寝不足で頭が痛いです。頭痛で頭が痛い、危険が危ない的な感じです。
「それじゃあ行ってきまーす!」
「海未やことりに迷惑掛けないように気を付けていってらっしゃい」
朝早く「穂むら」の前にはキャリーバッグを持った穂乃果とそれを見送る若葉の姿があった。
「それでは高坂穂乃果、修学旅行に行ってまいります」
「はいは~い。行ってらっしゃ~い」
敬礼をする穂乃果に対して若葉はヒラヒラと手を振って送り出す。穂乃果は大きく手を振って待ち合わせ場所に向かって歩き始め、少し離れた場所で石に躓いて転びそうになる。
その様子を一部始終見ていた若葉は溜め息を吐いて家の中に戻る。
「さて、と。雪穂が起きるまでまだ時間あるし、かと言って店の前の掃除をするほど汚くない……よし寝よう」
「今の時間に寝たら朝練に遅刻するんじゃないの?」
「あ、母さんおはよう」
若葉がどう時間を潰そうか考えていると裕美香が居間に入ってくる。
「おはよう。そう言えば部活の調子はどう?」
「え~っと確か…」
裕美香の問いに対して顎に手を当てて考える若葉。
「今週末にファッションショーのイベントでライブを頼まれたよ」
「あら、凄いじゃない」
「その間の生徒会は俺と夏希、絵里と希の4人でやるから良いとして、あとは向こうとの打ち合わせとかもしなくちゃ、か…」
「若葉も大変ね。ま、頑張り過ぎて倒れないように気を付けなさいよ」
「は~い」
若葉はやる事の大変さにテーブルに頭を乗せて答える。それから雪穂が起きるまで若葉はその体勢から動く事は無かった。
☆☆☆
その日の放課後。凛はいつまで経っても止まない雨に辟易していた。
「止まないね~」
「止まない雨はない、明けない夜はない。だよ凛ちゃん」
「な、なんか使い方違う気が…」
「そんな事よりそろそろ練習の時間よ。今日は中での練習なんだし、早く準備しちゃいましょ」
真姫が部室にいる4人に言うも、凛はやる気が起きないのか机に体を預けている。
「どーせまた5人で練習でしょ?もう飽きたにゃ」
「それはこっちのセリフ」
凛の言葉ににこが机に肘を付いて言い返す。そんな2人に花陽がまぁまぁと宥める。
「仕方ないよ、凛ちゃん。穂乃果ちゃん達は修学旅行で沖縄、若葉君と夏希君は生徒会。絵里ちゃん、希ちゃんはそのお手伝い」
「そうよ。気合いが入らないのは分かるけど、やる事はやっておかないと」
絵里が部室に入って来て5人に言う。その後ろからは若葉もついて来ていた。若葉の服装はなぜかスーツ。
「もうダメ…スーツ、嫌い…」
若葉は椅子の背もたれに上着を掛けるとそのまま座り、机に突っ伏す。そんな若葉に真姫が聞く。
「若葉はなんでスーツなのよ」
「あー…今週末にライブやるじゃん?それの打ち合わせで、ね……」
「いや、私達高校生なんだから制服で良いじゃない」
真姫が言うと若葉は遠い目をする。何があったのか真姫達が絵里に疑問の視線を送ると、絵里も分からないのか肩を竦める。
「どうも翔平君に騙されたみたいでね」
「翔平君って前に何度か会った事のある…?」
「ええ。今回のライブの紹介をしてくれた本人でもあるのよ」
絵里の説明にへぇーと驚きの声を出す4人。真姫だけは声を出さずに若葉を心配そうに見つめる。
「大丈夫?」
「んー……ダメかも。つか翔平の奴許さん」
「若葉君が珍しくダメージ負ってるにゃー」
「まぁスーツは着慣れてないと疲れますからね」
「でもファッション業界にコネを持ってるって、あいつどんな人脈持ってんのよ」
「流石は若葉の知り合いって所かしら」
