アニライブ!   作:名前はまだ無い♪

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今回だけ書き方が違いますよ!

それではどうぞ!


また学校でねby凛

「なっ君お待たせ〜」

「おう、そんなに待ってないから大丈夫だぞー」

 

 場所は駅前。俺は道の向こうから渡って来るツーちゃんに手を振って答える。

 今日はμ'sとA-RISEの両方が休みでその事をどこから知ったのか、昨夜急にデートに行かないかと電話が来た時は驚いたな。まぁ予定空いてたし、俺もそうと知ってたら普通にデートに誘ってたしな。

 駆け寄って来たツーちゃんを見ると、緑のパンツに白いシャツ、黒のベスト頭には黒のハット。

 行き先を聞くと、少し悩んだ後笑って行き先を告げる。

 

「今日はどこに行くよ」

「この前言ってた本屋に行きたいな」

「了解。ほら」

 

 手を差し出すとツーちゃんは慣れた様子で手を握り、指を絡める。俗に言う恋人繋ぎだ。付き合って暫くは繋ぐたんびに照れて顔を赤くしていたが、さすがに四年目となると腕を組んでも照れなくなったな。

 

「何考えてるの?」

「あーいやな……去年の今頃は入院してたなーってな」

「……私を庇って入院した時ね」

 

 はぁ。こうやってあの時の話をすると、決まって顔を暗くするからあんましたくねーんだよなぁ。

 隣で俯いてるツーちゃんの頭をガシガシと掻く。

 

「ちょ、やめてよ〜」

「どうしよっかなー」

「なっ君。せっかくセットした髪が崩れちゃう!」

「わははーやめて欲しかったら痛いですすいませんでした離してくださいぃ!」

 

 頭を掻き撫でてたらいつもの如く腕をキメられた。まぁそんなに痛くはないけどね。本人曰くUTXで護身術を教えられてるらしい。まぁ人気スクールアイドルだから当たり前っちゃー当たり前か。

 

「あの……ツーちゃん? 周りの視線が集まってるんですけど……?」

「なっ君が叫ぶからでしょ。ほら行くわよ」

「へいへい」

 

 叫ばせた原因が何を言うか、と言おうとしたけど、よく考えたらその原因すら俺だった。

 前を行くツーちゃんを眺めながら財布の心配をする。まぁ今日駅前に行く前に下ろしたんだった。じゃあ大丈夫か。……ん? 俺はなぜ財布の心配をしてるんだ?

 

「なっ君ボーッとしてたら時間無くなるよ〜?」

「あ、あぁそうだな。せっかくのデートなんだし楽しむか」

「そうよ。だから私の後ろじゃなくて隣を歩いてよ、ね!」

「うおっと」

 

 手を離したと思ったら急に腕にしがみついて来た。ツーちゃんは偶に後先考えずにこういった事をするんだよなぁ。

 しかも気付けば腕を絡ませた後手を握ってまた恋人繋ぎをしているし……まぁそのおかげと言うか、せいと言うか何やら腕に柔らかい感触があるのは認めよう。因みにこれをツーちゃんに言うと照れからなのか、手加減なしのボディブローが鳩尾に繰り出されるので言わない。

 

 結局、その体勢のまま目的地の本屋まで来てしまった。や、別に不満はないけどね?

 

「それでなんの本買うんだ? まさかBL本とかじゃないだろうな?」

「なっ君てそういった本嫌い?」

「まぁ男で好きな奴は限られてるだろうな」

 

 俺はそういう類の本は読まないが、まぁ読んでる奴の事をそれだけで嫌いになったりしない。ただし女子に限る。

 

「じゃあもし私が買ってそれでなっ君と若葉君で想像してたらどうする?」

「そしたらこっちだってGLもの買ってツーちゃんと英玲奈かあんじゅとのカップリング考えるぞ?」

「……ごめんなさい」

「……いや、こっちこそ悪かった」

 

 ツーちゃんが言った事を想像し、その後自分で言った事を想像したらツーちゃんも同じ事をしていたのか、苦い顔で謝ってくる。いや、これは俺も悪かったから両成敗って事で手を打った。

