「さて、にこは帰った訳だが……やる事は分かっているな?」
にこが走り去った後夏希が誰にともなく言うと、穂乃果と凛が揃って頷く。
「よし総員にこっちを尾行するぞ!」
『サー!イエッサー!』
夏希がにこの去った方を指して言うと、全員が揃って敬礼して答える。そしてにこに気付かれない様に後をつけ始める。そしてにこが向かった先は
「スーパー?」
「中に入っちゃったよ?」
「ノリで着いて来ちゃったけど、なんで後をつけるの?」
「だって気になるじゃん!……まさかここでバイトしてるとか?」
穂乃果の言葉で皆はにこがバイトをしている姿を想像する。そのあまりの違和感の無さに
「嵌り過ぎにゃ~」
凛のコメントに頷くしかなかった。しかしにこの行動を見ていた真姫は待って、と止める。真姫のストップでにこを見ると
「普通に買い物をしてるみたいですね」
「なんだ~ただの夕ご飯のお買いものか~」
海未の言葉に穂乃果は安心したように胸を撫で下ろす。安心した穂乃果と反対に少し困惑した様な顔をする海未。
「しかしそれだけで練習を休むでしょうか?」
「ラブライブ出場に向けて気合も入ってるはずなのに」
ことりもやや不安そうににこを見つめる。視線の先にはパックに詰められた肉を手に吟味しているにこ。
「よっぽど大事な人が来てる、とか」
「その人に手作りでもする、とか」
「ま、まさか……」
ことりが花陽と愛生人の言葉を否定しようとするも、言葉が見つからないのか言い切れないでいた。2人の言葉に凛が驚きの声を上げると
「ダメです!それはアイドルとして一番ダメなパターンです!」
花陽が立ち上がり声を張り上げて否定するも、穂乃果は訳が分かっていない様で首を傾げていた。
「μ'sメンバー矢澤にこ。練習を早退して足繁く通うマンションとは!?」
花陽に続き凛も口に手を当てまさかの事態を声に出す。
「て言うか皆練習はどうしたの?」
「若葉!?」
「なんでお兄ちゃんが!?」
そんな話をしていると若葉が凛達が隠れていた台車と段ボールを移動させると言う。
「あと少しで終わるけど今日はここでバイトだからだよ。それより皆は何を…」
若葉の台詞の途中で真姫が買い物をしているにこを指し示す。若葉はにこを見ると納得行った様に頷く。
「あーにこは偶に買い物来るよ」
「え!にこちゃん偶に来るの!?」
「うん。それでにこに気付かれてるけど大丈夫?」
『え?』
若葉がにこの方を見るとにこもこちらを見ており、穂乃果達がにこと目が合うとにこはそっと籠を置き、反転、逃走。その一連の行動を静かに見ていた。そして少し間を置いて皆が気付く。
『逃げたッ!?』
にこは逃げながら穂乃果達がついて来た理由を考えるも思い付かず、また穂乃果達が店内に入り追いかけて来てる事を確認したにこは「stuff only」と書かれている扉の中に入る。にこを追いかけた穂乃果達はにこを見失い、一度店の外に出る。
一方穂乃果達と違って店内に行かなかった絵里、希、夏希の3人は裏口に向かっていた。
「なぁ本当にこっちに来るのか?ほのっち達が捕まえたりとかは」
夏希の言葉を遮る様に裏口の扉が勢い良く開けられ、そこからにこが飛び出してくる。
「流石にこね。裏口に回るとはね~」
「ヒィィ!」
「さぁ大人しく訳を聞かせて~」
にこは待ち伏せしていた絵里に驚き後退するも、そこを希につかまってしまう。しかし希の捕まえ方が甘かったのか、にこは希の手から抜け出す。
「夏希!」
「俺かよ!」
絵里に名前を呼ばれ、夏希が渋々といった感じでにこを追いかけ始める。夏希はにこを追いかけながら後続組に携帯で現在地を伝える。そして裏道を2.3度曲がると走って逃げるにこの姿はなく、夏希は立ち止まって左右を見渡し、少し歩きアイドルのパネルを見付けて違和感を覚える。
「に、にっこにっこにー!」
「あー!待ちやがれー!」
再び逃げるにこ。夏希も後を追って走り始める。暫く走っているとにこはパーキングに止まっている2台の車の間を通り、反対側の道へと行く。夏希は車の前で立ち止まりにこ同様隙間を通ろうとするも、隙間が狭くて通れない。夏希に後ろから穂乃果達が走り寄る。
