思いつきをぶつける場所   作:biwanosin

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はい、これでブラック・ブレット編は終わりです。
そして、この話を読んでいただければなぜ自分がこれを続けられそうにないのかを理解していただけるかと。


では、本編へどうぞ!


第二話

「とか、ついこの間までは考えてたはずなんだけどなぁ・・・」

「いい加減、往生際が悪いですよ兄さん」

 

 今、僕と結衣は三十二号モノリスの辺りに来ている。

 人やガストレアの死体がたくさん転がっている中を歩いて行き、戦場へと向かっていく。

 

 こんな都市伝説がある。『新人類創造計画』。

 これはガストレア戦争が生んだ、人間兵器を開発するプロジェクトだ。

 四賢人と呼ばれる四人が、それぞれの方法で機械化した人間を生み出したプロジェクト。ただ一つ、医者としての道は踏み外さないという誓いを立ててそれぞれが人間兵器を作り出した。

 そうして生まれた人間兵器は、一部は民警に。一部は普通の日常を求めていった。

 僕が手に入れた情報に乗っているのは、今回玉樹さんが参加しているアジュバンドのリーダーにしてゾディアック・スコーピオンを倒した里見蓮太郎。序列剥奪処分を受け、僕たち民警の敵である蛭子影胤。聖天子様暗殺未遂で序列を剥奪されたティナ=スプラウト。

 前者二人は、序列三桁台に。最後の一人に至っては二桁にまで達している。

 全員が全員、人間のまま人間にはたどり着けない強みに達している。

 それが、『新人類創造計画』。ただの都市伝説程度に知っている人は多いだろう。

 

「たしか、爆発してたのってもう少し先だよね?」

「そのはずです。・・・あ、人がいますよ」

 

 結衣が指差す先には、右手右足のない人が岩の上で倒れていた。・・・いや、絶望してる?

 

「あ・・・ねえ、結衣。あれがアルデバラン?」

「そうですよ、兄さん。あれだけの爆発でも死ななかったんですね」

「へぇ・・・ってことは、再生能力でもあるのかな?何か知っていますか?」

 

 岩の上まで登って、倒れている人に聞いてみる。

 あ・・・この人、里見蓮太郎だ。

 

「そうだけど、あんたらは・・・?」

「ん、僕たち?僕は序列十一万千二十五位、片桐民間警備会社のプロモーター、滝沢歎です」

「同じく、序列十一万千二十五位、イニシエーターの滝沢結衣です」

「そんなランクじゃ、あいつには・・・」

「普通ならそうですね。・・・ところで、新人類創造計画の里見蓮太郎さん。こんな話を聞いたことはありますか?」

 

 僕はこの間よりも攻撃性に優れた武器を抜いて、アルデバランの方を向く。

 まだ再生は終わってないのか・・・もう少しくらいなら、話をする時間もあるかな?

 

「お前、こんな状況で何を言って・・・」

「新生物創造計画・・・聞いたこと、ありません?」

 

 首をかしげて尋ねると、目に見えて驚いていた。うん、やっぱり新人類創造計画にかかわってただけあって知ってるんだね。

 

「それは、都市伝説のはずじゃ・・・」

「そんなこと、言い始めたら新人類創造計画もそうですよ。それに、よく言うじゃないですか。“火のない所に煙は立たぬ”って」

 

 『新生物創造計画』。新人類創造計画を実行していた四人と同等の天才一人が、一人で実行していた計画。

 それは、新たなる生物を作り出そうというものだった。そう・・・人間とガストレアの融合体を。

 人間にガストレアウイルスへの対抗因子を植え付け、ガストレア化しない生物兵器を作り出そう、というのが計画の全貌だ。そして、彼女は完璧な対抗因子を完成させた。

 だがしかし、ガストレアウイルスに対抗できるだけあってそれ自体も人間には毒としかならない。事実として、その手術を受けた瀕死の人間はことごとく死んでいった。

 だがしかし、ほんの何人かだけ死なずに生き残り、人には知られずにガストレアを倒していった人間がいる。

 彼らは、ガストレアのウイルスが効かないのをいいことに容赦なく立ち回り、たった一人で新人類創造計画が生み出した人間兵器の倒した以上のガストレアを殺していった。

 

「では改めて、初めまして里見蓮太郎さん。元陸上自衛隊特殊部隊『新生物創造計画』、(アギト)。滝沢歎です」

「お前が、そうなのか・・・」

「ええ、そうですね」

 

 次の瞬間、僕の瞳の色は紫へと変化する。

 ガストレアや呪われた子供たちと同じ赤色に、僕の元の瞳の色である青が混ざった色に。

 

「それじゃあ、行こうか結衣。東京エリアを救うために」

「ええ、行きましょう兄さん」

 

 今日はカラーコンタクトをつけていないので、結衣の瞳も赤色に変わっている。

 同じ髪の色、だが異なる瞳の色をした僕たちはゆっくりと歩き、気づいて向かってきたガストレアを片っ端から倒していく。

 一撃で脳を潰して、少しでも時間を節約しながら進んで・・・アルデバランが攻撃してきたところで、左右に跳んでよける。

 結衣は狼の因子の力で得た脚力や腕力でアルデバランを攻撃している。

 

