アニライブ!   作:名前はまだ無い♪

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おまっせしゃっしたー!


ミイラ取りがミイラになったby絵里

 あれから、夏希達はステージから降りた穂乃果達と合流し、三手に分かれて若葉を探しに行く。分かれ方は夏希を先頭に穂乃果、絵里、真姫の四人。希を先頭に凛、愛生人、ことりの四人。そして海未を先頭ににこと花陽の三人である。

 

「にしても若どこに行ったんだろうな」

「さぁ? でも若葉の事だからここからそう遠くには行ってないと思うんだけど……」

「だと良いんだけどな」

「二人ともその認識は甘いわよ」

「確かに。お兄ちゃんって酷い時は平気で知らない場所に行ってて、そこの人達と仲良くなってるんだよ?」

 

 真姫は冬に行った合宿の時を、穂乃果は若葉が過去に起こした出来事を上げて二人の楽観的な思考を否定する。否定された夏希と絵里は二人の話を聞いて、更に注意深く真剣に人ごみの中から若葉を見つけようと目を凝らす。

 

「希ちゃん達は高い所から探してるんだっけ?」

「ええ。最悪愛生人が「祈る者達(プレイヤー)」を使う事も視野に入れていたわよ」

「それはまた何とも……」

 

 穂乃果は過去最大の捜索隊が結成間近な事に思わず苦笑い。真姫も愛生人が本気で「祈る者達(プレイヤー)」を使うかもと考え、そうなる前に若葉が見つかる事を願った。

 

「おーい。二人とも逸れんなよ~」

「ミイラ取りがミイラになった、なんて展開笑えないからね?」

 

 談笑をして少しばかり四人の距離が開くと、夏希と絵里が立ち止まり穂乃果と真姫に呼びかける。二人は慌てた様に距離を詰めるべく走り出す。

 

「二人とも危ない!」

「え? ……わぷっ」

「……あふっ」

 

 夏希の制止の叫びも虚しく、二人は人ごみから突然出てきたカボチャ頭のぶつかってしまった。しかし二人は後ろに倒れる事はなかった。なぜならそのカボチャ頭に倒れそうになったところで腕を掴まれ、抱き寄せられる。

 

「あ、あの」

「もう大丈夫……です、よ……?」

 

 穂乃果の言葉にカボチャ頭は頷くと二人を放す。

 

「あの、すいませんでした」

 

 夏希と絵里が穂乃果達の元へ来るなり絵里がカボチャ頭に謝るも、カボチャ頭は慌てたように手を振って答える。

 

「べ、別に大丈夫カボ。それより二人に怪我がなくて良かったカボ」

「あ、そうだ。あの、この子にそっくりな男子知らないですか?」

「……そっくりな男子、カボ?」

 

 夏希が手を叩いて若葉の特徴を伝え、カボチャ頭に見覚えがないか質問するも、カボチャ頭は首を振って答える。

 

「そうですか、ありがとうございました。じゃあ俺らは引き続き若探しに行くか」

「そ、そうね」

「うん……」

「さ、行きましょう。それじゃあまたどこかで」

 

 絵里がカボチャ頭にお辞儀して三人の後を追う。

 

『おーいカボーく~ん。早くおいでー!』

 

 ステージ上の朱子に呼ばれたカボチャ頭、カボー君は両手を大きく振ってステージに駆け寄り、上に上る。

 

「カボー君ハッチャケてるかい!」

「ハッチャケてるカボー!!」

 

 朱子に振られテンション高く答えるカボー君。真姫と穂乃果はそんなカボー君に同情の視線を投げかける。

 

「それにしても見つからないな」

「そうね。ほんとにどこに行ったのかしら」

 

 そんな二人には気付かずに若葉を探す為に辺りを見渡している。

 

「ねぇ穂乃果、さっきのってやっぱり……?」

「うん。あの抱き方は間違いないよ」

「何が間違いないんだ?」

「若葉見つけたの?」

 

 夏希と絵里が振り返って穂乃果と真姫に聞くと、聞かれた二人は苦笑いを浮かべてとある場所を指す。二人の指した方を見ると、そこにいたのは先程からテンションの高い朱子と揃ってテンションを上げているカボー君がいた。

 

「……なぁえりち。俺また視力落ちたかもしんない」

「奇遇ね。私も最近視力が落ちたんじゃないかって心配してたのよ」

 

