愛生人誕生日おめでとう! そして今回あとがきにはプレゼントが用意されています!
愛「ちょっとそれ聞いてないんですけど!?」
前回のあとがきで言ってたでしょうに……あ、それと今回でカウントダウンの意味が分かります!
愛「そりゃ0ですからね! 分からないと逆にダメでしょ!」
では愛生人が煩いですが、本編どうぞ!
「おーし全員乗ったかー?」
「乗りました」
「夏希君の車に乗るの初めてにゃー!」
「はいはい。じゃあ行くぞ〜」
助手席に座る絵里のナビに従い夏希は車を走らせる。
「にしても若は無事に会場に着けたんだろうかね」
赤信号に捕まり車を止め呟く。若葉は皆より一足先にファッションショーの会場に向かって最終確認を行っている。
「タクシーで行ったんだから大丈夫でしょ」
「だと良いんだが」
夏希は絵里の言葉に窓の外を見ながらそう返す。
「なんか、嫌な予感がするんだよなぁ」
バックミラーでチラリと最後部座席に座る凛と愛生人、花陽の三人を見る。
「やっぱり心配?」
「いや、若が大丈夫だってんだから特にはな」
「そう」
絵里は微笑んでそう言うと前を向いてナビを再開する。
「皆お疲れ様。衣装とかは控え室に用意してあるよ」
それから何事もなく会場に着いた夏希達は、若葉の誘導のもと控え室に向かう。
「ちょっと大丈夫!?」
「誰か担架!」
控え室に向かって歩いていると、ステージの方からそんな声が聞こえてきた。
「どうしたのかしら?」
「さぁ? ちょっと様子見てくるね」
騒ぎのもとへ若葉が近寄り、係員に訳を聞くと
「あぁ、急にセットが倒れてきてね。出演予定のモデルが四人怪我をしてしまって……」
「四人も……」
係員は不測の事態にどうするか頭を抱え、ハッと若葉を見る。
「そう言えば、君達って今日ライブをやる……」
「あ、はい。音ノ木坂学院所属の「μ's」です」
「厚かましいとは思うんだけど、ライブ前にお願い出来ないかな?」
「……ちょっと相談してきます」
唐突なお願いにさすがの若葉もその場で答える事が出来ず、控え室に行き夏希と愛生人、絵里だけを呼び出す。
「さっきの騒ぎ、なんだったんですか?」
「あーそれがね」
愛生人の質問に答えるように騒動の内容と頼まれ事を話す。話が終わると夏希が腕を組んで頷く。
「つまり若の相談は、そのお願い受けても良いだろうけど、問題は誰を出すか、だな?」
夏希の言葉に若葉は黙って頷き返す。絵里と愛生人もそれを見て誰が良いかを考えるも、夏希が呆れたように首を振る。
「つーかさ。取り敢えず一人は決まってるだろ。な? えりち」
「ちょ、夏希!」
夏希が絵里を見て言うと、絵里は顔を赤くして慌てふためき、愛生人は納得のいった顔をする。
「夏希。それどういう事?」
「あー実はな、さっき控え室に向かってる最中にモデルのスカウトを受けたんだよ」
「……絵里、俺からもお願いするからさ、出るの、考えてくれない?」
若葉が両手を合わせて絵里に言うと、コホンと咳払いをして少し考えた後
「……仕方ないわ。困ってる時はお互い様だものね」
と言って渋々頷く。それなら、と夏希は畳み掛けるようの続ける。
「もう一人はりっちゃんだな」
「ちょっと待って下さい!」
夏希の提案に愛生人が待ったをかけた。若葉はまぁまぁと愛生人を宥めるよう目配せしながら、夏希に理由を聞く。
「夏希。夏希の事だから何かしらの理由があるんじゃない?」
「勘でっ!」
堂々と胸を張って答えた夏希の頭にすかさず絵里のチョップが叩き込まれる。
「夏希、あなたそんな事で凛を推すの?」
「俺の勘はよく当たんだよ! 文句あっか!」
「あるからこうして今言ってんでしょうが!」
若葉と愛生人はそんな2人を見て苦笑いを浮かべる。絵里は愛生人を見ると溜め息を吐く。
「愛生人、若葉。あなた達は良いの? 二人だって凛の嫌がる姿を見たでしょ」