 こんなやり取りが出来るのも多分付き合って長いからだろうなぁ。最近付き合い始めた若とマッキー、アッキーとりっちゃんじゃあこんな話は出来んだろ。つかしないか。

 

「それで、気を取り直して何の本を買うんだ?」

「うんとね、前に「瞳の中で」って本を出した鈴木忍さんの恋愛もので新作が届いたって聞いてね。それを買いに来たのよ」

「ふ〜ん……あれ? 鈴木忍って確かファンタジーものとか、バトルものも書いてなかったっけ?」

 

 その人の本ならバトルものは買ってるな。てかよく一人でいろんなジャンルの本を世に送り出せるな。普通に尊敬するわ。

 

「なっ君も何か買えば? これとか」

 

 そう言ってツーちゃんが渡して来たのは鈴木忍著の恋愛もの。う〜ん男でも恋愛ものは楽しめるのかね。

 

「て言うか、ツーちゃんの事だから「瞳の中で」を薦めて来ると思ったんだけど、違うんだな」

「……もしかしてなっ君知らないの?」

「何が?」

 

 ちょ、なんでそんな「こいつ本気で言ってるのか?」って目で見んだよ。

 

「「瞳の中で」って数量限定完全手渡し販売された幻の本なのよ? 今更手に入る訳ないじゃない」

「へぇ〜。因みにツーちゃんは持ってるのか?」

「当たり前でしょ。その日は学校を休んで買いに行ったわ」

「おいコラトップスクールアイドル」

「テヘッ」

 

 テヘペロしても可愛いだけだからやめなさい。ほら周りの客もこっちを見てるだろ?

 

「まぁせっかく来たんだし、俺もなんか見て行くか」

「BL本?」

「だから違ぇって!」

 

 まったく。さっきのやり取りの名残でふざけて言ってるのは分かってんだからな? 面白そうに笑いやがって、可愛いじゃねえかチクショウ!

 

「ま、冗談は置いといてなっ君の買う本気になるわね」

「そうか? 別に変なモンは買わねぇよ。つかお前は自分の買い物良いのかよ」

 

 あの鈴木忍の本なら早く行かないと売り切れんじゃね? と思って聞いたらなぜかツーちゃんはフッフッフと笑い財布から一枚の紙を取り出して見せてくる。

 

「私の買い物は取り寄せた本を受け取るだけなの。だからどんなにゆっくりしてても大丈夫よ」

「そ、そうか」

 

 まぁ別に買うとしてもツーちゃんがいても問題無いやつだから良いか。

 

「さてと、じゃあ見に行きますか」

「なっ君がどんな本を買うのか楽しみね」

「いやそんな楽しむ事じゃないからな?」

 

 目をキラキラ輝かせるツーちゃんに腕を出す。ツーちゃんも意味を理解して自身の腕を絡ませる。

 

「ふふっ」

「楽しそうだな」

 

 ラノベコーナーに向かっている最中、ツーちゃんが楽しそうに笑うのが聞こえたので、気になって聞いてみた。

 

「だってこうして休みの日に歩くのって久し振りじゃない?」

「まぁツーちゃんはA-RISEで忙しいし、俺もμ'sの方で忙しいからな〜」

「それに、ラブライブの真っ最中だから中々休みが取れなかったりするし」

 

 それでも偶に放課後、練習が終わった後とかUTXまで迎えに行って一緒に帰ったりとかしてるんだけどな。

 

「っと、あったあった」

「これってどんな内容なの?」

 

 手に取った本を覗き込んで聞いてくる。ふむ、布教も兼ねてちょいと紹介するか。

 

「これは科学と魔術が交差する物語なんだけど」

「あ、やっぱり良いや」

「おいコラ。内容聞いといてキャンセルするのはどうなんだよ」

「だって聞いた感じ長くなりそうだったから」

 

 まぁ語ろうと思えば長くはなるのか? 刊行数そろそろ四十に届くしそれを語ろうとすれば長くなるか。

 

「まぁ面白いから読んでみろよ。今度一巻貸してやっから」

「じゃあその時を楽しみにしてるわね」

 