 疲れたように目を押さえる二人の反応に真姫はムッと口を尖らせつつも、ステージのカボー君をジッと見つめる。そんな真姫の視線に気付いたのか、ステージ上で跳ね回ってるカボー君の動きが一瞬止まる。

 

 実は穂乃果と真姫の予想は当たっており、カボー君の中身は若葉だった。

 

 ☆☆☆

 

 時は若葉がいなくなった時まで巻き戻る。

 

「あの、少しお話良いですか?」

「えーっと……?」

 

 愛生人が夏希に耳打ちした時に若葉は背後から声をかけられた。後ろを振り返るとそこにはスタッフジャンパーを着た男性が立っていた。

 

「高坂若葉君、だよね?」

「まぁそうですけど……」

「イッチーから話は聞いてるよ。そこでちょっと頼みたい事があるんだ」

「あの、イッチーって誰ですか?」

「あれ、知らない? 依知川監司(いちかわけんじ)。ファッションショーで一緒にやったって聞いたけど。あ、因みに僕の名前は戸張直生(とばりなお)。よろしく」

 

 戸張の言葉に若葉は思い出したように頷く。実は若葉、あのファッションショーのあと最高責任者の通称「監ちゃん」と連絡先を交換していたのだ。

 

「あの、それで頼み事とは」

「実は言いにくいんですけど……」

 

 直生が言うには、ハロウィンイベントのマスコットキャラ「カボー君」の中に入るバイトの人が渋滞に巻き込まれて遅れてくるとの事。しかしカボー君の出番まであと少し。

 

「成程。それで監司さんの知り合いの俺に頼んじゃおう、と」

「そうそう。で頼まれてくれるかい?」

「まぁ引き受ける気がないならここまでついて来ませんよ」

 

 若葉は「STAFF ONLY」と書かれている扉を潜る。若葉は直生の様子から急を要すると考え、話を聞きながら更衣室へと向かっていたのだ。

 

「さて、携帯は持ってるといけないんだよなぁ。着ぐるみのバイト中って」

「若葉君慣れてるね……」

「まぁ職業柄それなりに着た事ありますからね」

「職業柄って君の職業学生だよね?」

「そうですよ~」

 

 若葉はカボチャ頭を被りながらのんびりと直生に返すと、更衣室から出て行きステージを目指して歩き出す。

 

「二人とも危ない!」

 

 突然聞こえた絵里の声に若葉は何も反応する事ができず、急な衝撃が襲った。若葉が隙間から見ると穂乃果と真姫が後ろに倒れそうになっていた。思わずいつものように腕を掴み自身へと引き寄せてしまう若葉。

 

「あ、あの」

「もう大丈夫……です、よ……?」

 

 二人が無事なのを確認した若葉は腕を放し、その場から離れようとする。

 

「あの、すいませんでした」

「べ、別に大丈夫カボ。それより二人に怪我がなくて良かったカボ」

 

 若葉は中身が自分だとバレやしないかヒヤヒヤしながら絵里に返す。

 

「あ、そうだ。あの、この子にそっくりな男子知らないですか?」

「……そっくりな男子、カボ?」

 

 夏希が穂乃果を突き出しながら聞くも、まさか私が若葉です。などと答えるわけにもいかず、首を振ってしまう。

 

「そうですか、ありがとうございました。じゃあ俺らは引き続き若探しに行くか」

「そ、そうね」

「うん……」

「さ、行きましょう。それじゃあまたどこかで」

 

 夏希の一言で若葉はアイドル研究部の誰にも連絡を取ってない事に気付き、やや気を落とすもステージから朱子に呼ばれ聞かされた通りのカボー君のキャラでステージに上がる。

 

「カボー君ハッチャケてるかい!」

「ハッチャケてるカボー!!」

 

 朱子のテンションに合わせて自分のテンションも無理やり上げる。

 

「ねぇカボー君? ここらで自己紹介いっとく?」

「自己紹介カボね! 見た目はカボチャ。頭もカボチャ。その名はカボー君カボ!」

 

 朱子に話題を振られるも若葉は狼狽える事無くカボー君の自己紹介をこなす。それから数時間、長かった開会式がカボー君を演じ続けた若葉が更衣室にてカボー君を脱いでいると、携帯が鳴った。

 

「今出ますよ~っと……げ」

 