「それは、まぁ、そうですけど」
絵里は少し責めるような視線で愛生人と若葉を見る。
「まぁ凛に聞いてみないとね」
「そう、ですね」
若葉はそう言うと控室の扉を叩いて凛を呼び出す。
「どうしたの?」
廊下に出てきた凛は首を傾げて神妙な顔をしている四人を見る。若葉達は互いの顔を見合わせると頷き、若葉が口を開く。
「凛。単刀直入に言うけど、ファッションショーに出てくれないかな?」
「え……」
「凛ちゃん僕からもお願い」
若葉に続いて愛生人も凛にお願いする。
「ちょ、ちょっと待ってよいきなり。どういう事?」
突然の事に訳が分からず聞き返す凛。若葉は先程三人に話した事と、四人で話し合った事を簡潔に話す。
「と、いう事で凛ちゃんにお願いしたいんだけど……どう?」
「……凛には無理、だよ。無理!」
凛はそう叫ぶとその場から逃げる様に走り去る。
「どうするんだ、若」
「あ、あの! 僕が行きます! 若葉さん達はあの準備をお願いします!」
若葉が答える前に愛生人が凛を追いかけに走り出す。
「さて、凛は愛生人に任せるとして。こっちはあと二人を決めちゃおう」
「あら、それはもう決まってるんじゃない?」
絵里の言葉に若葉と夏希は顔を見合わせると、嫌な予感がしたのか頬を引き攣らせる。
「私や凛に無茶言うんだから、ね?」
「いや、まだりっちゃんの方は確定じゃないし」
「そ、それにほら、さすがに男の俺らが女装するのは何かと問題が」
「登校日初日に穂乃果の格好で来たっ聞いたわよ?」
絵里が笑顔で告げると若葉は頭を抱えてその場に崩れ落ちる。
「まさか、あの時のがここにきて響くなんて……」
「ま、まぁ若は放っておいて、俺は無理があるだろ。さすがに」
夏希は自身の目つきの悪さを指して反対する。
「大丈夫。目つきくらいは化粧でどうとでもなるし」
フフフと笑って若葉と夏希の肩をガッシリと捕まえ、逃げられないようにする。
「もしかしなくても絵里怒ってる?」
「ぜんぜん怒ってないわよ」
「絶対怒ってるな。だって肩が痛いし」
笑顔でギリギリと二人の肩を掴む絵里。心なしか二人はその笑顔の裏に表情とは別の感情を感じた。
一方凛を追いかけた愛生人は係員の人に聞きながら探していた。
「あの、オレンジの髪の毛の女の子見ませんでしたか?」
「あぁその子ならあっちに」
「ありがとうございます!」
愛生人はお礼を言って言われた方へと駆け出す。そして着いた先は荷物搬入口だった。凛は壁にもたれるように蹲っていた。
「凛ちゃん……」
「アキ君……アキ君は凛の事どう思ってるの?」
「……凛ちゃん可愛いよ」
上目遣いで聞いてくる凛に、照れたように顔を赤くして答える。しかし下から見上げるようにしていた凛はそれに気付かず、すぐに顔を膝に埋めてしまう。
「凛は……可愛くない、もん」
「そんな事ないよ!」
「そんな事ある!」
凛は立ち上がり愛生人に掴みかからんばかりの勢いで迫る。愛生人はそんな凛の迫力に怖気づく事無く、ジッと目を見つめ返す。
「凛ちゃんは可愛いよ」
「……可愛くない!」
「可愛くなかったら僕だって好きになってなんかない!」
「……え?」
凛は愛生人のいきなりの告白に顔を赤くし呆ける。愛生人も自分が何を言ったのかを理解し、凛以上に顔を赤くするも、覚悟を決めたのか凛から目を逸らさずに更に言葉を続ける。
「僕はいつも元気で僕や花陽ちゃんを引っ張って行く凛ちゃんが好きだよ! またこうして同じ学校に通うようになって知った女の子らしくて可愛い凛ちゃんも好きだよ!」
「う、嘘!」
「嘘じゃないよ!」
愛生人は凛の否定に否定で返す。凛はその場から逃げだすように一歩踏み出すも、愛生人が腕を掴みで逃げられないようにする。逃げる選択肢をなくした凛はキッ! と愛生人を睨むように見る。
「嘘! アキ君凛に気を…んっ」
そしてなおも愛生人に文句を言おうとするも、それより先に愛生人が先に口を塞ぐ。
