細かな補正を加えた話に仕上げていきます。

何卒、暖かい眼で見ていただけると幸いです

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