「何処にいやがる!幽神ッ!隠れてないで姿を見せろォッ!」
電話で指定された体育館に到着するや否や、一誠は怒気を含めて叫んだ
電灯が1つも点いていない薄暗い体育館全体に一誠の怒声が木霊する
匙もアーシアの前に立って周囲を警戒しながら体育館内を見渡す
幽神兄弟が一向に姿を現さないまま、ただ時間だけが過ぎていく……
そんな時、再び一誠の携帯が音を鳴らす
「……んだよ……っ。何なんだよ、これ……っ!」
ワナワナと震える一誠
横から携帯の画面を見たアーシアと匙も言葉を失う
送られてきたのは――――血だらけの無惨な姿で横たわるリアス達だった……
幽神兄弟はそれぞれ倒した相手をスマホで撮影し、その写真を一誠の携帯に送ってきたのだ
あまりにも醜悪、悪趣味、ゲスな
怒りのまま自分の携帯を握り潰し、『
「幽神ィィィィィィィィィィィィッ!」
ドゴォォォォオオオオオオンッ!
一誠は自らの足元に左拳打を叩き込んで巨大なクレーターを作り上げる
床の破片が散乱して宙を舞い、地に落ちた所で一誠が再び吼える
「ウアアアァァァァァァアアアアアアアアアアアアアッ!幽神ィィィィッ!」
「……最初に見た時からヤバそうな雰囲気は分かってたけど、こいつら腐ってる……ッ!本当に人間なのかよ!?俺達よりもよっぽど悪魔じゃねぇか!いや――――悪魔でもエグい真似はしねぇぞ!」
匙も幽神兄弟の所業に堪忍袋の緒が切れて左手に
黒い炎を纏いし蛇が何重にも絡み付いた腕を突き出し、臨戦態勢に入った
一誠も
カウントが終わろうとしたその刹那――――翡翠色の斬撃と赤銅色の波動が壁を大きく大破させて飛び込んできた
しかも、その矛先はアーシア
「――――ッ!アーシアッ!」
「アーシアさんっ!」
一誠と匙はアーシアを庇うように前へ飛び出し、籠手と黒炎で2つの攻撃を防ごうと試みる
だが……充分に力を乗せていない状態で攻撃を受けた為か、2人は斬撃と波動の直撃でそれぞれ腕に大きな裂傷を負ってしまった
宙を舞った後、背中から床に落ちた一誠と匙
傷口から血を
「イッセーさん!匙さん!す、直ぐに治療を――――」
「アーシア、ダメだ。向こうは待つ気なんて無いみたいだ……!」
一誠の言葉通り、向こうは治療を
土煙の中から人徳を捨て去った狩人――――幽神兄弟が姿を現した
それぞれの脚甲と籠手が鈍く怪しい光を点滅させている……
彼らは既に
「幽、神ィィィィ……ッ!」
「兵藤ォ、何だその
「お前、言ってたよな……!俺を――――俺達を“クソ野郎”だって……!俺から見れば、てめぇらの方が最低最悪のクソ野郎じゃねぇかッ!俺に文句があるなら、直接俺に仕掛けてくれば良いだろうがッ!げふ……ッ!なんで……なんで周りを巻き添えにするんだよぉッ!?」
血を吐き、痛みが走る傷を押さえながら一誠は幽神兄弟に問う
だが……彼らにとってその問いは愚問中の愚問
正義が不適に笑いながら答えた
「兵藤、今のお前は燦々と輝き照らす太陽の下を歩いている様なものだ。人気を集めて
「だったら、ブッ潰してやるよ。太陽も……てめぇらも全部なぁ!」
正義と悪堵はこの世の全てと決別する様な言葉を吐き捨ててから、顔をマスクで覆い隠す
ギラリと鋭い眼孔を光らせ、それぞれの
「俺は兵藤を殺る」
「じゃあ俺は生徒会のクソ野郎だ」
獲物を決めた
一方、一誠と匙は先程のダメージで上手く立ち回れずにいた
悪堵は匙の髪の毛を掴んで無理矢理引っ張り起こすと、右拳打を鳩尾に叩き込んだ
血と胃液を吐き出す匙の顔面を更に打ち抜き、壁際まで殴り飛ばす
匙は何とか意識を保ちながら悪堵の拳を
回避出来た悪堵の
一方、正義は体育館の床の一部を足で削り取り――――そのまま蹴って一誠の顔面に命中させた
