まあ、それは置いといて……伊坂との戦いラストです!
「な、なんて凄まじい爆発だ……っ!あの男……まだこれ程の力を出せるのか……ッ!?」
爆風と衝撃に煽られながらレオ閣下は恐々と言葉を絞り出す
自分達では到底届かないのかもしれない力の差を見せつけられ、
やがて爆煙が晴れていき、新と伊坂の姿が皆の視界に入った
新は先程の
更に伊坂の
一方、伊坂は右肩が少し削られただけで――――その傷も直ぐに自前の再生力で完治
つまり、望んだダメージを与えられなかったと言う訳である……
「……チッ、やっぱり直ぐ再生するのか」
「なるほど。剣の刃に自らの魔力を集中させ、そのまま破壊力に変換した強力な斬撃を放つ――――と言った所か。シンプルな構造でありながら破壊力のある剣技、見事な物だ」
「……一瞬でそこまで解析されるとは思わなかったぜ」
「この無価値な世界を調査し尽くした私には簡単過ぎるよ。……さて、長話はこのくらいにして始めようじゃないか。無価値な世界を懸けた勝負を」
「あぁ、そうさせてもらおうか」
新は再び剣を構え、闘志に満ちたオーラを放出し始める
いざ戦おうとしたその時、シンクやナナミ、レベッカが新の横へ並び立つ
「……っ?シンク、ナナミ、レベッカ」
「アラタさん、僕達も一緒に戦わせてください」
「ここで頑張らなきゃ勇者の名が泣いちゃうよね」
「私達も守ります!この国を、フロニャルドを」
フィリアンノ、ガレット、パスティヤージュ――――三国の勇者が揃い踏みとなり、新は勿論共闘の申し入れを承諾した
すると、3人はポケットからそれぞれ色の違うクリスタルの様な結晶を取り出す
シンクのは紅、ナナミのは緑、レベッカのは紫と言うカラーリングだった
「おい、何なんだそれ?」
「これは僕達をパワーアップさせる英雄結晶と呼ばれる物です。アデルさんから貰いました」
「私もアデルさんから貰ったよ。精霊結晶って言うんだ♪」
「私はヴァレリーさんからこの魔神結晶を貰いました」
シンク、ナナミ、レベッカがそれぞれの結晶を前に掲げると、3つの結晶からまばゆい光と強いオーラが解き放たれる
三国の勇者は力強い言葉――――発動の台詞を読み上げた
「英雄結晶ッ!」
「精霊結晶ッ!」
「魔神結晶ッ!」
「「「発動ーーーーッ!」」」
それぞれの結晶は光と化して3人を包み込み、変化が起こる
少年少女の体が急成長して成人となり、放っていたオーラも強さを増していた
変貌を遂げたシンクは如何にも勇者らしい凛々しさとなり、炎のオーラを揺らめかせる
ナナミはレオタードの様な衣装に身を包み、水と氷のオーラを漂わせる
レベッカは結っていた髪が長いストレートヘアーとなり、瞳に☆マークが出現
パワーアップを果たした三国の勇者に新は目玉が飛び出しそうなくらい驚いた
「す、スゲェな……。この世界は何でも有りかよ……」
「この姿になれるのは一時的だけど、その間だけ全ての能力がアップします。これなら勝てる可能性は高くなりますよ」
「ちなみにガウくんとクー様も使えるんだよ?」
「……ハハッ。本当に面白いな、この世界は」
更にガウルとクーベルも英雄結晶を発動して成人化する
