アニライブ!   作:名前はまだ無い♪

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お待たせ!


に、にっこにっこにーbyにこ?

 あれから一度休憩を挟み、再度どうするか話し合いが始まった。

 

「さて、取り敢えず落ち着いたか」

「最初から落ち着いてはいたけどね」

 

 絵里のツッコミに夏希はコホンと咳払いをすると、全員に向き合う。

 

「それで、俺が言うのもアレだが何か休憩中に良いの思い付いたやついるか?」

 

 夏希の言葉に皆が黙り込む。そんな様子に夏希は溜め息を吐くと、最後の頼みの綱である希を見やる。希は瞳を閉じて目の前にタロットの山を取り出し、一枚捲る。出たカードは『Change』

 

「希、そのカードの意味する事は?」

 

 普通のタロットの意味を知っている若葉でもこの状況下での意味が分からず、希に聞く。希はカードをジッと見つめると不敵に笑うと、その意味をその場の全員に伝える。

 それから着替えを終わったメンバー達は屋上に上がっていく。

 

「おはようございまーす! ……あ、ごきげんよう」

 

 いつも通り元気に挨拶した穂乃果は、何かに気付いたかのようにハッとすると体の前で手を合わせ、まるで海未様に挨拶をし直す。

 

海未(・・)、ハラショー」

 

 そんな穂乃果に声をかけたのは腰に手を当て、髪をポニーテールにしていることりだった。心なしか、いつもより眉をキリッとさせている。そしてなぜか穂乃果を海未と呼んだ。

 

絵里(・・)早いですね」

「「そして凛も」」

 

 穂乃果がことりの事を絵里と呼び、二人は声を揃えて現在屋上にいる残りの一人、海未(・・)を見る。海未は凛の様に髪の一部をゴムで止め、新しくなったミニスカートタイプの練習着の裾で恥ずかしそうに足を隠そうとする。

 

「無理です!」

「ダメですよ海未。ちゃんと凛になり切って(・・・・・)下さい」

 

 実は穂乃果の言う通り、今現在µ'sのメンバーは全員口調と練習着を入れ替えて過ごしているのだ。その結果、穂乃果は海未に、ことりは絵里に、海未は凛になり切らなければならない。また穂乃果と海未を見れば分かる通り、穂乃果が海未になったからと言って海未が穂乃果になる訳ではない。誰が誰になるかは完全にランダムとなっている。その為

 

「そ、そうだよ海未ちゃん。海未ちゃんが空気を変えた方が良いって言いだしたんでしょ?」

「わ、若葉……」

 

 若葉(男子)花陽(女子)役になる事もある。若葉は笑顔で海未の肩に手を置くと、ね? と笑って首を傾げると、その有無を言わせない笑顔に海未も観念したのか

 

「にゃー! さぁ、今日も練習いっくにゃー!」

 

 両手を振り上げ、やや自棄気味に叫び出す。そして

 

「ほらかよちん! 柔軟やるにゃ!」

 

 と若葉と背中合わせになると腕を組んで背筋を伸ばし始める。

 

「何それ意味わかんない」

 

 

 そんな二人を見ながら、真姫役になった凛が髪の毛を弄りながら言う。そんな凛に穂乃果が注意をするも、面倒な人、とそっぽを向かれてしまう。

 

「ちょっと凛! それ私の真似でしょ。やめて」

「お断りします」

 

 凛の真似に耐えられなかったのか、扉を開けて希に扮した真姫が凛にやめる様言うも、凛はそれを断る。その光景を見て若葉は穂乃果から聞いた真姫の勧誘当時の事を思い浮かべながら、凛の物真似のクオリティの高さに感心していた。更にそんな真姫に追い打ちをかけるかの様に、穂乃果が真姫に希として真姫に挨拶する。

 

「ううぅ……」

 

 真姫は助けを求めるべく柔軟をしている若葉を見るも、今の若葉は花陽になり切っている為、助ける事が出来ない。

 

「ほら真姫。いつまでも駄々を捏ねてても仕方ない……でしょ」

 

 そんな真姫に声をかけたのは若葉役になった夏希だった。

 夏希は真姫の頭に手を置いて、いつも若葉がやってる様に撫でるも、やはり撫でられ心地が違うのか、真姫が落ちる事は無かった。

 

「ねぇ海未」

「なんでしょう若葉」

 