 次会う時って機会がなきゃ地区予選の決勝じゃねえかよ。

 

「さ、本も買ったしお昼にしましょ」

「だな。時間もちょうど良いし」

「ねぇなっ君あそこ行きましょ!」

 

 ツーちゃんの指した方を見るとイタリアンレストランのチェーン店だった。うわぁ学生の良心だ。

 

「よし、昼代くらい出すよ」

「本当? いっぱい頼もうかしら」

「限度は考えろよ?」

「冗談よ冗談」

 

 ペロッと舌を出して笑い店に駆け出すツーちゃん。はぁ、こういう時は子供っぽく見えるから不思議なんだよなぁ。取り敢えずツーちゃんを追おう。

 

「ツーちゃん待てやコラー!」

「ほらほらなっ君早くしないと先に入っちゃうよー」

 

 俺の事を待たないで扉を開けててよく言うよ。まぁ飯に早く有り付けるなら良いか。

 それから大して待たずに席に着けたから、各々注文し、また談笑になる。

 

「お、来たみたいだな」

「そうね。それじゃあ」

「「頂きます」」

 

☆☆☆

 

「「ご馳走様」」

「いや〜思ったよりも量あったね」

「でもその分安いからお得だにゃ〜」

 

 僕達はお昼に寄ったラーメン屋で精算後、再びショッピングに出掛ける。

 "再び"と言ってる通り、今日は朝から凛ちゃんと二度目のショッピングをしています。目的は新しい練習着の調達。あのモデルショーでのイベントを経験して女の子らしい服を着たくなったらしい。

 

「アキくーん。早く早く〜」

「ちょっと待ってよ凛ちゃーん」

 

 相変わらず凛ちゃんは走るの速いなぁ。て言うか、凛ちゃん今日はワンピースなんだから走ると下着とか見えるんじゃ……よし、追い付いたら走るのは止めさせよう。でも今はそんな事より

 

「凛ちゃん、食後なのによく走れるね……」

 

 今日はいつもよりもテンションが高いのか、僕を置いて先に行ってしまう事が多々ある。その度に走って追い付くんだけど、さすがに食後すぐはキツイって。

 

「あ、ゴメンね。凛てばテンション上がっちゃって」

 

 えへへ、と笑いながら頭を掻く。うん、やっぱり

 

「可愛い……」

「……へにゃ?」

「ん?」

 

 あれ、もしかして声に出てた……? 出てたよね。だって凛ちゃんの顔赤いもん。でも可愛いのは事実だから否定はしないし、させないよ。

 

「えっと、凛ちゃん」

「は、はい!」

「その……手、繋ごう?」

「う、うん」

 

 え、恋愛初心者かよって? そうですよ。どうせ初恋の相手とやっと恋人同士になったばかりのトーシローですよ。

 

「アキ君。どうしたの?」

「ううん。何でもないよ」

「なら良いんだけど…」

 

 ヤバい。手を繋いだは良いけどこれからどうしよう……さすがに腕を組むには早いかな。いや、でも付き合ってるんだしそのくらいは……いやいや付き合い始めてまだ一週間も経ってないんだ、早いって……いやいやいやでも「祈る者達(プレイヤー)」でも大体の人はそうだったような……いやいやいやいや確かその人達は成人してたから……えーっと

 

「……ん。ア……くーん。アキ君!」

「うわぁ! 凛ちゃんどうしたの、そんな大声出して」

「さっきから呼び掛けてるのに、アキ君ブツブツ呟いてたんだよ? 何か凛に言えない事考えてたの?」

「別に変な事は考えてにゃいよ! 凛にゃん!」

 

 いや別にやましい事ではないんだ。ただどのタイミングでどうするかを考えてただけで

 

「思いっきり動揺してるにゃ……」

「うぅ……ごめん」

「……凛と手を繋ぐの、嫌だった……?」

「それは違うよ! さすがの僕も嫌いな人とこうして手を繋いだりはしない。それに……」

「それに?」

「凛ちゃんの事好きだから、その、嫌ったりとかはしない。絶対」

 