蒼い英雄結晶を発動したガウルは髪が伸び、雷のオーラを
クーベルも体が成長して光のオーラを味方につけた
「シンク!俺様を置いてきぼりにしてんじゃねえぞ!」
「ウチだって加勢するのじゃ~!」
次々と成人化を果たしたシンク達を見て、伊坂はパチパチと拍手をする
「これはこれは、素晴らしい見せ物だ。散り際の手品とは粋な計らいをするね」
「散るのはお前だ、伊坂ッ!」
新は剣を振るって斬撃を放つが、伊坂も長剣から出した斬撃で相殺する
その隙に爆煙を突き抜けたシンクとガウルが伊坂に攻撃を仕掛けた
伊坂は瞬時に反応して神剣パラディオンと雷の爪を長剣で防ぐ
更に焔を噴かせて2人を焼こうとするが、シンクとガウルは寸前のタイミングで飛び退いて回避
2人と入れ替わる様にナナミが前に出て棒状の神剣エクスマキナを華麗に振るう
連続で繰り出してくる棒捌きを伊坂は長剣で
伊坂が攻撃に転じようとする寸前、ナナミの頭上を飛び越してきた新、シンク、ガウルは初動作を止める様に攻撃を仕掛けた
新の蹴り、シンクの炎の剣、ガウルの雷の爪が伊坂に直撃して後退させる
体勢を建て直す伊坂にユッキーの忍術とノワールの
「ユキカゼ式忍法、影分身の舞~ッ!」
「……セブルテーーイルッ!」
ユッキーは忍術で無数の影分身を出現させ、ノワールは輝力武装で7つの尻尾を展開
まずユッキー本人と影分身による連続攻撃で伊坂の動きを封じ、ノワールの7つの尻尾で畳み掛ける
手数の多さに伊坂は防戦を強いられ、更にその間にクーベル達の砲撃準備が整った
「ガーネットスパーク、最大火力の乱れ撃ちじゃ~ッ!」
「バレットカーードッ!」
「フラッシュアロ~ズ!」
クーベル、レベッカの晶術とベールの紋章術による一斉射撃が伊坂に降り注ぐ
苛烈な砲撃の嵐に伊坂は両翼で防ぎきろうとするが、更なる追い打ちを掛けられる
「リコ、拙者達も続くでござるっ!」
「了解であります~!」
宙へ飛び上がったユッキーとリコは大量の砲弾や花火を伊坂目掛けてばら撒き、お互いの拳を合わせた
「「
2人から波動が発せられた刹那、伊坂の周囲にばら撒かれた砲弾と花火が着火して次々と大きな爆発を引き起こす
そこへガウルとジョーヌが並んで輝力の爪と大斧に力を込め、背後に紋章を展開する
「「
2人の武器から発射された紋章砲は伊坂に直撃、凄まじい爆発と火柱を生む
息も
両翼を広げ、無数の羽を空中へ舞い上がらせる
焔を纏った羽の群れは伊坂の合図で一斉にフロニャルド陣営へ襲い掛かっていく
その群れの前にミルヒとレオ閣下が出てきてお互いの宝剣を交差する
ミルヒの
「駆け巡れ、断罪の刃!」
「天に輝け、封魔の
「「エクスグランディア・フィナーレッ!」」
交差する2つの宝剣から螺旋状のエネルギー波が解き放たれ、向かってきた羽の群れを跡形も無く一掃した
技を打ち消された伊坂は「……何だと?」と
「貴様らヒヨッ子だけに活躍させんぞ!」
「私達だって自分達の国を、この世界を守りたいのです!」
どんどん活気の勢いが増していくフロニャルド陣営
伊坂は面白くないとばかりに焔を噴かせるが、今度は英雄王アデルと魔王ヴァレリーが出てきた
「ヴァレリー、行くのですよ~ッ!」
「おうよ!