左の
片目を塞がれた一誠に正義は嘲笑の意を込めた挑発をする
「どうした?兵藤、さっさと来いよ。それともお寝んねするか?――――添付画像の奴らと同じ様になぁ」
正義の言葉に沸騰し続けていた一誠の怒りは遂に爆発し、全身から赤いオーラを放出させた
「てめえぇぇぇぇぇえええええええええええええええッ!」
『
赤い閃光が一誠を包み込み、『
ディオドラ・アスタロト戦以来の怒り心頭で
「来いよ、兵藤ォ。怒りのまま、憎しみのまま……俺達をブッ飛ばしてみろよ?」
「うああぁぁぁぁぁぁああああっ!」
怒りにまみれた一誠は背中の噴射口を噴かして正面から正義に突貫しようとする
だが、目に血が入っているせいで距離感が全く掴めず、上手く力を乗せられない
突き出されてきた拳を軽やかに避けた正義は足を引っ掛け、一誠を転ばせた
その際、何発もの蹴りを入れておくと言ったオマケ付きで……
無様だなと一瞥する正義に対し、一誠は立ち上がって再度魔力を噴かして拳を振るい続ける
『おい、相棒!熱くなり過ぎだ!攻撃が乱れている!奴はわざとお前を怒らせて攻撃の鋭さを鈍らせているんだ!いや、それだけじゃない……。何か得体の知れない気配まで奴の
「黙ってろドライグッ!」
『相棒っ!?』
「こいつだけは……こいつらだけは絶対に許せねぇんだよ!直接俺に何も言わないで周りの人達を巻き込みやがったこいつらを……俺のダチや仲間を傷付けたこいつらを見て平静になれって言う方が無理だ!」
一誠はドライグの忠告を耳に入れず正義への攻撃を続けた
しかし、目に血が入ったせいで距離を掴めていない相手の攻撃など簡単に避けられる
正義は一誠の拳打を
一方、悪堵は匙の顔面を潰そうとパンチのラッシュを続けており、体育館の壁を次々と
距離を取ろうとしても直ぐに追いつかれてしまい、ボディーに打撃を入れられる
このままでは不利だと考えた匙はまず悪堵の四方から黒炎を出して囲む
ヴリトラ系
悪堵は二重の炎に包まれ、更に追い込みとばかりに『
「はぁ……はぁ……これならどうだ!ヴリトラ系
「それがどうしたぁ……?」
ゴオオォォォォオオオオオオオッ!
不気味な声音と共に囲っていた黒炎が描き消され、炎の中から褐色の
更に悪堵は自身に絡み付いた『
放り出されるかの如く飛んできた匙に右拳打を叩き込み、壁に叩き付けた
匙の左腕から繋がっているラインを再度引っ張り、飛んできた匙をもう一度殴り飛ばす
「オラオラァッ!まるでチェーンデスマッチだぜぇッ!ハハハハハハハハッ!」
引き寄せては殴り飛ばし、引き寄せては殴り飛ばすと言う鬼畜な攻撃を繰り返す悪堵
哄笑を上げながら匙を殴り続けていき、飛び散った血が悪堵の鎧や床、壁に赤い斑点を描く
「が……っ、かは……っ」
「おいおい、どうしたぁ?もうグロッキーかよ。だらしねぇぞぉ!?」
悪堵はラインを利用して背後から匙の首を締め上げる
そのまま匙の脇腹――――急所である肝臓にアッパーを打ち込んで内臓を痛めつけ、肋骨も破壊していった……
正義も負けておらず、猛然と繰り出される一誠の打撃を全て足技で弾き返し、脛や膝に蹴りを入れていく
一誠が地を踏み出した瞬間、その足を踏み台にした飛び膝蹴りを顔面に叩き込んだ
顔を押さえて苦悶する一誠の背後に回り込み、膝裏を蹴って体勢を崩す
直後に一誠の後頭部を掴んで延髄に飛び膝蹴りをくらわせ、そのまま顔面を地面に叩き付けた
その衝撃で一誠の鼻は折れ、先程切られた
息つく暇も無く正義は一誠のアゴを蹴り上げて無理矢理立たせ、オーラを
「ちくしょおおおぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおっ!」