 そんな真姫と夏希の光景を見て、若葉は気付かれない様に海未に話しかける。幸いにも今、穂乃果達は真姫に集中している為気付かれてはいない。若葉は夏希を見るとぐと思った事を海未に聞く。

 

「普段の俺ってあんな感じなの?」

「そうですね。まぁ大体あの様な感じですね。今後改善でもするのですか?」

「いや、普段の俺達がどう見えるのかが気になっただけ」

 

 2人が話している間に真姫の説得に成功したのか、真姫も希の真似を始める。そして穂乃果が真姫を誉めた時、再度扉が開く。全員がそちらを見ると

 

「に、にっこにっこにー。あなたのハートに、にこにこにー。笑顔を届ける……矢澤にこ、にこぉ……青空もにこ」

「ど、どうしたんだにこっち。元気がないぞ」

 

 そこにいたのは羞恥で顔を真っ赤にしてにこの練習着を着た愛生人と、そんな愛生人に同情の視線を送りつつも、少し引いている夏希役のにこ。

 

「にこちゃん元気だして~」

「そうだよにこちゃん! 元気が一番だよ!」

 

 そんな愛生人の肩に手を置き励ますのは、ことり役の花陽と穂乃果役の希だった。穂乃果は希の演じる自分が普段はああなのかと隣にいることりに確認を取ると、ええ、と即答される。

 そしてまたもや扉が開けられ、愛生人になり切った絵里が屋上の状況を見て一言。

 

「皆さん何やってるんですか? やっぱり……変よ」

 

 最後の一言だけ素に戻り言うと、全員が思っていた事なのか皆が頷く。それからもう一度今度は自分の練習着に着替え、部室に集まる。

 

「なんか、無駄に心に傷を負って終わった気がします」

 

 次の案を考える中、愛生人は部室の隅で1人膝を抱えていた。

 

「そもそもなんで僕がまた女装する羽目に……しかも今度はミニスカート……」

 

 どうやら今回の一件で愛生人が受けたダメージは皆が思ってる以上に大きかったらしく、見かねた凛が愛生人の隣に一緒になって座り込む。

 

「まぁアッキーの介護はりっちゃんに任せて、何か考えないとな」

「そうですね。結局何も変えられないままですね」

 

 夏希と海未の言葉に重たい空気が部室に流れる。そんな中、絵里が手を挙げる。

 

「ねぇ、ちょっと思ったんだけど。いっその事、一度「アイドルらしい」って

 イメージから離れてみるのはどうかしら」

「アイドルらしくなくって事?」

「まぁそれはそれでありかもね。それで、例えばどんな?」

 

 高坂兄妹の言葉に絵里は頷くととある道を提示した。

 

「それで、カッコよさをイメージした感じで、ロックで荒々しい感じ、という事であの衣装になったんですか?」

「あぁ。俺もさすがにアレは止めたんだがな」

「まぁ下手しなくても理事長室行きは免れないよね……」

 

 取り敢えず出来た新衣装お披露目と言う事で、穂乃果達9人は校門前の生徒達に見せに行った。若葉と夏希は部室に残って愛生人の相手をする事になった。

 愛生人もぼんやりとだが、新衣装は視界に入っていたのか、若葉と夏希に困惑の視線を送るも、2人も一応止めはしたのだ。しかしその制止の声を振り切って穂乃果と絵里を主体に話は進んでいったのだ。

 少しして、白と黒のメイクで鎖やらが付いた衣装を着た穂乃果達が校門前に躍り出る。途端に響く女子生徒の悲鳴。そして理事長室に呼び出されるアイドル研究部。

 

「え~と……若葉君。説明お願いしてもいいかしら?」

 

 彩はアイドル研究部の部員12人を理事長室に呼ぶと、一番落ち着いている風に見える若葉に状況説明を求める。若葉は頬を掻きながら、訳を説明する。

 

「成る程ね。つまりはあなた達はその格好で次のライブに出る、という事でよろしいのですね?」

 

 彩の確認する様な視線に穂乃果達は言葉を詰まらせる。結果、アイドル研究部内でもなしの方向になった。

 それから部室に戻り、時間が遅かった為その日は解散となった。

 翌日。再び部室に集まった部員は今度こそ、と意気込む。しかしそんな中、衣装担当のことりが手を挙げる。

 