ヴァレリーは足元に独特の紋章を展開し、そこから帯状の魔力を放出
魔力は伊坂の腕に絡み付いて動きを止め、そこへアデルは銃口から凄まじい威力の砲撃を繰り出した
伊坂は極大の砲撃に包まれ、全身から黒煙が上がる
更に『
伊坂は自身を阻害している魔力を焔の剣で切り払い、新とダルキアンに極大の蒼い焔を飛ばす
そうはさせないと前に出てきたのはシンクとエクレ
お互いが双剣を交差させてエネルギーを溜める
「「烈空ダブル十文字ッ!」」
炎の十文字と緑の十文字が並ぶように飛び出し、蒼い焔を切り裂きながら突き進む
2つの斬撃をくらった伊坂の前面に十字型の裂傷が広がった
伊坂の背後から『
彼の上にはレオ閣下とダルキアンが乗っており、そのまま
更にそこへシンク、ナナミ、レベッカが畳み掛ける
まずはナナミがブーメラン状の神剣エクスマキナを投げる
ブーメランは縦横無尽に軌道を変えながら伊坂を連続で斬りつけ、シンクはパラディオンから炎を出して炎の刃を作り上げた
「
「ウィッチキャノーーンッ!」
レベッカの砲撃が伊坂を貫き、シンクの炎の刃が伊坂の腹を切り裂く
ブーメランがナナミの手元に戻ったタイミングで新は『
攻守に特化した形態で拳に赤黒い魔力を集束させ、両足のキャタピラで地を鳴らしながら駆けていく
伊坂は正面から来る新の気配に気付き、左手から焔を噴かせようとする
「
新の後方からレオ閣下の叫び声が
そのせいで焔を噴かせられず、新の
後方へ飛ばされ地を転がる伊坂
直ぐに左手に刺さった矢を抜いて立ち上がるも、 シンクとガウルが輝力全開で向かってきていた
「「
ガウルは輝力武装の『
凄まじい炎が伊坂を呑み込み、ガウルが輝力の爪で炎もろとも伊坂を切り裂く
最後にシンクが炎の剣で
銃口を伊坂に密着させ、魔力を急速充填する
引き金を引いた瞬間――――銃口から高密度かつ大質量の砲撃が解き放たれ、伊坂の全身を焼き焦がす
砲撃が止むと……伊坂の首や腕、両翼などはあらぬ方向にねじ曲がったまま煙を噴かしていた
自慢の再生能力で負傷箇所を元に戻していくが、流石にここまで熾烈な攻撃をくらい続けた伊坂にも疲弊の色が生じる
力が抜けたように片膝を地に付けてしまい、フロニャルド陣営を睨み付けた
「……何故だ?何故この私が膝を付いた?何故不老不死に成り果てた私が押されなければならない?
口調に怒気が混ざり始めた伊坂は全身からかつて無い程の焔を噴かせ、それを生物の如く
ジリジリと肌を焼く熱気、熱風にフロニャルド陣営は顔を歪めるが……目はまだ死んでいなかった
各々の武器を構えて伊坂と対峙する
「私はこの世界の魔物を喰らい、不死身となった
「簡単だろ。俺とこいつらには守らなきゃならない物がある。だが、お前は壊す事しか考えてない。つまり――――守るべき物を何1つ持ってないって事なんだよ。自分の背中に守りたいと思える物があれば、誰だって必死になれる。強くなりたいと錬磨するんだよ。肉体だけじゃなく精神もな。余裕を持て余していると精神はいずれ
通常形態に戻った新は先程の剣技――――クロス・バーストの準備に取り掛かる
刀身に赤い魔力を流し込み、バチバチと電撃の様な魔力が周囲に
更にシンク、ナナミ、レベッカ、クーベル、ミルヒ、レオ閣下の6人が並び立ち、それぞれが持つフロニャルドの宝剣を構えた
レベッカとクーベルは銃口にエネルギーをチャージ
シンク、ナナミ、ミルヒ、レオ閣下も刃に輝力を蓄積させていく
「アラタさん!僕達も力を貸します!」
「皆で一緒に行っくよ~!」
シンク達の割り込み参加に新は笑みながら頷き、波状攻撃の準備が整った
「行くぞ!全ての宝剣の力を合わせろッ!」
「はい!フロニャルドの宝剣よ、
「「「三国の勇者の力を1つにッ!」」」
「「「ヒーローブレイブ・スラーーーーーシュッ!」」」
「クロス・バーストォォォォオオオオオオオオッ!」
新の剣から地を這うが如く巨大な斬撃が放たれ、その後を追うように宝剣から6つの波動が突き進む
6つの波動は新の斬撃と交わり―――――より強力な1つの波動と化す
風を切り、地を抉りながら突き進んでくる波動に対して伊坂は魔剣技クロスフレイムの構えを取り、長剣をX字に2度振るった
灼熱の焔を纏った蒼い斬撃が巨大な波動に正面から激突するが……力負けしてしまい霧散と言う結果に