真姫が若葉の頭を撫でる傍らで愛生人達は2人に聞こえない声量で会話する。結論としては翔平の謎が深まっただけだった。
「さて話は戻して。イベントは穂乃果達が修学旅行から帰って来た次の日よ」
「そうだよ~だからちゃんとフォーメーションの確認とかして、合流し次第ライブ出来る様にしないとだよ」
絵里に続き若葉が机に頭を置いたまま言う。
「でもファッションショーからライブ依頼が来るとは思いませんでしたけどね」
「きっとモデルさん達と同じ舞台で踊るんだよね気後れしちゃうね……」
花陽の言葉に隣で頷く凛。真姫もそうね、と2人に同意し、にこを見る。
「絵里や希はともかく」
「なに?」
真姫に見られたにこは真姫に迫るも、でも、と真姫の隣から若葉が声を上げる。
「ファッションショーって服を見せるのが主でしょ?俺らとは目的が違わない?」
「そうね。気にする事は無いわ。じゃあね」
「あ、生徒会室?だったら俺も行くよ。じゃあ穂乃果達が帰ってくる時にすぐ出来る様に練習頑張ってね」
絵里が部室から出て行こうとすると、若葉も立ち上がり絵里の後について部室から出て行く。
「あ~あ沖縄かぁ。穂乃果ちゃん達楽しんでるんだろうな~」
凛は雨粒が当たる窓を不満そうに眺める。
凛が不満そうに呟いている同時刻、沖縄では強風と大雨に見舞われ、2年生は全員室内待機を命じられていた。
穂乃果がヤケになって天に向かって晴れろー!とやっているとポケットに入れていた携帯が鳴る。
「あれ?絵里ちゃんからだ。もしもし?」
『あ、穂乃果どう?楽しんでる?』
「嫌味?」
『え、なん……あーごめんなさい』
「?」
申し訳なさそうに謝る絵里に穂乃果は首を傾げる。実は若葉がパソコンの天気図を見せ、沖縄の現在の天気を知ったのだ。
「別に良いよー。それよりどうしたの?」
『今週末のイベントなんだけどね、ちょっと相談があって』
「相談?」
絵里から相談の内容を伝えられた穂乃果は電話にも関わらず頷いて手を握る。そして誰がいいかの質問に対し、穂乃果は部屋の中をクルクルと考えながら歩く。穂乃果が迷っていると絵里が実は、と切り出す
『私と希、夏希の3人で話し合ったんだけど……』
絵里の上げた人物に穂乃果は特に反対する様子もなく賛成し、電話を切る。
「絵里からの電話ですか?」
「うん。なんか相談、と言うより提案かな」
「なんの提案だったの?」
「えっとね……」
電話を切ると穂乃果は海未とことりに電話の内容を話すと、2人は笑顔で頷く。
「それは確かに良い案ですね」
「うん!ピッタリだと思うよ」
そして翌日の放課後。1年生の教室にアイドル研究部全員が集まる。
「今日は若葉さん制服なんですね」
「今日は向こうとの打ち合わせは無いからね」
愛生人が制服姿の若葉に茶々を入れるも、そんな事より、と本題に入る。
「凛、ちょっとお願い……いえ提案があるの」
「凛に?」
絵里が凛を見ると、それにつられて皆も凛を見る。皆に見られた凛はギョッとして椅子ごと少し下がる。
「な、なにかにゃ?」
「凛ちゃんμ'sのリーダー、やてみいひん?」
希の突然の言葉に凛は動きを停止させる。笑顔で固まった凛に愛生人と花陽が心配そうに声を掛ける。
「凛ちゃん……?」
「大丈夫……?」
「……えぇー!凛がリーダー!?」
2人の声で元に戻ったのか、机を叩いて立ち上がる。夏希が反応おそっ!とツッコむも、誰にも返されることはなく、話が進む。
「そうよ、暫定でもリーダーを決めておいた方がある程度纏まるだろうし、練習にも力が入るだろうと思って」