 これは偽ざる僕の本心だ。これはさすがの「祈る者達(プレイヤー)」の皆や若葉さん達に何か言われても変わる事は無い、と胸を張って言える事。だから

 

「僕は凛ちゃんと手を繋げて嬉しいよ」

「アキ君……凛もね、今日初めてのデートでちょっと緊張しちゃってて……」

「あ、それ僕も……」

 

 なんだ、凛ちゃんも同じだったんだ。良かった、緊張しておかしかったのは僕だけじゃなくて。

 

「それじゃあ僕達」

「お揃いって事にゃ」

「だね」

 

 それから僕達はお互いにクスリと笑い、歩き出す。

 

「そう言えば、凛ちゃんはどんな感じの練習着が良いの?」

「う〜ん。動きやすくて可愛い感じのが良いにゃ!」

 

 う〜ん分からないぞ? 動きやすいって事はサイズとしては少し大きめかな?

 

「こんな事ならことりさんにもっと聞いておくべきだった……」

「ことりちゃんがどうしたの?」

「あぁいや、僕って洋服とか詳しくないからさ、ことりさんに聞いておけば良かっな〜って」

「確かにことりちゃんって洋服とか詳しいし、可愛いよね〜。凛もあぁなりたいなぁ」

 

 凛ちゃんはそのままでも可愛いと思うんだけどなぁ。それ言うと否定が帰って来そうだから言わないけど。

 

「凛ちゃんならいつかきっとなれるよ」

「そうだよね! よーし凛もいつかことりちゃんみたいなスタイルになるにゃ!……あ」

「うん? どうしたの?」

 

 拳を振り上げた状態でとある一点を見て固まる凛ちゃん。視線の先を追うとそこにはオレンジと黄色、白の三色のミニスカニーソの服が飾られていた。あれって運動用なのかな……?

 

「ねぇアキ君。あの服似合う、かな?」

 

 上目遣いで聞かれてしまった。ここでキザな奴とか、恋愛ドラマだと「君は何を着ても可愛いよ」とか言うんだろうけど、僕はそんな気の利いた言葉を言える自信が無い。と言うより言ったら何か負けな気がするから言いたくない。

 だからここで僕が取る行動は一つ。

 

「気になるなら試着してみる?」

「え……でも似合わなかったらどうしよう?」

「似合わなかったら、また別なの探せば良いんだよ。凛ちゃんが満足するまで付き合うよ」

「アキ君……ありがとう。凛ちょっと着てみるね!」

 

 そう言うと凛ちゃんは店に入って言って店員の人に話しかけていた。

 良かった。前までは試着する事すら躊躇ったからこれは進歩だね。

 

「ど、どうかな?」

「ぁ……似合ってるよ」

 

 試着室のカーテンを開けた凛ちゃんは活発さと可愛さの両方を揃えていた。つまり、うん。可愛かった。思わず黙ってしまう程に。けど

 

「似合ってるけど、なんだろう。何かが足りない気がするんだよねぇ」

「……女子力、とか?」

「いや目に見えないものじゃなくて……」

 

 店内を見回しながら考える。う〜ん。うん? これかな?

 

「ねぇ凛ちゃん。ちょっと横向いて」

「こう?」

「そうそう」

 

 そして横を向いた凛ちゃんの髪をさっき持って来た、玉が二つ付いたヘアゴムで留める。これで左側の髪の毛がちょこんと跳ねてるようになる。

 

「うん。バッチリ」

「ほ、ほんと?」

「嘘言ってどうするのさ」

 

 それからその服と他にも二、三点ネックレスやブレスレットを買って店から出る。買い物途中に今度若葉さんからブレスレットの作り方とか教えて貰おうと決意したのは凛ちゃんには秘密。

 

「なんか今にも雨が降りそうな天気にゃ」

「うん。降り出さない内に早く帰ろっか」

 

 雨が降りそうな曇天の中、僕達は凛ちゃんの家へと歩き出す。と行っても僕の家も同じ方向だからやってる事はただの帰宅なんだけど。

 そして雑談をしていると早いもので、目の前に星空家があった。

 