 携帯の画面には『西木野 真姫』と表示されており、他のメンバーからもメールや電話がかかってきていた。着信数は全員を合わせて百件近く。思わず電源ボタンを押してスリープにしてしまう若葉。

 

「なんか普通に申し訳ないと思うと同時に、寒気が止まらないんだが……」

 

 皆への対処をどうしようか悩んでる間に再び携帯が鳴る。発信者は先ほどと同じく真姫だった。

 

「も、もしもし」

『あ、やっと出たわね。今どこにいるのよ』

「今? ちょっと待ってね」

 

 若葉は保留ボタンを押してから荷物を持ち、更衣室から出る。

 

「え~っとね。今ステージ横の建物の前だよ」

『ステージ横ね。今から行くからぜっっっったいに、そこから動かないでね!』

 

 それだけ言うと真姫は通話を切り、若葉が言った場所まで急ぎ足で歩いて行く。その後ろから穂乃果達もついて行く。

 

「あ、いた。おーい若」

「わ~か~ば~」

 

 メンバーの中で一番高身長な夏希が若葉を見つけると同時に、真姫も見つけたのか顔を顰めたまま若葉に近付く。若葉は真姫の形相に一瞬驚くも、自分のした事を思い出しそこに留まる。

 

「や、やぁ真姫」

「今まで、どこ行ってたのかしら?」

「え、っと……どこ行ってたでしょうがっ!」

 

 若葉は質問に笑って誤魔化そうとすると、真姫に胸倉を掴まれ顔を引き寄せられる。視界いっぱいに真姫の顔が広がり苦笑いになる若葉。

 

「あ、あの西木野さん?」

「……」

「……すいませんでした」

 

 真姫の無言の威圧に謝る若葉。若葉の謝罪聞いて真姫は一つ頷くと手を放し、フン、と顔を背ける。

 

「それじゃあもう時間も遅いし帰りましょ」

「ですね」

「あははは。申し訳ない」

 

 帰りの電車の中、扉付近に立った状態で座ってる穂乃果達を見る若葉と夏希。

 

「それで? いなくなってた間、どこで何してたんだよ」

「別に。ちょっと頼まれ事をね」

「ふ~ん。頼まれてステージに上がってたんだ?」

「なんで知ってるの?」

 

 若葉は夏希の言葉に驚いて聞き返す。

 

「なんでって。気付いたのはマッキーとほのっちだぜ?」

「まさか……」

 

 若葉が気付いた二人の名前を聞いて一つの可能性に思い至る。

 

「そのまさかだよ。若が二人とぶつかった時に気付いたらしい」

「よくもまぁ、それだけで……」

 

 夏希は、若葉の言う通りと頷く。二人の会話は小声だったため、他の人達には聞こえていなかった。

 

 




【音ノ木チャンネル】
愛「それにしても若葉さんって、本当に色んな事やってますよね」
若「そう?」
夏「普通の高校生は俗に言う業者の人と連絡先の交換はめったにしないだろ」
若「え、そうなの!?」
愛「夏希さん。偶に思うんですけど、若葉さんって時々抜けてません?」
夏「まぁ翔平曰く高蓑原にいた頃もそうだったらしいから諦めるしかないみたいだ」
愛「あの、若葉さん。よろしかったら、他に電話帳にどんな人がいるか聞いてもいいですか?」
若「えっと、バイト先の連絡先でしょ。あとはアイドル研究部メンバーに家族、真姫とことり、海未の両親に友達、あとは最近だと朱子さんと戸張さんにファッションショーの時にお世話になった方々ect……」
夏「多いなおい!」
愛「あ、「祈る者達(プレイヤー)」のメンバーもちらほらいる」
夏「て言うかマッキーはともかく、なんでことりんとうーみんの両親の連絡先まで持ってんだよ」
若「だって昔からの付き合いだし」
夏「それが理由でいいのか……?」
若「良いんじゃない?」
愛「あ、この「アニライブ!」の派生作品「ラブラIb〜太陽の笑顔が織りなす物語〜」も連載しているのでそちらもよろしくです。詳しくはアニライブのタグをポチッとね!」
夏「急な宣伝だな」
若「でも作者真姫推しなのにラブラIbでは穂乃果が主人公なんだよね」
愛「まぁそこはいいじゃないですか」
夏「おっと宣伝したら良い感じの文字数に」
若「夏希、ワザとらしいよ」
愛「それではまた次回!」

『バイバーイ』

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