「新!よくも嘘の情報を教えやがったな!」
「うるせぇ。俺だってあの後大変だったんだよ」
一誠は嘘情報の件で新に問い詰めるが、新は適当に受け流しながら歩く
ホテルを抜け出たグレモリー眷属+イリナはアザゼル先導のもと、街の一角にある料亭『
どうやらここに京都入りしているセラフォルー・レヴィアタンがいるらしい
中に通され、和の雰囲気が漂う通路を抜けると個室が現れる
戸を開けると着物姿のセラフォルー・レヴィアタンが座っていた
「ハーロー!新くん、
いつもながらテンションの高い挨拶をくれるセラフォルー・レヴィアタン
着物姿もなかなかの物で、長い髪も和服に合うよう結っている
匙を含めたシトリー眷属も来ていた
「よう、匙。京都はどうだ?午後何処か行ったか?」
「こちとら生徒会だ。今日の午後は先生方の手伝いで終わったよ」
匙が溜め息混じりにそう言うが、それは生徒会メンバーであるが為に仕方無い
「ここのお料理、とても美味しいの。特に鶏料理は絶品なのよ☆新くん達も匙くん達もたくさん食べてね♪」
新達が席に着くや否やセラフォルーがどんどん料理を追加してくる
新達はホテルで夕食を済ませたばかりなのだが、料理の美味さに箸が進む
「……で、セラフォルー様は何でここに来たんだ?」
「京都の妖怪さん達と協力態勢を得る為に来ました☆」
新の問いにセラフォルーは横チェキで答えるが、箸を置いて可愛い顔を少々陰らせる
「けれどね……。どうにも大変な事になっているみたいなのよ」
「大変な事?」
「京都に住む妖怪の報告では、この地の妖怪を束ねていた
新達はその一言を聞いて昼間の出来事を思い出した
『母上を返せ!』と訴えてきた少女の言葉が鮮明に
「――――っ。それって……」
一誠の言いたい事が分かったのか、セラフォルーがコクリと頷く
「ええ、アザゼルちゃんからあなた達の報告を耳にしたのよ。恐らくそう言う事よね」
アザゼルが
「ここのドンである妖怪が
「十中八九『
セラフォルーも真剣な面持ちで言う
昼間の獣耳の少女――――九尾の娘の母親が『
新達を襲撃してきたのはその連中だと勘違いしたのだろう……
「お、お前ら、また厄介な事に首突っ込んでるのか?」
「バカ言うな。こっちは巻き込まれた側――――謂わば被害者だ」
目元をひくつかせる匙の言葉に首を軽く横に振って返す新
アザゼルが忌々しそうに吐き捨てる
「ったく、こちとら修学旅行で学生の面倒見るだけで精一杯だってのに。やってくれるぜ、テロリストと
『よく言うよ……。舞妓と遊ぶぞーって速攻で消えてたくせに……』
『職務放棄かよ。後でチクって減給処分でも食らわせておくか?』
新と一誠はやれやれと言った感じで愚痴をこぼし合い、セラフォルーがアザゼルの杯に酒を注ぎながら言う
「どちらにしてもまだ
「了解。俺も独自に動こう。ったく、京都に来てまでやってくれるぜ。クソッタレどもが」
再び酒を飲みながらアザゼルは毒づく
舞妓と遊べなくなるかもしれないのが相当許せないのだろう……
修学旅行の初日から厄介事に巻き込まれてしまった新達
出来る事なら無事に修学旅行を終えたい所だが、何かやらないといけないと言う衝動に駆られる
「あ、あの、俺達は……?」
一誠が恐る恐る訊くと、アザゼルは息を吐きながら苦笑した
「とりあえず、旅行を楽しめ」
「え、でも……」
遠慮がちな一誠の頭をアザゼルが手でわしゃわしゃと撫でる
「何か遭ったら呼ぶ。でも、お前らガキにとっちゃ貴重な修学旅行だろ?俺達大人が出来るだけ何とかするから、今は京都を楽しめよ」
アザゼルの一言に一誠はグッと感慨深い衝撃を受けてしまった
普段はちゃらけた総督なのに、こう言う時だけ良い事を言ってくれる
「そうよ、
