ドラえもん のび太の大魔境 second season 〜もう一つの伝説〜   作:田舎者

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失踪はしておりません!!
皆さまご安心を!!

今回はいつもより少しだけボリュームを多くして書きました!!
それではどうぞ!!


第4部隊

リルルの緊急オペ開始の直前。

鉄人兵団との攻防戦を終えた集落では、言葉では言い表せない程重たく、濁った空気が渦巻いていた……

 

 

 

 

 

 

「あの………私の夫はどちらに…?」

 

 

一人の女性が、ドラえもんに駆け寄って尋ねた。

しかしドラえもんは言葉に詰まり、その言葉に応えることが出来なかった。

 

 

「そんな………!!」

 

 

その女性は顔を手で覆い、大粒の涙を流しながらその場にへたり込んだ。彼女だけではない。

戦死した者の遺族達は、皆気力を失ったように地に顔を伏せ、大粒の涙を流していた……

 

 

ドラえもん達は、自分達の無力さを悔やみ、拳を深く握り締めた………

 

 

 

 

破壊された門を再び復元光線を使って元に戻し、戦死者や負傷者達を安全な場所を移して一段落着くと、一同は一旦チッポの家に戻った。

 

一同が居る部屋の隣では、負傷した静香、そしてサベールが横になっており、二人とも眠りに入っている……。

 

 

 

スネ夫

「何がなんだか分からないよ………一体どうしてこんな事に……」

 

 

スネ夫は悲惨な現状に思わず狼狽した。

 

 

のび太

「分からないよ………何でこんなに人が沢山死なないといけなかったのか……僕達には分からない。リルルの件だってそう……どうしてリルルが居るのか……どうしてリルルが敵なのか……僕には分からない。」

 

 

のび太は力無い声で返した。

 

 

 

 

 

 

ジャイアン

「……畜生ッ!! 守りたかった!! 守らなきゃいけなかったッ!! なのに俺は…!!!」

 

 

のび太の言葉を聞くまでずっと押し黙って消沈していたジャイアンは、改めてその現実を思い知り、今まで溜まりに溜まっていた心中の怒りを曝け出した。

 

 

ドラミ

「武さん……これは貴方の責任じゃーー」

 

ジャイアン

「言葉だけの慰めなんて要らねえんだよっ!!!」

 

 

ジャイアンを励まそうとするドラミだったが、ジャイアンはそれを凄まじい剣幕で制したかと思えば、我に帰ったような虚しげな顔をして壁にすがった。

 

ドラミは、ジャイアンを哀れむような目を彼に向けた。

 

 

ジャイアン

「やっと分かったよ………俺は……誰も守れやしねえってな……」

 

 

ジャイアンはそう言うと、壁を背に膝を抱えて座り込んだ。

 

 

のび太

「ジャイアン……」

 

 

のび太は咄嗟に彼の名を呼んだが、彼に何と声を掛ければ良いのか、のび太には分からなかった……。

 

 

 

ジャイアン

「……すまねえ、少し外に出てくる…。それとドラミちゃん、さっきは怒ったりしてごめんな……」

 

ドラミ

「……ええ、大丈夫よ…」

 

 

そしてジャイアンは力無い背中を一同に向け、チッポの家を後にした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラえもん

「…………いつまでも感傷的になってる訳には行かない。次の手を打たなくちゃ。情報の整理は全員が集まった時にしよう。」

 

 

ジャイアンが家を出てから数分ほど沈黙が続いていたが、それを破るようにドラえもんは口を開いた。

 

 

のび太

「次の…手?」

 

ドラえもん

「うん……敵にこの集落の位置が完全にバレた訳だ。いつここに攻撃が再開されるかも分からない。だから……この集落を放棄して、民間人達を安全な場所へ避難させる必要があるんだ。」

 

 

ドラえもんはそう提案した。

 

 

ドラミ

「でも……あれだけの人数……どうやって避難させるって言うの…? それに避難させる場所って言ったって……当てはあるの…?」

 

 

ドラミはドラえもんに問うた。

 

 

ドラえもん

「大丈夫。僕に考えがある。」

 