「それじゃあアキ君。また学校で」

「うん。それと、また行こうね」

 

 凛ちゃんは名残惜しそうに繋いでいた手を離すと、じゃあねー、と手を振って家の中に入っていった。

 

「さてと、僕も帰りますか……ん?」

 

 なんだろう。今顔に当たった冷たいものに嫌な予感がヒシヒシとするんだけど……あ、本降りになってきた。

 

「これで風邪引いたらシャレになんねぇって!」

 

 こっちに来てからはそんなになってないアイトになって走り出す。アイトになると身体能力が上がった気になるんだよね。そう、なるだけで実際は上がってないんだけどね!

 

「た、ただいま!」

 

 結局家に着く頃にはずぶ濡れになったよちくしょう。

 

☆☆☆

 

 なんだろう、頭の下がやけに柔らかい。流石西木野家良いクッションを使ってるね。それに仄かに良い匂いがする。なんだろう、シャンプーみたいな感じ。

 気が付くと体が横になっていた事を考えると、たぶん寝てたんだろうね。さてどうして寝てたのかちょっと振り返ろう。

 

 今日は真姫とデートに行って洋服とかを見て回ってたら、雨が降ってきたんだっけ。それで慌てて真姫の家に来たんだった。それからずぶ濡れの俺達を見た詩音さんに真姫はお風呂場へ、俺はタオルを渡されて真姫の後に入るよう言われて、出てきたら(さとる)さんの服を渡された。勝手に着ていいのか聞くと、服が乾くまでの間なら問題ないとの事。

 それから二人で邦画を見て……そこからの記憶がないな……

 

 取り敢えず起きよう。

 

「ふぁぁぁ……あ?」

「ふふ、良く寝てたわね」

「あ~……はい」

 

 さて現状を説明させて下さいお願いします。目を開けると最初に目に入ったのはなぜか真姫の顔だった。いやそれは良いんだよ。ただその見える位置が問題なのであってですね。真姫の顔を下から眺めてる訳でですね? 頭の下にある感触はたぶん真姫の膝だと思うんだ。つまりは絶賛真姫の膝枕で寝ていると言う事であって……まぁそこまでは問題ないと思うんだよ。ただね、その光景を第三者に見られてた場合はどうなるのか、と。

 

 長々と話していたが端的に言うと、寝ている真姫の膝枕で寝ている所を詩音さんに微笑見ながら見られていた。

 

「どう? 真姫ちゃんの膝枕の感想は」

「……とても気持ちいいです。ってそうじゃなくて、いつから見てたんですか?」

「う~ん、どのくらいかしらね」

 

 そんなに見ていて飽きなかったのか、とかなんでそんなに暇なんだよ、といったツッコミはしないよ?

 

「若葉……?」

「あ、真姫おはよう」

 

 頭上から眠そうな真姫の声がする。どうやら詩音さんとの会話で起こしてしまったらしい。っとこんな冷静に分析してる暇じゃない、真姫の意識がハッキリしない内に体を起こさないと。

 

「あら、もういいの?」

「? ママ何言ってるの?」

「し、詩音さん。そろそろ晩ご飯の仕度しなくて大丈夫なんですか?」

「もうそんな時間? 楽しいと時間の進みが早く感じるのね」

 

 そう言って部屋から出て行く詩音さん。ふぅ、何とか誤魔化せた、のか? なんて思ってるとパタパタとこちらへ来る足音が

 

「ねぇねぇ若葉君。どうせだったら晩ご飯ウチで食べて行っちゃいなさいよ」

「いや、さすがにそこまでお世話になる訳には」

 

 ただでさえお風呂に着替えと貸して貰ってるのに、更に晩ご飯まで頂く訳にはいかないって

 

「でももうお父さんが一緒に食べる気満々よ?」

「と、言うと?」

「若葉君の分の食器まで用意してるのよ」

 

 智さんどんだけ楽しみなんだよ! いや歓迎されないよりかはマシだけどね!? それにしてもだよ!