セラフォルーも笑顔でそう言ってくれる
余計な心配を掛けない為にも新達は観光を継続する事に決めた
「じゃあ、そろそろホテルに戻ろうか。明日は清水寺とか色々見て回るから早いし」
「あ、一誠達は先に戻っててくれ。俺はまだアザゼルに話があるんだ」
「話?話って何だよ?」
「まあ、ちょっとした大人の語り話ってヤツだ」
―――――――――――
「なるほど……お前の中に『初代キング』の側近とやらがいるのか」
「あぁ、新幹線の中で眠ってたら奴が来たんだ。『俺に想像もつかない様な潜在能力がある』って言い残してな……。んで、籠手を出してみればこのザマだ」
一誠達が一足先にホテルへ戻った後、新は酒を飲みながら籠手を出す
新幹線の中であった事がどうしても気掛かりになっており、アザゼルには一応話した方が良いかもしれないと思って切り出したのだ
羽の意匠が加わった籠手を見たアザゼルは顎に手を当てて考え込む
「肉体は消滅したが、魂になって新の体内に定着出来たってのか……?そもそも『
「で、どう思うんだ?アザゼル」
「ん?あー、新。お前の職業柄気になってしまうのは仕方無い事だが……それについては修学旅行を終えてから考える方が良いだろう。調べようにも大掛かりな調査と機器がいるかもしれん」
「おいおい、『
「確かにそうだ。だがな……お前も
アザゼルの言葉に新は何も言い返せなかった
新はバウンティハンターと言う職業上、数ヶ月前までまともに遊んだ事など無かった
いや、遊んだとしても心の底から楽しめる余裕が無かった……
賞金首を探して狩る、それが今までの新が送ってきた日常
だが、今は
その仲間達と共に送る修学旅行を台無しにしたくはない……
諌められた事で“今”の大切さを思い知らされた新は自嘲する
「俺もまだまだガキだな……。自分の事ばかり考えて、周りを見てなかった。……そうだよな、今はこの修学旅行を楽しまないと損だよな」
「そう言う事だ。ほら、飲め飲め」
アザゼルが酒を勧め、新は
京都の
「すご~い!新くんってお酒に強いのね☆」
「なかなかの酒豪じゃねぇか。新、お前今まで酔った事は無いのか?」
「あぁ、よっぽど強い酒を飲まない限りは酔わねぇ」
新はそう言って4本目の酒を飲む
そこへセラフォルーが新の隣へ寄ってきた
「新くん☆もっと美味しいお酒があるけど飲みたい?」
「どんな酒だ?」
「それはね……コ・レ♪」
シュルシュル……ッ
セラフォルーは帯を緩めて着物をはだける
腰まで着物がはだけた事により、セラフォルーのおっぱいが丸見えとなった
アザゼルも突然の脱衣に「おおっ」と声を漏らし、ガン見する
「セラフォルー様、ブラ着けてなかったのか?」
「着物は下着を着けるとラインが出てカッコ悪いから、着けてないの♪ちょっと待っててね……」
セラフォルーは右手で自身の胸を寄せて谷間を作り、その谷間に徳利の酒を注ぎ込む
谷間に溜まっていく酒……
準備を整えたセラフォルーは上目遣いで新を誘った
「これがお酒の1番美味しい飲み方だって……。新くん、飲んでみたい……?」
新は考えるよりも体を動かし、酒が溜まった谷間に顔を近付けた
それは愚問だと言わんばかりに近付き、舌で酒を味わう
最初は小さく少しずつ堪能し、徐々に吸い上げていく
卑しい
「おーおーっ、まさかこんなオイシイ場面を見れるとはな。く~っ、俺も混ざりて~!」
「ぅん……っ。ぁ……っ、はぁ……っ。新くんが……私のおっぱい……舐めてる……っ。……ぁんっ!そ、そこは……ダメぇ……っ」
「ふぅっ……絶品だったぜ。セラフォルー様」
「……お粗末さまでした☆」
顔を紅潮させるセラフォルーに新の性欲が掻き立てられる
もう一口イケそうと踏んでセラフォルーに迫ろうとしたその時――――
