「な、何なんだ……この寒気がする程のオーラは……っ?」
幾多の死線を乗り越えてきた新でも震えを覚えるオーラは空を黒く塗り潰し、神風の左腕だった籠手から放たれる妖しい輝きが一層強くなっていく
目玉も新達や英雄派を見下ろし、睨み付ける
やがて黒いオーラが吸い込まれるかの如く籠手に集まり、1度吸い込まれたオーラが何かを形成していく……
胴体、肩、腕、足、尻尾の様に見える部位が形作られ―――首の長い頭部も出来上がる
左腕の籠手以外がオーラで形成された異形はゆっくりと地に降り立ち、闇夜の空に向けて口を開く
コォォォオオオオオオ……ホォォオオオオオオオオオ……ッ!
唸り声にも聞こえる呼吸音は重々しく、その場にいる者の体を
次第にオーラがハッキリとした外郭を成し、復活する『初代キング』の姿が明らかになっていく
オーラが静かに晴れて現れたのは―――全身が骨で構築され、ドラゴンの様な頭部を持った異形
言うなれば人型サイズの骸骨ドラゴン……
頭部だけではあるが、新は1度目にした事がある
ロキと戦う前、自分の意識内にて会った『初代キング』を……
「……ッ。あの時と同じ……骸骨のドラゴン……ッ」
闇夜の下にゆっくりと姿を見せたその異形こそ全ての
『初代キング』―――バジュラ・バロム
眼光を妖しく輝かせ目覚めたバジュラ・バロムは両手の開閉を続け、更に長い頭部を傾けてゴキゴキと音を鳴らす
「オォォォオオオオ……ッ。久し振りの下界だな……。この澄みきった空気―――吐き気と怒りが蘇ってくるぞ……ッ」
全身からドス黒いオーラを滲み出させる『初代キング』は右手を自身の眼前にまで持っていき、力を込めて握る
そして握った手が開かれた刹那―――『初代キング』を中心に突風が巻き起こった
サークル状に発生した突風が新達や英雄派を煽り、建物の破片や
「……ッ。何だよ、今の……?あれだけの動作で突風を引き起こしたのか!?」
「なんて圧力だ……ッ。肌がビリビリしてきやがる……!」
『初代キング』の力量に仰天する一誠と歯を噛み締める新
他のグレモリー眷属も戦慄する中、神風が『初代キング』に近付いていく
「ヤッホ~!久し振りだねぇ、『初代キング』!」
「ん?おぉ、神風か。久しいな。貴様が
「キヒヒッ♪その通り~!感謝してよね~?ここまで来るのにだいぶ時間掛かっちゃったからさぁ。でも、やっと苦労が報われたねぇ♪……で、どうする?」
「そうだな。せっかく復活したのだから、肩慣らしに少し遊んでやるとするか」
そう言うと『初代キング』がギロリと新達と英雄派を見据える
最初の獲物は誰が良いかと品定めをしていると……ヘラクレスが歩みを進めてきた
「ヘヘッ、
「ほう……。命知らずのガキがいるようだな。あまり虚勢を張らん方が身の為だぞ?勢い余って殺してしまうかもしれんからな。そこの者は下がれ」
「は、はい」
先程までヘラクレスと打撃合戦をしていたメタルは『初代キング』の指示に従い、直ぐ様距離を取る
ヘラクレスは笑みを浮かべながら拳同士を打ち付け、『初代キング』は“かかって来い”と言わんばかりに指をクイクイと曲げて挑発する
「復活したばかりで悪いが、もう1回あの世に逝ってなッ!」
ヘラクレスは駆け出すと同時に拳を『初代キング』の顔面に打ち込み―――攻撃した部分を爆破する
何度も何度も拳を叩き込み、砂塵を巻き上げる程の爆発を発生させた
爆発と煙に包まれる『初代キング』……
ヘラクレスは一旦距離を取って追い討ちに
全てのミサイルが爆煙の中にいるであろう『初代キング』に命中し、更なる大爆発を引き起こす
壮絶な攻撃を終えたヘラクレスは高らかに笑う
「ハッハッハーッ!どうよ!?いくら
ヘラクレスは『初代キング』に罵倒を飛ばす
普通の者ならこれだけの猛攻を受ければ粉微塵になっているだろう
“普通の者”なら……
爆煙の中にうっすらと見えてくる異形の影……
高らかに笑っていたヘラクレスの表情が固まる
「―――英雄と名乗っているわりにはくだらん攻撃だな。ただ
全く効いてなかったのか、愉快そうな声音を漏らして爆煙から現れる『初代キング』……
あれだけの攻撃をまともに受けたにもかかわらず、無傷で悠然と佇んでいた……
『初代キング』は『
『
「今、貴様の
ゴッ!
