ポツリポツリと小雨が降り始めた教会跡
虚を突いてアーシアの救出に成功した
その策に
3人は
正義は足首を回すストレッチをしながら言う
「……いよいよだな、兵藤。今日この場でお前を完膚無きまでに叩き潰してやる。俺達兄弟の汚点の始まり、元凶、原因であるお前をなぁ……」
「ハゲとメガネのクズどもと同じ様に、判別不可能な
悪堵は右手の開閉を繰り返して指を鳴らす
一誠は
小雨の音以外何も無い静寂の空気……
その中で
「「「――――ッ!」」」
赤く小さな輝きを合図に3人が凄まじい勢いで地を蹴って駆け出し――――正義は左足での蹴りを、悪堵は右の拳打を見舞おうとした
一誠は反射的に両拳を突き出し、それぞれ繰り出されてきた一撃めと衝突
その刹那、打撃の余波が雨粒を掻き消した
鎧を
『……ッ!威力が昨日とは段違いだ……!』
兜の中で歯を食い縛り、力負けしないよう必死に耐える一誠
対する幽神兄弟は体幹を回して蹴りと拳打の威力を底上げさせた
インパクトが跳ね上がった2つの打撃に一誠は吹き飛ばされ、滑る様に後方の塀に激突
瓦礫と土煙を頭から被り、それを腕で振り払う
起き上がろうとした矢先――――前方から鋭い斬撃と波動弾が飛んできた
一誠は横っ飛びで回避しようとするが、運悪く左足に食らってしまい装甲と肉が弾け飛ぶ
抉られたふくらはぎを手で押さえ、欠けた部分の鎧を形成し直す
その間に幽神兄弟は一誠を挟み込むような立ち位置に着いた
一誠は直ぐに
『
全身から赤いオーラを揺らめかせ、魔力の
「ツイン・ドラゴンショットォォォォォォッ!」
両手から膨大な質量の赤い魔力が帯状に放たれ、標的たる幽神兄弟に向かっていく
正義は左足の
眼前にまで迫ったドラゴンショットを正義は左ハイキックで両断
悪堵も左腕の針の一撃で真っ二つに裂いた
ドラゴンショットを
地上に残った悪堵は左腕の針を一誠に向け、無数の針を射出した
そこから更に背中の
速度が上乗せされた針の群れは貫かんとする勢いで一誠の鎧に突き刺さり、一誠は苦悶の声を上げる
「ぐっ、がぁあぁぁ……ッ!」
「まだまだお寝んねするのは
悪堵の左腕にオーラが流れ込み、再び幾重もの針をミサイルの如く射出した
ただし、今度のは先程飛ばしたのとは様相が違い――――血走ったような目玉が付いていた
一誠は撃ち落とそうと魔力弾を放つが、針の群れは意思を持ったかの様に散開して飛び回る
「な、何だよこれ!」
「残念だったな、兵藤!こいつはさっきのヤツとは違って自由自在に動き回るんだよ!ついでだ、こいつも食らわせてやらぁッ!」
悪堵が左腕を構え直すと、隆起した針が一回り肥大化する
静かに鳴動を始めた悪堵の左腕に危険を察知した一誠は直ぐに阻止しようとするが、周りを飛び交っていた針の群れが一誠の両足を刺し貫く
その上、群れの内の2本が足の甲を貫いているので動く事が出来ない……
そうしてる間に悪堵は左腕のチャージを終えてしまった
「準備良いぜ、兄貴!」
悪堵がそう叫ぶと、上空で待機していた正義は羽音を立てながら高速で急降下していく
左足からは既に高密度に溜めたオーラが漂っており、一誠を照準に捉えている
突き刺さった針のせいで動けない一誠の背中に
鎧ごと背中から腹を突き抜ける衝撃により、一誠は口から多量の血を吐き出す
骨や内臓を隅々まで破壊せんとばかりに強烈な回転を加え、一誠を無理矢理悪堵の方へと押し進めていく
「射程距離だ、相棒!」
「任せな!エクスプロード・パイルッ!」
ドシュゥゥンッ!
オーラか
それを見た正義は巨大杭と自らの蹴りで押し進めている一誠の距離が近付いたのを見計らい、一誠を踏み台にしてその場から離脱
蹴飛ばされた一誠は勢いを止められないまま巨大杭に腹を貫かれてしまった……
ゴプッ……!