ドラミ

「ーー!!」

 

 

その刹那、ドラミが何かを悟ったような表情をしたようにのび太とスネ夫は見えたが、二人は気のせいだと考え特に気には留めなかった。

 

 

ドラミ

「分かったわ。その件はお兄ちゃんに任せるわ。」

 

 

ドラミは神妙な顔でドラえもんに言った。

 

 

ドラえもん

「それと一つだけ頼みがある。……僕が移動手段の手配をする間、皆は残る全ての民間人を一箇所に集めておいて欲しい。頼んだよ。」

 

 

ドラえもんはそう言い残すと、その場を後にして行った……

 

そして残ったのび太、ドラミ、スネ夫、チッポの4人は、ドラえもんの指示通り、民間人に声かけを始め、集落の中心に集まるように促した。

悲しみにうなだれ、涙を流す者、意気消沈と生気を失いかけている者など、様々な様子の民間人の姿が、一同の胸に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペコ

「良くぞ……戻ってきてくれたな……」

 

スピアナ

「ええ………只今戻りました…」

 

 

 

場所はチッポの家の寝室。先ほどまでのび太達が話していた部屋の隣に位置する部屋だ。

そこでペコとスピアナは、束の間の再開を果たしていた……

 

 

スピアナ

「傷の方は……痛みますか?」

 

ペコ

「………問題ない。王たる者、これ以上休んでなどいられぬからな」

 

 

そう言うとペコは、横たわっていたベッドから抜け、地に足を着き、壁に掛けてあった彼の剣を手に取った。

 

 

スピアナ

「ご無理を……なさらぬように……」

 

 

スピアナはそんなペコの様子を心配そうな目で見る。

 

 

ペコ

「ああ……お前こそ…無理をせぬように……。」

 

 

スピアナ

「……はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スネ夫

「よし、恐らくこれで全員だね。」

 

ドラミ

「ええ……後はお兄ちゃんに任せましょう。」

 

 

民間人を集落の中心に集め終えた一同は、フッと息を吐いた。

 

 

すると突然、一同の後ろから声をかける者がいた。

 

 

ペコ

「皆さん………これは一体…?」

 

 

一同が振り返ると、ベッドから抜け出したペコが立っていた。見ると、まだ身体に包帯を巻いたままの状態だ。

 

 

のび太

「ペコ!? もう歩いても大丈夫なの!?」

 

 

のび太は慌てた様子でペコに問うた。

 

 

ペコ

「ーー大丈夫です……これ以上休んでなどいられません。」

 

 

のび太

「ーー!!」

 

 

ペコはその時、深く拳を握り締めていた。

多くの仲間が戦死して、誰よりも悔しく、哀しいのは、紛れもなく、ペコだったのだ。

 

 

ドラミ

「………分かったわ。無茶だけはしないで…」

 

ペコ

「ええ……大丈夫です。」

 

 

ペコはそう返すと、再びチッポの家へ戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペコ

「…………また貴方と会う事になるとは……夢にも思わなかった……。」

 

サベール

「……………」

 

 

ペコはベッドに横たわって眠りに入っているサベールに向かって呟いた。

サベールはドラミの撃ち込んだドリームガンにより、24時間は眠りに入っている筈だと、ペコはドラミから聞かされていた。

 

 

ペコ

「………あれほどまでに仲間入りを拒んでいた貴方が……よくぞ戻って来てくれました……。」

 

 

ペコはサベールの騎士団時代を思い返しながらしみじみと呟く。

かつて迅速のサベールと呼ばれた猛将は、一度その輝きを失いながらも、再び仲間の為に返り咲いてくれた。

その時ペコはそう考えながら、その場を後にした。

 

 

 

しかし、その考えの甘さを彼は後々思い知る事となる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラえもん

「よし皆、これで、全員だね?」

 

 

ドラえもんは辺りに集められた民間人を見渡しながら言った。

 

 

のび太

「うん………ドラえもん。一体何をするつもりなの…?」

 

 

のび太はドラえもんの言葉に返事をした後、ドラえもんに問うた。

 

 

 

 