「もちろんほのっち達が修学旅行から帰ってくるまでの期間だけどな」
「穂乃果ちゃん達にも連絡して相談した結果なんよ。ウチ達は凛ちゃんが良いって。3人はどう?」
希が最後は真姫と花陽、愛生人に向かって聞くと、3人とも賛成のようで頷き返す。しかし張本人である凛はみ皆を見渡しながら待ったをかける。
「ちょ、ちょっと待ってよー。なんで凛?絶対他の人の方が良いよ~絵里ちゃんとか!」
凛に指名された絵里は困り顔で生徒会の仕事で手伝えない事と、今後の事を考えて3年生が務めない方が良いと伝えると、凛は若葉に話を振る。
「凛ちゃんには悪いんだけど、イベント先との打ち合わせでこれから放課後はだいたい消えるから出来ないんだよね」
「じ、じゃあ夏希君は?」
若葉に断られ隣にいる夏希に目を向けると夏希は笑顔で凛の肩に手を置と、夏希の動作に凛は嬉しそうな笑顔を浮かべる。そして夏希は口を開き
「りっちゃん。俺は既に生徒会での若葉が抜けた分の穴をフォローしなきゃならないから、リーダーをやってる時間は無いんだよ。分かった?」
「は、はいぃ~」
笑顔で肩に力を入れる夏希に引きつり笑いで返す凛。そんな凛を見て真姫は溜め息を吐く。
「話聞いてなかった?皆凛が良いって言ってるのよ」
「でも凛は……」
と小さくなりながら椅子に座る凛。花陽が嫌なのかと聞くと自分には向いてないと返す。その発言ににこが意外ね、と本当に意外そうに言う
「凛なら調子良く引き受けるかと思ってたけど」
「凛ちゃん結構引っ込み思案なところありますから」
「特に凛ちゃん自身の事だとね」
愛生人と花陽がにこに答えるように話すと、絵里が机の上で握られている凛の手をそっと自身の手で覆う。
「凛、いきなり言われて戸惑うのは分かるけど、皆凛が適任だと考えてるのよ。その言葉ちょっとでも信じてみない?」
絵里が除き込むように諭すと凛は再び全員の顔を見る。若葉達は揃って微笑み返す。
「分かったよ。絵里ちゃんがそこまで言うなら……」
凛が俯きがちにそう答えると花陽と愛生人が嬉しそうに凛の名前を呼ぶ。
「さてと、そろそろ雨も止みそうだから練習始めちゃおう」
若葉が手をパンと叩いて絵里、希、夏希の3人以外は着替えて屋上に集合した。
「若葉さん。生徒会の方に行かなくて良いんですか?」
「俺も行こうとしたんだけど、夏希から「滅多に来れないんじゃこっちの頭数として計算に入れたくないから、練習の方に行ってくれ」って言われた」
「それはまぁ、お気の毒に」
曇り空から一転、晴れた屋上で若葉と愛生人がそんな会話をしている一方、凛指揮の元練習が行われていた。
「え、えっとそれでは練習を始めたいと思います。最初にストレッチから初めていきますわ。皆さんお広がりになって」
両手をバッと広げて言う凛と、それを半目で見る真姫とにこ。
「あれって海未の真似かな?」
「さ、さぁどうでしょう」
思わず苦笑いを浮かべる若葉と愛生人。我慢できなかったのか真姫が凛の口調に突っ込みを入れると、凛も自分がおかしな事を言っていた事に気付く。
「別にリーダーだからって畏まる必要ないのよ?普段の穂乃果を見てみなさい。普通にしてればいいのよ」
「そっか……えっと、ではストレッチをはっじめるにゃー!」
にこの助言に凛はいつも通りの口調、仕草でストレッチを始めるように言う。そんあ凛を若葉は楽しそうに、愛生人は内心焦りながら見ていた。
「いや~凛見事に緊張してるね」