「愛生人!あれやるぞ!」
「あれってなんですか!」
夏希が何かを思い付いた様に愛生人に言うも、言われた愛生人は何の事か分からずに返す。夏希はいいから、と車の前に愛生人を立たせると体の前で手を合わせて腰を落とす。その体勢を取らされた所で愛生人は何をするのか理解し、諦めた。
愛生人の準備を終わらせた夏希は少し距離を取り、愛生人目がけて走り出す。
「タイミング合わせろよ!」
「そういう事は走り出す前に、言えよっ!」
愛生人は夏希が手を踏んだタイミングで思い切り両腕を振り上げる。夏希は腕を振り上げた勢いと自らの跳躍で車を飛び越す。無事着地し、左右を見回すも既ににこはその場にはいなかった。
にこを見失った事でこれまでの逃走劇に使った労力にグッタリしながら待っている皆の元へ戻ると静かに首を振る。夏希のその動作でにこを見失っったと分かった皆は疲れた様に肩を落として、近くの小さい広場に移動する。
「結局逃げられちゃいましたね」
「しかしあそこまで必死なのはなぜなのでしょう?」
「にこちゃん意地っ張りで相談とかほとんどしないから」
真姫がそう言うも凛が笑って真姫にそっくりと言われ、顔を赤くして顔を逸らす。
「いっそ家にでも行ってみるか?」
「押しかけるの?」
「私はそれも良いかなって思うよ」
夏希の提案に絵里が聞き返すと、穂乃果も同じ事を思っていたのか夏希の言葉に賛成すると俯き、だって、と続ける。
「そうしないと話してくれそうにないから」
「でも家の場所ウチらは知らないんよ?」
「そっか……そうだよね」
一番大事なにこの家の場所を誰も知らないという事で穂乃果達が諦めかけた時、突然花陽が叫び声をあげる。
「どうしたの!?」
隣に立っていた凛がすぐに花陽に聞くと、花陽はとある方を指す。皆が立ち上がり不思議そうに花陽の指した方を見ると、指された方からにこによく似た人物が歩いて穂乃果達の方へ向かってきていた。
「にこちゃん!?」
「でもちょっと小さくありませんか?」
「そうね」
穂乃果の言葉を海未と真姫は自信が無い様に否定するも、凛はそんな事ないよ~と目の前を歩くにこ(?)を見ながら言葉を続け
「にこちゃんは3年生の割に小さ……小さいにゃー!」
自分の言葉を否定した。凛の叫びに足を止め、首を傾げる小さいにこ。
【音ノ木チャンネル】
若「前回は宣伝で終わった【音ノ木チャンネル】。今回は何の話をするのやら」
夏「つってもなー。何かあるか?」
愛「何かも何もあのパーキングでのハイジャンプはなんだったんですか!」
夏「あれな。実は別のネタで使おうと思ったらしく、結局なくなったからここで陽の目を見たって事だ」
若「にしても良く出来たよね」
愛「描写外にですが夏希さんは車の屋根に片手を付いたりとか、にこさんが置いた籠を若葉さんが商品ごと戻したとかありましたね」
夏「つかちっちゃいにこっちは誰なんだよ」
若「それは次回分かんじゃない?」
愛「そうですね」
夏「そうなのか」
愛「そう言えば作者が今話書く時に若葉さんの設定の利便性に気付いたみたいですよ」
若「利便性?俺ってそんなに便利かな?」
夏「まぁあちこちでバイトしてるから、今回のように神出鬼没な登場できるしな」
若「え、俺の利便性ってそれ?」
愛「まぁ他には見当つきませんし」
夏「ま、諦めるんだな」
若「うぐっ!…じゃあもう終わりにする!」
愛「唐突な我儘!」
夏「じゃあ終わりにするか」
愛「あれ?そう言えば終わりの挨拶ってどうなってるんでしたっけ?」
夏「…………」
若「夏希は黙ってヘッドホンを取らない」
愛「あーそう言えば夏希さんが考える事になってましたね。で、何か考えました?」
夏「……次回へ続く。とかはどうよ」
若「なんか普通だね」
夏「別にいいだろ!あとがきのしかも締めの挨拶に面白さを追求するな!」
愛「じゃあそれで行きますか。せーの」
『次回へ続く!』