一誠の口から血の塊が飛び出し、悪堵の左腕に着弾する
寸分の狂い無く鎧ごと一誠の腹を貫いた針を引き抜いた悪堵は、血を拭いながら嘲笑う
「ハッハッハッハッハァッ!ザマァねぇよなぁ?兵藤、結局テメェは飼い主や腐れ仲間と共に来ようが単独で来ようが、卑怯な手を使おうが使わなかろうが俺達には勝てなかったんだからよぉ」
正義が羽音を立てて一誠の背後に降り立ち、
「兵藤、お前は何か苦労した事があるか?筆舌に尽くし難い物事に耐えた経験があるか?挫折と屈辱にまみれた道を歩いた事があるか?嘲笑、嫌悪、哀れみの視線を四六時中浴びた事があるか?……ある訳無いよな。お前は今後の人生や将来など考えず、目先だけを見て生きてきた典型的な劣悪思考の持ち主。昔の俺達は両親と教師、生徒、世間からも期待され続けた。プレッシャーも半端じゃなかった。目の前だけじゃなく、先の先の事まで考えてやらなきゃならなかった……。常にプレッシャーを感じながら生きてきた俺達が落ちこぼれ、何も考えずにやりたい放題やって来たお前らは順風満帆な生活を送っている……こんな理不尽な差別が許されると思ってんのか……っ?」
徐々に怒りの色を滲ませた正義は一誠の脇腹を蹴る
風穴を開けられた腹部に激痛が駆け抜け、一誠は声にならない絶叫を漏らしてもがき苦しむ
「だが……お陰で俺達は世の中のシステムに気付く事が出来た。落ちぶれた奴が地の底から這い上がるには他者を蹴落とすしか無い。そして落ちこぼれ人生を圧倒的に
正義が一誠の最も負傷している腹部を足で
一誠は苦し紛れにその足を掴んでツイスト攻撃を止めようとする
「幽、神……ッ!そんな考え……間違ってる……ッ!」
「何だと?」
「相手を憎みきるのが、落ちこぼれの勝ち方だって……?そいつは大きな間違いだ……ッ!俺だってなあ……俺だって最初はド○クエの序盤に出てくるスライム並みだったんだよ……。魔力が低過ぎるから転移も出来ない、悪魔になっても自分の翼で飛べない、初めて出来た彼女には1度殺されたし……初参戦のレーティングゲームも俺が弱かったから負けちまった……ッ。悔しかったよ、心底自分の弱さを呪ったよ……ッ。けど、相手を憎むだけじゃ強くなんかなれない!負けたくないから、仲間を守りたいから必死に鍛えてきたんだッ!」
「守るだと?ふんっ、全てを失った俺達から言わせればくだらない考えだな」
「くだらくなんか……ない……ッ!」
声を絞り出し、正義の足を何とか払い除けた一誠
立ち上がって戦闘体勢を整えるものの、その肉体は傷だらけ血だらけ……
それでも一誠は幽神兄弟に向かって叫ぶ
「“守る”ってのは“立ち向かう”事と同じなんだ……ッ!自分の前を塞ぐ壁や障害、困難に!なのに……お前らは“ただ逃げ回ってる”だけじゃねえかッ!何もかも
一誠の放った一言一句に耳が痛くなったのか、正義は大きな舌打ちをした
「……いつから妄言じみた説教をするようになった?仮面優等生のつもりか?“今からでも遅くない、やり直せる”とでも言って過去の罪を帳消しに出来ると思ってるのか?笑わせるな、兵藤。俺達兄弟が失った物はもう2度と元には戻らないんだよ。全て遅過ぎた……」
「そんな事は――――」
「“そんな事は無い”とでも言うつもりか?……ナメてんのか、クズの分際で。そいつはクズの
声を荒らげてありったけの怒りを吐き出す正義の剣幕に一誠は沈黙、畏怖するしかなかった……
あの時、救いの手を差し伸べなかったのは事実……
幽神兄弟を許さないと決意した一誠の心に乱れが生じ、いつの間にか動きを止めてしまっていた
一誠の背中に重い何かがのし掛かる様な錯覚が起こり、言い難い罪悪感に
正義は尚も怒り、憎しみ、恨み
「このクソ悪魔、ド悪魔が。下手くそに人の神経を逆撫でしやがって……ッ!そう言うのが1番不愉快だ!お前が口に出してるのは
「ち、違う!そんな事は――――」
「いい加減に気付けよ。……アーシアって言ったか。俺達があの女を
その言葉に一誠は更に固まり、幽神兄弟に対する感情を思い起こした
確かに緊急搬送された松田と元浜の姿を見た時、一誠の頭の中は激しい怒りで埋め尽くされていた
“幽神兄弟が憎い、殺してやる”と思ってもおかしくない程に……
核心めいた感情を突かれた一誠は無意識に顔を
その様子を図星だと捉えた正義は嫌悪して唾を吐き捨てる
「やっぱりそうだったんだな。綺麗事を並べた所で結局同じ、上っ面だけの正義を掲げてる偽善者――――それがお前の正体なんだよッ!」
ドゴッ!