波動はその先にいる伊坂に直撃、更に直撃した後も6つの波動へと分散して再び伊坂に突き刺さる
伊坂を中心に周囲が爆発の炎に呑み込まれ、黒煙と粉塵が舞い上がった
「お、思ったより凄い攻撃になったね……」
「そうですね……。でも、これならきっと――――」
シンクとミルヒの言葉を遮る様に「いや、まだだ」と警告を発する新
剣の切っ先を爆煙に向け、警戒を更に強める
シンク達フロニャルド陣営も立ち込める爆煙に視線を集中させた
その時……爆煙を掻き分ける様に伊坂が姿を現した
全身から煙と血を噴かしているものの、未だ決定打に至らず――――不気味な笑い声を漏らしていた
「……ハッハッハッハッハッハッハッ……。面白い、実に面白い……ッ。先程まで私に手も足も出なかったと言うのに……。これが君達の言う“守る為の力”とやらか……ッ。陳腐な
「……ッ!?あれだけの攻撃を受けてるのに、まだ倒れんのか……ッ!?」
「そ、そんなぁ~!」
伊坂の尋常ならざる打たれ強さに恐々とするレオ閣下とナナミだが、ちょっと待ったと新が手を差し伸べる
「落ち着け、全く効いてないって訳じゃねぇよ。見てみろ、さっきと比べて傷の治りが徐々に遅くなってやがる。あの御自慢の再生力も結局は本人の器量次第だ。このまま押していけば、いずれ力尽きるッ!」
「フフッ、確かに理屈は合っている。このままでは私が不利になるだろう。……ならば、こちらも本気を出させてもらおうか。非礼の詫びだ、総力をもって君達を灰にしよう……ッ」
そう言った直後、伊坂の体がメキメキと嫌な音を立て、全身から滲み出ているオーラが徐々に強まっていく
そして……伊坂の背中の肉を突き破り、4枚の翼が大きく広がり――――総計6枚の翼が焔に包まれ、異様な邪悪さと熱気を振り撒く
伊坂の邪悪なオーラと剣幕に
「……これを見てもまだ戦意を消さないか。……良かろう。ならば、味わってくれ――――絶望と恐怖を……ッ!」
ゴオオオオオオオオオオオオッ!
伊坂が力強い台詞を吐いた直後、焔に包まれている6枚の翼が更に大きく伸びた
更に伊坂は長剣を横に掲げ、蒼い焔を纏わせる
今まで何度も煮え湯を飲まされてきた魔剣技――――クロスフレイムの構え……
新とフロニャルドの宝剣を持つ6人は再び波状攻撃の体勢を取る
伊坂は長剣を2度振るい、X字の斬撃を解き放った
だが、それは今までの斬撃とは違っていた……
剣を振るう動作に合わせて6枚の翼も同じ様にX字の軌道を描き、焔の斬撃を飛ばしてきたのだ
新達に襲い掛かっていく7つの斬撃……
それに対して新とシンク達は先程と同じ波状攻撃を放ち、伊坂の強化
しかし……波状攻撃はいとも簡単に打ち消されてしまい、新を含めたフロニャルド陣営は7つの斬撃が起こした爆炎に飲み込まれる
破砕音と悲鳴が飛び交い、辺り一面が炎に包まれた……
不気味に笑う伊坂は長剣の一閃で炎を薙ぎ払う
彼の前には死屍累々と横たわり、呻き声を上げる者達の姿があった
鎧の大半の部分が破壊された新、ダメージにより英雄結晶の効果が切れたシンク達、フロニャルド陣営は壊滅的な深手を追ったようだ……
先程まで追い詰めていたのに、たった1度の攻撃で形勢逆転されてしまった
かなりの力を使ったのか、伊坂は大きく息を吐く
「死は免れたか……。だが、今のをくらってしまってはもう立ち上がれまい。
「……ペッ。誰が諦めるかよ……ッ」
新は剣を杖代わりにして体を起こす
血を流し、骨も折れている体で伊坂に剣を向ける
「俺は……諦めねぇぞ……ッ。このまま死んでたまるかよ……ッ!」
「粋がるのも若さゆえ、か……。そんなボロボロの状態でよく言えたものだ」
「……余裕ぶるのもそこまでにしとけ。お前こそ――――足が笑ってんじゃねぇか」
新の指摘は核心を突いていた
ここまで殆ど余裕の態度しか見せてなかった伊坂の足は小刻みに震えている……
自分の両足に視線を向け、言葉を失う伊坂
「そりゃそうだろうな……。御自慢の再生能力も焔も、結局は自分の力。あれだけ多くの攻撃をくらって再生、傷を治しながら俺達に攻撃を繰り返していけば――――莫大な消費で疲れも出てくるよな……ッ」
「……ッ。“点滴、石
伊坂は長剣に蒼い焔を纏わせ、新も負けじと刀身に魔力を込めた
ジリジリと距離を
数秒の静寂が過ぎた刹那、2人は同時に斬り込み――――お互いの剣戟が火花を生んだ