ドガガガガガガガガガガッ!
『初代キング』が右拳を地面に打ち込んだ瞬間、そこから爆撃が連鎖反応するかの如く突き進み、ヘラクレスを呑み込む
爆発の波に呑まれたヘラクレスはなす術無く宙へ放り出され、それを追って『初代キング』が飛び出す
ヘラクレスの
彗星の様に落ちたヘラクレスは血を吐いて直ぐに意識を失う……
メタルの攻撃にびくともしなかったヘラクレスをたった2発で沈めた『初代キング』
その恐ろしさにグレモリー陣営と英雄派の顔色が変わる……
「歯応えが無いのは貴様の方だったようだな。英雄のガキ」
気絶しているヘラクレスを一瞥した後、『初代キング』はズシズシと足音を鳴らして他の英雄派メンバーとグレモリー眷属の方に近付いていく
「さあ、ガキども。せっかく余が復活したんだ。楽しませてくれ。―――神風、貴様はそのまま3人を相手にしろ。赤龍帝と現闇皇はお前にとって因縁深いのだろう?」
「キヒヒッ、良いのかぁい?」
「構わん、その間に邪魔者は片付けておこう」
「オッケ~♪バリー、アドラス、ガーラント、こっちに戻ってきな。そいつらは『初代キング』の遊び相手になっちゃうから♪」
神風に呼ばれた3人の
『初代キング』は手をゴキゴキと鳴らし、牙が剥き出しの口を開く
「悪魔と英雄の狩り、たっぷり楽しませてもらおうか。直ぐにくたばるでないぞ?」
ニヤリと不気味な笑みを見せた直後、『初代キング』は残りの英雄派メンバーとグレモリー眷属の狩猟に取り掛かっていった
新と一誠は直ぐに向かおうとするが、神風が立ち塞がる
「クソッ!そこをどけェッ!」
「キヒヒッ、
神風がゴソゴソと
それは先程見せた赤い砂時計模様の蜘蛛―――ブラックウィドウ
神風はそのブラックウィドウを喰らい、バリボリと噛み砕く
神風がいったい何をしようとしているのか理解出来ない新と一誠、曹操も警戒して槍を構える
一頻り噛み終えた神風は喉を鳴らす様にブラックウィドウを飲み込む……
その直後、神風のオーラに邪悪さと力強さが増し―――爆発的に膨れ上がった
「キャハハハハハハハハハハッ!光栄に思いなよ!ボクの
「「ちょ、
新と一誠が異口同音に驚愕する
そして直ぐに亀裂が入り、そこから光が漏れ出す
繭が破裂して誕生したのは―――
今までの醜悪な姿とは全く違い、寧ろ神々しさを含ませていた
純白を基調とした体躯、獣の牙が上下に生え揃ったかの様な胴体、右腕から伸びる鋭利な刃、左腕に折り畳まれた弓矢の如き武具、両肩から生える荒々しい翼
それはまるで
全身から滲み出てくるオーラも今までの比じゃない……
「―――さあ、始めようか」
無邪気さを少し消した声音で言う神風
新は一誠にアイコンタクトを送り、一誠もそれに応じる
数秒後、2人は攻撃を開始した
「行くぞ、一誠ッ!一瞬の隙も与えるな!」
「分かってる!」
新は
2人の同時攻撃に神風は不敵な笑みを浮かべた
「キヒヒッ!もうそんな攻撃が通用すると思ったら大間違いなんだよッ!」
神風は両足からオーラを噴射して残像が映る程の超高速移動を始め、全ての斬撃とドラゴンショットを余裕で
新と一誠は怯まず斬撃とドラゴンショットを連続で繰り出すが、一向に当たる気配は無い
神風は2人の攻撃を回避しながら左腕の弓矢を展開し、黒く帯びた雷を発生させ凝縮していく
「食らいな!ボルテックアローッ!」
左腕の弓矢から幾重もの雷撃が放たれ、
「「ぐわあぁぁぁああああああっ!」」
絶叫と共に新と一誠は吹き飛び、地面を削りながら転がる
雷撃が止み、神風はゆっくりと2人の所へと歩み寄っていった
倒れている新と一誠を見下ろしながら嘲笑する
「キヒヒッ♪どうだい、ボクの
「ぎ……ッ!クッソォォォッ!」
新は吼えて魔力を