「んはぁ、はぁ、これで嘘じゃないって信じてくれた?」
愛生人が顔を離すと自身の口を押え、顔を真っ赤にする。凛も真っ赤になり固まっている。
「と、とにかく。凛ちゃんは可愛いから大丈夫、だよ」
「う、うん」
「とにかく、皆の所に戻ろう? 心配してるだろうし」
「そう、だね」
それから愛生人は凛の手を引いて若葉達の元へ戻ると、衝撃的な事を伝えられる。
「えぇー! 僕もファッションショーに!?」
「えぇ」
「どういう事ですか!?」
戻ってすぐ見たのは黒い笑みを浮かべている絵里と、その足元に崩れ落ちてる若葉、そして何やら笑うのを我慢している夏希だった。そしてその絵里にニッコリと告げられたのが、先程の事。
「あーつまりだアッキー。若とえりち、りっちゃんとファッションショーに出演してくれや」
完全他人事として笑って楽しんでいる夏希。助けを求めるべく、同じ境遇になった若葉を見るも、どこか遠い目をしていてそれどころではない。
「私を巻き込んだんですもの。愛生人? 覚悟を決めなさい?」
「こんな覚悟決めたくないですよ!」
愛生人はなんとか逃げ道を探そうとするも、結果絵里に押し切られる形で引き受けさせられた。
「そんじゃまぁ、女装するお二人さんは頑張ってな〜」
くくく、と笑い夏希は控え室に入っていく。残された若葉と愛生人は折れかけた精神をなんとか持ち直し、絵里と凛と一緒に最高責任者の元へと向かった。
「と、言う事で自分達が出る事になったんですけど、大丈夫ですかね?」
「全然問題無いよ! むしろ君達の方が良いくらいさ!」
「な、何でですか?」
「いやー怪我した内の二人が中性的でね。うん。君達にぴったりで良かったよ!」
笑ってバンバンと若葉と愛生人の背中を叩く最高責任者。若葉は背中を摩りながら
「それであの、少しお願いがあるんですけど」
「なんだい? 衣装だったら心配しなくても良いよ」
「いえ、この二人の出る順番を初めの方にして頂きたいんです。ショーの後ライブがありますし」
「ちょっと待ってね。カモちゃーん、ちょっとー」
「はいはい。なんですか?」
カモちゃんと呼ばれた青年が最高責任者と一枚の用紙を見ながら話し合いを始める。時折聞こえてくる単語から、若葉は順番の入れ替えについて話しているのが分かった。
「何とかなりそうね」
「そうだね……凛?」
若葉は合流してから一言も話してない凛を不思議に思い、声をかける。名前を呼ばれた凛は間の抜けた声を出してしまい、絵里と愛生人にも心配される。
「凛、あなた顔真っ赤だけど大丈夫? 熱とかあるんじゃない?」
「だ、大丈夫! 熱とかないよ!」
凛はバッと両腕を広げて元気アピールをする。その動作に無理矢理動かしている様子は見られず、三人は安心したように息を吐く。
「えーっと若葉君、だっけ?」
「あ、はい!」
最高責任者から名前を呼ばれ、慌てて振り返る。
「順番の交換出来たよ。けど、やっぱりちょっと無理があるみたいで、そちらのお二人だけになっちゃったけど、大丈夫?」
「いえ、むしろ二人が始めの方だったら自分達は最後の方でも大丈夫ですよ。ね、愛生人」
「は、はい! あの、ありがとうございます!」
愛生人が最高責任者に頭を下げると、絵里と凛も頭を下げる。
「なぁに。翔平君の知り合いの頼み事だからね。出来る範囲で無理のない程度に協力させて貰うよ。それに今回は持ちつ持たれつだしね。っと、みぞれちゃーん。この子達化粧室に連れてった後衣装部屋まで案内してあげてー!」
「分かりました。では付いて来てください」
みぞれと呼ばれた女性がこちらへ、と促す。
「あの、気になっていたんですが、先程呼ばれていたのって……」
「もちろん本名じゃないですよ。あの人、仲の良い人達にアダ名を付けるんですよ」
若葉が気になった事を聞いてみると、みぞれは苦笑いして答える。
