賞金稼ぎの少年
月が真円を描いている夜……
路地裏を激走する人影が2つあった
「はぁ……はぁ……もう奴は追ってこないか?」
「何とか撒いたようだ。ヒヤヒヤさせやがって」
男らしき2つの人影が安堵していると、1人の背中にナイフが刺さる
呻き声を漏らしながら倒れた1人の後ろから、1つの人影が歩いてくる
「盗賊の頭ナッシュ、はぐれ悪魔ガニメデ。お前らの首には高額の賞金が賭けられている。大人しく首よこせ」
月光に照らされたロックミュージシャン風貌の少年
直ぐにもう1人のお尋ね者の両足にナイフを投げつけて動きを止める
「まっ、待ってくれ……!俺にはまだ借金が残ってんだ……!せめてそれを返済するまでは――――」
少年が右腕を水平に掲げると赤い光が発し、腕が鎧に包まれていく
赤と黒を基調としており、禍々しい鋭利な爪がギラリと光る
「悪いけど職業上、お前らを殺さないといけねぇんだよ。それがバウンティハンター(賞金稼ぎ)だからな」
赤と黒の爪は2人のお尋ね者の首をはね飛ばした
―――――――――
ごく少数の者にしか知られてない酒場
そこは賞金稼ぎ、バウンティハンターの賞金引き換え所となっている
先程はねた首を袋に入れて携えた少年が扉を開け、真っ先にカウンターへと向かった
「よう
「上々かな?その内の1体がはぐれ悪魔だったから」
主に人外を専門としたバウンティハンターで、時には人間の犯罪者も捕まえる
不可思議な力で仕留めた賞金首(人外も含む)は数百を超える
「はいよ、これが今回の報酬。光熱費と武器代を差し引いた額だ」
「30万!?おい、この前よりちょっと少なくないか?」
「贅沢言うな。どうせお前カジノで儲けるんだから、それだけあれば充分だろ」
「この日本じゃ競馬ぐらいしか出来ないんだよ」
バウンティハンターと言っても全てが裕福とは限らない
捕まえても危険度が低い賞金首だったり、時間が経つ毎にレートが変わったりしてしまうので、バウンティハンターはあまり人気がある職業とは言えない
なので、報酬が少ない時はカジノや競馬で稼いだりしている
「まぁ確かに、外国と違って日本でカジノは違法だからねぇ。何で外国から離れて狭苦しい日本に?」
「分からねぇ。父さんからいきなり『1人で日本に行ってこい。そして生き抜いてみろ☆』って言われて追い出されちまったんだ」
「そら災難だったな。向こうで作った女達は今頃騒いでるんじゃないか?」
「多分」
新は賞金を受け取るついでにカクテルをオーダーする
本来なら新は未成年なので飲酒は法律で禁じられているが、バウンティハンターの場合は特別に許可されている
カクテルを一口飲み、賞金首のリストに目を通す
「この町に来てから稼ぎが悪くなったな〜。それに誰もが弱く感じる」
「仕方ない事だよ。何せこの町はグレモリーの領土なんだから」
「グレモリー?誰だそれ?」
「知らないのかい?有名な悪魔、元72柱の1つだよ。この町もグレモリーの管轄に加えられたから、犯罪者や賞金首が寄って来ないんだ」
新はふ〜んと再びカクテルを一口
グレモリーと言う悪魔のお陰でこの町は平和を保っている
実際のところ、稼ぎが少なくなるのは遺憾だが感謝はしている
何故なら女を侍らす事が出来るから
「まぁ良いや。明日競馬で稼げばいいし。じゃあなマスター、ごっそさん」
500円玉を置いて席を外す新
酒場を出て、側に駐車してあるバイクに跨がりエンジンを掛ける
流石にヘルメットを被らないと警察に捕まるので忘れずに被り、バイクを走らせる
これがバウンティハンター、竜崎新の今までの日常だった
グレモリーの領土に来てしまった事で、大きな波乱の歯車が回り始めた事など―――――本人は予想もしていなかった……
パソコンが使えない状況、頼みの綱はスマホだけです……。でも骨身を削ってでも書いていきます