『
籠手から何度も音声が鳴り響き、力を倍増させた拳打で対抗する一誠
背中の噴射口から魔力を噴かせて飛び出し、正義の蹴りと一誠の拳打が真正面から激突する
しかし、正義は空いた右足で一誠のパンチを斜め下から蹴って弾き、その勢いで左後ろ回し蹴りを鳩尾にくらわせた
強烈な痛みと圧迫感に一誠は前のめりに崩れそうになるが、正義がアゴを蹴り上げ――――そのまま一誠を踏み潰す様にストンプを決める
更に両足で一誠の顔面を踏みつけ、自らを
某虎マスクが編み出した残虐技の応用により、
「ああぁが……ッ!め、目が……目が見えねえぇ……ッ!」
「気分はどうだ、兵藤。痛いか?苦しいか?最悪か?ポカポカ暖かい日向の道を歩いてきたお前らからすればそうだろうが……俺達が味わってきた地獄はこんなもんじゃないんだよ。どれだけ泣こうが
正義の
その光が正義の両肩と悪堵の左腕にも転移して変化を及ぼす
グキグキと気味悪い音を鳴らした直後――――正義の両肩から鉤状の触手が生えて一誠の両腕を刺し貫き、悪堵の左腕からは鋭い針が連続で射出されて匙の全身に突き刺さった
幽神兄弟は自分達が所持する
「ハハハハハハハハッ!兄貴ィ!見てみろよ!俺達の
「そうだ、俺達の怒りと憎しみだけじゃない……!お前ら全員の怒りと憎しみも相まって進化スピードが飛躍的に上がり、新しい能力を得た……!お前らの仲間を1人1人潰してきたのはこれを待っていたからなんだよ!フハハハハハハハッ!皮肉だな、兵藤ォ!俺達を憎んだ結果――――俺達の
正義は左右の蹴りから弧月状の斬撃を飛ばして一誠の全身を切り裂き、悪堵は左腕から生えた一際太い針で匙の両大腿部を刺し貫いた
一誠と匙はもはやボロボロ、まともに戦える状態ではなかった……
それでも幽神兄弟は攻撃を止めない
アーシアはあまりの凄惨さに嗚咽を漏らしながらくず折れ、「お願いです……もうやめてください……っ」と、か細い命乞いをするしか無かった……
正義は鉤状の触手を抜いて一誠を転がし、悪堵は匙の胸ぐらを掴む
「兄貴、そろそろトドメを刺してやろうぜ」
「あぁ。まずはそいつからだ」
死刑宣告のごときやり取りを聞いてしまった一誠は何とか体を起こそうとするものの、散々やられてきたダメージと傷のせいで動く事すら出来ない
幽神兄弟の
「エクスプロード・フィストォッ!」
オーラの
正義は車輪の様に前方へ回転したまま飛び出し、回転により威力を上乗せした左足での
「や……やめろぉ……!やめろぉぉぉぉおおおおおおお……ッ!」
「エクスプロード・スマッシュッ!」
グシャアッ!
オーラを
匙の体は極端なくの字に折れ曲がり、床に半分ほど埋められた形へと成り果てた
その惨状を見た一誠は腹の中を尖った物で掻き回される様な耐え難い怒りに陥り、血を噴き出す足に鞭を打って立ち上がり――――怒号を吐いた
「うああぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああっ!」
背中の噴射口を勢い良く噴かし、幽神兄弟に向かって最大威力の拳打を繰り出そうとした
それに対して幽神兄弟は悠々と迎撃体勢に入る
左腕の針にオーラを
「エクスプロード・スティングッ!」
ズブシャアァッ!
危険なオーラを纏った針が一誠の鎧をいとも
腹に風穴を開けられた一誠は再度口から血を吐き出した
悪堵の鎧にビチャビチャと掛かるが、当人はそんな事を気にせず針を引き抜く
次に正義がいつの間にか爪のごとき刃物を生やした左足にオーラを集め、一誠に飛び掛かっていった
凶悪な形へと変化し、頭上にまで掲げた左足を振り下ろした
「エクスプロード・ファングッ!」
ザシュウゥッ!