ドラえもん

「……………さっき救援を要請した。あとは彼らに任せよう。」

 

 

ドラえもんは、少し言葉を選ぶような素振りを見せた後、簡潔にそう答えた。

 

 

のび太

「救援?……一体誰に…?」

 

 

のび太は続けてドラえもんに問いただす。

ドラえもんはまたもや言葉を選ぶような素振りを見せた。

 

 

ドラミ

「…………」

 

 

その時ドラミはドラえもんを、何かを悟ったような表情で見つめた。

 

そして漸く、ドラえもんは口を開いた。

 

 

 

 

 

 

ドラえもん

「……タイムパトロールだよ。」

 

 

 

 

 

 

そしてドラえもんがその言葉を言い終えた直後であった。

 

 

集落の中心から、巨大なタイムホールが複数出現し、何隻ものタイムパトロールの輸送艇が姿を現した。

 

 

 

スネ夫

「タイム……パトロール……!?」

 

 

スネ夫は余りの唐突さに驚きの声を上げた。

驚いているのはスネ夫ばかりではなかった。

のび太もまた、その事態に驚きを隠せなかった。

 

 

のび太

「ちょっと待ってよ! タイムパトロールは普段時空犯罪を取り締まる組織なんでしょ? それがどうしてこんな所に…?」

 

 

のび太はドラえもんに問いただした。

 

 

ドラえもん

「ーー今回の一件に時空犯罪が関与している可能性をタイムパトロールに訴えかけたんだ…。状況証拠から捜査したところ……タイムパトロールは今回の一件が時空犯罪が関与している可能性が高いと判断したんだ。」

 

 

ドラえもんは硬い表情のままそう応えた。

 

 

スネ夫

「だから僕たちを被害者として保護することになった……って事なのかい?」

 

ドラえもん

「……そういうことになるね」

 

 

そう言うとドラえもんは後ろに着陸したタイムパトロールの輸送艇に目をやった。

 

 

ドラえもん

「………詳しい話は後にするね。」

 

 

ドラえもんがそう言い終えると同時に、一隻のタイムパトロールの輸送艇のハッチが開き、中からタイムパトロール隊員が姿を現した。

 

中から出てきた何人ものタイムパトロール隊員を率いていたのは、意外にも若い女性だった。

 

長い赤髪を後ろで束ね、目を覆い隠すようにアイウェアをかけていたが、その端正な顔立ちはアイウェア越しに見てとれた。

 

 

のび太

「あの人……どこかで……」

 

 

のび太はその女性に見覚えがある様子であった。

 

するとその女性はドラえもん達に近づくと、一同に向かって敬礼をした。

 

 

 

 

 

 

 

リーム・ストリーム

「救援要請を請け、ここへ参りました。タイムパトロール"第4部隊隊長"、リーム・ストリームです。」

 

 

そう言うとリームは掛けていたアイウェアを外し、凛々しいような笑みを一同に向けた。

 

 

 

 

リーム

「お久しぶりね。4年ぶりかしら?」

 

 

 

 

その時、のび太は彼女の事を思い出した。

 

 

 

のび太

「あ…!! …あの時の…!!」

 

 

 

 

4年前、のび太達は7万年前の日本に行った事がある。それは"史上最大の家出"だった。

 

 

ヒカリ族の少年との出会い。

 

のび太が作ったペット、ペガ、グリ、そしてドラコ。

 

時空犯罪者、ギガゾンビとの闘い。

 

そして、ペガ達との別れ。

 

 

その時ペガ達を引き取ったタイムパトロールの女性。

それが今、目の前にいる女性だとのび太はようやく思い出したのだ。

4年ぶりという言葉、端正な顔立ち、そして優しげな瞳。

間違いなく"彼女"だと、のび太は確信を持った。

 

のび太だけでは無い。スネ夫、ドラミ、そしてドラえもんも共にリームの事を覚えていた。

 

 

のび太

「お久しぶりです…! あの……ペガ達は…元気ですか?」

 

 

4年間どうしても聞きたかった事を、のび太は真っ先に問いかけた。

 

するとリームはサムズアップをしながら満面の笑みで応えた。

 

 