正義のダッシュキックが一誠の腹に突き刺さる
先程風穴を開けられた腹部に更なる激痛が駆け巡り、一誠は意識を手放しそうになった
追撃を止めない正義は一誠の頭を両手で掴み、渾身の左膝蹴りを顔面に見舞った
その衝撃で一誠の兜は儚い音を立てて砕け、顔の右半分が露出する
膝蹴りの一撃で倒れそうになる一誠に正義は追い討ちを掛けた
距離を詰める様に跳び、右膝を一誠の首に密着させ――――そのまま全体重を掛けて押し潰した
呼吸の通り道である気管を潰された一誠は呼吸困難に陥り、首もとを押さえて苦しむ
しかし、それでも正義の凶行は止まらない……
両肩から鉤状の触手を伸ばして一誠の大腿部を左右共に貫き、完全に動きを封じる
そして左足に凶悪且つ膨大なオーラを集めてトドメの構えを取った
悪堵も横に並んで右腕に凶悪なオーラを流し込んだ
「分かったか、兵藤?恨み憎しみを向けない奴なんてこの世に存在しない。当然、それが当たり前なんだよッ!お前はその当たり前に対する認識が甘かった!いや、寧ろ理解すらしていなかった!生きている限り、誰かを恨まない憎まない人生なんて物は存在しないッ!」
“やっぱり、誰かを恨み続けても傷付くだけだと思うんです……”
昨夜アーシアに言われた言葉が鮮明に
『何故こんな時にあの女の言葉が、あの悲しげな顔が頭を
理解不能の事態に歯軋りした後、アーシアの虚像を振り払うかの如く首を横に振り――――矛先を一誠に向けた
『俺には……必要無い……ッ。地獄に落ちた俺達には……ッ!誰かからの哀れみも!感傷も!同情も!……何もいらない……求めていないんだ……ッ!』
正義はトドメの一撃を与えるべく背中の
両足を封じられて動けない一誠の心を完全に折ろうと、正義は“自分への言い聞かせ”も含めた罵倒を吐き出した
「お前が積み重ねてきた偽りの正義感もこれまでだ!世の中のシステムを理解してないあの女の言葉も全て打ち消してやる!“落とす側”と“落とされる側”しか存在しない世界に“救い”があると勘違いした挙げ句、絵空事の妄言虚言を吐き
ピク……ッ
正義の暴言に一誠の右手の指が一瞬だけ動き、徐々に握り拳を作っていく
放出するオーラの轟音と共に迫り来る
「ウアァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
『
籠手から連続で倍加の音声が鳴り響き、瞬時に右拳で正義の蹴り足を止めた
大きく鈍い激突音が周りの空気を震わせ、両者は鍔迫り合う様な状態に
「なん、だと……!?あれだけ徹底的に痛めつけたのに……ッ!」
「幽神ィ……ッ!俺の事はどう言おうが構わない……ッ!ただ、アーシアを……俺ん家のアーシアをバカにすんじゃねえッ!アーシアはなぁっ、神様がいなくなった今でも祈りを捨てなかった!自分が進んできた道から逃げなかったッ!」
一誠の右拳が正義の蹴り足を強引に押し返し、正義の足が後方に下がる
明らかに今までと違う威力ゆえか、正義の足に痺れが走った……
「アーシアはたくさん傷付いてきた……ッ。たくさん泣いてきた……ッ!1度死んだ事もあったのに……それでも周りの人達を恨んだりしなかった!憎まなかった!
