まごう事なき閑話です。
雪穂が若葉の部屋で封筒を見つけた時、若葉と穂乃果は皆と別れて並んで帰路ついていた。ふと穂乃果は気になった事を隣を歩く若葉を軽く見上げて聞く。
「お兄ちゃん身長伸びた?」
「あ~うん、伸びたよ」
穂乃果の問いに若葉は首を縦に振って肯定し、感心した声を上げると聞き返す。
「それにしてもよく分かったね」
「そりゃあ分かるよ。だってお兄ちゃんが音ノ木坂に来た時は私になり切れるくらいだったのに、今はちょっと見上げないとダメになっちゃったからね」
穂乃果はニコッと笑うと小走りで「穂むら」の暖簾を潜る。若葉もそれに続いて暖簾を潜り、居間の襖を開ける。
「ただいま~。って何見てるの?」
「若葉。また大きくなったのね」
「え? あ、うん。ていうかそれ、身体測定の結果?」
若葉は裕美香の持ってる紙を見て眉を潜める。それは裕美香にまだ見せていない物で、なぜそれを持ってるのか若葉は不思議そうに首を捻る。
「そういえば最後に測ったのっていつだったかしら?」
「えっと、確か高蓑原で二年に上がる前だったっけ?」
若葉は最後に身長を測った時の事を思い出すと、ふと笑みを零す。
「どうしたの? お兄ちゃん」
「いやね。ちょっと思い出し笑いってやつだよ」
雪穂がいきなり笑った若葉を不思議そうに見ると、若葉は高蓑原にいた時のことを思い出し笑っていた。
「ねぇねぇ。晩御飯までに何か話してよ」
「あ、私も聞きたい!」
「えー……別に良いけど。何聞きたいの?」
穂乃果と雪穂が若葉に言い寄ると、若葉は諦めた様に座ると何の話をしようかと考える。若葉は穂乃果と雪穂に何が聞きたいのか聞くと、聞かれた二人は何を聞くか悩む。
「じゃあお兄ちゃんが高蓑原に初めて登校した時の話してよ」
「あ、それは気になる!」
「分かった分かった。そっかぁ初登校からもう一年と半年か……」
若葉は自信の思い出の蓋を開きながら、懐かしそうに思い出話をし始める。
若葉が穂乃果と雪穂に高蓑原時代の話をしている時、愛生人と凛の二人は買い出しからの帰路に着いていた。
「まったく、なんで僕達が買い出しに……行くなら企画立案者の母さん達が行くものじゃ……」
「本当だよ~。今日はライブがあって疲れてるのに~」
凛はユラユラと左右に揺らすと隣を歩いている愛生人の腕にしがみつく。愛生人はそれを拒まず、また凛も歩きにくかったのか、すぐに愛生人の腕から離れると顔を赤くしながら躊躇いがちに愛生人の手に自信の手を伸ばす。愛生人はそれに気付かず手をヒョイと躱してしまう。
「あっ……」
思わず凛の口から寂しそうな声が零れ、俯いてしまう。一方愛生人は愛生人でこれからしようとしてる事に内心ドキドキしていて、凛の様子の変化に気付いていなかった。
「あ、あのさ凛ちゃん」
「……何?」
凛は縋るような目で愛生人を見ると、先程の凛同様顔を赤くして腕を差し出す。その行動に凛は一瞬訳が分からずに腕と愛生人の顔を交互に見ると、その腕の意図に気付き再び愛生人の顔を見る。
愛生人はそっぽを向き誤魔化そうとするも、耳まで赤くなっているので凛には愛生人が顔を真っ赤にしているのが分かる。そして少し遠慮する様に手を伸ばし、ゆっくりと腕の隙間に自分の腕を通す。愛生人は凛が腕を通すのを確認すると、腕の隙間を狭めていき腕を組む。
「……これで少しは疲れない、かな?」
「うん」
愛生人が凛に聞くと凛は満面の笑みで頷き答える。
それから二人はそのまま家に帰り、腕を組んでいる所を親四人に見つかり、散々酒の肴にされるのだった。