「新さん、いつまで話してるんですか?早くホテルに戻っ……て……?」
「「「あ」」」
戸を開けてきたのはロスヴァイセ
一誠達と先にホテルに戻ったのだが、恐らく新が遅いので連れ戻しに来たのだろう
そんな彼女が目にしたのは飲んだくれているアザゼル、着物をはだけて裸同然の格好でいるセラフォルー
そしてセラフォルーに迫ろうとしている新だった……
「な、な、なななななな何をしているんですかーっ!?」
「これか?これは
「そう言う事を聞いてるんじゃありません!新さん!あ、あなた……レヴィアタン様になんて破廉恥な事を!」
「大丈夫、私はまだ処女だよ☆」
「それ以前の問題です!だいたい新さん、あなたは学生なんですからお酒を飲んじゃいけません!未成年の飲酒は法律で禁じられているんです!」
「俺、見た目は学生でも中身は大人って事で」
「そんな屁理屈が通るわけ無いでしょう!?アザゼル教諭!あなたも教師なんですから止めてくださいよ!」
「え~、別に良いじゃねぇか。お前だってさっき新と
アザゼルが先程ホテルで起こった事で茶化すと、ロスヴァイセは顔を真っ赤にして狼狽し始めた
「…………ッ!と、とにかく!戻りますよ新さん!いつまでもここにいたらダメダメになってしまいます!リアスさんに言い付けますよ!?」
「ぐ……っ、それは困る……。まあ、話も終わったし、大人しく引き上げよう」
腰を上げた新はロスヴァイセに引っ張られながら部屋を出て、ホテルへ戻っていった
――――――――――
「良いですか、新さん?修学旅行では団体行動が必須なんです。1人が身勝手な行動をすれば同じ班の人達に迷惑を掛ける事になります。そもそも新さんは普段から健全な学生の領域から逸脱し過ぎです。飲酒は勿論、競馬などの賭け事は一般の高校生に相応しくありません」
ホテルに戻って早々、新はロスヴァイセから説教を受けていた
彼は昔から説教の
「――――と言う事なのですよ?新さん、聞いてました?」
「え?あぁ、聞いてた聞いてた」
「本当ですか?まあ、良いでしょう。これに懲りたら自粛してくださいね。では、もう消灯時間ですので寝ましょうか」
「あぁ、そうしよう。眠くて
新は即座にベッドに入って電気を消し、ロスヴァイセはホテル備え付けの浴衣を持って脱衣場へ向かう
ジャージは先程のひと悶着で新に喰われたので、着る物はそれしか無かった
「い、言っておきますけど……覗いたら許しませんよ……?」
「分かってるって。覗かねぇし、先に寝るから早く着替えてきな」
ロスヴァイセは新に警告してから脱衣場に入り、スーツを脱いでいく
ハンガーに干してから浴衣を着込み、新を警戒しつつ脱衣場を抜け出した
スー……スー……
微かに聞こえてくる寝息
見れば新は僅か数秒で眠りに落ちていた
先程飲んだ酒で眠気が早まったのだろう
「もう、寝てるんですか……?」
あまりにも呆気ない寝落ちを不審に思ったロスヴァイセは近付いて新の寝顔を確認する
新は本当に寝ており、寝息もハッキリと確認出来た
ロスヴァイセは一応安心したものの、何故か腑に落ちない心境に……
その後、新の寝顔をジッと眺める
「……新さんの寝顔ってこんなに無防備なんですね……。普段は凛々しく見えてたのに……」
普段の新とは違うギャップにロスヴァイセの視線に熱が帯び始める
好奇心を揺り動かされ、もっと顔を近付けていく
「……これが男の人の……新さんの匂い……っ。汗と……何なのでしょうか……?よく分からないけど、凄く安心させられる匂いです……」
夢中で新の匂いを嗅いでいく内に、体が自然とベッドの中に吸い込まれる
掛け布団を
途中で我に返り慌てふためくが、先程新に抱きかかえられた感触を思い出し、ロスヴァイセを先へ先へと