「そうですね。って言うか若葉さん何か楽しんでません?」
「まぁ普段と違う練習風景は見てて楽しいからね」
「僕はもうドキドキですよ」
「好きな子の新しい一面が見れて?」
「ち、違います!それにあんな感じのしおらしい凛ちゃんは昔にも見たことありますので、そこまで新しい一面とは言いません」
「長々と言い訳する所がこれまた怪し……ちょ、無言でボードで叩くの辞めて!地味に痛いんだよ、それ!」
若葉が愛生人をからかって制裁を受けている頃、4人は凛がリズムを刻みながらステップ練習に励んでいた。しかし凛は慣れていないのか、徐々にリズムがズレ始める。
「凛?ちょっとズレてるわよ」
真姫にその事を指摘されると焦ったのか、さらにズレる。さすがに見てられなくなったのか、若葉が凛と交代し4人でのステップ練習に移行した。
それから一度通しで踊りきると、真姫がねぇ、と凛に立ち位置の相談をする。
「私はここから後ろに下がって行った方が良いと思うんだけど」
「何言ってんの逆よ逆。ステージの広さを考えたら前に出て目立った方が良いわ!」
「だからこそ引いて大きくステージを使った方が良いって言ってるんじゃない!」
真姫とにこが意見をぶつけ合うもどちらも引かず、にこは前に出るべきと言い、真姫は下がった方が良いと主張し合う。凛がどう止めようか困っていると花陽が仲裁に入る。しかし上手く仲裁できずに2人は凛に聞く。
「え、あぁ……穂乃果ちゃんに聞いたら良いんじゃないかな…」
「それじゃあ間に合わないでしょ」
「じゃあ絵里ちゃんか若葉君に…」
真姫に言われ絵里か若葉にと言おうとした所でにこに名前を呼ばれ遮られる。その遮ったにこの真剣な表情と声色に返事をする凛。
「リーダーはあなたよ。あなたが決めなさい!」
にこの言葉に凛はそっか、と少しの間考えると俯きがちに答える。
「あ、明日までに……考えてくるよ……」
「凛ちゃん……」
そんな凛を愛生人は心配そうに見つめる。それに気付いたのか、若葉が手を叩き、練習を終わらせる。
【音ノ木チャンネル】
若「沖縄楽しかったな~」
夏「ほのっち達は台風が直撃するかもだってよ」
愛「え、それって拙いんじゃないですか…?」
「「「…………」」」
若「まぁそれは置いといて」
愛「今の間はなんですか!?」
夏「まぁ落ち着けってアッキー。このままじゃS疑惑のある作者に何かしらの無茶ぶりをされ兼ねないぞ」
愛「誰から疑い掛けられたんですか!」
若「ほら、俺って過去と今で計2回入院してるでしょ?それをポロっと言った所そう言う疑惑が浮上したんだよ」
愛「自業自得じゃないですか」
夏「ま、そう言う訳で今回はここまで!」
若「異様に短いね」
愛「あれじゃあないですかね。前書きにも書いてあった通り寝不足で頭が回ってないとか」
夏「いや、寝不足の度合いで言えば前回のあとがきの時の方が重いぞ?」
若「確か、夕方4時頃から一晩中起きて最後の方を仕上げてから書いてたんだっけ?しかも書き上げた時間が投稿する直前」
夏「書き溜めしない弊害がここに現れるんだよな」
愛「新鮮さを大事にしてるんですよ。きっと」
若「そうそう前回のあとがきでも発表しましたが、番外編4話目は『若真姫デート』に決定しました。投票してくださった方々本当にありがとうございました」
夏「大体の流れも出来つつあるから楽しみに待っててくれ!」
愛「それと誤字脱字、感想、批判、アドバイス等をお待ちしております!」
若「さて、そろそろ本当に終わりにしよう」
夏「だな」
『次回もお楽しみに!』