愛生人と凛が親に揶揄われ、揃って顔を赤くして反論している時、夏希はツバサの家のソファに腰かけていた。その横にはツバサが座っており、夏希の肩にもたれ掛かり、レンタルしたDVDを見ていた。
「それにしても驚いた。急にツバサから家に呼ばれるなんてな」
「だって昨日から親が旅行に行ってたの忘れてたの。それにこのDVDも明日には返却しなきゃいけないのに、まだ見てなかったんだもん」
「いや、別に良いんだけどさ」
夏希はそう返し、ツバサの頭に自分の頭を乗せる。そのまま二人は映画が終わるまで並んで座り、ゆっくり過ごしていた。
「さてツーちゃん。晩飯俺が作るよ。若程じゃないが最近料理のバリエーションは少しずつ増えてるんだぜ?」
「高坂君と比べるのが間違ってるわよ。なっ君に作ってもらった方が嬉しいもの」
「嬉しい事言ってくれるぜまったく。で、何が良い?」
「う~ん、そうねぇ……」
そしてツバサは夏希にリクエストすると立ち上がり、キッチンに立つ夏希の隣に立つと一緒に料理を始める。
「……こうしていると夫婦みたいね」
「そうか? 俺はそんなイメージないが」
「そんな事はないんじゃないかしら……アナタ?」
「いって!」
ツバサの突然の「アナタ」発言に動揺し、誤ってを指を切ってしまった夏希。言った本人であるツバサも、まさかそこまで動揺するとは思ってなかったのか、少し慌て気味に救急箱から絆創膏を取り出し傷口に貼ろうとするも、夏希に手で止められる。
「別にそこまでしなくても良いって。軽く切っただけだし、こんくらいなら舐めときゃ治るって」
「そ、そう?」
「あぁ、だから大丈夫だ」
「なら……あむっ」
「……ツーちゃん、何してんの?」
夏希の言葉で絆創膏をしまったツバサはそのまま、夏希が水で洗っている切った指を口元に運び、咥える。夏希はツバサの突然の行動に目をパチクリさせながら、指を咥えて傷を舐めているツバサに聞く。
「
「あーうん、分かった。だけど一つ言って良いか?」
「?」
夏希の確認の言葉に指を咥えたまま器用に首を捻るツバサ。夏希は空いている手で頬を掻くと恥ずかしそうにツバサを見て言う。
「その、さっきからお前の舌が指に当たってて、もの凄くエロいっだぁ!」
「なっ君のバカ!」
指を軽く噛むと、ツバサは夏希の指から口を離し、リビングのソファにダイブする。夏希は思った事を言っただけなのに噛まれた事に納得がいってない表情をし、傷口を舐めるもう一度水で流し、血が止まった事を確認すると料理を再開する。
夕食が出来上がり向かい合って食べていると、ツバサがキッチンに立った時の事を思い出して夏希に聞く。
「そう言えばなっ君って身長伸びた?」
「ん? あぁ確かに伸びたな」
「くっ、またなっ君との身長差が……」
「んなの気にしなくて良いだろうに」
少し悔しそうに言うツバサに夏希は手をひらひらと振って返す。そんな
翌朝の神田明神。そこには疲れ切った顔の夏希と愛生人。若葉は隣に立つ二人を不思議そうに見る。
「二人とも疲れてるみたいだけど、何かあったの?」
「昨夜ちょっとありまして……」
「俺もな……」
二人の返事からして深く聞いてはいけないと悟った若葉は、話の話題を変える。
「そう言えば二人とも身長どのくらい伸びた?」
話を変えようと話題を探した結果、前日穂乃果に言われた事を思い出し、それを話題として提示する若葉。二人その話題を振られ、一度空を仰ぐその質問に答える。