更に周囲を神速で移動しながら新を切り刻み、白い体躯に血が飛び散る
「キャハハハハハハハハハハッ!言った筈だよ!今のボクに君達の攻撃なんか通用しないってねぇっ!」
左腕の弓矢を新の腹に突きつけ、至近距離で雷撃の矢を放つ神風
雷撃は新の腹を突き破り、一直線に後方へ消えていく……
新の口から大量の血が吐き出され、新は膝から崩れ落ちる
「新!新ァァァアアアアッ!」
「キヒヒッ!次は君の番だよ、赤龍帝ェェッ!」
「チクショウ……ッ!チクショオォォォオオオオオオオオオオオオオオッ!」
『
一誠は籠手から音声を何度も鳴り響かせ、左手に赤い魔力を集めていく
それを見た神風は含み笑いをしてから両手を広げ、胸部となっている獣の牙に膨大なオーラを集束し始めた
禍々しいオーラが渦巻き、神風は一誠に向かって凝縮されたオーラを解き放つ
「―――サンダースマッシャァァァアアアアアアアアアッ!」
ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!
神風が先に胸部の牙から雷を帯びた黒いレーザーを放射
一誠も負けじとフルパワーのドラゴンショットで対抗する
2つの極大な魔力が衝突するのかと思いきや―――神風の黒い超雷撃がドラゴンショットを一方的に打ち消していく……
目の前の信じられない事態に一誠は絶句、硬直してしまい―――黒い雷撃が一誠の全身を飲み込んだ
「ぐわあぁぁぁああああああっ!あぁぁぁがぁぁぁぁあああああああああああああっ!」
今まで聞いた事も無いような断末魔が上がり、一誠の鎧が木っ端微塵に砕け散る……
雷撃が静まり、神風はフゥッと息を吐く
先程の雷撃はどうやら体力の消費が激しいようだ
しかし、一誠の全身はものの見事に焼け焦げ、至る所から血が噴き出している……
細かく震える一誠の体が前へ倒れ込む
「ぁ……ぁぁ……っ」
まだ意識はあるようだが、とても立ち上がれる状態ではない……
新も意識は絶たれていないが、腹を撃ち抜かれたのでまともに動かす事も出来ない……
2人を圧倒した神風は腹を押さえて含み笑い、後に哄笑を上げた
「キィィィィヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャアァァァアアアアアアッ!どうだぁい!?これがボクの
哄笑を終えた神風が右腕の刃を曹操に向ける
「さぁぁて、次は君の番だよ。
「……これは予想以上に厄介な相手となりそうだな」
「ほう……神風、
神風の背後に『初代キング』の姿が
後ろを見てみると英雄派のジークフリートとジャンヌ、アーシアと九重を除くグレモリー陣営+イリナ&ダイアン―――全員が地に倒れ伏していた……
全員が全身血だらけ傷だらけとなっている……
「クハハハハハッ。神風、この『
「キヒヒッ♪当たり前だよ~。クソ堕天使総督の頭じゃ絶っっっ対に作れない代物、そんじょそこらの
「しかし、もう殆どが呆気なく終わってしまったな。昔の悪魔どもはもっと殺気に満ち溢れていたのだが……拍子抜けだ。それだけ奴らの力が衰えたのか、それとも我らが力を付け過ぎたのか……。いずれにせよ、この分だと京都を滅するのも
『初代キング』はつまらんとばかりに大きな
神風が「どうしたの?」と訊くと、『初代キング』はこう返した
「神風、スマぬがさっきの話は無しだ。あの
「え~、マジですかぁ?せっかく借りを返そうと思ってたのにぃ」
「ならば、あの黒炎の龍―――ヴリトラとやらを仕留めてはどうだ?あやつも悪魔どもの差し金であろう?」
『初代キング』バジュラ・バロムが視線を移す
見てみると―――龍王化した匙が九尾蜘蛛の9本の尻尾に縛られ、苦痛の声を漏らしていた
それを見た神風はやれやれと呆れた感じで溜め息を吐く