左足から生えた凶悪な爪が一誠の前面を切り裂き、刻み込まれた裂傷から血が噴き出す
徹頭徹尾ボロボロにされた一誠の
「イッセー、さん……っ?イッセーさん……!イッセーさんッ!」
アーシアは転びながらも一誠のもとへ駆け出すが、悪堵に捕まってしまう
「……アー、シア……っ。てめぇら……アーシアにっ、手を出すんじゃ……ねぇ……ッ!」
「ほう、まだそんな減らず口を叩けるのか?大した奴だな。並大抵の奴ならここで泣いてみっともなく命乞いをするものだが……バカにはそんな選択肢は無いか。まあ良い、まだお前の大事な物を全て壊した訳じゃないからな」
正義は意味深な言葉を聞かせてアーシアに歩み寄る
悪堵に両手を掴まれているアーシアのアゴをくいっと上げて睨み付け、一誠を見下ろしながら言う
「兵藤、お前の目の前でこの女を
「――――ッ!……やめろ、やめろ幽神ィッ!ゴポ……ッ!ぶはぁっ!アーシアは……アーシアは……ッ!」
「ハハハッ!兄貴、兵藤を見てみろよ!何だ、あの焦り様は!そんなにこの女が大事かぁ?それを聞いたらますます壊したくなってきたぜ」
「相棒、簡単に壊したら面白くない。この女をゆっくりジックリと
そう言った後、正義はアーシアの制服を胸元から引き
アーシアの雪の如く白い
“アーシアを犯す気だ”と……
ふざけるなとばかりに歯を食い縛り、芋虫の様に這いずってでも止めようとするものの、今までの傷とダメージでまともに動ける筈も無く……途中で止まってしまう
幽神兄弟はそんな一誠を嘲笑い、アーシアへの辱しめを続行する
スカートも破り捨て、アーシアはあっという間に下着姿へと変わり果てた
「……っ」
「「…………」」
何故か流れる無言の静寂
アーシアは一瞬悲鳴を上げそうになるが、動きの止まった正義を見て疑問符を浮かべる
「……?」
「あ、兄貴。次どうすんだよ?」
「今考えてる、ちょっと待ってろ」
正義はジッとアーシアを見つめ、その場で暫く静止する
そしてようやく動いたかと思えば……アーシアの胸を指でチョンチョンと突っつくだけだった
くすぐったい感覚にアーシアは「ひゃん……んん……っ」と艶かしい声を上げ、幽神兄弟はその声にビクッと過剰な反応をしてしまう
そんな幽神兄弟の様子を見た一誠は頭の中で1つの可能性を
“もしかして、女の子に不慣れなんじゃないか……?”
そこで一誠は一か八かの賭けに出るべく、痛む体で地を這っていく
ゆっくりゆっくりとアーシアの足元まで近付き、ソッと足に触れて――――アレを発動させた
「
指を鳴らした瞬間、可愛らしい下着がものの見事に消し飛んでアーシアは全裸になった
小振りながらも成長途中のおっぱいが『
「「……ッ!……ッ!」」
突然の全裸現象に幽神兄弟は絶句した挙げ句――――ブシャアァッと兜の隙間と言う隙間から血を噴き出した
恐らく鼻血だろう……
幽神兄弟は鼻と目を押さえながら
「あ、兄貴……ッ!何か見ちまった……ッ!小さい山みてぇなのが2つとプックリしたピンク色がぁ!」
「ぐぅ……ッ!俺もだ……!まさか、今のが本物の……おっぱいってヤツなのか……!?ヤ、ヤバい……!目に焼き付いて離れん!」
幽神兄弟が苦しんでいる(?)間にアーシアは直ぐに一誠の所へ駆け寄り、回復の光を当てる
次第に腹や肩の傷が塞がり、出血も治まっていく
そうはさせないと向き直す幽神兄弟だったが……アーシアの小振りなおっぱいを見て再び血が噴出
何度も首を横に振って意識を集中させようとするが、どうしてもアーシアのおっぱいに視線が移ってしまう……
「ダメだ兄貴!どうしたってあの女の方に目が行っちまう!」
「チクショウ……ッ!相棒、一旦出直すぞ!このままじゃ俺達の方が不利になる!兵藤!この屈辱は必ず返すからな……!覚えてろ……ッ!」
幽神兄弟は捨て台詞を残し、壁を破壊してその場から逃げていった
何とか窮地を脱した一誠は安堵の溜め息を吐く
「はぁ……上手くいって良かったぁ……。大丈夫か、アーシア?」
「は、はい。私は大丈夫です。イッセーさん、そんな体で動いちゃダメですよ……」
「へへ……アーシアや皆を守る為なら、こんな傷どうって事無いさ。それよりゴメンな?いきなり裸にしちまって……」
先程の『
「良いんです……。イッセーさんが無事なら」
「あぁ……本当良い
アーシアの優しい言葉とおっぱいに感涙を流す一誠
その後、回復した一誠はアーシアと共に校舎内を歩き回り、負傷したリアス達にも回復治療を施した
勝負は殆ど敗北を喫した様なものの、一誠は打倒幽神兄弟への秘策を立てる事にした