 

「良いじゃない若葉。食べて行きなさいよ」

「じゃ、じゃあ母さんに確認取ってみます」

 

 この時間じゃまだ晩ご飯作り始めてないだろうし。でもなー母さんの夏祭りの時の態度を見るからに、OK出しそうなんだよなぁ。

 

「あ、母さん? まだ晩ご飯作り始めてないよね?」

『なんでそれが当たり前、みたいな聞き方なのかは聞かないであげるわ。で、まだ作ってないけどそれがどうかした?』

 

 なぜか怒っている感じがするのは気のせい。気のせいったら気のせい。取り敢えず母さんに詩音さんから晩ご飯を誘われている旨を伝えると

 

『あら、良いじゃない。せっかくなんだし食べて来たら? もちろん、変な事はしないようにね?』

「変な事ってなにさ」

『それはもちろん妊』

「あ、詩音さん大丈夫みたいです」

 

 電話を切って詩音さんに言う。え? 母さんが何か言いかけてた? 知らないなぁ。俺は失礼のないようにとしか言われてないよ?

 

「そう。じゃあ今日は張り切って作らなきゃね」

「いえ普通の、普段通りのメニューで結構ですからね!?」

「分かってるって」

 

 あ、これ絶対分かってないやつだ。仕方ない、なんか気を遣わせて豪華な食事が出ても迷惑だろうし、と言うよりさすが頂くだけは失礼だから手伝おう。

 

「詩音さん。晩ご飯作るの手伝いますよ」

「え、別に気を遣わなくても良いのよ?」

「いえさすがに何もしないのは気が引けるので」

「良いじゃないママ。若葉って料理上手いのよ」

 

 そんなに上手くはないけど!? レパートリーならあちこちでキッチンやってるから男子高校生の中では多い方だと思うけど、そこまて胸を張って言える程美味しいかどうかは……だったら手伝うなんて言うな? 手伝いくらいだったら出来るんだよ。

 

「それじゃあよろしく頼もうかしら。今日の晩ご飯はハンバーグよ」

「ハンバーグですか。それならまぁ慣れていますのでなんとか」

「じゃあ若葉の手作りハンバーグ楽しみにしてるわね」

「うん。待ってて!」

 

 あれ? なぜか俺が作る事になってない? まぁうん、頑張って美味しいの作ってみせようではないか。料理に大事なのは愛情と空腹って言うしね!

 

 と、言う訳で西木野家キッチン。やっぱりと言うかさすがと言うか、合宿の時に行った別荘と同じ設備が整っていた。いやいや、一般家庭の設備じゃないってこれ。

 

「さ、作り始めましょ♪」

「あ、はい」

 

 にっこり笑って手で隣に来るように言われる。えーっとメニューはハンバーグだっけ? じゃあ必要な食材を冷蔵庫から出さないとか。

 

「詩音さんってハンバーグに隠し味入れたりしますか?」

「ううん。普通のハンバーグよ」

 

 西木野家の普通がどのレベルの普通なのか分からないが、まぁ俺が出来る精一杯をしよう。

 そう決心し、ハンバーグを作り始める。

 

「出来た〜」

「ずいぶん手際が良いのね。さっきも慣れてるって言ってたし、お家でも作ってるの?」

「いえ、バイト先でよく作るので」

 

 店長は店長でなんで俺が入る時に限ってキッチンの人数が少なかったりするのかな。あ、人手が少ないから俺の所までヘルプが来るのか。

 

「じゃあ運びますね」

「それじゃあお願いするわね」

 

 ハンバーグの乗ったお盆を手にリビングに向かう……ん? リビングってどこ?