そして遂に新の隣で寝そべる事に成功した
新の胸板に手を添え、更に顔を近付ける
「新さんの心臓の音が聞こえる……。胸板もガッシリしてて、凄く
ロスヴァイセは教師の立場を忘れて新の
新の心音、温もりを感じてる内に自然と
――――――――――
翌朝、目を覚ました新は状況を理解出来ずにいた
“何故ロスヴァイセが俺のベッドで寝てるんだ?”と……
隣のベッドには彼女が入った形跡が全く見当たらない
そこから“ロスヴァイセは最初から新のベッドで寝ていた”と言う結論が割り出された
新は起こそうと手を伸ばしたが、気持ち良さそうに寝ているロスヴァイセの安らかな表情を見て――――手を引っ込めた
彼女の髪をそっと撫で、起こさない様にベッドから抜け出る
「起きた時の反応を見てやろうかなと思ったが、起こすのも可哀想だな。良い寝顔なんだ。もう少し夢を見させてやろう」
いつもならちょっかいを出す新だが、ロスヴァイセの寝顔があまりにも可愛く気持ち良さげだったので見逃す事に
なるべく音を立てない様に着替え、準備を終えてから部屋を後にした
――――――――――
「じゃあ、野郎ども!行くわよ!」
「「「おおーっ!」」」
「朝からノリが良いな、ふわぁ……」
桐生がメガネをキラリと輝かせながらバス停を指差し、新を除いた男子陣が雄叫びを上げた
2日目は京都駅前のバス停から清水寺行きのバスに乗る事から始め、1日乗車券を買って他の生徒達と共に並びながらバスを待つ
乗車した後、見知らぬ街の風景を眺めながら下車予定のバス停に到着
周辺を軽く探索してから坂を上って清水寺を目指す
「ここ三年坂って言って、転ぶと3年以内に死ぬらしいわよ?」
桐生がそう言うとアーシアが「はぅぅぅっ!それは怖いです!」と怖がって一誠の腕に掴まった
確かにアーシアはドジな所が多いので一誠の腕に掴まるのが安全だろう
微笑ましい光景を見ていると、ゼノヴィアも新の腕に掴まってきた
「どうした、ゼノヴィア?」
新が怪訝そうに訊くと、ゼノヴィアは表情を変えずとも若干震えて言う
「……日本は恐ろしい術式を坂に仕込むのだな」
「ただの言い伝えだ。こんなのをいちいち信じてたらキリが無い。なんなら、試してやろうか?そこのバカ2人を転がして」
「やめろ竜崎!俺達を実験台に使うな!」
「お前に転がされたら、3年どころか今すぐ死んでしまいそうだ!」
生け贄に差し出されそうになる松田と元浜が激昂しながら後ずさる
冗談を交えつつ坂を上り切り、仁王門を
「見ろ、アーシア!異教徒の文化の
「は、はい!歴史を感じる
「異教徒バンザイね!」
アーシア、ゼノヴィア、イリナの教会トリオが興奮気味に失礼な事を言い合っていた
新と一誠も清水の舞台から景色を眺める
「ここから落ちても助かるケースが多いらしいわよ」
「へー。つーか、落ちる人いるの?」
「さあね。落とす人は私らのすぐ側にいるみたいだけど」
桐生の言葉に嫌な予感を
「何してんのお前は!?」
「助かるケースが多いなら、見てみたいと思ってな」
「やめてやれよ!」
ドSな新の暴走を止めつつ、安全と合格の祈願や恋愛成就を願う小さな
賽銭箱に小銭を入れて細やかな願いをした
「兵藤、アーシアと恋愛のクジやってみたら?」
桐生に促され、一誠とアーシアは恋愛のクジを引く
「大吉だって。将来安泰。俺達お似合いだってよ、アーシア」
一誠が
「はい!嬉しいです!……嬉しいです、本当に……」
クジを大切そうに抱いて涙ぐむアーシア
その様子に一誠も嬉しくなり、もう一度ここの仏様に拝んでおく
「
「良かったな」
「ええ、良かったわ」
「私も何だか安心したわ」
横で新が茶化す様に言い、ゼノヴィア、イリナ、桐生が嬉しそうに頷いていた