「あ~あっ、これじゃ本当に拍子抜けだよね。あいつら弱過ぎ」
「まあ、仕方あるまい。それが今の悪魔どもの力量と言う事だ。―――
バジュラからの質問に曹操は肩を聖槍でトントンと軽く叩きながら答える
「強い。強いよ、彼らは。悪魔の中でもなかなかの物だ。けど、その力では
「聖槍使い、貴様らは我々
「―――勝つさ。悪魔や堕天使、ドラゴン、妖怪、
聖槍の切っ先をバジュラに向ける曹操
バジュラは大口を開けて哄笑する
「クハハハハハッ!面白いッ!脆弱な人間風情が何処まで
バジュラの全身から膨大な闇のオーラが噴き出し、両腕を広げながら飛び立つ
曹操は飛び退いて体勢を立て直し、切っ先にオーラを集中させた聖槍で貫こうとする
聖槍の刃は飛び出してきたバジュラの胸に突き刺さるが―――
「……バカな。『
「確かにその聖槍とやらの威力は凄まじい。並大抵の異形なら塵と化すだろう。だが……余を誰だと思っておる?余は全ての闇を喰らい、闇を操る王。欲望を無限に
バジュラは全身から放出した闇のオーラを右手に纏わせ―――巨大な闇の爪を具現する
闇の爪を曹操に向かって振り下ろす
曹操は咄嗟に聖槍を引いて自らも飛び退き、闇の爪の
バジュラは地面に大きな爪痕を刻み、曹操を追い掛けるべく飛び出していった
聖槍と闇の爪が激しくぶつかり合い、攻撃の余波が疑似京都を揺さぶる
神風はその様子を見てキヒヒッと笑う
「あ~らら、テンションフォルテッシモって感じだね~。こりゃ邪魔しない方が安全かな?さ・て・と」
「神風、あのヴリトラを始末しやすか?グレモリーんトコの癒しの聖女さんが仲間を回復させていやすが……どうしやす?」
ガーラントの進言に神風は視線を移すと―――確かにアーシアが血まみれになった仲間達の回復に勤しんでいる姿が視界に入る
必死に呼び掛け、涙を流しながら傷を癒していた……
神風はその様子をチラッと見た後、“もう良いよ”と言った感じで首を横に振る
「どうせ回復させたところでボク達には勝てないんだし、放っておいて大丈夫だよ。それより―――あのヴリトラを今の内に始末しちゃおっか♪」
アーシアを意に介さない神風が左腕の弓矢を構え、先端に雷撃のオーラを集束させていく
狙うはヴリトラ……
いざ雷撃の矢を放とうとした刹那―――神風の顔面に小さな
神風は当たった部分に手を当て、火球放った犯人―――九重に視線を移した
「……何、君?邪魔したいの?邪魔するんだったらぁ―――殺すよ?」
怒気を含めた声音を放つ神風に九重は一瞬ビクッと震えるが、それでもそうはさせんとばかりに両手を広げて立ち塞がる
「母上を……母上を元に戻せ!このうつけものどもっ!」
「なになになぁにぃ?ボク達に歯向かうってのぉ?君みたいなチビで雑魚の狐ちゃんが?キャハハハハハハハハハハッ!笑っちゃうよね~ッ!ねえ、皆も笑ってあげなよ」
哄笑する神風に続き、アドラス、メタル、ガーラント、バリーも九重を嘲笑う
九重が神風達に勝てる筈が無い……
分かりきっているだけに悔しく、歯噛みするしかなかった……
それでも九重はそこから1歩も退かない
「そこを退きなよ、狐ちゃん。マジで死ぬぞ?」
「ど、退かぬ!絶対に退かんぞっ!貴様らに母上を……この京都を好きにはさせんのじゃっ!」
「や、やめろ……九重……ッ!」
新と一誠が声を絞り出して九重に警告する
腹に穴を開けられた新、全身から煙を上げている一誠
その2人の呼び掛けに九重は首を横に振って叫ぶ
「私も九尾の娘じゃ!母上とお主達が苦しんでおるのに……何もせぬなど出来んのじゃっ!」
「キヒヒッ♪健気だねぇ~、狐ちゃん。でもさぁ、残念だけど君なんかが喧嘩売ってきたところでな~んにも出来ませぇ~ん♪」