「僕は5㎝伸びて163㎝になりました」
「俺は170になったぞ。そう言う若は?」
「俺は7㎝伸びたから167だよ」
「て事は僕だけが160㎝台前半ですか」
夏希と若葉の身長を聞いて、愛生人は少し落ち込む様子を見せる。そんな愛生人に若葉はタイムを書きながら励ましの声をかける。
「まぁそう落ち込む事はないんじゃない? 俺らはまだ高校生、成長期の真っ只中。これから伸びるって」
「そう、ですね。そうですよね。まだ高一ですし、これからだー!」
若葉の励ましの言葉に愛生人は顔を上げると、やや自棄気味に叫ぶ。突然叫ばれた若葉と夏希は、思わず手に持っていたボードで愛生人の頭を叩く。
「何するんですか!」
「それはこっちの台詞だ! いきなり叫びやがって」
「そうだよ。神主さんに借りてる上に、朝早いから近所迷惑甚だしいからね?」
「はーい」
愛生人は叩かれた箇所を擦りながら二人に返事をし、階段走を終わらせた真姫のタイムを手元の用紙に、書き込んでいく。
そして全員が走り終わり柔軟をしている時、若葉は思い出したように夏希に言う。
「そう言えば美術部だったかな? 部費申請用紙が「承認」の方に入ってたから「申請」の方に入れ直しておいたよ」
「お、そりゃ悪かった。助かった」
夏希は若葉の言葉に心当たりがあった様で謝る。若葉も若葉で注意をするだけだった様で、それだけ言うと柔軟の手伝いに向かった。
【音ノ木チャンネル】
夏「今回は心なしか短いな」
愛「まぁ気のせいという事にしましょう」
若「そんな訳でやっていこっか」
夏「て言うか、今回の話なんだよ! 何がしたかったんだよ!」
愛「単にアニメ2期7話の話の大幅カットと、その穴埋めですよ」
若「それだったら、もうちょっと日常回とかあったと思うけどね」
夏「でも前回の終わり方からして、やる事は限られてるけどな」
愛「それでも関係の無い話を持ってくるあたり、無理やり感が否めないですけどね」
若「まぁ高蓑原時代の話もオールカットされたけどね」
夏「アッキー達はアッキー達でなんか楽しそうだったな」
愛「勘弁してください。あの後両親に凄く揶揄われたんですからね!」
夏「ハハハ。まだ腕組むのは慣れないか」
愛「そんなの若葉さんだってまだですよ!」
若「愛生人。うるさいよ? 俺らには俺らのペースってものがあってね?」
夏「つまりまだ、という事だな」
若「そんな事より、身長だよ身長」
愛「そうでしたそうでした。関係ない話をしててすっかり忘れてましたね」
夏「これが執筆中に本気で忘れてたから手に負えないんだよな」
若「因みに伸びた身長の数値は、あり得なくもない数字らしいよ」
愛「まぁ作者自身も三年間で10~15㎝伸びましたからね」
夏「凄い伸びたな」
若「ま、という訳で俺達の成長期はこれからだ!」
愛「打ち切り漫画じゃないですか!」
夏「名無し先生の次回話にご期待ください!」
愛「失踪フラグですね分かります」
若「え、失踪しないよ? 愛生人何言ってるの?」
夏「ちょっと何言ってるか分からないな」
愛「畜生! これだよ! この二人の熱い手の平返し、過去に何度経験したか!」
若「まぁ手の平返したり返されたりは、このあとがきでは常じゃない?」
夏「俺らも経験してるしな」
愛「あーもう! 分かりました、分かりましたよ! もう終わりにすれば良いんでしょ!」
若「はいはい。じゃあ終わりにしよっか。誤字、脱字、感想などおまちしてま~す」
夏「よろしくな~」
愛「もうちょっとやる気出せよぉ!」