リーム

「ええ、バッチリ元気にやってるわよ。あの3匹は今じゃ空想サファリパークの人気者なのよ?」

 

 

それを聞いた一同は心底嬉しそうな顔をした。

 

 

スネ夫

「良かったな、のび太。」

 

 

スネ夫がのび太の肩をポンと叩く。

 

 

のび太

「うん…!! そっか……元気にやってるみたいで本当に良かった……」

 

 

スネ夫に対してのび太は笑って返すと、ペガ達の事を思い耽りながらのび太は目を輝かせた。

 

 

 

 

 

 

ドラえもん

「………リーム、そろそろ始めてもいいかな?」

 

 

突然、ドラえもんがリームに対して呼びかけた。

 

 

リーム

「はい、了解しました。」

 

 

そう応えるとリームは再びアイウェアをかけ直し、タイムパトロール第4部隊を召集して指示を出し始めた。

 

 

リーム

「この集落の方達を全員輸送艇に乗せて避難させる! 怪我人を最優先かつ迅速に避難を完了させること!! 異論は無いな!?」

 

 

隊員

『了解!!!』

 

 

リーム

「では避難にかかれ!!!」

 

 

隊員

『了解!!!』

 

 

 

リームは強烈なリーダーシップを発揮して隊員達に指示を出すと、隊員達は迅速な動きで集落の市民達の避難にかかった。

 

 

隊員

「皆さん落ち着いて順番に乗り込んで下さい!!! 皆さんの人数分は必ず乗れる様になっておりますので慌てなくても問題はありません!!!」

 

 

隊員が輸送艇のハッチに市民を誘導する。

それに従って市民は落ち着いた様子で避難をしている。

 

 

 

スネ夫

「すごい手際だ……あともう少しで完全に避難が完了しそうじゃないか…」

 

ドラえもん

「当然だよ。なんせタイムパトロール第4部隊だからね。」

 

のび太

「あ、気になってたんだけど、そのタイムパトロール○○部隊ってなんなの? 普通のタイムパトロールとは何が違うの?」

 

 

のび太は先程から抱いていた疑問をぶつけた。

 

 

ドラえもん

「タイムパトロールはそれぞれの担当する分野ごとに部隊を振り分けているんだ。例えばここにいる第4部隊は人質救出、保護のスペシャリスト達。手際が良いのはそれが理由さ。」

 

 

スネ夫

「へえ〜、なるほどね。 それにしても"部隊"って…なんか軍隊みたいだね。」

 

 

 

ドラえもん

「事実そうだよ。」

 

 

スネ夫

「え?」

 

 

スネ夫がタイムパトロールの事を「軍隊」と比喩すると、思いがけないことに、ドラえもんはそれを肯定した。

 

 

ドラえもん

「そもそも、タイムパトロールは現代の日本の警察みたいな組織では無いんだ。その組織の作りは軍隊そのもの。時には犯罪者に対しては武力をもって制圧する。それがタイムパトロールのもう一つの顔なんだよ。」

 

 

のび太

「ちょっと待ってよ! 社会の授業で習ったんだけど、日本は憲法で軍隊は持っちゃいけないんでしょ? だったらおかしいじゃないか。」

 

 

のび太は鋭い疑問をドラえもんに投げかけるが……

 

 

ドラえもん

「その憲法は当の昔に破棄されたんだよ。」

 

 

スネ夫

「破棄? どういうことだい?」

 

 

スネ夫がそうドラえもんに問いかけると、ドラえもんはその問いかけに応え始めた……

 

 

そしてのび太達は知る。

 

 

22世紀で一体何が起こり、今のようなタイムパトロールが組織されたのかを……

 

 

 

 




リーム
「ここでまさかの登場よ!! みんなよろしくね!!」

エル
「もとは『T・Pぼん』のキャラだったんだけど、今回は日本誕生に登場したリームをイメージしたキャラ設定になってるらしいね」

もともとタイムパトロール側の人物も書きたいという衝動がありまして、登場させるに至った次第です。
性格の違い等の違和感があるかも知れませんが、そこはどうかご愛嬌を。

それではまた次回でお会いしましょう!!

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