「もしかして、さっきのカモちゃんって人も……」
「そうよ。彼と私、それから化粧室の彼女はなぜか鍋料理のアダ名を付けられてね。他にもいつも一緒にいる3人組は油淋鶏、回鍋肉、棒棒鶏と呼ばれてたりするわね。まぁ私達も気に入ってて、お互いをそう呼んでるんだけどね」
「なぜ中華……」
みぞれは若葉の呟きにクスリと笑うと化粧室に着いたのか、扉をノックする。
「もしもーし。あんこう入るわよー?」
『ほいほーい』
中から女性にしては低い声が返ってくると、みぞれは扉を開ける。
「あんこうちょっと急なんだけど」
「大丈夫。監ちゃんから話は聞いてるから。この四人を可愛くすれば良いのよね?」
「お願いね」
それだけ言うとみぞれは化粧室を出て行く。後に残されたのは覚悟を決めようとしてる二人、化粧で誤魔化せるのか不安がってる二人、そしてその四人をどう化粧するか考えている一人の五人だけになった。
それから数十分後。気になった真姫と夏希が場所を聞いて化粧室に入ると、そこには軽く化粧をした絵里と凛の二人と、若葉と愛生人に似ている女の子二人がいた。
「えと、えりちにりっちゃん。この二人は……」
「若葉と愛生人よ」
夏希が戸惑いながら絵里と凛に聞くと、絵里がおかしそうに笑いながら答える。絵里の答えを聞いて真姫は若葉に近付き、ジーっと見つめる。
「ま、真姫?」
「心なしか穂乃果に似てるわね」
「そりゃ双子だからねぇ!」
真姫の言葉に笑いながらツッコム若葉。夏希はそんな二人とは別に凛と愛生人の様子をさり気なく見ていた。そんな夏希に絵里が話しかける。
「どうしたの?」
「いや。なんか上手くいったみたいな、そうじゃなさそうな感じだなーと」
「それって凛と愛生人の事?」
「まぁな」
「ふーん」
夏希の言葉に絵里も二人を見ると確かに、偶に視線を合わせたと思ったら顔を赤くして逸らしたりしている。
「何があったのかしらね」
「さぁな。ま、何があったにしろりっちゃんの皮が剥けて始めてるのは確かじゃないか?」
「そうね。凛がモデルの代役をやるなんて考え付かなかったもの」
「ま、俺も若も賭けに近かったのは確かだと思うけどな」
夏希が笑って言うと絵里は呆れたように溜め息を吐いて首を振る。
「皆さん準備は……出来てるみたいね。じゃあ衣装合わせするから来てちょうだい」
それから少ししてみぞれが化粧室に来て若葉達を衣装部屋に連れて行かれ、衣装を纏った四人はファッションショーの舞台袖にて待機していた。
「今回モデルの人が結構いるみたいだから、絵里と凛が終わった後、少し控え室に戻って最終ミーティングする時間はあるみたい」
「そう。だったら若葉と愛生人は先に戻ってた方が良いんじゃない?」
「う〜ん。愛生人はどうする?」
「僕は……ここで凛ちゃんと絵里さんのステージを見ています」
「だ、そうだよ。絵里」
愛生人が残るという事は必然的に若葉も残る事になる。さすがの絵里も方向音痴な若葉を一人で控え室まで返すような無謀な事はしない。
「それじゃあ二人とも頑張って下さいね」
「緊張しないようにね〜」
「わ、分かってるにゃ」
「大丈夫よ」
凛は少し緊張した面持ちで、絵里は余裕のある笑みでステージに上がっていく。
「凛、笑顔が大事よ。あとは私と一緒に行けば良いだけだからね」
「うん。分かったよ絵里ちゃん」
絵里が凛の肩を揉み解しながら言うと、凛は緊張がいくらか和らいだのか、笑顔で絵里にお礼を言う。
「さ、行くわよ」
「うん!」
絵里と凛は手を繋いでステージに躍り出る。
「おかえり」
「特にミスする事無く終わったね」
「緊張したにゃ〜」
「凛、この後にまだライブがあるのよ」
すっかり緊張が抜けた凛に絵里が優しく微笑む。それから急いで控え室に向かい、今度はライブの衣装に着替える。
「それじゃありっちゃんの衣装はそこな」
「分かったにゃ!」