新は焔の長剣を押し退けて伊坂の腹を横一文字に斬る
腹から血を噴き出す伊坂は負けじと長剣を振り下ろし、新の左肩に食い込ませた
剣と熱による痛みが押し寄せ、新は歯を食い縛って耐えようとする
伊坂は追い討ちに胸の目玉を妖しく輝かせ、再び新に
「……ッ!させるかァッ!」
新は自らの肩に食い込んだ剣を掴んで動きを止め、持っていた剣で伊坂の胸部――――第3の目玉を刺し貫いた
突き刺された傷から血が噴き出し、伊坂は苦悶に満ちた呻き声を漏らす
「ぬぅぅあ……ッ!ぐっ!」
「はぁ……はぁ……これでもう
新はそこから更に魔力を刀身に流して伊坂を吹き飛ばし、三度斬りかかる
伊坂も焔の長剣で迎え撃ち、新に斬りかかっていった
熾烈な剣戟合戦――――否、防御を捨てた斬り合いが始まり、2人はダメージを無視して剣を振るい続けた
肉を切り裂かれ、血が飛び散る事などお構い無し
“残された力の全てを振り絞って目の前の敵を倒す”――――新どころか伊坂もその考えに染まっていた……
あまりにも凄惨で過激な斬り合いにシンク達は呆然と見守るしかなかった
斬り合いが続く中、新の剣が弾き飛ばされ――――伊坂の長剣が彼の左脇腹を捉える
肉と骨を焼かれ、激痛に襲われる新……しかし、自らの左腕で長剣を挟み込み逃げられないようロックした
空いた右手に魔力を集めて拳を作り、伊坂の顔面を殴り続ける
まさに“肉を切らせて骨を断つ”……決死の覚悟を持ってるからこそ出来る
魔力込みの拳打を連続でくらい続けている伊坂の手が緩み、長剣を手放してしまう
一瞬の隙を見逃さなかった新は拳を打ち込んだ直後、脇腹に食い込んでいた長剣を引き離し、そのまま伊坂をめった斬り
血を吐きながらも伊坂を斬り続け、徐々に追い詰めていく
伊坂は手から炎を放って新を一瞬遠ざけ、直ぐに自らの両翼を広げた
両翼から次々に射出される羽は焔を纏い、群れを成して新に照準を合わせる
一斉射撃の予兆を見た新は、何か良い手は無いのかと瞬時に頭を働かせた
そう考えてる新の足に突然の違和感が……
素早く視線を足元に向けてみると――――先程弾き飛ばされた新の剣があった
伊坂が無数の羽をミサイルの如く発射させた瞬間、新は地面に落ちてた剣を蹴り上げ自らも跳ぶ
右手に持ってた長剣を伊坂に投げつけ、更にその勢いを利用した回転蹴りで今度は自前の剣を伊坂に飛ばす
羽は何枚か足を
度重なる打撃と
新は最後の勝負を仕掛け、両足に高密度の魔力を流す
空中高く飛び上がり、最大限にまで魔力を高めた両足での蹴りを繰り出した
「バースト・エンドォォォォオオオオオオオオオオオッ!」
大気圏を突き破って落ちてくる隕石の様な速度で伊坂に突っ込んでいく新
伊坂は両翼に刺さった剣を抜き取り、残った4枚の翼から極大の焔を解き放つ
螺旋状に突き進む4つの焔が急速落下してくる新とぶつかる
一進一退、ほぼ互角の力で競り合う2人……
「負けねぇ……ッ!負けねぇ……ッ!負けてたまるかァァァァァアアアアアアアアアアッ!」
全ての力を吐き出すかの如く
焔は命を吹き込まれた様にうねり、新の両足に吸い込まれていく
「……ッ!何だと……ッ」
絶句する伊坂、両足に焔を纏った新はそのまま伊坂の頭上へ迫る
体勢を入れ替え、両足でのつま先落とし――――炎の蹴りは寸分の狂い無く伊坂の脳天に直撃した
強烈な蹴りをくらった伊坂は地面に叩きつけられ、着地した新は両足を覆った焔を振り払って一言
「……燃える蹴りってのも悪くねぇな」
フロニャルド陣営が言葉を出せない中、新は伊坂の方へ視線を向ける
その様子にフロニャルド陣営はざわつくが、新は攻撃に転じようとしない
何故なら――――起き上がった伊坂には異変が生じていた
「……何故、だ……ッ?何故、この私がぁ……私がっ、
自分の身に起きた敗北と言う現象……それを信じられない伊坂は本来の姿――――
近くまで歩み寄った新は伊坂を見下ろす
「さすが不死身、あれだけ打ち込んだってのに死んでねぇとは……」
「ハハッ……。確かに死んではいないが……私の負けは明白……ッ、今回ばかりはそれを認めざるを得ない……。しかし……私が不死身である事に変わりない……ッ。今回はおとなしく引き下がるが、次に
伊坂は負けたものの、このまま逃げて傷を治してから再び来るつもりでいた
せっかくここまで来たのに逃げられてしまっては意味が無い……!