 僕は少し距離をとってその様子を観察して、驚異の回復能力とやらを見る。

 うん、確かにあれは異常だ。でも・・・

 回復する暇を与えなければ、いけるかな。

 

「結衣、始めるよ!」

「はい、兄さん!」

 

 結衣の返事を聞いたところで、僕は腕に意識を向ける。

 ここでアルデバランと戦う以上、服はもうダメになるものだと考える必要があるだろうし、このままでいっか。

 そして・・・僕の右腕は、巨大な顎へと変化した。

 

「それ・・・」

「いたじゃないですか、(アギト)って。そのまんまの意味なんですよ」

 

 そう言いながら腕を振って、飛んできたガストレアに噛みつく。

 そのまま噛み砕き、呑みこみ、取り込む。これが、僕の新生物創造計画としての力。

 

 そのまま、たった今とりこんだものを使って一時的に飛び、アルデバランの触手を喰らう。

 

「どうですか、兄さん?」

「いつも通り、味はないかな。でも・・・うん、ステージⅣでも大丈夫みたい」

 

 そう言いながら、再び迫ってきた触手を喰らい・・・それを合図にして僕と結衣は走り出す。

 結衣が迫ってくる触手を蹴り飛ばし、バラニウムの剣や銃でアルデバランを傷つけていく。

 アルデバランには再生能力があると言っても、相手はガストレアのステージⅣ。

 再生の阻害も、多少は働いてくれる。

 

 で、僕は・・・ただひたすら、アルデバランを喰らっていく。

 バラニウムの剣で切り裂いてはそれを右手の顎で喰らって、ある程度近づけたら直接食いちぎる。

 そうしてひたすら繰り返して・・・アルデバランが再生を始める前にまた喰らう。

 相手は、心臓や脳を切っても死なないガストレア。

 それでも・・・再生するだけのものさえなくなるほどにすれば、もう死んでくれるんじゃないかな?

 

 そう考えて、ただただ喰らい続ける。

 結衣や僕の刀がバラニウム浸食液で溶けだしたら、僕は右手の顎で。結衣は手刀や足刀で切り裂いていく。

 

 

 そうして、どれくらい戦っていただろうか。

 アルデバランの体はもう巨体と呼べるだけのものですらなく、ステージⅠだと言われても信じてしまうほどになっている。

 そんなアルデバランに近づき、右手の顎を振りおろして・・・余すところなく、アルデバランを喰らいつくした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回は本当にありがとうございました、滝沢さん」

「気にしなくていいですよ、聖天子さま。どうしてもというのなら、今からでも僕の情報を消してください」

 

 歎は心の底から、聖天子へとそう言った。

 

「申し訳ありませんが、それはできません。あなたが新生物創造計画の被験者であることはどうにか隠すことができましたが、アルデバランをほぼペアだけで倒したという事実は、既に広がってしまってましたから」

「そう、なんですよね・・・はぁ、憂鬱だぁ」

 

 歎はそう言いながら隣にいる結衣を見て、その落ち着いた様子をほんの少しでいいから分けてくれと、そう切に願った。

 

「・・・はぁ。式典だけは免除になったんですから、それでよいではないですか」

「うん、まあそれはいいんだけどね。それでも、序列が一気に上がりすぎだと思うし・・・」

 

 今回、アルデバランを倒した功績で僕と結衣の序列は百十七位まで一気に上がった。

 おかしくない?何をどうしたら一気に順位が十一万九百八も上がるの?

 

「・・・本当に、申し訳なく思っています。新生物創造計画については」

「別に、気にしなくていいですよ。もう今さらですし」

「ですが、私たちがしっかりしていれば・・・あなたは本来、」

「もう終わったことです。そして、僕は生きています。それでいいじゃないですか」

 

 歎は聖天子の言葉を遮りながら、結衣の頭をなでていた。

 

 彼らの見た目の特徴・・・銀髪に青い瞳。

 ここから推測ができるかもしれないが、彼らは聖天子の遠い、本当に遠い親戚にあたる身だ。

 だからこそ、彼女は歎たち二人が今の立場にいることに対して罪悪感を覚えている。が・・・

 

「僕たちには、そんな立場は重すぎます。ですから、今の立場でいいんですよ」

「・・・そう、なんですね」

「ええ、そうです。結衣もだよね?」

「はい、兄さん。聖天子さま、私たちは本当に気にしていませんし、今の生活が幸せなんです」

 

 結衣の発言で聖天子の顔から緊張が少し抜けたのを見て、歎は立ちあがった。

 

「では、僕たちはこれで失礼します。また何かあったら、僕たちに対処できる範囲であれば言ってくださいね」

「よろしいのですか?」

「まあ、一応親戚にあたるわけですから。出来ることは、やらせていただきますよ・・・姉さん」

 

 歎が出て行くのを聖天子は驚いた眼で見て、そこに結衣が声をかける。

 

「あれで兄は、素直じゃないんです。申し訳ありません」

「あ、いえ。私は気にしていませんし・・・」

「そう言っていただけると助かります。なんにしても、私たちは聖天子さまのことも勝手に家族として認定しましたから。本当に、遠慮なく言ってくださいね?お姉ちゃん」

 

 結衣はそう言うと部屋を出て、兄の後を追っていった。

 




はい、というわけでこんな感じになりました。


では、感想など待ってます。

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