夏希に言われた着替え室に入ると、そこにあったのは試着で着たタキシードではなく、センターが着るウェディングドレス風の衣装だった。
「え、これ……かよちん間違ってる…」
凛は自分の衣装が違うと皆の方を振り返ると、そこにいたのは既にタキシードの衣装に着替えた絵里達がいた。
「間違ってないよ」
「あなたがそれを着るのよ。凛」
「な、何言ってるの。センターはかよちんで決まったでしょ。それで練習もしてきたし……」
凛が俯きがちに言う。
「なーに言ってんだよ。何の為にここ数日かよちんと一緒に練習させたと思ってんだよ」
「そうだよ。花陽の希望でね、もしも凛がセンターをやる事になった時の為にって」
夏希と若葉もそう言い、凛を見る。
「そ、そんな。冗談はやめてよ」
「冗談で言ってると思う?」
にこも真剣な表情でそう返し、希も笑顔で頷き返す。
「凛ちゃん。私ね、凛ちゃんの気持ちを考えてみたの。それで困ってるみたいだから私、センターを引き受けたの。でも思い出したの、私がμ'sに入った時の事。今度は私の番」
そう言って花陽は凛の手を握る。
「凛ちゃん。凛ちゃんは可愛いよ。さっきのファッションショーの時も」
「皆言ってるよ。凛ちゃんがμ'sの中で一番女の子らしいって」
「あの衣装見てみなさい。凛が一番似合うわよ」
真姫と花陽が立ち尽くしている凛の後ろに立つ。
「愛生人は行かなくて良いの?」
「……はい」
若葉の質問に愛生人は頬を染めつつ、三人を見つめる。そして花陽と真姫はそっと、以前凛と真姫が花陽にやったように、今度は花陽と真姫が凛の背中を押す。衣装に一歩近付き手を伸ばし触る。
「それより若にアッキー。そろそろ行かないとマズいんじゃないか?」
「え? ……ヤバ。愛生人、急ぐよ!」
「へ、ちょ、若葉さんが先に行かないで下さい! 絶対迷いますから!」
夏希が控え室に備え付けられたテレビを指すと、若葉達の出番が近付いていた。慌てた二人は控え室から飛び出して行く。
二人が飛び出して行くのを溜め息交じりで見送ると、衣装を着替えたメンバーを振り返り手を鳴らす。
「それじゃあ出番まであと少しだからそろそろ移動するぞ」
「なんで夏希が仕切ってるのよ」
「おっとそうだった。それじゃありっちゃん、よろしく」
真姫が笑いながら夏希に注意すると、夏希は頭を掻きつつ凛にバトンを渡す。凛は頷いて皆を見る。
「今日は楽しく頑張るにゃー!」
『おぉー!』
凛に続き控え室からステージ袖に移動すると、ちょうどそのタイミングで若葉と愛生人がステージから降りてくる。
「凛ちゃん。凄い似合ってるよ」
「アキ君……頑張ってくるにゃ」
「行ってらっしゃい」
センター衣装の凛を見た愛生人は凛に笑いかけ、凛もそれに笑顔で返す。そしてハイタッチすると凛を送り出す。
暗転したステージに凛が立ち、スポットライトが当たる。
「皆さん初めまして。音ノ木坂学院スクールアイドル「μ's」です!」
凛が挨拶すると、会場のあとこちから「可愛い」「綺麗」という声が発せられる。凛はその言葉に照れたように笑い、お礼を言う。
「えっと本来メンバーは九人なんですが、今日は都合により六人で歌わせて貰います。でも、残り三人の思いも込めて歌います。それでは! 一番可愛い私達を見て行って下さい! Love wing bell!」
凛が曲名を言うと同時にイントロが流れ始める。
曲が終わると会場一杯に拍手が響き渡り、凛達は手を振りながらステージ袖に引き上げる。
「凛ちゃん!」
「アキ君!」
ステージ袖でずっと見ていた愛生人が凛の名前を呼ぶと、凛も愛生人の名前を呼び抱き合う。
「真姫もお疲れ様」
「若葉に比べれば楽な方よ。それにしても、その衣装似合ってるわよ」
真姫は若葉の方に頭を預けながら言い、悪戯っぽく笑う。若葉はそんな真姫の頭をくしゃくしゃと掻く。
「四人ともいちゃつくのは良いけど場所考えようぜ?」