神風は九重に見向きもせず左腕の弓矢をヴリトラに向ける
九重は小さな火球を放ち続けるが、勿論効く筈も無い……
よほどウザかったのか、神風の機嫌がどんどん悪くなっていく
「……あのさぁ、もう殺して良い?マジでウザくなってきたんだけど」
「なんなら、あっしが狐の遊び相手になりやしょうか?」
「…………良いよ。好きにやっちゃって」
神風から了承を得たガーラントはズンズンと九重の方へ歩いていき、右腕を伸ばして九重を捕まえる
「何をするのじゃ!離せっ!」
「はいはい、弱っちい狐の嬢ちゃんはおとなしくしててくださいやし。じゃねぇと―――死にやすよ?」
ガーラントは伸ばした右腕を蛇に変化させて九重に巻き付き締め上げた
九重は締め付けられる圧迫感に苦痛の声を漏らす
「……っ!あぁ……っ!が……っ!」
「九重っ、九重……ッ!」
一誠がガーラントの所業に怒りを
新も腹部の傷穴から出てくる血を
足を撃たれた新と一誠は再び倒れ込み、神風が吐き捨てる
「往生際が悪いんだよ。もう立ってるだけでもやっとのくせにさ、見苦しいよ?そこで無様にくたばってなよ」
神風は直ぐにそっぽを向いて、九尾蜘蛛の尻尾に縛られているヴリトラに照準を合わせた
「母上……っ!目を、覚ましてくだされ……っ!九重です……っ!九重はっ、ここにいます……っ!母上ぇぇぇえ……っ!」
「チッ、鬱陶しい嬢ちゃんでやすね」
ガーラントに締め付けられながらも九重が必死に呼び掛けるが、九尾蜘蛛は視線すら合わせようとしない……
アーシアは涙を流しながら必死に仲間達の治療を続けている……
「クソ……ッ!クソ…ッ!こんな所で……諦めてたまるか……ッ!」
新は無理をして立ち上がるが、撃ち抜かれた足のせいで満足に動けない
一誠も自分の体に鞭を打って鎧を形成し直し、背中のブーストを噴かして突撃していった
しかし、如何せん勢いが出ず―――スピードもかなり遅い
気配に気付いた神風は右腕から伸びる刃で一誠の前面を切り裂き、更に脇腹を蹴って吹っ飛ばす
血を飛び散らせながら一誠はアーシアの前まで転がる
「―――ッ!イッセーさんっ!」
アーシアは直ぐに一誠の回復も始めたが、立て続けに回復を
一誠は悔しさのあまり兜の中で涙を流し続けた……
「……なんで俺は弱いんだ?肝心な時にいつも……っ!九重のお母さんを―――助けるって言ったのに……っ!」
自分の情けなさを呪うかの如く
英雄派も神風一派も新達を全く相手にしていない……
ここまで来たのに圧倒され、見向きすらされないこのザマ……
一誠は悔しさのあまり地面に握り拳を打ち付けた……
そんな絶望的な状況に落ちたにもかかわらず、新は足から血を噴かせながらも立ち上がった
だが、新自身も既にボロボロである……
腹に穴を開けられ、足も撃ち抜かれて骨は折れている
鎧も大部分が破損しており、顔からも流血……
そんな痛々しい姿でも、彼の目にはまだ戦える事を表す戦意の炎が
「約束は……死んでも守らなきゃならねぇ……ッ!本当に大事な物を守りたいならっ、こんな所でくたばる訳にはいかねぇんだ……ッ!そうだろ、一誠ッ!?」
新は一誠に檄を飛ばす
「お前は
「新ァ……ッ!分かってる……分かってるよ……ッ!ここで立たなきゃいけない事ぐらい……ッ!」
“諦めたくない!”
“ここで終わりなんて嫌だ!”
心の底から沸き上がる思いはあるものの、奴らに手が届かない……
その
『泣いてしまうの?』
誰かの声が聞こえてきた……
遂に出てきました『初代キング』!
更に神風もパワーアップして大ピンチに……!
次回から新と一誠が反撃に出ます!
因みに『初代キング』の外観イメージはマジレンジャーの冥府神ドレイク。
超魔身神風はグレートワルズ+サジタリウス・ゾディアーツをイメージしました。