「あの……実は衣装の方が出来ちゃってて……」

「本当!? 見せて見せて!」

 

 穂乃果がことりにせがむと、苦笑いしながら鞄からスケッチブックを出すと皆にも見えるように広げる。それに続いて真姫と海未も楽譜と歌詞の書かれた紙を取り出す。

 

「実は昨日、あの後アイデアが出て来て」

「それを纏めてみました。確認して貰えますか?」

 

 真姫と海未がそれぞれのものを回し始める。皆はそれに目を通すと隣の人に渡す。そして一周し二人の元に戻ってくると不安そうに全員を見る。最初に口を開いたのは絵里だった。

 

「さて曲とかも決まった訳だし、早速練習しましょ!」

 

 絵里の言葉に反対の言葉はなく、そのまま練習が始まった。

 

 ☆☆☆

 

 そしてアキバハロウィンフェスタ最終日。そこには若葉を除いた十一人が控室に向かっていた。

 

「あの、若葉さんってもしかして」

「あぁ。今ならステージで楽しくしてんじゃねえか?」

 

 夏希の言葉は的を射ており、現在若葉は再びカボー君の中に入りステージで朱子とハッチャけていた。その様子はマイクを通して穂乃果達の所まで伝わってきていた。

 

 「ヤッホーカボー君、ハッチャけてるかーい!」

「もちろんカボー!」

「今日は、アキバハロウィンフェスタ最終日という事であれがあるんだよね。カボー君!」

 

 朱子の問い掛けに答える様にカボー君は頷き、その場でクルリと回る。

 

「今日はスクールアイドルの皆にライブをして貰うカボ! しかも出場チームは前回「ラブライブ!」優勝したA‐RISEと、最近の注目株でカボー君お気に入りのµ'sカボ! 皆最後まで楽しんでいってカボ!」

 

 そこで音声は切れ、ハロウィンらしいBGMが流れ始める。

 

「「カボー君のお気に入り」って言っちゃって良かったのかしら?」

「昨日聞いたら、あそこで言う台詞はイベントの会長とかに見せてOK貰ったらしいわよ」

「そこまでしたんだ……」

 

 真姫の説明に凛が皆の気持ちを代表して呟く。それから控室に着き、着替えを始める。

 その間、夏希と愛生人は外で若葉の帰りを待っていた。

 

「なっくん何してるの?」

「んぁ? 見ての通り若の帰りをって……ツバサ。なんでここにいるんだよ」

 

 夏希はいつの間にか隣に立っていたツバサに、大して驚く素振りを見せずに聞く。ツバサは舌をチロりと出すと笑って答える。

 

「自分の彼氏に会いに行くのに理由がいるのかしら?」

「あのなぁ、そんな嬉しい事言っても俺は騙されないからな?」

「やっぱりバレた? 実は高坂さん達に挨拶に来たの」

「そっか。ほのっち達は中にいるぞ」

 

 夏希はそれだけ言うとツバサを中に入れ、何か言いたそうにしている愛生人を見る。

 

「どうした?」

「あ……いえ。夏希さんは嘘を見破るのが得意だったかなぁ、と思いまして」

 

 愛生人は先程の二人のやり取りを見て、最初ツバサの嘘に騙されたのである。そして夏希が彼女のツバサの言葉を、さっきの台詞だけとは言い、全く信じていなかった事に驚いていたのだ。

 

「あぁそんな事か。んなの簡単な事だ」

 

 愛生人の疑問に夏希は種明かしする様に携帯を取り出し、愛生人に見せる。いきなり携帯を見せられた愛生人は首を傾げて夏希を見る。

 

「付き合ってからこっち、あいつが「会いたいから」って理由で俺に会いに来た事は一回もない」

「一回も、ですか?」

「あぁ。会いたい時は必ず連絡を入れてから来るんだよ」

 

 まぁ俺も似た様なもんだけどな。と夏希が少し照れた様に笑って言う。

 

「でも何か相談事とかあった時とかどうしてるんです?」

「その時は決まって俺から聞くな。意外と電話越しでも分かるもんだぜ?」

「そ、そうなんですか……」

 

 愛生人はどこか納得のいかない表情で夏希の言った事を考え始める。しかし夏希の言った方法で解決出来るのは夏希だけだった。なぜなら夏希は人並み以上に聴覚が優れており、付き合いの長い人となら電話越しでの会話で相手に何があったか分かるのだ。そこまでの聴覚を持っていないので、夏希の言っている事がいまいち分からない。