「嘘だ……嘘だッ!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッ!そんなのは自分の点数稼ぎ!偽りの感傷!理想を他に押し付けて陶酔しているだけに過ぎないッ!」
「兄貴の言う通りだ!世の中には生きてる奴全員が救われる方法なんて
「アーシアはそんな打算で動くような
一誠の反論に幽神兄弟の気迫が薄れてしまう
一誠の心を折るつもりで放った罵倒が逆に発破を掛け、自分達の士気が揺らがされた……
精神攻撃は不利だと判断した正義は地を踏み鳴らし、両肩から伸びる鉤状の触手を左足に絡ませていく
螺旋状に絡み付いた触手は硬質な装甲へ変化し、高速回転を始める
「いい加減もうウンザリだ!希望に恵まれたお前らの戯れ言などォッ!この一撃で砕いてやるッ!行くぞ、相棒ッ!」
「ああ、兄貴!あの腐れ兵藤の希望なんて叩き潰してやろうぜッ!」
悪堵の右腕にも鋭い爪の如き刃が生え、凶悪なオーラに包まれていく
どうやらその攻撃を最後の一撃にするようだ
一誠も今までに無いオーラを放出し、拳打の構えを取る
「俺は守るッ!何があってもアーシアを!部長を!皆をッ!理不尽な悪から守ってみせるッ!俺はグレモリー眷属の『
「ほざけ、エセヒーローのクズがァッ!そんな偽善と詭弁を振り撒いて生き残れると思ってんのかァッ!」
正義と悪堵――――絶望を
猛然と回転する左足、
「エクスプロード・ギムレットォォォォォォォオオオオッ!」
「エクスプロード・フィストォォォォォォォオオオオッ!」
今まで
その様相は――――まるで彼らの背後に死神や怨念の化身が幻影となって映り込み、一誠を引き摺り込もうとしているようだった……
とてつもない気迫、決死の攻撃、覚悟を決めた殺意……!
並々ならぬ
しかし、覚悟を決めたのは一誠も同じだった
『
籠手から何度も倍加の音声を響かせ、その力を両腕に流していく
両手を腰まで引いて
倍増させた魔力が肘から炎の様に噴き出し、一誠はその音を合図に地を蹴って駆け出した
更に背中の噴射口からも魔力を噴かして速度を上げ、幽神兄弟に突っ込んでいった
「今度こそ負けねえ……ッ!お前ら兄弟の悪意にも!ねじ曲がった性根にも!俺への恨み
「「寝言は寝てからほざけェッ!兵藤ォォォォオオオオオオオオオオオオオッ!」」
「幽神ィィィィイイイイイイイイイイイイイイッ!」
希望と夢を捨てずに歩み続けてきた一誠
絶望と復讐に堕ちて他人を引き摺り落としてきた幽神兄弟
それぞれの咆哮は雨空を
――――――――――
あれからどれ程の時間が経過したのだろうか……雨はすっかり止んで曇り空の小さな隙間から一筋の日光が射し込んでくる
戦場となっていた筈の教会跡はただの
瓦礫の山から手を這い出し、邪魔な土塊を払い除けて抜け出てくる者がいた……
出てきたのは幽神兄弟の弟・
どうやら先程の一撃合戦で多大なダメージを受けてしまったようだ
気に食わない結果に悪堵は舌打ちしてから血の塊を吐き捨てる
「……生きてるか、相棒……」
「何とか、な……。兄貴もヒデェ状態じゃねぇか」
兄の
彼の現状は悪堵よりも酷いもので、自慢の左足はあらぬ方向に折れ曲がっており、折れた骨が足の甲から飛び出していた……
動かせない左足を引き摺り、悪堵に肩を貸してもらう
兄弟共にボロボロで、恐らくこれ以上の戦闘は不可能に近い……
「ところでよぉ……兄貴、クソ兵藤は……殺ったのか?」
悪堵の問いに正義はふて腐れ気味に鼻を鳴らし、「しぶとい野郎だ、あいつは」と後ろを指差す
指が示す先にいた一誠も幽神兄弟と同じくボロボロだった……
鎧は既に破損、顔も全身も血だらけ、最後の拳打に使った両腕は指1本動かせない状態……
それでも一誠の目は“諦め”の意思を見せなかった