そんな四人に夏希が呆れたように言う。若葉と真姫、愛生人と凛は周りを見渡し、そこがステージ袖だと思い出すと慌てて離れる。それを見ていた関係者や出演者は笑顔で拍手を送っていた。
「いやー盛り上がったね~。色々とありがとうね。若葉君」
「あ、いえ。こちらこそありがとうございました」
拍手が止むと監ちゃんと呼ばれていた最高責任者が若葉達に近付きながら拍手をしていた。
「ところで少し時間あるかい? この後出演者達とステージ上で写真を撮る予定なんだけど」
「写真、ですか?」
若葉は後ろにいる絵里達を振り返ると確認を取る。絵里達は顔を見合わせると、揃って頷く。
「ではよろしくお願いします」
「そうかそうか。じゃあ行こう!」
監ちゃんに肩を押され若葉達は再度ステージに上がる。
「ってなんで俺まで!?」
「夏希だってアイドル研究部の一員でしょ」
「だったら一緒に撮らない理由はないでしょ」
そうにこと絵里が答え夏希をステージに引っ張る。それから今回主役だった凛をセンターに、その横に愛生人と花陽を並べ、写真撮影が行われた。
撮影後。衣装から着替え、化粧を落とした愛生人は再び荷物搬入口を訪れていた。そしてそこで待っていた人物に声を掛ける。
「凛ちゃん」
「アキ君」
そこにいたのは同じく衣装から着替えた凛だった。凛は愛生人を見ると照れたようににっこり笑い、愛生人に駆け寄るとそっと耳打ちする。
「凛の初めてだったんだから責任取ってね?」
凛の言葉に愛生人は無言で凛を抱きしめ、囁く。
「改めて言わせて貰うね。僕は凛ちゃんが好きだ。だから僕と付き合って下さい」
「そんなの、決まってるにゃ……」
愛生人の背中にギュッと腕を回し、答える。その凛の頬には一筋の涙。
こちらこそよろしくお願いします
【音ノ木チャンネル】
若「もうヤダ……」
愛(ぽけー)
夏「今回こんなのであとがき務まるのかよ…」
名「夏希中心で回して行くしかないね」
若「ちょっと作者来ようか」
名「え、なんで?」
夏「いや、なんでも何もあれどうにかしろよ」
名「あれ?」
愛(ぽけー)
名「愛生人。女装、告白、キスの3コンボお疲れ様でした」
若夏(いきなり核心抉りに行ったぁ!?)
愛「あ、はい」
名「ほらほら。そんなに呆けてないで、まえがきでも言った通りプレゼントがあるんだから」
若「そういえばなんか前回そんな事言ってたね」
夏「違う意味での楽しみだっけか?」
名「イエース! なんとこの度、挿絵第2弾として、そして愛生凛ちゃん回として、お2人の挿絵がこちらにございます!」
『…………ハァァァ!?』
名「書いて下さったのは『ラブライブ!‐彼はどう変わる?‐【リメイク】』を投稿しているレイヴェルさんです」
夏「最近作者は他の作家さん達と仲良いんだな」
愛「Twittreとかでも結構やり取りしてますしね」
若「2人とも突っ込む所そこじゃない! いやそこもあるんだけど!」
名「レイヴェルさん、本当にありがとうございました!」
『ありがとうございました!』
愛「驚きの連続ですが、取り敢えず次の話はいつ頃投稿出来そうなんですか?」
名「次の話の内容によるね」
若「と、言うと?」
名「凛ちゃんの新しい練習着を買いに行く話をするか、アニメの6話に入るかで変わると思う」
夏「その前に若とマッキーのデート回も書かないとだしな。因みに進捗具合はどうなんだ」
名「……聞きたい?」
愛「いえ、なんとなく今の間で理解したからいいです」
若「では今回はここら辺で畳みたいと思います。凛の告白回を楽しみにしていて下さった方に満足して頂けたら幸いな回でした。それではまた次回」
『さよならー』
名「ねえ最後の文章って本当は俺が言うはずだったんじゃ」
夏「いや、お前には任せられないと思ったから若が言ったんだろ」
愛「正当な判断ですよ」
名「あれれー?」
【挿絵表示】