「……俺達、蚊帳の外じゃね?」
「泣くな、松田よ。ホテルに帰ったらイッセーを殴れば良い」
松田と元浜が隅でどんよりと重い空気を
その後は寺を一回りし、記念の品を手軽く買ってからバス停に歩みを進めた
「次は銀閣寺。パパッと行かないと時間なんてすぐに過ぎてしまうわよ」
桐生が時計を見ながら先導する
気付けば時刻はいつの間にか午前10時を過ぎていた
新達は銀閣寺行きのバスに乗り、清水寺を後にした
――――――――――
「銀じゃない!?」
銀閣寺に到着し、寺を見たゼノヴィアが開口一番に叫んだ
そのショックぶりは尋常じゃなく、開いた口が閉じない程だった……
「そう言えばゼノヴィア、家で『銀閣寺が銀で、金閣寺が金。きっと眩しいんだろうな』って目を輝かせてたな」
「そ、そうなのか……」
新と一誠がヒソヒソ話し合う中、アーシアが震えるゼノヴィアの肩を抱いて慰め、桐生が銀閣寺について説明する
「建設に
清水寺と同じく銀閣寺も一回りしようとした時、静かな場所に似合わないギターの音が聞こえてきた
一誠は何処か聞き覚えのある音楽に耳を傾ける
「この
一誠は思わず音のする方角へ駆け出し、新達も一誠の後を追い掛ける
人だかりがある地点に辿り着き、人混みを掻き分けて見ると……そこには一誠のダチとも言うべき男――――否、
「Yeah!今日は俺の遠征ストリートライブに来てくれて嬉しい
大声で観客達に手を振るのは前髪の中央部分を白く染めたオールバックのイケメン
それは以前
一誠は親友との思わぬ再会に驚愕した
――――――――――
「よっ、久し振りだ
「俺もだよ!何も急にいなくなる事は無いだろ?」
「
ダイアンが手を合わせて一誠に謝る
その後は桐生からサインをねだられ、色紙や土産品に自分の名前を書き込んでいく
サイン入りの土産品を渡した所でダイアンが話を切り出す
「ところ
「修学旅行さ。ダイアンはライブで京都に来てたのか。いや~、親友が有名になってくれると俺も鼻が高いよ」
「
先程の明るい様子から一転、ダイアンの真剣な面持ちに一誠達は怪訝そうに
「ある任務って?」
「最近ビショップの
神風の名を聞いて新達はピクッと反応する
神風とは『2代目キング』が纏めている
最後に対峙したのはディオドラ戦で、彼は裏で『
『
新が舌打ちして毒づく
「あのクソ野郎まで京都の何処かに潜んでやがるのか……」
「ダイアン、神風の目的とか分からないか?」
「そこまではまだ分かってな
「本当か!?助かる!」
「困った時はお互い様、
ダイアンは足早にその場を去っていった
本来なら敵である筈の
「良いダチを持ったな」
「あぁ」
―――――――――――
「金だっ!今度こそは金だぞ!」
金閣寺に到着し、寺を見たゼノヴィアがまた開口一番に叫んだ
先程とは一転、「金だぞぉぉっ!」と物凄くはしゃいでいた
他の生徒達も金閣寺に来て撮影しており、松田も夢中でカメラで撮っている
新と一誠も写メールを駒王学園にいるリアス達に送信
見て回った後はお土産を買い、お茶屋で一休みする
「どうぞ」
和服の女性が淹れたての抹茶と和菓子を運んできてくれた
抹茶のほろ苦さが和菓子の味をより引き立てる
「うん、悪くないわね」
「少し苦いです」
「……金ピカだった」
イリナは抹茶を気に入り、アーシアは少し苦手かちょっとずつ飲む
一方、ゼノヴィアは金閣寺によっぽど感動したのか目を爛々と輝かせていた
「ゼノヴィア、記念に祈っておきましょう!」
「そうだな」
「私もお祈りします!」
イリナの提案にゼノヴィアは頷き、アーシアも続いて「「「ああ、主よ!」」」と天に祈った
時刻は既に午後2時、時間が早く感じる
「キャー、痴漢!変態!」