何としても伊坂を逃がす訳にはいかない――――と言いたいが、新も魔力と体力を消費し過ぎて立っているのもやっとで、シンク達も余力など残っている筈が無い
痛恨の失態……誰もがそう思った時、新が1歩前に出た
「伊坂ァ……ッ。テメェみたいな悪党を……見過ごすと思うか……ッ?」
「しかし……不死身の私をどうすると言うのだ……?殴ろうが斬ろうが、私は復活出来る……ッ。君にそんな力があるのかね……ッ」
皮肉めいた口調で煽る伊坂に新は剣の切っ先を向け――――闇を生み出した……
これは新の得意技――――『
“何故今この技を使うのか?”……新はその意図を明かす
「……俺は前に
“伊坂を自らの体内に封じ込める”
常軌を逸した考えにシンク達はおろか、伊坂さえも言葉を失った
確かに新は以前、
しかし、今回は状況が違う
喰らおうとしているのは力だけではなく、伊坂そのもの……
喰らえるかどうか分からない上、その後で何が起きてもおかしくない……
「……正気の沙汰じゃないな」
「ギャンブルと同じだ……。何が起こるか分からない、だから懸けるんだよ……ッ。少しでも可能性がるなら、俺はそれを信じて戦う……ッ。テメェみたいに計算してからじゃないと動けない様な奴に――――勝利の女神は微笑んでくれないんだ」
「…………ッ。……ハハッ、これは参った。真理を突かれてはこちらも
言い返せない事を認めて自嘲する伊坂
新は剣を伊坂に突き立て、闇で覆い隠す
握り手に力を込め、必死に念じて伊坂を喰らい始めた……
もはや限界を超えた死に体寸前、それでも新は伊坂を野放しにしたくない想いを
不穏な音が鳴る最中、闇にまみれた伊坂は最期にこう言い残した
「守りたいと言う欲望……今まで感じた事の無い欲望……。その欲望で私が満たされるのなら、それもまた一興か……」
フロニャルドを震撼させた異世界の
決着の瞬間が
「……はぁ、やっと終わったか……」
魂まで出てきそうな溜め息を吐き、フラフラな足取りでシンク達の所へ戻る
そこへレオ閣下が真っ先に新へ駆け寄った
「アラタ!お主……あの男を、倒したのか……?」
「倒したって言うより……封じ込めたって言った方が良いか……。まあ何にせよ、この世界を破壊するって
全てが終わり安堵した瞬間に力が抜け、レオ閣下を押し倒す様な形で倒れ込んでしまう
「ワリィ……ちょっと寝させてくれ……ッ。正直もう指1本すら動かせねぇんだ……」
「まったく、しょうがない奴じゃのう……。しかし、お主の大義を讃えたがってる者達がいるようじゃが?」
レオ閣下の言う通り、シンク達を始めとするフロニャルド陣営には歓喜が渦巻いていた
一斉に押し寄せ、力が抜けきっている新を胴上げ
喜びの喧騒など耳に入る筈もなく、何度も宙に打ち上げられる中――――新は大事な点を思い出した
――“そう言えば、ここからどうやって帰れば良いんだ?”――と……
遂に伊坂と決着がつきました!……と言っても、まだもう少しだけ続きます。
後は元の世界に戻るだけ!オリジナル章、正真正銘のクライマックスです!