 

「あ、いたいた」

「真姫、良かった〜。ちょうどリビングの場所が分からなくて。助かったよ」

「……若葉。目の前は階段よ?」

「……うん。本当だね」

 

 ほ、ほら二階にリビングがある家とかあるじゃん? だから目の前に階段があってもおかしくはないんだよ。うん。

 

「ほら、リビングはこっちよ」

 

 真姫の案内の元、今度こそリビングに着く。椅子には凄く楽しみにしてるのが分かる智さんが座っていた。

 

「やぁ若葉君。久し振りだね」

「そう、ですね。最後に会ったのは退院した時ですものね」

「だね。あれから元気にしてた?」

「はい。おかげさまで」

 

 なんだろう。笑顔なんだけど、なんか怖いんですけど……でもなんか、どこかで感じた事があるような……

 

「真姫とも仲良くしてるみたいで」

「は、はい」

「?」

 

 笑顔と引き攣り笑い、そして疑問を浮かべてる3人。

 うん、やっぱりなんか怖い。

 

「まったく。お父さん何してるのよ」

「特に何もしてないって」

 

 そのタイミングで詩音さんが来てくれた。詩音さんの言葉にあっはっはと笑う智さん。助かった〜。

 

「ほら。早くご飯にしましょ」

「そうだね。さ、若葉君も座って座って」

「あ、はい。それではお言葉に甘えて」

 

 さっきまでの威圧感が嘘のように椅子を手で示す智さん。

 

 それから晩ご飯中は特におかしな事もなく、雑談をして終わった。そして真姫と詩音さんが食器を片付けにキッチンに行くと、智さんがこちらをじっと見る。負けじとこっちも見つめ返す。

 

「若葉君」

「はい」

「君は真姫の事をどう思ってるんだい?」

 

 この場合のどうってつまりそういう事だよね。なら答えは決まってるよ。

 

「大好きですよ」

「……そうか。あの子は偶に素直じゃない所があるけど、それでも?」

 

 智さん、それは愚問ですよ。

 

「そういう所も可愛くて良いじゃないですか」

「へぇ、分かってるじゃないか」

「他にも照れ隠しの為に、頬を染めて目を逸らす仕草も良いですよ」

「その時癖で髪の毛を弄るんだよね」

「そうですそうです」

「若葉君」

「智さん」

 

 気付けば智さんとがっしり握手していた。さすが智さん、分かってらっしゃる。それから真姫が顔を真っ赤にしながらリビングに来るまで智さんとの真姫談義は続いた。

 

「まったく、何話してるのかと思ったら」

「あはは。まさか真姫に聞かれるとは思わなかったよ」

「ホントよ。でも、パパと仲良くなれたみたいで良かったわ」

「まぁね、それは本当に良かったよ」

 

 うん、本当に。真姫のいろんな事知れたし、なんか途中から威圧感もなくなっていたしね。

 そして乾いた服に着替え、玄関にて真姫の見送り。

 

「それじゃあまた学校でね」

「うん。またね」

 

 真姫の頭を撫でて雨の止んだ夜空を見上げながら帰路に着く。見上げた空には数多の星が輝いていた。




【音ノ木チャンネル】
夏「なんというか、お前らは初々しいな」
愛「夏希さんが慣れ過ぎてるだけですよ!」
若「まぁ付き合いが長いからね。夏希は」
夏「まぁお前ら2人に比べるとな」
若「因みに聞くけど、夏希はあの後何をしたの?」
夏「ん? 普通に適当にブラブラして気になった店に入ったりとかしてただけだぜ?」
愛「デートと言うよりお買い物感覚ですね」
夏「さすがに何回も行ってると最終的にはそうなるって」
若「因みに今回の話の分け方としては」
夏「朝の待ち合わせから昼飯までを俺とツーちゃん」
愛「お昼ご飯から夕方までを僕と凛ちゃん」
若「夕方からさよならまでを俺と真姫だね」
夏「こういう思い付きのオリ展開話をするから話数が無駄に伸びるんだよ」
愛「その通りですけど、それを言ったらおしまいだと思いますよ」
若「そうそう、そう言えばね作者が初めて聖地巡礼して来たらしいんだけど、その話する?」
夏「別にしなくていいだろ」
愛「まぁいいんじゃないですかね」
若「じゃあしない方向で」
夏「因みに次話からまたアニメに戻るらしいぞ」
愛「えーっと次は……あぁ、あれですね」
若「一体どうなるのやら」
夏「ま、誤字脱字、感想、批判、アドバイス等を待ってるぜ。じゃあな!」
若「バイバーイ」
愛「さようなら〜」

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