 

「二人ともお待たせ」

 

 そんな二人の元へ若葉が走って戻って来た。夏希が遅くなった理由を聞くと若葉は汗を拭きながら答える。

 

「カボー君の控室から出たのは良いんだけどさ、そこでちょうど音響さん達と会ってね。打ち合わせとかして来ちゃったんだ」

 

 カボー君の事は前日に予め部員に教えていた為、今度は変に誤魔化さずに言えるのである。

 

「て事は今回俺らの出番終わりか?」

「いや終わりじゃないでしょう。他にもあるんじゃないですか? 何か」

「何かってなにさ」

 

 夏希の返しに愛生人はう~ん、と唸り考える。結果答えが見付からず隣に立って祭りを眺めている若葉に聞く。

 

「何かないですかね?」

「う~ん。他の仕事って言えばあれじゃない? 祭りを精一杯楽しむ、とか」

「つまり何もない訳だ」

 

 夏希がジト目で若葉を見るも、若葉はそんなのどこ吹く風といった様子で受け流している。それからまもなく、ライブの時間になりµ'sはアキバの車道を大きく使いライブを成功させる。

 

 そしてµ'sのライブが成功した一方、「穂むら」では若葉と穂乃果の妹の雪穂が若葉の部屋を訪れていた。

 

「やっぱりお兄ちゃんの部屋は綺麗だな~」

 

 雪穂は若葉の部屋を見渡して兄の整理整頓の上手さに感嘆の声を上げる。

 

「えっと、借りてた本の続きはっと……あった、これだ」

 

 雪穂が若葉のいない時に部屋に来たのは、前から若葉に借りていた本の続編を借りに来たのだ。勝手に借りてる訳ではないからこうして本人のいない時に訪れなくてもいいのだが、雪穂はストーリーの続きが気になり、こうして若葉のいない部屋に来たのだ。

 

「……お兄ちゃんって普段どんな勉強してるんだろ?」

 

 そして本人がいない部屋という事もあり、中学三年生という年頃の雪穂の好奇心が擽られるのは当然の事。雪穂は若葉の机に近付くと一段目の引き出しを開ける。

 

「……あれ? これって」

 

 引き出しの中、雪穂の目を引いたのは一通の封筒だった。印鑑の部分には音ノ木坂学院の校章の形をしたものが押されていた。

 

「お、お母さぁん!」

「どうしたのよ雪穂」

「お兄ちゃんが。お兄ちゃんが!」

 

 雪穂は裕美香に先程見付けた封筒を渡す。

 

「若葉がどうしたのよまったく」

 

 裕美香は封筒から一枚の書類を取り出し、内容を見る。

 

「これって……」

 

 その時襖が開かれ、若葉と穂乃果が入って来た。

 

 




【音ノ木チャンネル】
夏「今回は二人とも災難だったな」
愛「いいですよね。夏希さんは目つきが鋭いからって理由で、今まで女装から逃れられてるんですから」
夏「俺ってそんな理由で女装させられなかったんだ!?」
若「本人も今知る事実ってどうなの?」
夏「うるせぇ。それよりも若はアッキーほどダメージ受けてないのな」
若「まぁ、ね。色々あったんだよ……」
愛「若葉さんが遠い目をしている。その先には……いつぞやのファッションショーでお世話になった通称監さん!?」
夏「何となく察しはついたが一応聞く。何があった」
若「番組の企画で事あるごとに女性物の服を、ね」
愛「……そ、そういえば今回久し振りに夏希さんの特技が発動しましたね」
夏「お、おう。まぁ普段描写が無いだけで使われてたりしてるけどな」
若「最初に出たのって新歓当日の回だから大分昔だよね」
愛「ですね。あの頃はこんなに話数が多くなるだなんて予想してませんでしたね」
夏「まぁなる様になるだろ。んじゃあ久し振りにあの台詞で締めるか。アッキーよろしく!」
愛「分かりました! それでは誤字・脱字、感想、アドバイス等等、お待ちしております」
若「なお現在投稿中の「アニライブ!」とフリーホラーゲーム「ib」とのクロスオーバー作品「ラブラib~太陽の笑顔が織りなす物語り~」もよろしくお願いします」
夏「んじゃあ」
『また次回会いましょう!』

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