「ぬぁぐあぁぁぁぁ……ッ!はぁ……はぁ……。ど、どうしたんだよ……ッ。もう……もう終わりか……ッ?まだやるってんなら――――」
「まだ動くのか……ッ?呆れた野郎だな……。その両腕、どう見ても使い物にならない筈だ……。足もガクガクで体はボロボロ……。なのに……何故そこまで……ッ?」
「……決まってんだろ。こんな所で倒れたら、さっきの啖呵が嘘になっちまう……っ。アーシアを、部長を、皆を守れるぐらい強くなりたいなら……ここで倒れちゃダメなんだよ……ッ!」
一誠の不屈の姿に正義は目元をひくつかせた
ここまで執拗に追い詰め、徹頭徹尾叩けばどんな相手でも意気消沈して戦闘の意思を失い、無様に許しを乞う筈――――それが正義の持論だった
しかし、目の前にいる一誠はボロボロの状態にされても許しを乞うどころか、まだ戦うつもりでいる……
“なんでこいつはここまで立ち上がれるんだ……!?何がこいつを動かすんだ……!?”と憎々しげに自問を繰り返す
そして、ふと彼の頭に
『……思えば俺が余計な事を考え出したのも、兵藤の力が急激に増したのも……全部あのアーシアって女が関わっていた……ッ。あの女の存在が兵藤をここまで引き立てたのか……ッ?あの女の“優しさ”ってヤツが……』
微かな疑問がどんどん大きくなり、正義自身の概念が揺らぐ
すると、正義は自分でも思いも寄らない事を言ってしまう
「兵藤」
「何だよ?まだ何か言いたい事があるのか?」
「お前はあの女――――アーシアがそんなに好きなのか?」
「ブバシュッ!?」
不意を突かれた質問に一誠は目玉が飛び出す程動揺し、口から何かを吹き出す
悪堵も突然の言動に訳が分からず、ただ呆然としていた……
「で、どうなんだ?」
「ななななななんでいきなりっ、そそそそそんな事を訊いてくるんだよ!?」
「あの女をここまで擁護するのは、そう言う事じゃないのか?」
「い、いやまあ……た、確かにアーシアは良い娘で最近はおっぱいの発育も良くなってきたなぁとは思うけど!そ、それは大事な仲間でもあり家族の一員でもあるからってだけで!そそそそそんな好きとか嫌いとかは……いやいやいやいや!嫌いじゃない!嫌う訳無いだろ!?アーシアみたいな良い娘を誰も嫌う訳が無い!ただ、その俺としては――――」
真っ赤な顔でテンパり続ける一誠を見て、正義は不覚にもプッと軽く吹いて笑ってしまう
「……ハハッ、やはりそうか。アーシア・アルジェントォッ……フハハッ……。面白い女だ」
「あ、兄貴?」
「相棒、帰るぞ」
「えっ?ひょ、兵藤はどうすんだよ?トドメ刺さねぇのか?」
「お互いこんな状態だと、どの道まともに動けなくなる。そうなったら他の奴らにとって格好の的だ。今は潔く引いてやろうじゃないか」
正義の撤退宣言に悪堵は納得いかないと抗議しそうになるが、負傷具合を考慮すれば正義の言葉は一理ある
一誠に勝っても捕まったり、殺されたら元も子もない
今は生き残るのを優先させる為、正義の提案に賛成した
一誠は正義のあっさりとした引き上げに
言葉が見つからず、ただ間抜けに開いた口も塞がらなかった
「兵藤、今回は引き分けと言う事で見逃してやる。アーシア・アルジェントのバカみたいな優しさに感謝するんだな。
最後にそう言い残し、
暫く突っ立っていた一誠は一応助かった事を認識してから脱力
座り込んで安堵の溜め息を吐いた
その後、やはりジッとしていられず駆け付けてきたリアス達に保護され、部室まで運ばれた後はアーシアの治療を受けて傷は完治
一誠と幽神兄弟による因縁の決着は持ち越しの上に妙な形で中断されてしまったが、それもまた1つの結末としては悪くないのかもしれない……
ひとまず解決した幽神兄弟との戦い!
次回は新編のクライマックス、伊坂威月との最終決戦にしたいと思います!