「お、おっぱいを!おっぱいをくれ!」
女性の悲鳴を聞いて新と一誠がお茶屋を出てみると、男性が係の人に取り押さえられていた
同じく休憩所から顔を出している松田が呟く
「痴漢かー。そう言えばさ、朝のテレビニュースでもやってたぜ、痴漢報道。
そう言う松田に元浜がメガネをくいっと上げながら物申す
「お前が何を言う松田よ。行きの新幹線で俺に襲い掛かってきたくせにな」
「いや、何だかさ、あの時は寝ぼけていたと言うか、意識がおかしかったと言うか、やたら乳に触りたかったんだよな。何だろう、あの感覚」
「それは青春だな」
「なるほど、若さゆえの
そんなやり取りを見ていると、ふいに新のスマホが鳴った
「もしもし。どうした、朱乃?」
『もしもし、新さん。いえね、大した事ではないのだけれど……。ちょっと気になった事を小猫ちゃんが言っていたの』
「気になる事?」
『さっき金閣寺の写メを送ってくれましたよね?その写真の写っているらしいのよ』
「……写っている?」
『ええ、風景に狐の妖怪が何体か写っているみたいなの。何か起こっているの?狐の妖怪自体は京都では珍しくないのだけれど……』
朱乃の少し心配げな声音に新は周囲に対する警戒心を強めた
「大丈夫だ、心配するな」
『そうですか。では……何か遭ったら連絡をくださいね?』
やり取りを終えて電話を切り、新は先程の写メを確認
普通の金閣寺にしか見えないが、猫又の小猫だからこそ分かるのだろう
怪訝そうに窺う一誠に先程の会話内容を伝え、アーシア達にも伝えようとした
お茶屋の方を振り返ると――――松田、元浜、桐生が眠っていた
疲れからの眠りではない……現にアーシア達は起きている
それどころか、ゼノヴィアが女性店員を睨み付けていた
女性の方に視線を送ると……女性の頭に獣耳が生えているのが見えた
尻尾も確認し、周りは既に獣耳を生やした連中で普通の観光客はその場で倒れ込むように寝ている
「どうやら金閣寺も縄張りだったようだな」
新が低い声音で攻撃態勢を取り、ゼノヴィアもバッグから祐斗に貰った聖なる短剣を取り出してアーシアを背後に隠す
一誠も左手を構え、籠手を出現させようとした時――――「待ってください」と聞き覚えのある声が
そこにはロスヴァイセがいた
「ロスヴァイセ、どうしてここに?」
新を見たロスヴァイセが一瞬顔を赤くし、気を取り直して息を吐きながら言う
「え、ええ。あなた達を迎えに行くようアザゼル先生に言われました」
「先生に?何が起こっているんですか?」
一誠が周囲に目を配らせながら訊く
不思議な事に、周囲の妖怪達からは昨日襲ってきた時の様な敵意を感じない
その事に気付き、攻撃態勢を解く
「停戦です。と言うか、誤解が解けました。――――九尾のご息女があなた達に謝りたいと言うのです」
ロスヴァイセがそう言った直後、獣耳の女性が1人――――前に出て深く頭を下げる
「私は九尾の君に仕える狐の
「ついてきて欲しい?何処に?」
「我ら京の妖怪が住む――――裏の都です。魔王様と堕天使の総督殿も先にそちらへいらっしゃっております」
どうやら観光してる間にアザゼルが誤解を解いてくれていたようだ
―――――――――――
「キヒヒッ♪やっほ~、お疲れさ~ん♪首尾はどうだい?」
「問題ねぇよ。お前が言ってた西の
「私も東の結界石の破壊に成功したよ。彼と同じく妖怪達に邪魔されたが、直ぐに片付いた」
「あっしも南の結界石を破壊しやした。邪魔が入りやしたが、問題無く始末しやした」
「後は封印の
「キヒヒッ、そ・こ・で♪完成したばかりのコレの出番だねぇ」
「……?何だ、その不気味な籠手は?」
「ボクが製作した
『
「キヒヒッ……!じゃあ行くよ?最後の結界石、大破壊作業開始~!」